【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものです。(1) 財政状態及び経営成績の状況① 経営成績の概況世界経済は、先進国における賃金上昇や底堅い雇用に支えられ個人消費を中心に堅調に推移しています。一方、米国での金融引き締めによる景気減速懸念や、長期化する中国経済の低迷、地政学リスクの増大等、世界経済の先行きに対する不透明感が高まっています。国内においては、好調な雇用情勢に加え、設備投資やインバウンド需要の増加等により実質GDPがコロナ禍前の水準を上回るなど回復が続いていますが、エネルギー価格の高騰や長引く円安による物価上昇には注視が必要です。このような経営環境の中で、当第2四半期連結累計期間における当社グループの連結受注高は、航空宇宙システム事業などで増加となったものの、精密機械・ロボット事業、エネルギーソリューション&マリン事業などでの減少により、全体でも減少となりました。連結売上収益については、航空宇宙システム事業、精密機械・ロボット事業などが減収となったものの、車両事業、エネルギーソリューション&マリン事業などでの増収により、全体でも前年同期比で増収となりました。利益面に関しては、事業損益は、エネルギーソリューション&マリン事業などでの増益はあったものの、航空宇宙システム事業、精密機械・ロボット事業での悪化などにより、前年同期比で悪化となりました。親会社の所有者に帰属する四半期損益は、事業損益の悪化などにより、前年同期比で悪化となりました。この結果、当社グループの連結受注高は前年同期比58億円減少の8,608億円、連結売上収益は前年同期比95億円増収の7,693億円、事業損益は前年同期比636億円悪化の328億円の損失、税引前四半期損益は前年同期比704億円悪化の344億円の損失、親会社の所有者に帰属する四半期損益は前年同期比471億円悪化の233億円の損失となりました。
② セグメント別業績の概要
航空宇宙システム事業航空宇宙システム事業を取り巻く経営環境は、防衛省向けについては抜本的な防衛力強化という防衛省の方針のもと、今後の需要増が期待されます。民間航空機については、航空旅客需要はほぼコロナ前水準に回復しており、機体のコロナリバウンド需要が旺盛なことから、機体・エンジンともに需要が増加しています。このような経営環境の中で、連結受注高は、防衛省向けや民間航空機向け分担製造品が増加したことなどにより、前年同期に比べ675億円増加の1,932億円となりました。連結売上収益は、防衛省向けや民間航空機向け分担製造品、民間航空エンジン分担製造品などが増加したものの、民間航空エンジンの運航上の問題に係る損失を一括計上したことなどにより、前年同期に比べ157億円減収の1,292億円となりました。事業損益は、防衛省向けや民間航空機向け分担製造品、民間航空エンジン分担製造品などの増収による増益はあるものの、民間航空エンジンの運航上の問題に係る損失を一括計上したことなどにより、前年同期に比べ497億円悪化して527億円の損失となりました。
車両事業車両事業を取り巻く経営環境は、新型コロナウイルスの収束により利用者数が回復し、国内外で鉄道車両への投資が再開しつつあります。一方で、足元への影響は限定的ではあるものの、電子部品等の供給不足や物流混乱、原材料価格の高騰については、収束が見えつつも注視が必要です。中長期的には、海外市場では都市交通整備、アジア諸国の経済発展に伴う鉄道インフラニーズなど、今後も世界的に比較的安定した成長が見込まれます。このような経営環境の中で、連結受注高は、国内向け案件が減少したことなどにより、前年同期に比べ92億円減少の301億円となりました。連結売上収益は、国内向け車両が減少したものの、米国向け車両が増加したことなどにより、前年同期に比べ255億円増収の841億円となりました。事業損益は、増収はあったものの、国内の操業が低下したことなどにより、前年同期並みの3億円の利益となりました。
エネルギーソリューション&マリン事業エネルギーソリューション&マリン事業を取り巻く経営環境は、世界的なカーボンニュートラルの実現を目指す動きの影響を強く受け、当社が強みとする水素製品をはじめ、脱炭素ソリューションに関する問い合わせや協力要請が増加しています。また、国内外の分散型電源需要及び新興国におけるエネルギーインフラ整備需要は依然根強く、国内ごみ焼却設備の老朽化更新需要も継続しています。一方、発電設備の稼働に必要な燃料ガスの供給安定性など足元の状況に不透明感があるほか、昨今の原材料価格や資機材・燃料費の高止まり等による受注、売上収益への影響には注視が必要です。このような経営環境の中で、連結受注高は、防衛省向け艦艇用機器などの受注はあったものの、国内向けごみ処理施設整備・運営事業の大口案件やLPG/アンモニア運搬船の受注の多かった前年同期に比べ200億円減少の2,184億円となりました。連結売上収益は、エネルギー事業やLPG/アンモニア運搬船を中心とした船舶事業を主要因として、前年同期に比べ133億円増収の1,478億円となりました。事業利益は、LPG/アンモニア運搬船の増収や持分法による投資利益の増益などにより、前年同期に比べ54億円増益して85億円となりました。
精密機械・ロボット事業精密機械・ロボット事業を取り巻く経営環境は、精密機械分野では、中国以外の地域における建設機械市場については堅調に推移しましたが、中国建設機械市場は、不動産不況の長期化等の影響により需要が低迷しました。ロボット分野では、メモリを中心とする半導体市場の落ち込みや米中経済摩擦の影響により、半導体製造装置向けロボット需要は減速が続いており、回復の時期は見通しにくい状況ですが、AI関連やグリーン投資関連等の新たな需要を織り込みつつ、2024年度から回復するものとみられています。また、欧米を中心にインフレに対する金融引き締めの影響等による不透明感が強く、一般産業用ロボットも足元では成長が鈍化する状況になっていますが、人件費上昇による自動化需要が潜在的に高まっています。このような経営環境の中で、連結受注高は、中国建設機械市場向け油圧機器や半導体製造装置向けロボット等が減少したことなどにより、前年同期に比べ364億円減少の1,030億円となりました。連結売上収益は、中国建設機械市場向け油圧機器や半導体製造装置向けロボット等が減少したことなどにより、前年同期に比べ146億円減収の1,030億円となりました。事業損益は、減収に加え、操業低下の影響などにより、前年同期に比べ101億円悪化の46億円の損失となりました。
パワースポーツ&エンジン事業パワースポーツ&エンジン事業を取り巻く経営環境は、新型コロナウイルス感染拡大による市場への影響が落ち着いたものの、主要市場である米国と欧州では引き続き需要は堅調に推移しています。また、東南アジア市場は国ごとの差はありつつも全体として前年度より回復しています。このような経営環境の中で、連結売上収益は、東南アジア向け二輪車の減少はあったものの、欧州向け二輪車及び北米向け四輪車が増加したことに加え、為替レートが円安に推移したことなどにより、前年同期に比べ19億円増収の2,671億円となりました。事業利益は、二輪車、四輪車の拡販や為替好転の影響はあったものの、販売促進費や固定費の増加などにより、前年同期に比べ49億円減益の231億円となりました。
その他事業連結売上収益は、前年同期に比べ8億円減収の379億円となりました。事業利益は、前年同期に比べ13億円減益の5億円となりました。
当社グループは「グループビジョン2030」において、注力するフィールドを「安全安心リモート社会」「近未来モビリティ」「エネルギー・環境ソリューション」とし、手術支援ロボットをはじめとする医療・ヘルスケア事業、更には、配送ロボットや無人輸送ヘリコプタの事業化、カーボンニュートラル社会の早期実現に向けた水素事業や電動化の推進など、社会課題ソリューション創出への取組を着実に進めています。
③ 財政状態の状況(資産)流動資産は、棚卸資産の増加などにより前期末に比べ334億円増加し、1兆6,038億円となりました。非流動資産は、有形固定資産の増加などにより前期末に比べ652億円増加し、9,526億円となりました。この結果、総資産は前期末に比べ987億円増加の2兆5,564億円となりました。(負債)有利子負債は、前期末に比べ1,162億円増加の7,060億円となりました。負債全体では、有利子負債の増加などにより前期末に比べ1,138億円増加の1兆9,747億円となりました。(資本)資本は、親会社の所有者に帰属する四半期損失の計上などにより、前期末に比べ151億円減少の5,817億円となりました。
(2) キャッシュ・フローの状況当第2四半期連結累計期間における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は前年同期に比べ23億円増加の854億円となりました。当第2四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりです。(営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動によるキャッシュ・フローは、前年同期に比べ545億円増加の154億円のマイナスとなりました。収入の主な内訳は、返金負債の増加額555億円、減価償却費及び償却費435億円であり、支出の主な内訳は、棚卸資産の増加額488億円、その他流動負債の減少額181億円です。(投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動の結果支出した資金は、前年同期に比べ126億円増加の480億円となりました。これは主に有形固定資産の取得によるものです。(財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動の結果得られた資金は、前年同期に比べ736億円減少の176億円となりました。これは主に短期借入金の純増によるものです。
(3) 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等当第2四半期連結累計期間において、重要な変更はありません。
(4) 研究開発活動当第2四半期連結累計期間における当社グループ全体の研究開発活動の金額は、236億円です。なお、当第2四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
#C7012JP #川崎重工業 #輸送用機器セクター