【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要
① 財政状態及び経営成績の状況当連結会計年度における世界経済は、日本、北米、中国、アジアにおいては景気は緩やかに持ち直しておりますが、日本を除き、世界的な金融引締め等が続く中、物価上昇、供給面での制約、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要があります。欧州においては、景気は持ち直しに足踏みがみられます。当社グループの主要取引先であります自動車業界においては、新型コロナウイルス感染症の拡大、ロシア・ウクライナ情勢に伴う部品供給不足が依然として続いているものの、すべての地域において新車販売台数が前年に比べ増加しております。こうした状況のなか、2022年度から2024年度の中期経営目標としては「稼ぐ力を強化し、フリーキャッシュフロー(FCF)の増加をはかる」としております。生産効率の向上などの稼ぐ力をさらに強化し、FCFの増加を着実にはかることで、株主の皆様への還元にあてるとともに、有利子負債の返済、今後の成長への投資に配分していきます。当社グループが大切にしてきたものに「環境」「安心」「豊かな生活」の3つの提供価値があります。「環境」は、自然環境への負荷を低減する排気系部品です。「安心」は、人を危険から守り、安心できるボデー・内装部品です。「豊かな生活」は、生活品質を高める製品・サービスです。今後も株主・投資家の皆様はもとより、お客様・全従業員・地域社会をはじめとする全てのステークホルダーの皆様へ価値提供と情報発信を増やしてまいります。当連結会計年度の業績は、売上高は、得意先各社の自動車生産台数の増加、7,080億円(前年度比23.8%増)となりました。利益につきましては、部品事業の売上増加や新規車種切替効果等の増益要因により、営業利益は76億円(前年度比25.6%増)、経常利益は77億円(前年度比0.5%減)となりました。日本セグメントにおける将来事業計画等を吟味の上、繰延税金資産の回収可能性を検討した結果、法人税等調整額(益)を計上したこと等により、親会社株主に帰属する当期純利益は105億円(前年度比219.8%増)となりました。セグメント別の業績は次のとおりであります。
a. 日本売上高は、得意先各社の自動車生産台数の増加、支給品単価・材料建値の上昇及び為替影響等により3,053億円(前年度比22.9%増)となりました。セグメント利益は、売上高の増加及び新規車種切替効果等により30億円(前年度比1,495.6%増)となりました。
b. 北米売上高は、得意先各社の自動車生産台数の増加及び為替変動等により1,725億円(前年度比51.6%増)となりました。セグメント損失は、新規車種立上げによる減価償却費の増加及びインフレ影響による費用の増加等により7億円(前年度は6億円のセグメント損失)となりました。
c. 欧州売上高は、得意先各社の自動車生産台数の増加及び為替変動等により683億円(前年度比37.8%増)となりました。セグメント利益は、売上高の増加等により9億円(前年度比36.8%増)となりました。
d. 中国売上高は、支給品単価の上昇、為替変動等により1,022億円(前年度比1.1%増)となりましたが、実質売上高は減少しています。セグメント利益は、実質売上高の減少等により26億円(前年度比42.9%減)となりました。
e. アジア売上高は、得意先からの支給品単価の下降等により702億円(前年度比4.6%減)となりましたが、得意先各社の自動車生産台数は増加しており、支給品を除く売上高は増加しております。セグメント利益は、支給品を除く売上高の増加等により15億円(前年度比72.2%増)となりました。
(注)支給品単価の上昇(下降)とは、排気系部品に使用される触媒の得意先からの支給価格が上昇(下降)することです。支給品を含む製品の販売価格も同額上昇(下降)するため、売上高は増加(減少)しますが、利益影響はありません。
財政状態は次のとおりであります。当連結会計年度の総資産については、売掛金の増加等により、前連結会計年度末に比べて102億円増加し、3,197億円となりました。負債については、買掛金の増加等により、前連結会計年度末に比べて5億円増加し、2,200億円となりました。純資産については、利益剰余金の増加等により、前連結会計年度末に比べて97億円増加し、997億円となりました。
② キャッシュ・フローの状況当社グループの現金及び現金同等物は、前年度末に比べ36億円増加し、103億円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度の営業活動の結果、得られた資金は477億円であり、前年度に比べ122億円(34.6%増)の増加となりました。これは、仕入債務の増加等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度の投資活動の結果、使用した資金は223億円、前年度に比べて132億円(37.2%減)の支出の減少となりました。これは、有形固定資産の取得支出の減少等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度の財務活動の結果、使用した資金は220億円(前年度は34億円の支出)となりました。これは、長期借入金の返済による支出等によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の状況
a. 生産実績当連結会計年度における生産実績は次のとおりであります。
セグメントの名称
生産高(百万円)
前年同期比(%)
日本
281,020
127.1
北米
166,007
151.3
欧州
64,908
138.5
中国
95,458
102.6
アジア
67,000
93.6
合計
674,394
124.3
(注)
1 セグメント間取引については、相殺消去しておりません。2 金額は、製造原価によっております。
b. 受注状況当連結会計年度における当社製品におきましては、納入先より3ヶ月程度の生産計画の提示を受け、生産能力を考慮して生産計画をたてております。なお、治具溶接機については、納入先からの注文に基づき生産しており、受注状況は次のとおりであります。
セグメントの名称
受注高(百万円)
前年同期比(%)
受注残高(百万円)
前年同期比(%)
日本
10,473
130.3
9,106
166.6
c. 販売実績当連結会計年度における販売実績は次のとおりであります。
セグメントの名称
販売高(百万円)
前年同期比(%)
日本
295,015
126.0
北米
172,378
151.5
欧州
68,331
137.8
中国
102,111
101.1
アジア
70,236
95.4
合計
708,072
123.8
(注)
1 セグメント間取引については、相殺消去しております。2 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先
前連結会計年度
当連結会計年度
販売高(百万円)
割合(%)
販売高(百万円)
割合(%)
トヨタ自動車㈱
131,936
23.1
175,954
24.8
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容当社グループに関する財政状態及び経営成績の分析・検討内容は原則として連結財務諸表に基づき分析した内容であり、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2023年6月23日)現在において当社グループが判断したものであります。① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容当連結会計年度における経営成績の前連結会計年度との比較分析、報告セグメントごとの詳細及び財政状態の分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載しております。当社グループにおける経営理念として大切にしているものに、「環境」「安心」「豊かな生活」の3つの提供価値があります。「環境」は、自然環境への負荷を低減する排気系部品です。「安心」は、人を危険から守り、安心できるボデー・内装部品です。「豊かな生活」は、生活品質を高める製品・サービスです。今後も株主・投資家の皆様はもとより、お客様・全従業員・地域社会をはじめとする全てのステークホルダーの皆様へ価値提供と情報発信を増やしてまいります。企業価値の向上を目指すにあたっては、売上高、営業利益率、経常利益率、ROE(自己資本利益率)を重要な経営指標と位置づけ、その向上に取り組んでまいりました。財政面におきましては、財務体質の強化として有利子負債の削減と自己資本比率の向上に取り組んでまいりました。各セグメントにつきましても上記基本方針に取り組んでまいりました。なお、当連結会計年度の各セグメントの経営成績の分析につきましては、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。重要な経営指標に掲げられている指標の分析については次のとおりです。売上高につきましては、得意先各社の自動車生産台数の増加もありましたが、主として支給品単価・材料建値上昇影響及び為替影響等により7,080億円(前年度比23.8%増)となりました。営業利益率につきましては、前年度と比べてほぼ横ばいとなりました。経常利益率につきましては、前年度と比べて0.3ポイント減少しました。この主な要因は、為替差損の発生、持分法による投資利益が前年度と比べ減少、支払利息が増加したためです。ROEにつきましては、繰延税金資産の計上に伴い発生した法人税等調整額(益)により、親会社株主に帰属する当期純利益が増加したこと等により前年度と比べて7.8ポイント増加しました。有利子負債につきましては、借入金の返済等により、前年度と比べて165億円減少しております。自己資本比率につきましては、その他包括利益累計額の増加や親会社株主に帰属する当期純利益を計上したこと等により29.4%(前年度比2.2ポイント増)となりました。
重要な経営指標の推移
回次
第107期
第108期
第109期
決算年月
2021年3月
2022年3月
2023年3月
売上高
4,668億円
5,721億円
7,080億円
営業利益率
1.7%
1.1%
1.1%
経常利益率
1.7%
1.4%
1.1%
ROE(自己資本利益率)
5.6%
4.1%
11.9%
有利子負債残高
877億円
981億円
816億円
自己資本比率
26.8%
27.2%
29.4%
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び流動性に係る情報a. キャッシュ・フローの状況 当社グループの当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて36億円増加し、103億円となりました。 なお、当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況の前連結会計年度との比較分析については、「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載しております。b. 財務政策 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料及び外注部品等の仕入のほか、製造費用、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資等によるものであります。また、剰余金の配当につきましては、配当政策に基づき実施してまいります。当社グループの運転資金、設備投資資金及び剰余金の配当等は、主として内部資金により充当し、必要に応じて借入による資金調達を実施することを基本方針としております。当連結会計年度の当社グループの設備投資資金につきましては、内部資金、資本市場からの調達及び借入により充当いたしました。今後は、資本の効率化と財務の安全性確保を重視しつつ、有利子負債の圧縮を視野にいれながら、バランスをとった財務運営を目指してまいります。c. 今後のキャッシュ・フロー2024年3月期の設備投資につきましては、生産性向上のための合理化・省力化投資、新規受注に伴う金型等投資及び海外生産拠点への投資を中心に実施する予定です。詳細につきましては、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却の計画」に記載しております。当該資金調達につきましては、内部資金又は借入にて充当する予定です。
(参考)当社グループは2021年5月に2021年度以降の会社の方向性とめざす姿を示すため、2021年度から2023年度を対象とする中期経営方針を策定しております。以下の3つの中期経営方針を柱とし、経営・収入基盤をさらに充実させるとともに、デジタル化とモノづくりのイノベーションにリソーセスを投下し、強固で持続可能なグローバル企業を目指しております。
(1) 選ばれる会社、勝ち抜く会社に向けた強化 ・お客様目線を意識した活動(困りごとの解決提案) ・部品事業の収益最大化(2) 真のグローバル企業への取り組み強化 ・本社のグローバル化促進 ・中長期の事業戦略の実行(3) 持続可能な企業基盤の強化 ・企業価値の向上 ・デジタル社会への環境整備 ・新しい時代に向けた意識改革
また、稼ぐ力を強化し、フリーキャッシュフローの増加を図るため、2022年5月に中期経営目標を公表しております。2022~24年度の具体的な目標として、フリーキャッシュフローは60~150億円、連結営業利益率は支給品除く売上高で2.6~5.0%といたしました。
直近2ヵ年の実績及び連結業績予想
回次
第108期(実績)
第109期(実績)
第110期(連結業績予想)
決算年月
2022年3月
2023年3月
2024年3月
連結売上高
5,721億円
7,080億円
7,500億円
連結営業利益率(支給品除く)
1.9%
1.9%
2.1%
2023年3月期の連結売上高は支給品単価上昇に加え、材料建値変動、為替変動等の影響を大きく受け、7,080億円(前年度比23.8%)となりました。一方で、部品供給不足に伴う主要得意先の稼働停止、材料費・労務費・物流費の高騰等が影響し、営業利益率(支給品除く)は前年度並みの1.9%に留まりました。
なお、実際の業績は、その情報の不確実性のほか、今後の経済情勢、市場動向、株価・為替動向等の状況変化により予想数値と異なる可能性があります。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
a. 繰延税金資産の回収可能性「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。b. 固定資産の減損「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。c. 貸倒引当金当社グループは売上債権等の貸倒損失に備えて回収不能となる見積額を貸倒引当金として計上しておりますが、将来、得意先の財務状況が悪化し支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。d. 製品保証引当金当社製品の品質保証に伴う損失の支出に備えるため、売上高に対する過去のクレーム実績率を基礎として発生したクレーム費用の個別の実情を考慮した上で、当社が求償を受けると見込まれる金額を見積って計上しておりますが、実際に求償される額が見積り額と乖離した場合には利益に影響を与える可能性があります。e. 退職給付に係る資産・負債従業員退職給付費用及び債務は、数理計算上使用される前提条件に基づいて算出しております。これらの前提条件には、割引率、退職率、死亡率、昇給率及び年金資産の長期期待運用収益率など多くの見積りが含まれており、実際の結果が前提条件と異なる場合や前提条件が変更された場合、又は法改正や退職給付制度の変更があった場合、その影響は累積されて将来にわたり規則的に認識されることとなり、将来の退職給付費用及び債務に影響を与える可能性があります。f. 有価証券の減損処理当社グループは長期的な取引関係維持のため、得意先及び金融機関の株式を保有しておりますが、これら株式は株式市場の価格変動リスクを負っているため、合理的な基準に基づく有価証券の減損処理を行っております。将来、株式市場の悪化又は投資先の業績不振により、評価損を計上することがあり、その場合、利益に影響を与える可能性があります。
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