【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)業績
当第1四半期連結累計期間(2023年1月1日~3月31日)における世界経済は、米国や欧州を中心として個人消費の底堅さは見られましたが、インフレ圧力の継続や金融システムの不安定化などにより、先行きが不透明な状況となりました。日本経済においては、原材料価格の上昇などによる影響を受けたものの、経済活動の再開による内需の回復などにより、景気は持ち直しの動きが見られました。
こうした状況のなかアサヒグループは、グループ理念“Asahi Group Philosophy”の実践に向けて、メガトレンドからバックキャストして更新した『中長期経営方針』に基づき、持続的な成長と企業価値向上を目指した取り組みを推進しました。「目指す事業ポートフォリオ」の構築では、グローバルブランドの拡大展開やプレミアム戦略の推進による既存事業の成長に加え、周辺・新規領域の拡大と探索にも経営資源を積極的に配分しました。また、サステナビリティと経営の統合をはじめとして、持続的な成長を支えるDX(デジタル・トランスフォーメーション)やR&D(研究開発)といったコア戦略を推進するとともに、長期戦略を支える経営基盤の強化として、人的資本の高度化やグループガバナンスの進化にも取り組みました。
その結果、アサヒグループの売上収益は5,563億3千5百万円(前年同期比12.0%増)となりました。また、利益については、事業利益※1は323億3千9百万円(前年同期比31.0%増)、営業利益は320億1千3百万円(前年同期比254.0%増)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は199億6千9百万円(前年同期比359.4%増)、調整後親会社の所有者に帰属する四半期利益※2は199億6千9百万円(前年同期比50.0%増)となりました。
なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前年同期比7.9%の増収、事業利益は前年同期比24.3%の増益となりました。※3
※1 事業利益とは、売上収益から売上原価並びに販売費及び一般管理費を控除した、恒常的な事業の業績を測る当社独自の利益指標です。
※2 調整後親会社の所有者に帰属する四半期利益とは、親会社の所有者に帰属する四半期利益から事業ポートフォリオ再構築及び減損損失など一時的な特殊要因を控除したものです。
※3 当第1四半期連結累計期間の外貨金額を、前年同期の為替レートで円換算して比較しています。
[日本]
日本においては、酒類、飲料、食品事業で主力ブランドの価値向上を軸に成長戦略を推進するとともに、環境変化を捉えた新たな価値提案の強化に取り組みました。また、各事業の収益基盤の強化に加え、事業の枠を超えた日本全体でのシナジーの創出やサステナビリティへの取り組み強化により、持続的な成長に向けた基盤構築を推進しました。
酒類事業では、ビール類において、『アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶』や『アサヒ生ビール』の商品ラインアップ拡充や広告・販売促進活動の強化に加え、『アサヒ ザ・リッチ』の中味とパッケージデザインをフルリニューアルし、各ブランドの価値向上を図りました。RTD※においては、新価値創造に向けた新たな取り組み「Asahi RTD INNOVATION 2025」の第一弾として、無糖商品の『アサヒ GINON(ジノン)』を東北エリア限定で発売するなど、新たな価値提案を推進しました。また、「We are飲みトモ!スマドリでええねん!PROJECT!」を開始するなど、お酒を飲める人と飲めない人が共に楽しめる生活文化の醸成を目指し、「スマートドリンキング」の推進に取り組みました。
飲料事業では、『三ツ矢サイダー』において、中味とパッケージをリニューアルするとともに、産地指定の国産果実を使用した「くだものがたり」シリーズを展開するなど、ブランド価値の強化を図りました。『ウィルキンソン』において、需要が高まる「#sober」シリーズの中味と容器を全面刷新するなど、健康志向を踏まえた新たな価値創造の強化に取り組みました。
食品事業では、『ミンティア』において、若年層向けにニューレトロをテーマとした『ミンティア クリームソーダ/プリン』を発売し、新たな価値提案の強化を図りました。『ディアナチュラ』において、時短と栄養摂取の両方のニーズに対応した『ディアナチュラ ワンサプリ グレープフルーツヨーグルト味』を発売するなど、多様化するライフスタイルへの対応に取り組みました。
以上の結果、売上収益は、ビールの売上が増加した酒類事業を中心に各事業が増収となり、2,737億9千5百万円(前年同期比6.0%増)となりました。
事業利益は、原材料関連費用の増加などの影響はあったものの、増収効果や各種コストの効率化などにより、177億4千5百万円(前年同期比48.7%増)となりました。
※ RTD:Ready To Drinkの略。購入後、そのまま飲用可能な缶チューハイなどを指します。
[欧州]
欧州においては、欧州地域におけるブランドポートフォリオの競争優位を強化するとともに、『Asahi Super Dry』や『Peroni Nastro Azzurro』などのグローバルブランドの拡大展開を加速させることにより、プレミアム戦略を推進しました。また、サステナビリティの重点テーマである「環境」や「コミュニティ」などの取り組みを深化させることにより、持続的な成長基盤を強化しました。
欧州地域では、チェコにおける『Pilsner Urquell』や『Radegast』の積極的なマーケティング活動に加えて、ポーランドの『Zubr』やルーマニアの『Ursus』で生物多様性を支援するプロモーションを展開するなど、各国の主力ブランドを中心にブランド価値の向上に取り組みました。また、ポーランドやイタリア、ルーマニアにおける『Kozel』のほか、英国やルーマニアでの『Peroni Nastro Azzurro』など、グローバルブランドの拡大展開により、更なるプレミアム化を推進しました。さらに、ノンアルコールビールについて、チェコで『Birell』の新たなフレーバーを展開したほか、ポーランドの『Lech Free』やルーマニアの『Cooler』の拡販を図るなど、新たな飲用機会の創出に向けた取り組みを強化しました。
グローバルブランドの展開では、『Asahi Super Dry』において、1月にノンアルコールビール『Asahi Super Dry 0.0%』を発売し、英国・アイルランドをはじめとした世界8カ国で順次展開しました。また、「City Football Group」とのパートナーシップや「ラグビーワールドカップ2023フランス大会」に向けたマーケティング活動を強化したことにより、ブランド認知度の向上を図りました。『Peroni Nastro Azzurro』においては、ノンアルコールビール『Peroni Nastro Azzurro 0.0%』の積極的な展開や、モータースポーツチーム「Aston Martin Cognizant FORMULA ONETM TEAM」とのパートナーシップによる広告展開など、ブランド力の強化を推進しました。
以上の結果、売上収益は、各国におけるプレミアムビールやノンアルコールビール、グローバルブランドの売上拡大のほか、価格改定の効果などにより、1,183億7千3百万円(前年同期比19.6%増)となりました。
事業利益は、原材料や人件費などの費用増加の影響はあったものの、プレミアム化の進展などに伴う増収効果や各種コストの効率化などにより、45億2百万円(前年同期比133.6%増)となりました。
なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前年同期比10.6%の増収、事業利益は前年同期比98.1%の増益となりました。
[オセアニア]
オセアニアにおいては、酒類、飲料事業におけるプレミアム戦略の強化に加え、各事業の強みを融合したマルチビバレッジ戦略の推進や統合シナジーの創出などにより、収益基盤の更なる強化を図りました。また、健康やウェルネスを意識した新たな商品やサービスの提案など、サステナビリティを重視した取り組みを推進しました。
酒類事業では、主力ブランドの『Great Northern』における積極的なマーケティング活動に加え、『Victoria Bitter』のエクステンション商品の発売など、ビールカテゴリー内での差別化を図ることにより、各ブランドの価値向上に取り組みました。また、主力ブランドを中心にクラフトビールの拡販に取り組むとともに、RTDブランド『Vodka Cruiser』から主に若年層をターゲットにした缶商品を新たに発売し、ニーズの多様化に対応するラインアップの拡充を図りました。
飲料事業では、健康志向の高まりを受け、炭酸飲料やスポーツ飲料のノンシュガー商品を中心に販売促進活動を強化しました。また、豪州酒類事業の販路を活用し、清涼飲料の飲食店向けの販売を強化するなど、マルチビバレッジ戦略による統合シナジーの創出に取り組みました。
さらに、競合他社を含む4社の合弁会社にてビクトリア州最大のPETリサイクル工場を建設するなど、持続可能なサプライチェーンの実現に向けた取り組みを推進しました。
以上の結果、売上収益は、物流の混乱による影響はあったものの、行動制限の解除に伴う需要回復などにより、1,506億6千6百万円(前年同期比17.5%増)となりました。
事業利益は、原材料関連の費用増加などの影響はあったものの、ミックスの改善による増収効果や各種コストの効率化、為替変動の影響などにより、224億4千8百万円(前年同期比4.6%増)となりました。
なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前年同期比9.3%の増収、事業利益は前年同期比2.8%の減益となりました。
[東南アジア]
東南アジアにおいては、主力ブランドへの選択と集中の加速や各販売チャネルとの関係強化などにより、マレーシアを中心に各展開国における事業ポートフォリオの再構築を図りました。また、環境や貧困などの社会課題に対する取り組みや人材育成などの強化を通じて、持続的な成長基盤の確立を推進しました。
マレーシアでは、主力ブランドである『WONDA』において、スポーツと関連付けた積極的なキャンペーンなどの展開により、ブランド認知度の向上を推進しました。また、乳飲料の『Goodday』では、ブランドのメインターゲット層である子供たちに対して、金融リテラシーの向上に向けた教育サポートを実施するなど、社会課題に対する取り組みを推進しました。
以上の結果、売上収益はマレーシアにおける主力ブランドの販売が好調に推移したことに加え、価格改定や為替変動の影響などにより、134億4千9百万円(前年同期比16.6%増)となりました。
事業利益は、原材料関連の費用や輸送費の増加などの影響はあったものの、固定費全般の効率化などを推進したことにより、1億7千3百万円(前年同期比732.5%増)となりました。
なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前年同期比6.9%の増収、事業利益は前年同期比643.0%の増益となりました。
[その他]
その他については、売上収益は、25億7千9百万円(前年同期比69.3%増)、事業利益は、1億6千2百万円(前年同期比9.9%減)となりました。
セグメントの業績は次の通りです。各セグメントの売上収益はセグメント間の内部売上収益を含んでおります。
事業セグメント別の実績
(単位:百万円)
売上収益
前年同期比
事業利益
前年同期比
売上収益
事業利益率
営業利益
前年同期比
為替一定
為替一定
日本
273,795
6.0%
6.0%
17,745
48.7%
48.7%
6.5%
18,076
-
欧州
118,373
19.6%
10.6%
4,502
133.6%
98.1%
3.8%
△685
-
オセアニア
150,666
17.5%
9.3%
22,448
4.6%
△2.8%
14.9%
18,270
9.2%
東南アジア
13,449
16.6%
6.9%
173
732.5%
643.0%
1.3%
407
-
その他
2,579
69.3%
65.2%
162
△9.9%
△18.0%
6.3%
118
14.5%
調整額計
△2,529
-
-
△4,134
-
-
-
△4,172
-
無形資産
償却費
-
-
-
△8,559
-
-
-
-
-
合計
556,335
12.0%
7.9%
32,339
31.0%
24.3%
5.8%
32,013
254.0%
※営業利益における無形資産償却費は各事業に配賦しています。
(2)財政状態の分析
当第1四半期連結会計期間の連結総資産は、季節要因等により営業債権が減少したものの、為替相場の変動によるのれん及び無形資産の増加等により、総資産は前年度末と比較して785億2千9百万円増加し、4兆9,088億7千3百万円となりました。
負債は、季節要因等による営業債務の減少はあったものの社債及び借入金の増加等により、前年度末と比較して308億8千2百万円増加し、2兆7,982億8千2百万円となりました。
資本は、前年度末に比べ476億4千6百万円増加し、2兆1,105億9千1百万円となりました。これは、配当金支出により利益剰余金が減少したものの、当第1四半期連結累計期間の親会社の所有者に帰属する四半期利益の計上による利益剰余金の増加及び為替相場の変動により在外営業活動体の換算差額が増加したこと等によるものです。
この結果、親会社所有者帰属持分比率は43.0%となりました。
(3)キャッシュ・フローの状況
当第1四半期連結累計期間の営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前四半期利益が286億1百万円となりましたが、減価償却費等の非キャッシュ項目による増加があった一方で、法人所得税等の支払による減少があり、486億9千4百万円(前年同期比:253億1千6百万円の支出増)の支出となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出や条件付対価の決済による支出などにより、443億4百万円(前年同期比:268億1百万円の支出増)の支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、主に短期借入金の増加や社債の発行による収入などがあり、987億2千6百万円(前年同期比:686億3千4百万円の収入増)の収入となりました。
以上の結果、当第1四半期連結累計期間では、前第1四半期連結累計期間と比較して現金及び現金同等物の残高は30億1千7百万円減少し、424億8千万円となりました。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第1四半期連結累計期間において、アサヒグループが優先的に対処すべき課題について重要な変更はありません。
(5)研究開発活動
当第1四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発費の金額は、33億6千3百万円であります。なお、当第1四半期連結累計期間において、アサヒグループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
#C2502JP #アサヒグループHD #食料品セクター