【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績の状況
当第3四半期連結累計期間の国内の主な石油製品需要は、行動規制の解除やアフターコロナに向けた経済活動の活発化などにより、主燃料及び航空機向けを中心に回復しました。
原油価格は、ロシアによるウクライナ侵攻以降、需給が逼迫する方向で推移し、また各国の行動規制緩和による需要回復から上昇基調で推移しました。夏以降は世界的なインフレに伴う景気減速懸念による需要減や、中国における新型コロナウイルス感染症再拡大を受けた都市封鎖などの措置により、石油需要の伸びが鈍化するとの懸念などから下落基調で推移しました。この結果、ドバイ原油価格の4~12月平均は前年同期比24.3ドル/バレル上昇の96.6ドル/バレルとなりました。
ドル円の為替相場は、米国の連続利上げに対し日本は金融緩和政策を維持し、日米の金融政策の差を背景に10月には150円を超える水準まで円安が進行しましたが、年末にかけて米国連邦準備理事会による利上げペースの鈍化や、12月に開催された日銀決定会合での長短金利操作の一部運用見直しの決定により、一時130円台まで円高が進行しました。この結果、対ドル円相場の4~12月平均は1ドル136.5円となりました。
(原油価格、為替レートの状況)
前第3四半期
連結累計期間
当第3四半期
連結累計期間
増減
ドバイ原油(ドル/バレル)
72.3
96.6
+24.3
+33.6%
為替レート(円/ドル)
111.1
136.5
+25.4
+22.9%
当社グループの当第3四半期連結累計期間の売上高は、原油価格の上昇や円安影響などにより、7兆2,113億円(前年同期比+55.2%)となりました。
営業利益は、燃料油セグメントにおける原油価格の下落に伴うマイナスのタイムラグ影響の一方、資源セグメントにおける石炭価格上昇などにより、2,989億円(前年同期比+7.1%)となりました。
営業外損益は、持分法投資損益においてノルウェー子会社の持分法適用会社への変更による影響及び為替差益などにより、380億円(前年同期比+58.7%)の利益となりました。その結果、経常利益は3,368億円(前年同期比+11.2%)となりました。
特別損益は、西部石油株式会社の連結子会社化に伴い段階取得に係る差損が発生した一方、国内子会社の固定資産売却益などにより、168億円(前年同期比+232億円)の利益となりました。
法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額を合わせた税金費用は、税金等調整前四半期純利益の増加により1,063億円(前年同期比+6.6%)となりました。
以上の結果、親会社株主に帰属する四半期純利益は2,496億円(前年同期比+24.9%)となりました。
当第3四半期連結累計期間におけるセグメント別の経営成績は以下のとおりです。
当社グループの決算期は、一部を除き、海外子会社が12月、国内子会社が3月であるため、当第3四半期連結累計期間の業績については、海外子会社は2022年1月~9月期、国内子会社は2022年4月~12月期について記載しています。
セグメント別売上高
(単位:億円)
前第3四半期
当第3四半期
増減
連結累計期間
連結累計期間
増減額
増減率
燃料油
36,048
56,685
+20,637
+57.3%
基礎化学品
3,963
5,140
+1,177
+29.7%
高機能材
3,027
3,812
+785
+25.9%
電力・再生可能エネルギー
924
1,480
+557
+60.3%
資源
2,468
4,955
+2,487
+100.8%
その他
43
41
△2
△5.7%
合計
46,472
72,113
+25,641
+55.2%
セグメント別利益又は損失(△)(営業損益+持分法投資損益)
(単位:億円)
前第3四半期
当第3四半期
増減
連結累計期間
連結累計期間
増減額
増減率
燃料油
(在庫評価影響除き)
2,368
(737)
1,397
(12)
△971
(△725)
△41.0%
(△98.4%)
基礎化学品
76
114
+38
+49.5%
高機能材
142
164
+21
+15.1%
電力・再生可能エネルギー
△76
11
+87
―
資源
564
1,777
+1,214
+215.2%
その他
7
7
△1
△7.7%
調整額
△109
△232
△123
―
合計
(在庫評価影響除き)
2,973
(1,342)
3,238
(1,854)
+265
(+512)
+8.9%
(+38.1%)
[燃料油セグメント]
燃料油セグメントの売上高は、原油価格の上昇及び円安影響などにより、5兆6,685億円(前年同期比+57.3%)となりました。セグメント損益は、製品輸出マージンが拡大する一方、ナフサ、LPGなどの主要製品以外のマージン悪化や自家燃コスト増加及び原油価格の下落に伴うタイムラグなどの減少要因により、1,397億円(前年同期比△41.0%)となりました。
[基礎化学品セグメント]
基礎化学品セグメントの売上高は、ナフサ価格が上昇したことなどにより5,140億円(前年同期比+29.7%)となりました。セグメント損益は、パラキシレンをはじめとした製品マージンの改善などにより114億円(前年同期比+49.5%)となりました。
[高機能材セグメント]
高機能材セグメントの売上高は、3,812億円(前年同期比+25.9%)となり、セグメント損益は、機能舗装材事業においてアスファルトの原料となる重油留分価格が低下したことなどにより164億円(前年同期比+15.1%)となりました。
[電力・再生可能エネルギーセグメント]
電力・再生可能エネルギーセグメントの売上高は、1,480億円(前年同期比+60.3%)となりました。セグメント損益は、電力事業における自社電源での供給・販売を基本とした取り組みによる収益改善などにより11億円(前年同期比+87億円)となりました。
[資源セグメント]
(石油・天然ガス開発事業・地熱事業)
石油・天然ガス開発事業は、ノルウェー子会社の持分法適用会社への変更などの影響により、売上高は339億円(前年同期比△52.1%)となりました。セグメント損益は、ベトナムガス田の生産数量増により増益となる一方、ノルウェー子会社の持分法適用会社化による減益などにより、264億円(前年同期比△24.2%)となりました。
(石炭事業・その他事業)
石炭事業・その他事業の売上高は、石炭価格の上昇などにより、4,616億円(前年同期比+162.1%)となり、セグメント損益は、1,513億円(前年同期比+603.6%)となりました。
以上の結果、資源セグメント合計の売上高は、4,955億円(前年同期比+100.8%)、セグメント損益は1,777億円(前年同期比+215.2%)となりました。
[その他セグメント]
その他セグメントの売上高は、41億円(前年同期比△5.7%)となり、セグメント損益は7億円(前年同期比△7.7%)となりました。
(2) 財政状態の分析
要約連結貸借対照表
(単位:億円)
前連結会計年度
当第3四半期
連結会計期間
増減
流動資産
23,681
29,799
+6,118
固定資産
22,331
22,273
△58
資産合計
46,012
52,072
+6,060
流動負債
20,613
24,008
+3,395
固定負債
11,034
11,466
+432
負債合計
31,647
35,474
+3,827
純資産合計
14,365
16,599
+2,233
負債純資産合計
46,012
52,072
+6,060
①資産の部
資産合計は、原油価格の上昇及び円安影響などによる棚卸資産の増加や年末の休日影響による売掛金の増加などにより、5兆2,072億円(前期末比+6,060億円)となりました。
②負債の部
負債合計は、運転資金需要に伴う短期借入金の増加及び未払法人税等の増加などにより、3兆5,474億円(前期末比+3,827億円)となりました。
③純資産の部
純資産合計は、親会社株主に帰属する四半期純利益2,496億円の計上や円安により為替換算調整勘定が527億円増加した一方、配当金の支払い506億円などにより、1兆6,599億円(前期末比+2,233億円)となりました。
以上の結果、自己資本比率は前期末の30.7%から31.6%へ0.9ポイント改善しました。またネットD/Eレシオは1.0(前期末:0.9)となりました。
(3) 経営戦略等
①2050年ビジョンと方向性
当社は、2023~2025年度を対象とした新たな中期経営計画(以下、本中計)策定にあたっては、2050年のカーボンニュートラル・循環型社会の実現に向けて、さらにその先のエネルギーの未来と当社のありたい姿について「長い時間軸」で捉える必要があると判断し、今回、新たに2050年ビジョンを策定致しました。2030年に向けて「責任ある変革者」として進める打ち手を、2040年、2050年と着実に具現化し、「社会実装」していくことを「変革をカタチに」と表現しました。
2050 年は、世界的なカーボンニュートラルの潮流が加速していく中、エネルギーシステムや社会構造が大きく変化している可能性が高いと考えます。その過程においては、非連続的な技術革新など多くの課題が生じることが想定されるとともに、新たな技術を社会に受け入れられる形にして届ける担い手が求められます。
当社は、このような社会課題や環境変化に対し、エネルギーの安定供給で培ってきた知見や、地域社会との信頼関係をベースにしながら、社会実装を推進していくことで「人びとの暮らしを支える責任」と「未来の地球環境を守る責任」を果たしていきます。
ア.2050年の3つの事業領域および主力事業
当社は本中計において新たに3つの事業領域を定義し、それぞれの領域の社会実装を進めることで事業ポートフォリオ転換を推進します。
イ.2050年カーボンニュートラルへの道筋
当社は、2050 年までに、自社操業に伴う排出量(Scope1+2)のカーボンニュートラルを実現します。そのための中間目標として、2030年時点のGHG排出削減量の目標を2013年比約730 万トン、46%の削減を実現することで、2050 年の当社のカーボンニュートラル実現への道筋を具体化していきます。
加えて、サプライチェーン全体での排出量(Scope3)においても、産業活動・一般消費者向けのソリューションを提供することで、カーボンニュートラルを目指します。
②2030年に向けた経営目標と基本方針
2030年は、既存のエネルギーと素材の安定供給責務を果たしながら、2050年カーボンニュートラルに向けたトランジションの一部が具現化する時期(転換期)と位置付け、更なる利益成長や資本効率性を追求しながら、化石燃料収益比率については50%以下を目標とします。
ア.2030年度経営目標
イ.2030年基本方針
2030 年ビジョンである「責任ある変革者」の実現に向けて、事業構造改革投資と人的資本投資の両輪により事業ポートフォリオの転換を進めます。
③中期経営計画(2023~2025年度)
本中計については、2030 年ビジョン「責任ある変革者」に向けた実行計画と位置付けており、下記の目標の達成に向けて既存事業の収益最大化、新規収益の創出に取り組みます。
ア.2025年度 経営計画
イ.在庫影響除き営業+持分法投資損益(セグメント利益)
資源セグメントにおいて、2023年度以降の石炭価格の正常化から減益を見込む一方、燃料油セグメントをはじめ既存事業の収益の最大化に取り組むことにより、2025年度のセグメント利益は、2022年度見通し(前提補正後)対比300億円増益の1,900億円を目指します。
※上記2022年度見通しは、2022年11月16日に開示した本中計報告時点の数値となります。
ウ.投資計画(3カ年)
本中計期間は、当社の事業ポートフォリオ転換を着実に推進するため、既存事業投資とは別に事業構造改革投資に2,900億円を配分します。
エ.株主還元方針
現中期経営計画期間から引き続き、2023~2025年度の3カ年累計の在庫影響除き当期純利益に対し、総還元性向50%以上の株主還元を実施します。このうち配当は、1株当たり120円の安定配当を基本とする方針です。
オ.キャッシュフローの配分(3カ年)
2023~2025年度では当期利益の他、資産売却等により9,100億円のキャッシュを確保します。既存事業投資は償却等の範囲内を目途に実行し、残る5,100億円のフリーキャッシュフロー(FCF)は、事業構造改革投資、株主還元に充当します。
(4) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当第3四半期連結累計期間における当社グループの資金需要及び財務政策について、前連結会計年度から重要な変更はありません。
(5) 事業上及び財務上の対処すべき課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが対処すべき課題について重要な変更はありません。
なお、当社は財務及び事業の方針を支配する者の在り方に関する基本方針を定めており、その内容等(会社法施行規則第118条第3号に掲げる事項)は次のとおりです。 当社は、当社グループの企業価値・株主共同の利益の確保・向上のため、安定的かつ持続的成長の実現に努めています。 したがって、当社株式を大量に取得しようとする者の出現等により、当社グループの企業価値・株主共同の利益が毀損されるおそれがある場合には、法令・定款で許容される範囲内において適切な措置を講じることを基本方針とします。
(6) 研究開発活動
当第3四半期連結累計期間における当社グループの研究開発活動の金額は180億円です。 なお、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
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