【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(業績等の概要)
(1)業績
当期における世界経済は、米国や欧州を中心として景気の回復が見られましたが、ウクライナ情勢の悪化に伴う原材料価格やエネルギー価格の高騰により物価上昇圧力が高まったことや、インフレ抑制に向けた政策金利の引き上げなどにより、先行きが不透明な状況となりました。日本経済においても、原材料価格の上昇などによる影響を受けましたが、新型コロナウイルス感染症の規制緩和や世界経済の回復などにより、景気は持ち直しの動きが見られました。
こうした状況のなかアサヒグループは、グループ理念“Asahi Group Philosophy”の実践に向けて、メガトレンドからのバックキャストにより、これまでの中期経営方針を、長期戦略を含む『中長期経営方針』として更新しました。この『中長期経営方針』では、長期戦略のコンセプトとして「おいしさと楽しさで“変化するWell-being”に応え、持続可能な社会の実現に貢献する」ことを掲げ、事業ポートフォリオでは、ビールを中心とした既存事業の持続的な成長に加えて、その事業基盤を活かした周辺領域や新規事業・サービスの拡大に取り組みました。また、サステナビリティと経営の統合、DX(デジタル・トランスフォーメーション)やR&D(研究開発)といったコア戦略の一層の強化により、持続的な成長と全てのステークホルダーとの共創による企業価値向上を目指した取り組みを推進しました。
さらに、当期は原材料価格の上昇などによる影響を大きく受けましたが、各地域において、適切な価格戦略やコストマネジメントの強化など、事業環境の変化に柔軟に対応する経営を実践することにより、グループトータルで業績の安定化を図りました。
その結果、アサヒグループの売上収益は、2兆5,111億8百万円(前期比12.3%増)となりました。また、利益につきましては、事業利益※1は2,438億1千7百万円(前期比11.9%増)、営業利益は2,170億4千8百万円(前期比2.4%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は、法人所得税費用の増加により1,515億5千5百万円(前期比1.3%減)、調整後親会社の所有者に帰属する当期利益※2は1,654億3千万円(前期比7.0%増)となりました。
なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前期比8.0%の増収、事業利益は前期比5.9%の増益となりました。※3
※1 事業利益とは、売上収益から売上原価並びに販売費及び一般管理費を控除した、恒常的な事業の業績を測る当社独自の利益指標です。
※2 調整後親会社の所有者に帰属する当期利益は、親会社の所有者に帰属する当期利益から事業ポートフォリオ再構築及び減損損失など一時的な特殊要因を控除したものであります。
※3 2022年の外貨金額を、2021年の為替レートで円換算して比較しています。
アサヒグループの実績 (単位:百万円)
実績
前期比
売上収益
2,511,108
12.3%
事業利益
243,817
11.9%
営業利益
217,048
2.4%
親会社の所有者に
帰属する当期利益
151,555
△1.3%
調整後親会社の所有者
に帰属する当期利益
165,430
7.0%
当年度の財政状態の状況は、連結総資産は前年度末と比較して2,825億9千5百万円増加し、4兆8,303億4千4百万円、負債は前年度末と比較して212億1百万円減少し、2兆7,673億9千9百万円となりました。また、資本は前年度末に比べ3,037億9千6百万円増加し、2兆629億4千5百万円となりました。
セグメントの業績は次の通りです。各セグメントの売上収益はセグメント間の内部売上収益を含んでおります。
当社グループの報告セグメントは、前年度まで「酒類事業」、「飲料事業」、「食品事業」、「国際事業」としておりましたが、当年度より、「日本」、「欧州」、「オセアニア」、「東南アジア」に変更しております。
以下の前期比較は前期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。
事業セグメント別の実績
(単位:百万円)
売上収益
前期比
事業利益
前期比
売上収益
事業利益率
営業利益
前期比
為替一定
為替一定
日本
1,301,731
6.8%
6.8%
108,913
5.3%
5.3%
8.4%
96,417
△19.4%
欧州
573,875
21.0%
13.5%
76,005
0.7%
△6.3%
13.2%
55,163
19.8%
オセアニア
583,167
16.6%
5.6%
107,095
29.0%
16.7%
18.4%
80,177
28.2%
東南アジア
51,680
21.1%
6.8%
572
39.9%
27.6%
1.1%
633
-
その他
8,764
47.0%
44.0%
1,407
13.4%
11.7%
16.1%
1,257
△45.5%
調整額計
△8,110
-
-
△16,575
-
-
-
△16,599
-
無形資産
償却費
-
-
-
△33,601
-
-
-
-
-
合計
2,511,108
12.3%
8.0%
243,817
11.9%
5.9%
9.7%
217,048
2.4%
※営業利益における無形資産償却費は各事業に配賦しています。
[日本]
日本においては、酒類、飲料、食品事業の「強み」のあるブランドに経営資源を投下するとともに、新たな価値提案などを通じて各事業のブランド価値向上を図りました。また、日本全体での事業の枠を超えたシナジー創出のためのSCMの最適化やサステナビリティへの取り組みの推進などにより、持続的な成長基盤を強化しました。
酒類事業では、ビールにおいては、『アサヒスーパードライ』を1987年の発売以降初めてフルリニューアルするとともに、『アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶』を通年販売するなど、ユーザー層の拡大を図りました。また、『アサヒ生ビール』の商品ラインアップ拡充や広告・販売促進活動を強化し、ビール市場の活性化を図りました。RTD※1においては、『アサヒ ザ・クラフト』のカクテルシリーズや期間限定商品を展開し、新たな価値提案を強化しました。また、アルコールテイスト飲料においては、お酒を「飲まない/飲めない」人も楽しめる「SUMADORI-BAR SHIBUYA」を出店するなど、飲み方の多様性を提案する「スマートドリンキング」の推進に取り組みました。
飲料事業では、『ウィルキンソン』から、需要が高まるソバーキュリアス※2スタイルに向けて、「#sober」シリーズを提案するなど、健康志向を踏まえた新たな価値創造を図りました。また、『和紅茶』においては、国産茶葉を100%使用することにより上品な香りや味わいを実現し、拡大する消費者のリラックスニーズに対応しました。
食品事業では、タブレット菓子『ミンティア』において、主力商品のリニューアルや広告・販売促進活動の展開により、ブランド力の向上に取り組みました。フリーズドライ食品『アマノフーズ』、サプリメント『ディアナチュラ』などの主力ブランドにおいても、時短ニーズや健康志向の高まりを捉えた商品の展開により、多様化するライフスタイルに対応しました。
以上の結果、売上収益は、ビールの売上が増加した酒類事業を中心に各事業が増収となり、前期比6.8%増の1兆3,017億3千1百万円となりました。
事業利益は、原材料関連やブランド投資の強化に伴う費用増加などの影響はあったものの、増収効果や各種コストの効率化などにより、前期比5.3%増の1,089億1千3百万円となりました(営業利益は前期比19.4%減の964億1千7百万円)。
※1 RTD:Ready To Drinkの略。購入後、そのまま飲用可能な缶チューハイなどを指します。
※2 ソバーキュリアス(Sober Curious)とは、“あえてお酒を飲まない”という新しいライフスタイルを指します。
[欧州]
欧州においては、主力のローカルブランドの強化、ノンアルコールビールの拡大などにより、各国のブランドポートフォリオのプレミアム化を推進するとともに、グローバルブランドの拡大展開を図りました。また、環境問題への対応やありたい企業風土の醸成に向けた取り組みを強化することで、持続的な成長基盤の更なる拡大を図りました。
欧州地域では、チェコにおいて、誕生180周年を迎えた『Pilsner Urquell』が、音楽やスポーツイベントを起点にブランド訴求を強化したほか、缶容器のリサイクル比率向上やPETボトル容器商品の製造終了など、環境負荷低減の取り組みを推進しました。また、ポーランドやイタリア、ルーマニアにおける『Kozel』、英国やルーマニアにおける『Peroni Nastro Azzurro』など、各国でグローバルブランドを拡大展開することにより、更なるプレミアム化を推進しました。さらに、ノンアルコールビールでは、チェコにおいて、『Birell』をより豊かな味わいにするリニューアルを実施するとともに、新たなフレーバーを展開したほか、ポーランドにおいて、『Lech Free』の積極的なプロモーション活動やフレーバービール『Hardmade』のノンアルコールビールの発売など、新たな飲用機会の獲得に向けた取り組みを強化しました。
グローバルブランドの展開では、『アサヒスーパードライ』において、「City Football Group」とのパートナーシップ契約の締結により、英国「Manchester City」をはじめ、同グループ傘下の日本、中国、豪州チームの公式ビールスポンサーとなり、マーケティングの強化を図りました。また、『Peroni Nastro Azzurro』においては、ノンアルコールビール『Peroni Nastro Azzurro 0.0%』を世界20カ国以上で発売し、パートナーシップ契約を締結するモータースポーツチーム「Aston Martin Cognizant FORMULA ONETM TEAM」との広告展開や体験型のイベント開催など、ブランドの認知度向上に向けた取り組みを推進しました。
以上の結果、売上収益は、各国における飲食店向けの需要回復に加えて、グローバルブランドやノンアルコールビールの売上拡大や価格改定の効果などにより、前期比21.0%増の5,738億7千5百万円となりました。
事業利益は、主に原材料やユーティリティなどの費用増加の影響があったものの、飲食店向けの需要回復に加え、ブランドポートフォリオのプレミアム化の進展などに伴う増収効果や為替変動の影響により、前期比0.7%増の760億5百万円となりました(営業利益は前期比19.8%増の551億6千3百万円)。
なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前期比13.5%の増収、事業利益は前期比6.3%の減益となりました。
[オセアニア]
オセアニアにおいては、酒類と飲料事業の強みを活かしたマルチビバレッジ戦略を推進するとともに、プレミアム化の強化や統合シナジーの創出により、収益基盤の盤石化に取り組みました。また、ノンアルコールビールなど、BAC※における新たな成長カテゴリーへの投資強化に加えて、サステナビリティを重視した新価値提案やSCM改革などを推進しました。
酒類事業では、主力ブランドの『Great Northern』において健康需要を踏まえたアウトドアイベントを展開するなど、積極的なマーケティング活動を推進したほか、全豪オープンテニスなど各種スポーツイベントとのパートナーシップ契約を締結するなど、ブランド価値の向上を図りました。また、『アサヒスーパードライ』や『Peroni Nastro Azzurro』から低アルコール商品を新たに発売したほか、『Great Northern Zero』を中心としたノンアルコールビールやハード・セルツァー『Good Tides』の販売促進活動を強化するなど、多様化する飲用ニーズに向けた取り組みを推進しました。
飲料事業では、健康志向の高まりを受け、炭酸飲料やスポーツ飲料のノンシュガー商品を中心に販売促進活動を強化しました。さらに、CUB事業の販路を活用して清涼飲料の飲食店向けの販売を強化したほか、2021年5月に取得したプレミアムコーヒー豆焙煎販売事業を展開するAllpress Espresso社のコーヒー豆を既存顧客向けに販売するなど、マルチビバレッジ戦略による統合シナジーの創出に取り組みました。
また、競合他社を含む4社の合弁会社において建設した豪州最大のPETリサイクル工場の本格稼働に加え、在庫管理の自動化を促進するなど、持続可能なサプライチェーンの構築を推進しました。
以上の結果、売上収益は、新型コロナウイルス感染拡大の影響はあったものの、ビールや炭酸飲料、スポーツ飲料を中心とした主力カテゴリーの売上拡大や為替変動の影響により、前期比16.6%増の5,831億6千7百万円となりました。
事業利益は、原材料関連の費用増加の影響などはあったものの、統合シナジーの創出を中心としたコスト効率化や為替変動の影響もあり、前期比29.0%増の1,070億9千5百万円となりました(営業利益は前期比28.2%増の801億7千7百万円)。
なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前期比5.6%の増収、事業利益は前期比16.7%の増益となりました。
※ BAC:Beer Adjacent Categoriesの略。低アルコール飲料、ノンアルコールビール、成人向け清涼飲料など、ビール隣接カテゴリーを指します。
[東南アジア]
東南アジアにおいては、自社ブランドを中心としたブランド投資の拡大などにより、マレーシア、フィリピン、インドネシアを中心とした展開国におけるプレゼンスの更なる向上を図りました。また、CO2排出量の削減や地域社会への貢献など、サステナビリティの取り組みを推進しました。
マレーシアでは、『CALPIS』から、ナタデココの配合により食物繊維も摂取でき満足感のある味わいの『Calpis Chewy』や、期間限定商品『Calpis White Peach』を発売するなど、商品ラインアップを拡充し、ブランド力の強化を図りました。また、『WONDA』では、サッカーイベントを活用した情報発信の強化や、在宅需要に合わせたインスタントコーヒーの積極的な販売促進活動などに取り組みました。
以上の結果、売上収益は、一部の国において新型コロナウイルスの影響が継続したものの、マレーシアにおける主力ブランドの販売が好調に推移したことに加え、マレーシア以外の展開国における新商品効果、価格改定や為替変動の影響などにより、前期比21.1%増の516億8千万円となりました。
事業利益は、原材料関連の費用や輸送費の増加などの影響があったものの、固定費全般の効率化などを推進したことにより、前期比39.9%増の5億7千2百万円となりました(営業利益は前期比11億1千9百万円改善の6億3千3百万円)。
なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前期比6.8%の増収、事業利益は前期比27.6%の増益となりました。
[その他]
その他については、売上収益は、前期比47.0%増の87億6千4百万円となりました。
事業利益については、前期比13.4%増の14億7百万円となりました(営業利益は前期比45.5%減の12億5千7百万円)。
[『中長期経営方針』の中期的なガイドラインの進捗]
「主要指標のガイドライン」については、2022年度の事業利益(為替一定ベース)は、各地域において原材料価格上昇による影響を受けたことなどにより、ガイドラインを若干下回りましたが、EPS(調整後)はガイドラインどおりの進捗となりました。また、フリー・キャッシュ・フロー(FCF)については、着実な利益成長と不稼働資産売却などのキャッシュ創出により、ガイドラインどおりの進捗となりました。
「財務方針のガイドライン」については、FCFがガイドラインどおりの進捗となったことなどにより、Net Debt/EBITDAもガイドラインどおりの進捗となりました。また、株主還元については、EPSが増加したことにより、当期は1株当たりの配当額を4円増配の113円とすることにより、ガイドライン並みの水準となる予定です。
主要指標のガイドライン
3年程度を想定したガイドライン
2022年実績
事業利益
・CAGR(年平均成長率):一桁台後半※1
5.9%
EPS(調整後※2)
・CAGR(年平均成長率):一桁台後半
7.0%
FCF※3
・年平均2,000億円以上
2,011億円
※1 為替一定ベース
※2 調整後とは、事業ポートフォリオの再構築や減損損失など一時的な特殊要因を除いたものです。
※3 FCF=営業CF-投資CF (M&A等の事業再構築を除く)
(注)「主要指標のガイドライン」における2022年実績の金額は、表示単位未満を四捨五入して表示しております。
財務方針のガイドライン
2022年以降のガイドライン
2022年実績
成長投資・債務削減
・FCFは債務削減へ優先的に充当し、成長投資への余力を高める
・Net Debt/EBITDA※1は2024年に3倍程度を目指す
(劣後債の50%はNet Debtから除いて算出)
3.61倍
株主還元
・配当性向※235%程度を目途とした安定的な増配
(将来的な配当性向は40%を目指す)
34.6%
※1 Net Debt/EBITDA(EBITDA純有利子負債倍率)=(金融債務-現預金)/EBITDA
※2 配当性向は、親会社の所有者に帰属する当期利益から事業ポートフォリオ再構築及び減損損失などに係る一時的な損益(税金費用控除後)を控除して算出しております。
(2)キャッシュ・フローの状況
当年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前利益が2,059億9千2百万円となりましたが、法人所得税等の支払による減少があった一方で、減価償却費等の非キャッシュ項目による増加や運転資本の効率化により、2,659億9千1百万円(前期比:718億2千万円の収入減)の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出などにより、691億8千6百万円(前期比:548億3千8百万円の支出増)の支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、主に社債発行による収入があった一方で、社債の償還や長期借入金の返済による支出などがあり、2,195億5千6百万円(前期比:1,007億6千8百万円の支出減)の支出となりました。
以上の結果、当年度末では、前年度末と比較して現金及び現金同等物の残高は153億4百万円減少し、374億3千8百万円となりました。
(生産、受注及び販売の状況)
(1)生産実績
当年度におけるセグメントごとの生産実績は以下の通りであります。
セグメントの名称
金額
前期比
日本
1,212,157
百万円
6.1%
欧州
455,728
百万円
20.3%
オセアニア
502,002
百万円
18.1%
東南アジア
44,328
百万円
26.9%
(注)1 金額は、販売価額によっております。
2 IFRSに基づく金額を記載しております。
3 日本の生産高には、外部への製造委託を含めております。
(2)受注実績
当社グループでは受注生産はほとんど行っておりません。
(3)販売実績
当年度におけるセグメントごとの販売実績は以下の通りであります。
セグメントの名称
金額
前期比
日本
1,301,731
百万円
6.8%
欧州
573,875
百万円
21.0%
オセアニア
583,167
百万円
16.6%
東南アジア
51,680
百万円
21.1%
その他
8,764
百万円
47.0%
調整額
△8,110
百万円
-
合計
2,511,108
百万円
12.3%
(注)1 調整額はセグメント間取引であります。
2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、外部顧客への売上収益のうち、総販売高の10%以上を占める相手先がないため、記載を省略しております。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
当年度の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は以下の通りであります。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要となる事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。
詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 5 重要な会計上の見積り及び判断」に記載しております。
(2)当年度の経営成績の分析
① 売上収益
アサヒグループの当年度の売上収益は、前期比12.3%増、2,750億3千2百万円増収の2兆5,111億8百万円となりました。日本においては、ビールの売上が増加した酒類事業を中心に各事業が増収となり、前期比6.8%増の1兆3,017億3千1百万円となりました。欧州においては、各国における飲食店向けの需要回復に加えて、グローバルブランドやノンアルコールビールの売上拡大や価格改定の効果などにより、前期比21.0%増の5,738億7千5百万円となりました。オセアニアにおいては、新型コロナウイルス感染拡大の影響はあったものの、ビールや炭酸飲料、スポーツ飲料を中心とした主力カテゴリーの売上拡大や為替変動の影響により、前期比16.6%増の5,831億6千7百万円となりました。東南アジアにおいては、一部の国において新型コロナウイルスの影響が継続したものの、マレーシアにおける主力ブランドの販売が好調に推移したことに加え、マレーシア以外の展開国における新商品効果、価格改定や為替変動の影響などにより、前期比21.1%増の516億8千万円となりました。その他においては、前期比47.0%増の87億6千4百万円となりました。
② 事業利益
当年度の事業利益は、前期比11.9%増、258億7千6百万円増益の2,438億1千7百万円となりました。日本においては、原材料関連やブランド投資の強化に伴う費用増加などの影響はあったものの、増収効果や各種コストの効率化などにより、前期比5.3%増の1,089億1千3百万円となりました。欧州においては、主に原材料やユーティリティなどの費用増加の影響があったものの、飲食店向けの需要回復に加え、ブランドポートフォリオのプレミアム化の進展などに伴う増収効果や為替変動の影響により、前期比0.7%増の760億5百万円となりました。オセアニアにおいては、原材料関連の費用増加の影響などはあったものの、統合シナジーの創出を中心としたコスト効率化や為替変動の影響もあり、前期比29.0%増の1,070億9千5百万円となりました。東南アジアにおいては、原材料関連の費用や輸送費の増加などの影響があったものの、固定費全般の効率化などを推進したことにより、前期比39.9%増の5億7千2百万円となりました。その他においては、前期比13.4%増の14億7百万円となりました。
③ 営業利益
営業利益は、事業利益の増益などにより、前期比2.4%増、51億4千8百万円増益の2,170億4千8百万円となりました。
④ 税引前利益
当年度の税引前利益は、営業利益の増益に加え、金融収益が前期比4.4%減、2億5千5百万円減少の54億9千8百万円となったことや、金融費用が前期比7.0%減、12億9千5百万円減少の172億2千1百万円となったことなどにより、前期比3.1%増、61億6千6百万円増益の2,059億9千2百万円となりました。
⑤ 親会社の所有者に帰属する当期利益
親会社の所有者に帰属する当期利益は、法人所得税費用の増加により、前期比1.3%減、19億4千4百万円減益の1,515億5千5百万円となりました。
また、基本的1株当たり利益は299.10円(前期302.92円)となり、親会社所有者帰属持分比率は42.7%(前期38.6%)となりました。
また、事業ポートフォリオ再構築など一時的な特殊要因を除いた親会社の所有者に帰属する当期利益を算出に用いた調整後基本的1株当たり利益は326.48円(前期302.92円)となりました。
(3)財政状態の分析
① 総資産
当年度の連結総資産は、為替相場の変動によるのれん及び無形資産を含む外貨建資産の増加等により、総資産は前年度末と比較して2,825億9千5百万円増加し、4兆8,303億4千4百万円となりました。
② 負債
負債は、原材料関連の価格上昇等に伴う営業債務及びその他の債務の増加や、為替相場の変動による外貨建負債の増加、社債及び借入金の減少等により、前年度末と比較して212億1百万円減少し、2兆7,673億9千9百万円となりました。
③ 資本
資本は、前年度末に比べ3,037億9千6百万円増加し、2兆629億4千5百万円となりました。これは、配当金支出により利益剰余金が減少したものの、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上により利益剰余金が増加したこと及び為替相場の変動により在外営業活動体の換算差額が増加したこと等によるものです。
この結果、親会社所有者帰属持分比率は42.7%となりました。
また、事業ポートフォリオ再構築や為替変動など一時的な特殊要因を除いた「親会社の所有者に帰属する当期利益」及び「親会社の所有者に帰属する持分合計」を算出に用いた調整後親会社所有者帰属持分当期利益率は11.1%(前期11.0%)となりました。
(4)資本の財源及び資金の流動性についての分析
① キャッシュ・フロー分析
キャッシュ・フローの状況につきましては、「(業績等の概要) (2)キャッシュ・フローの状況」に記載の通りであります。
また、キャッシュ・フロー指標のトレンドは、以下の通りであります。
前年度
当年度
親会社所有者帰属持分比率(%)
38.6
42.7
時価ベースの親会社所有者帰属
持分比率(%)
49.9
43.2
キャッシュ・フロー対有利子
負債比率(年)
5.1
6.1
インタレスト・カバレッジ・
レシオ(倍)
30.1
24.5
(注)親会社所有者帰属持分比率:親会社の所有者に帰属する持分/総資産
時価ベースの親会社所有者帰属持分比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
※ 各指標はいずれも連結ベースの財務数値により算出しております。
※ 株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
※ キャッシュ・フローは営業キャッシュ・フローを使用しております。
② 資金の調達
アサヒグループの資金の源泉は、主として営業活動からのキャッシュ・フローと金融機関からの借入、社債の発行からなります。当社は経営方針として、有利子負債残高の圧縮を基本として掲げておりますが、「事業基盤強化・効率化を目指した設備投資」及び「M&Aを含む戦略的事業投資」については資金需要に応じて金融債務を柔軟に活用することとしております。一方、運転資金需要については、短期借入金及びコマーシャル・ペーパーでまかなうことを基本としております。
③ 資金の流動性
当社及び主要な連結子会社はCMS(キャッシュマネジメントシステム)を導入しており、各社における余剰資金を当社へ集中し、一元管理を行うことにより、資金効率の向上と金融費用の極小化を図っております。
(5)戦略的現状と見通し
2023年度は、原材料・エネルギー価格の高騰やインフレの影響など、厳しい経営環境が続くことが想定されますが、『中長期経営方針』に基づいて、既存事業の持続的成長と新たな成長領域の拡大のほか、サステナビリティと経営の統合を軸としたコア戦略の一層の強化により、持続的な成長と企業価値向上を目指します。
日本においては、酒類、飲料、食品各事業で「強み」のある主力ブランドの価値向上を軸に成長戦略を推進するとともに、環境変化を捉えた新たな価値提案の強化に取り組みます。また、各事業の収益基盤の強化に加え、事業の枠を超えた日本全体でのシナジーの創出やサステナビリティへの取り組み強化により、持続的な成長基盤を構築していきます。
欧州においては、『アサヒスーパードライ』や『Peroni Nastro Azzurro』などのグローバルブランドの拡大展開を加速させるとともに、ローカルではブランドポートフォリオの競合優位を発揮し、プレミアム戦略の強化を推進していきます。また、サステナビリティの重点テーマである「環境」や「コミュニティ」などの取り組みを深化させることにより、持続可能な成長に向けた基盤を強化します。
オセアニアにおいては、酒類、飲料事業におけるプレミアム戦略の強化に加え、各事業の強みを融合したマルチビバレッジ戦略の推進や統合シナジーの創出などにより、収益基盤の更なる強化を図ります。また、健康やウェルネスを意識した新たな商品やサービスの提案など、サステナビリティを重視した取り組みを推進していきます。
東南アジアにおいては、主力ブランドへの選択と集中の加速や各販売チャネルとの関係強化などにより、マレーシアを中心に各展開国における事業ポートフォリオの再構築を図ります。また、環境や貧困などの社会課題に対する取り組みや人材育成などの強化を通じて、持続的な成長基盤の確立を推進していきます。
(6)経営者の問題認識と今後の方針について
経営者の問題認識と今後の方針につきましては、この文中に記載したほか、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の通りであります。
(7)経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「2 事業等のリスク」に記載の通りであります。
#C2502JP #アサヒグループHD #食料品セクター