【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)業績
当第2四半期連結累計期間(2023年1月1日~6月30日)における世界経済は、米国や欧州を中心として個人消費の底堅さは見られましたが、インフレ圧力の継続や金融システムの不安定化などにより、先行きは依然として不透明な状況となりました。日本経済においては、原材料価格の上昇などの影響を受けたものの、経済活動の再開による内需の回復などにより、景気は緩やかに持ち直しの動きが見られました。
こうした状況のなかアサヒグループは、グループ理念“Asahi Group Philosophy”の実践に向けて、メガトレンドからバックキャストして更新した『中長期経営方針』に基づき、持続的な成長と企業価値向上を目指した取り組みを推進しました。「目指す事業ポートフォリオ」の構築では、グローバルブランドの拡大展開やプレミアム戦略の推進による既存事業の成長に加え、周辺・新規領域の拡大と探索にも経営資源を積極的に配分しました。また、サステナビリティと経営の統合をはじめとして、持続的な成長を支えるDX(デジタル・トランスフォーメーション)やR&D(研究開発)といったコア戦略を推進するとともに、長期戦略を支える経営基盤の強化として、人的資本の高度化やグループガバナンスの進化にも取り組みました。
その結果、アサヒグループの売上収益は1兆2,530億円(前年同期比8.8%増)となりました。また、利益については、事業利益※1は1,029億3千2百万円(前年同期比13.2%増)、営業利益は960億7千2百万円(前年同期比18.0%増)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は657億9千8百万円(前年同期比15.4%増)、調整後親会社の所有者に帰属する四半期利益※2は663億5千4百万円(前年同期比0.1%増)となりました。
なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前年同期比5.8%の増収、事業利益は前年同期比9.0%の増益となりました。※3
※1 事業利益とは、売上収益から売上原価並びに販売費及び一般管理費を控除した、恒常的な事業の業績を測る当社独自の利益指標です。
※2 調整後親会社の所有者に帰属する四半期利益とは、親会社の所有者に帰属する四半期利益から事業ポートフォリオ再構築及び減損損失など一時的な特殊要因を控除したものです。
※3 当第2四半期連結累計期間の外貨金額を、前年同期の為替レートで円換算して比較しています。
[日本]
日本においては、酒類、飲料、食品事業で主力ブランドの価値向上を軸に成長戦略を推進するとともに、環境変化を捉えた新たな価値提案の強化に取り組みました。また、各事業の収益基盤の強化に加え、事業の枠を超えた日本全体でのシナジーの創出やサステナビリティへの取り組み強化により、持続的な成長に向けた基盤構築を推進しました。
酒類事業では、ビール類において、『アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶』や『アサヒ生ビール』の商品ラインアップを拡充するとともに、広告・販売促進活動を強化しました。また、『アサヒスタイルフリー<生>』や『クリアアサヒ』をリニューアルするなど、主力ブランドの価値向上を図りました。RTD※において、「Asahi RTD INNOVATION 2025」の第一弾として、複数の新ブランドを各々エリア限定で発売し、新価値創造に向けた取り組みを強化しました。また、お酒を飲める人と飲めない人が共に楽しめる生活文化の醸成を目指し、「We are飲みトモ!スマドリでええねん!PROJECT!」を開始するなど、「スマートドリンキング」の推進に取り組みました。
飲料事業では、微発酵茶葉を一部使用し華やかな香りが特長の緑茶ブランド『アサヒ 颯(そう)』を発売したほか、『アサヒ 十六茶』では、発売30周年を記念して素材と製法にこだわった『アサヒ 十六茶 金のブレンド』を発売するなど、市場の活性化を図りました。また、健康な人の免疫機能の維持に役立つ機能性表示食品『守る働く乳酸菌W』のリニューアルを行い、健康志向を踏まえた価値提案の強化に取り組みました。
食品事業では、『ミンティア』において、ニューレトロをテーマとした『ミンティア クリームソーダ/プリン』の発売に加え、人気アニメとコラボレーションしたパッケージ商品を発売するなど、ユーザー層の拡大を図りました。また、『1本満足バー』において、ブランド認知度の向上に向けてロゴをリニューアルするとともに、プロテインシリーズの品揃えを拡充し、多様化するニーズへの対応に取り組みました。
以上の結果、売上収益は、ビールの売上が増加した酒類事業を中心に各事業が増収となり、6,219億8千6百万円(前年同期比3.7%増)となりました。
事業利益は、原材料関連費用の増加などの影響はあったものの、増収効果や各種コストの効率化などにより、529億3千6百万円(前年同期比23.7%増)となりました。
※ RTD:Ready To Drinkの略。購入後、そのまま飲用可能な缶チューハイなどを指します。
[欧州]
欧州においては、欧州地域におけるブランドポートフォリオの競争優位を強化するとともに、『Asahi Super Dry』や『Peroni Nastro Azzurro』などのグローバルブランドの拡大展開を加速させることにより、プレミアム戦略を推進しました。また、サステナビリティの重点テーマである「環境」や「コミュニティ」などの取り組みを深化させることにより、持続的な成長基盤を強化しました。
欧州の主要地域では、チェコにおいて、『Pilsner Urquell』のブランドの世界観を体感できる体験型施設や新たな広告の展開に加えて、ポーランドの『Zubr』やルーマニアの『Ursus』で生物多様性を支援するプロモーションを展開するなど、各国の主力ブランドを中心にブランド価値の向上に取り組みました。また、ポーランドやイタリア、ルーマニアにおける『Kozel』のほか、英国やルーマニア、フランスでの『Peroni Nastro Azzurro』など、グローバルブランドの拡大展開により、更なるプレミアム化を推進しました。さらに、ノンアルコールビールについて、チェコで『Birell』の新たなフレーバーや『Kozel 0.0%』を発売したほか、ポーランドの『Lech Free』やルーマニアの『Ursus Cooler』、ハンガリーの『Dreher 24』の拡販を図るなど、新たな飲用機会の創出に向けた取り組みを強化しました。
グローバルブランドの拡大展開では、『Asahi Super Dry』において、ノンアルコールビール『Asahi Super Dry 0.0%』を発売したほか、「City Football Group」とのパートナーシップや「ラグビーワールドカップ2023フランス大会」に向けたマーケティング活動を強化したことにより、ブランド認知度の向上を図りました。『Peroni Nastro Azzurro』においては、低アルコール度数の『Peroni Nastro Azzurro Stile Capri』を発売したほか、ノンアルコールビール『Peroni Nastro Azzurro 0.0%』において、モータースポーツチーム「Aston Martin Cognizant FORMULA ONETM TEAM」とのパートナーシップによる広告を積極展開するなど、ブランド力の強化を推進しました。
以上の結果、売上収益は、各国におけるプレミアムビールやノンアルコールビール、グローバルブランドの売上拡大のほか、価格改定の効果などにより、3,153億7百万円(前年同期比18.9%増)となりました。
事業利益は、原材料や人件費などの費用増加の影響はあったものの、増収効果や各種コストの効率化などにより、345億1百万円(前年同期比19.5%増)となりました。
なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前年同期比9.5%の増収、事業利益は前年同期比7.0%の増益となりました。
[オセアニア]
オセアニアにおいては、酒類、飲料事業におけるプレミアム戦略の強化に加え、各事業の強みを融合したマルチビバレッジ戦略の推進や統合シナジーの創出などにより、収益基盤の更なる強化を図りました。また、健康やウェルネスを意識した新たな商品やサービスの提案など、サステナビリティを重視した取り組みを推進しました。
酒類事業では、主力ブランドの『Great Northern』における積極的なマーケティング活動に加え、『Carlton Draught』において、飲食店を応援するキャンペーンを行うなど、ビールカテゴリー内での差別化を図ることにより、各ブランドの価値向上に取り組みました。また、『Asahi Super Dry 0.0%』を新たに発売したほか、RTDブランド『Vodka Cruiser』から主に若年層をターゲットにした缶商品を新たに発売するなど、ニーズの多様化に対応するラインアップの拡充を図りました。
飲料事業では、主力ブランドの販売促進活動を強化したほか、健康志向の高まりを受け新しい炭酸飲料『VIBE soda』を発売するなど、新たな価値提案を推進しました。また、酒類事業の販路を活用し、飲食店向けに清涼飲料の販売を強化するなど、マルチビバレッジ戦略による統合シナジーの創出に取り組みました。
さらに、競合他社を含む4社の合弁会社にてビクトリア州最大のPETリサイクル工場を建設するなど、持続可能なサプライチェーンの実現に向けた取り組みを推進しました。
以上の結果、売上収益は、物流の混乱による影響はあったものの、行動制限の解除に伴う需要回復などにより、2,865億4千万円(前年同期比9.7%増)となりました。
事業利益は、原材料関連の費用増加などの影響はあったものの、ミックスの改善による増収効果や各種コストの効率化、為替変動の影響などにより、422億1千9百万円(前年同期比1.1%増)となりました。
なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前年同期比6.5%の増収、事業利益は前年同期比1.9%の減益となりました。
[東南アジア]
東南アジアにおいては、主力ブランドへの選択と集中の加速や各販売チャネルとの関係強化などにより、マレーシアを中心に各展開国における事業ポートフォリオの再構築を図りました。また、環境や貧困などの社会課題に対する取り組みや人材育成などの強化を通じて、持続的な成長基盤の確立を推進しました。
マレーシアでは、主力ブランドである『WONDA』において、スポーツと関連付けた積極的なキャンペーンなどの展開により、ブランド認知度の向上を推進しました。また、再生可能エネルギー事業者との連携により、マレーシアとインドネシアにおいて太陽光発電の利用を推進することで、経営の効率化を図るとともに、サステナビリティの取り組みを推進しました。
以上の結果、売上収益は、マレーシアにおける主力ブランドの販売が好調に推移したことに加え、価格改定や為替変動の影響などにより、279億1千8百万円(前年同期比11.2%増)となりました。
事業利益は、原材料関連の費用や輸送費の増加などの影響はあったものの、固定費全般の効率化などを推進したことにより、前年同期比7億1千6百万円改善の4億8千5百万円となりました。
なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前年同期比5.4%の増収、事業利益は前年同期比6億8千4百万円改善の4億5千2百万円となりました。
[その他]
その他については、売上収益は、63億4千万円(前年同期比64.9%増)、事業利益は、8億5百万円(前年同期比11.3%増)となりました。
セグメントの業績は次の通りです。各セグメントの売上収益はセグメント間の内部売上収益を含んでおります。
事業セグメント別の実績
(単位:百万円)
売上収益
前年同期比
事業利益
前年同期比
売上収益
事業利益率
営業利益
前年同期比
為替一定
為替一定
日本
621,986
3.7%
3.7%
52,936
23.7%
23.7%
8.5%
50,256
41.0%
欧州
315,307
18.9%
9.5%
34,501
19.5%
7.0%
10.9%
23,385
22.6%
オセアニア
286,540
9.7%
6.5%
42,219
1.1%
△1.9%
14.7%
32,012
△3.2%
東南アジア
27,918
11.2%
5.4%
485
-
-
1.7%
△71
-
その他
6,340
64.9%
63.3%
805
11.3%
7.8%
12.7%
739
28.8%
調整額計
△5,093
-
-
△10,140
-
-
-
△10,250
-
無形資産
償却費
-
-
-
△17,875
-
-
-
-
-
合計
1,253,000
8.8%
5.8%
102,932
13.2%
9.0%
8.2%
96,072
18.0%
※営業利益における無形資産償却費は各事業に配賦しています。
(2)財政状態の分析
当第2四半期連結会計期間の連結総資産は、為替相場の変動によるのれん及び無形資産を含む外貨建資産の増加等により、総資産は前年度末と比較して4,351億2千2百万円増加し、5兆2,654億6千7百万円となりました。
負債は、原材料関連の価格上昇等に伴う営業債務及びその他の債務の増加や、為替相場の変動による外貨建負債の増加等により、前年度末と比較して1,192億4千1百万円増加し、2兆8,866億4千万円となりました。
資本は、前年度末に比べ3,158億8千1百万円増加し、2兆3,788億2千6百万円となりました。これは、配当金支出により利益剰余金が減少したものの、当第2四半期連結累計期間の親会社の所有者に帰属する四半期利益の計上による利益剰余金の増加及び為替相場の変動により在外営業活動体の換算差額が増加したこと等によるものです。
この結果、親会社所有者帰属持分比率は45.1%となりました。
(3)キャッシュ・フローの状況
当第2四半期連結累計期間の営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前四半期利益が925億3百万円となりましたが、法人所得税等の支払による減少があった一方で、減価償却費等の非キャッシュ項目による増加があり、949億4千4百万円(前年同期比:54億9千8百万円の収入増)の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出や条件付対価の決済による支出などにより、613億7千1百万円(前年同期比:404億5千6百万円の支出増)の支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、主に社債の発行による収入があった一方で、短期借入金の減少や配当金の支払などがあり、263億8千5百万円(前年同期比:553億1千万円の支出減)の支出となりました。
以上の結果、当第2四半期連結累計期間では、前第2四半期連結累計期間と比較して現金及び現金同等物の残高は79億6千万円減少し、587億5千4百万円となりました。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第2四半期連結累計期間において、アサヒグループが優先的に対処すべき課題について重要な変更はありません。
(5)研究開発活動
当第2四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発費の金額は、73億5千5百万円であります。なお、当第2四半期連結累計期間において、アサヒグループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
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