【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
また、コア営業利益は売上総利益から販売費及び一般管理費を控除した利益であり、IFRSで定義されている指標ではありませんが、当社グループの経常的な事業業績を測る指標として有用な情報であると考えられるため、自主的に開示しております。
(1)経営成績の状況
当第3四半期連結累計期間(2022年1月1日~2022年9月30日)における当社グループをとりまく経営環境は、ウクライナ情勢などの悪化による地政学リスクの高まりを受け、資源価格の高騰や為替変動などの影響で、インフレーションの加速懸念が強まり、予断を許さない状況が続いております。
また、国・地域間で新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)への対応の違いを背景に、景気の回復にはばらつきがあるものの、活動規制の緩和により、総じて安定した経済成長が続く見込みです。
海外においては、タイやインド、インドネシアなどの主要参入各国でCOVID-19による景気の悪化からは持ち直しの動きがみられております。一方、ゼロコロナ政策を継続する中国では、主要都市を含む一部地域における一時的なロックダウンの影響により、景気の減速傾向が続いておりましたが、徐々に回復の兆しが見えております。そのような中、当社商品は生活必需品であることから安定供給に向けて取り組み、北米やインドネシアなどの地域において、新商品とリニューアル商品の上市による価値転嫁で、急激なコスト上昇への対応を進めてまいりました。
国内においても、景気の持ち直しの動きが続く中、高付加価値商品の需要を喚起するための新価値提案を継続的に実施しながら価値転嫁を進め、市場シェアの拡大に努めてまいりました。
このような経営環境の中、当社グループは、“世界中の全ての人々のために、快適と感動と喜びを与えるような、世界初・世界No.1の商品とサービスを提供しつづけます”の基本方針に基づき、独自の不織布加工・成形技術と消費者ニーズを捉えた商品の開発に努め、世界中の人々が平等で不自由なく、その人らしさを尊重し、やさしさで包み支え合う、心つながる豊かな社会である「共生社会」=Social Inclusionの実現に向けて取り組んでまいりました。
この結果、当第3四半期連結累計期間の業績は、売上高654,548百万円(前年同四半期比14.5%増)、コア営業利益91,662百万円(前年同四半期比5.9%減)、税引前四半期利益91,416百万円(前年同四半期比10.1%減)、四半期利益61,422百万円(前年同四半期比14.0%減)、親会社の所有者に帰属する四半期利益52,474百万円(前年同四半期比15.3%減)となりました。
セグメントの業績を示すと次のとおりであります。
①パーソナルケア
●ウェルネスケア関連商品
海外においては、日本以上のスピードで高齢化が進み、大人用排泄ケア用品の対象人口が多い中国では、現地のニーズに合った新商品の発売と、積極的なマーケティング投資により、大人用排泄ケア用品の認知拡大と普及促進に取り組んでまいりました。大人用排泄ケア用品の需要が高まっているタイ、インドネシア、ベトナム、マレーシアといった東南アジア地域では、商品ラインアップの拡充と、日本で確立したケアモデルの普及促進を図り、引き続き高い成長を実現いたしました。
高齢者人口の増加により拡大が続く国内市場においては、COVID-19禍の生活環境に慣れてきたことや、ワクチン接種が進み行動制限が緩和されたことなどもあり、市場は回復へ転じました。そのような中、中度のパンツ型紙おむつでは、足腰の負担を軽くする「骨盤サポートフィット」を機能強化するなどの価値向上に努め、安定的な成長を実現いたしました。
また、マスクの使用が日常的に定着したことで、安心・安全の面から日本メーカー製のマスクの需要が高まる中、『超快適』、『超立体』両ブランドの安定供給を進めてまいりました。
感染対策としてマスクが欠かせなくなった一方、口元や表情が見えず、コミュニケーションに不安を抱えている方に向けては、ウイルス飛沫を対策しながら、口元や顔の表情が視認できる『unicharm 顔がみえマスク』を発売し、全ての人々が平等で不自由なく暮らせる「共生社会」=Social Inclusionの実現に向けて取り組んでまいりました。
今後も市場成長の鈍化が予測されるため、新商品などの発売で市場シェアの拡大に努めてまいります。また、日本だけではなく、世界的にも同様に安心・安全の面からマスクの需要の高まりが見込まれることから、マスクの海外展開を強化し、さらなる成長に向けて取り組んでまいります。
●フェミニンケア関連商品
沿岸部の都市を中心に、販売エリアや取り扱い店舗数の拡大、eコマースにおける新プラットフォームの活用による販売強化に取り組んでいる中国においては、主要都市を含む一部地域で一時的にCOVID-19の拡大の影響によるロックダウンなどがあり、供給面で若干影響を受けましたが、安定供給に向けて取り組んだ結果、高付加価値商品であるショーツ型ナプキンを中心に、引き続き成長を実現いたしました。
タイ、インドネシア、ベトナムといった東南アジア地域においても、新コンセプトである、清涼感のあるつけ心地を実現したクールナプキンなどの高付加価値商品が好調に推移いたしました。また、中東では、現地の習慣を捉えたオリーブオイルを配合した新商品などの販売や、積極的なマーケティング投資により、サウジアラビア国内販売に加え、サウジアラビアから近隣中東諸国への輸出も進めた結果、安定的な成長を実現いたしました。
対象人口が減少傾向の国内においては、健康意識と安心志向が高まる中、女性のライフスタイルに合わせた高付加価値商品展開や、SNSなどを活用した消費者とのコミュニケーションでブランド価値の向上に努めた結果、好調を持続し、高い成長を実現いたしました。
●ベビーケア関連商品
COVID-19の拡大の影響で、市場の二極化が進んでいたタイにおいては、2018年に買収したDSG (Cayman) Ltd.とのシナジーを活かし、幅広いお客様のニーズに応えてまいりました。新興国のなかでも紙おむつの普及率が未だ低いインドでは、インド北部の工場再稼働と既存工場の生産増強、近隣諸国からの輸入でパンツ型紙おむつの普及促進を図りながら、販売エリアの拡大と市場シェアの回復に努めた結果、高い成長を実現いたしました。ロックダウンの影響や、少子化の進行、ローカル企業の台頭などによって様々な変化がみられる中国では、日本製需要が減退の中、収益性の高い中国製プレミアム商品へのシフトを加速させるために日本製プレミアム商品の在庫を調整してまいりました。その結果、売上高は伸び悩みましたが、eコマースチャネルやベビー専門店を中心に、高付加価値商品である中国製『ムーニー』ブランドの販売強化に取り組むなど、多様化する消費者ニーズに商品と販売チャネルの両面で応えながら収益性の改善に努めてまいりました。しかしながら、高収益商品へのシフトに関わるコスト増、資源価格高騰による製造原価や物流費などの増加により、減益となりました。
少子化が進み、市場が縮小傾向の国内においては、『ムーニー』や『マミーポコ』の2ブランドで、新たな付加価値を搭載した商品ラインアップで価値転嫁を進め、笑顔あふれる育児生活の実現に取り組んだ結果、安定的な成長を実現いたしました。
●Kireiケア関連商品
物理的な美しさや清潔さだけでなく、人の内面まで包含する美しさをあえて表音文字であるアルファベットで「Kirei」と表記することで、日本のみならず、全世界に広い概念と共通の表現として発信し、「すべての人々が安心・安全でKireiな生活が送れる環境を目指す」という思いを込めて、ウェルネスケア関連商品とベビーケア関連商品のワイプス、化粧用コットンを統合し、「Kireiケア関連商品」といたしました。
国内においては、ウェットティッシュ『シルコット』ブランドの安定供給と、市場シェアの拡大に努めた結果、安定的な成長を実現いたしました。今後は日本だけではなく世界的にも同様に衛生意識の高まりと使用の定着が見込まれることから、世界中の全ての人々が安心・安全でKireiな生活を送ることができる環境を目指してまいります。
この結果、パーソナルケアの売上高は560,165百万円(前年同四半期比13.7%増)、セグメント利益(コア営業利益)は79,212百万円(前年同四半期比8.1%減)となりました。
②ペットケア
国内においては、一昨年からのCOVID-19拡大の影響で在宅時間が増えたことなどによりペットとの接触機会が増えております。そのような中、新商品とリニューアル商品でラインアップを充実し、一部価値転嫁を進め、コスト上昇に対応いたしました。ペットフードにおいては、猫用では健康志向の高まりに応えた商品などで、消費者の満足度向上に努めてまいりました。また、犬用では犬種ごとの身体の特徴や年齢に合わせた商品や、新コンセプト商品である筋肉の健康を維持するカラダづくりフードなどの販売を強化してまいりました。ペットトイレタリーにおいては、犬用ペットシートや猫用システムトイレなどが堅調に推移した結果、安定的な成長を実現いたしました。
北米市場においても、COVID-19拡大の影響で、ペットの飼育頭数とペットとの接触機会が増える環境下、一部商品で昨今の急激なコスト上昇に対応した販売価格としましたが、日本の技術を搭載した新たなコンセプトの猫ウェットタイプ副食や、高品質な犬用トイレタリーシートなどの販売が好調に推移した結果、高い成長と収益性の改善を実現いたしました。
この結果、ペットケアの売上高は88,761百万円(前年同四半期比18.7%増)、セグメント利益(コア営業利益)は12,107百万円(前年同四半期比11.9%増)となりました。
③その他
不織布・吸収体の加工・成形技術を活かした業務用商品分野において、産業用資材を中心に販売を進めてまいりました。
この結果、その他の売上高は5,622百万円(前年同四半期比27.7%増)、セグメント利益(コア営業利益)は343百万円(前年同四半期比16.5%減)となりました。
(2)財政状態の状況
(資産)
当第3四半期連結会計期間末における資産合計は1,108,344百万円(前連結会計年度比12.2%増)となりました。主な増加は、棚卸資産38,073百万円、現金及び現金同等物35,417百万円、有形固定資産11,900百万円、無形資産10,135百万円、売上債権及びその他の債権8,742百万円、未収消費税等のその他の流動資産7,591百万円によるものです。
(負債)
当第3四半期連結会計期間末における負債合計は383,347百万円(前連結会計年度比8.8%増)となりました。主な増加は、仕入債務及びその他の債務16,719百万円、借入金16,593百万円によるものです。
(資本)
当第3四半期連結会計期間末における資本合計は724,997百万円(前連結会計年度比14.1%増)となりました。主な増加は、在外営業活動体の為替換算差額等のその他の資本の構成要素58,065百万円、親会社の所有者に帰属する四半期利益52,474百万円、主な減少は、親会社の所有者への配当金の支払い22,059百万円によるものです。
(親会社所有者帰属持分比率)
当第3四半期連結会計期間末における親会社所有者帰属持分比率は56.9%となりました。
(3)キャッシュ・フローの状況
当第3四半期連結会計期間末における現金及び現金同等物の残高は222,965百万円となり、前連結会計年度末に比べ35,417百万円増加しております。当第3四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により得られたキャッシュ・フローは、67,665百万円の収入(前年同四半期は、80,369百万円の収入)となりました。主な収入は、税引前四半期利益、主な支出は、法人所得税の支払によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用したキャッシュ・フローは、18,908百万円の支出(前年同四半期は、53,123百万円の支出)となりました。主な収入は、定期預金の払戻による収入、純損益を通じて公正価値で測定する金融資産の売却及び償還による収入、主な支出は、定期預金の預入による支出、有形固定資産及び無形資産の取得による支出、純損益を通じて公正価値で測定する金融資産の取得による支出によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により使用したキャッシュ・フローは、27,826百万円の支出(前年同四半期は、44,277百万円の支出)となりました。主な収入は、短期借入金の純増額、主な支出は、親会社の所有者への配当金支払額、自己株式の取得による支出によるものです。
(4)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。
(5)経営方針・経営戦略等
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(6)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更及び新たに生じた課題はありません。
(7)財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針
当第3四半期連結累計期間において、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針について重要な変更はありません。
(8)研究開発活動
当第3四半期連結累計期間の研究開発費の総額は、5,999百万円であります。
なお、当第3四半期連結累計期間において、研究開発活動の状況に重要な変更はありません。