【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績の状況
当連結会計年度(2022年1月1日から2022年12月31日)における世界経済は、ロシアによるウクライナ侵攻により大きな影響を受けました。特にロシアは、天然ガスなどの資源の主要な輸出国であり、供給体制が不安定になったことからエネルギー価格が高騰しました。米国においては新型コロナウイルスの感染収束に伴い、経済活動が急回復したことによって生じたインフレを抑制するため、金融引き締め政策が実施されたことから、急速な米ドル高が進行しました。また、これまで毎年着実な成長を遂げ、今や世界経済を牽引する中国では、長期にわたる厳しいゼロコロナ政策の継続により、景気後退の顕在化など混乱が生じており、先行きが極めて不透明な状況となりました。
我が国においては、輸入に多くを依存しているため日本円が歴史的な安値水準となった影響を受け、資源・エネルギー価格が上昇し、諸物価、特に電気料金が高騰しました。
このような状況のなか、主力の合金鉄事業において販売価格が高いレベルで推移したことに加え、為替が前年同期と比べ円安傾向で推移したため、当連結会計年度の売上高は、79,341百万円(前年同期比20.3%増)となりました。利益面では、原燃料価格の上昇という問題に直面したものの、これまでの構造改革の成果や安定操業の継続、コスト削減といった努力の積み重ねが大きく寄与することとなり、営業利益は8,815百万円(同4.5%増)、経常利益は10,367百万円(同50.9%増)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は7,949百万円(同2.3%増)と新日本電工グループが発足した2015年以来最高の利益水準となりました。
セグメントの経営成績は、次のとおりであります。
(合金鉄事業)
当連結会計年度における世界の粗鋼生産量は、世界的な金融引き締め政策等を背景とした世界経済の下振れリスクや、欧州でのエネルギー価格高騰による悪影響などにより下押し圧力が強くなっていた一方で、中国では政府の景気支援策効果により個人消費に底打ちの動きが見られたものの、18億3,100万トンと前年と比べ4.3%減少しました。また、国内粗鋼生産量は、大企業の設備投資に回復の動きがあったものの、自動車業界の供給制約が解消していないことなどから8,924万トンとなり、前年と比べ7.4%減少しました。
こうした状況のなか、主力製品である高炭素フェロマンガンの製品市況は、世界的な需給緩和から足元では下落基調にありますが、販売価格は高値推移していた国際市況が反映されていたことに加え、為替も前年同期と比べて大幅な円安傾向で推移したことにより上昇しました。一方、製造原価につきましては、マンガン鉱石・コークス・電力等の価格高騰により上昇しました。
また、海外持分法適用会社においても、製品市況の上昇により業績は堅調に推移しました。
以上の結果、合金鉄事業の業績は、外部環境に恵まれた部分に加え、これまでの施策(構造改革・安定操業の継続・コスト削減)が効果を発揮したこともあり、売上高・経常利益ともに前年同期を上回りました。
(機能材料事業)
酸化ほう素の販売は、ディスプレイ用ガラス基板向け販売が好調であったため前年同期と比べて増加しました。一方、酸化ジルコニウム・水素吸蔵合金・リチウムイオン電池用正極材などは、電動車の一部車種の減産により、販売は減少しました。
以上の結果、機能材料事業の業績は、売上高は前年同期を上回ったものの、収益改善を上回る電力コストの上昇に加え、能力増強準備コストが発生したこともあり、経常利益は前年同期を下回りました。
(環境事業)
環境システム事業につきましては、イオン交換樹脂塔の再生需要が堅調に推移したことから、売上高・経常利益ともに前年同期並みで推移しました。
中央電気工業㈱の焼却灰溶融固化処理事業につきましては、焼却灰4号溶融炉(EM4)が稼働を開始したことから処理量が増加し、売上高は前年同期を上回りました。一方、収益改善を上回る電力コストの上昇に加え、焼却灰4号溶融炉(EM4)立ち上げ準備コストが発生したこともあり、経常利益は前年同期を下回りました。
以上の結果、環境事業の業績は、売上高は前年同期を上回ったものの、経常利益は前年同期を下回りました。
(電力事業)
再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)を利用した売電事業として、2ヶ所の発電所が順調に稼働し、気象条件にも恵まれたため、年間売電量は、前年同期より増加しました。
以上の結果、電力事業の業績は、売上高・経常利益ともに前年同期を上回りました。
また、当連結会計年度におけるセグメントの売上高及び経常利益は次のとおりです。
(単位:百万円、%)
区分
第122期(前連結会計年度)
(2021.1.1~2021.12.31)
第123期(当連結会計年度)
(2022.1.1~2022.12.31)
増減率
売上高
経常利益
売上高
経常利益
売上高
経常利益
金 額
構成比
金 額
構成比
金 額
構成比
金 額
構成比
合金鉄事業
41,006
62.2
4,309
62.7
58,351
73.5
9,072
87.5
42.3
110.5
機能材料事業
11,123
16.9
1,078
15.7
11,291
14.2
323
3.1
1.5
△70.0
環境事業
5,681
8.6
807
11.8
5,905
7.4
253
2.4
3.9
△68.6
電力事業
1,455
2.2
403
5.9
1,667
2.1
531
5.1
14.6
31.8
その他
6,711
10.2
270
3.9
2,124
2.7
186
1.8
△68.3
△31.1
合計
65,978
100.0
6,870
100.0
79,341
100.0
10,367
100.0
20.3
50.9
(注) 報告セグメントごとの業績をより適切に評価するため、当連結会計年度より共通費の配賦方法を変更しております。そのため、前連結会計年度のセグメント情報は、変更後の事業セグメントの利益又は損失の測定方法に基づいて作成したものを開示しております。
②キャッシュ・フローの状況
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、6,280百万円の収入となりました(前連結会計年度
は5,246百万円の収入)。
主な増加要因は、税金等調整前当期純利益10,415百万円、売上債権の減少による増加7,719百万円です。
主な減少要因は、棚卸資産の増加による減少10,571百万円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、4,592百万円の支出となりました(前連結会計年度
は2,211百万円の支出)。
主な要因は、有形及び無形固定資産の取得による支出4,543百万円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、2,680百万円の支出となりました(前連結会計年度は
2,920百万円の支出)。
主な要因は、短期借入金の増加6,000百万円、長期借入金の返済による支出による減少2,558百万円、自己株式の取得による支出による減少3,000百万円、配当金の支払額2,937百万円であります。
以上の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ868百万円減少し8,895百万円となりました。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
セグメントの名称
生産高(百万円)
前年同期比(%)
合金鉄事業
46,622
124.7
機能材料事業
11,253
117.6
環境事業
5,559
104.2
電力事業
1,667
114.6
その他
1,368
88.9
合計
66,472
120.2
b.受注実績
受注生産は行っておりません。
c.販売実績
セグメントの名称
販売高(百万円)
前年同期比(%)
合金鉄事業
58,351
142.3
機能材料事業
11,291
101.5
環境事業
5,905
103.9
電力事業
1,667
114.6
その他
2,124
31.7
合計
79,341
120.3
(注) 1 当連結会計年度において、販売実績に著しい変動がありました。これは合金鉄事業において、高値推移していた国際市況が反映されていたこと及び、為替が大幅な円安傾向で推移したことによる販売価格の上昇によるためであります。
2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相 手 先
前連結会計年度
(自 2021年1月1日
至 2021年12月31日)
当連結会計年度
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
金額(百万円)
割合(%)
金額(百万円)
割合(%)
日本製鉄㈱
31,954
48.4
48,556
61.2
(2)経営者の視点による経営成績等の状況の分析・検討内容
経営者等の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、重要となる会計方針については、「第5経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。また、当社グループが用いた会計上の見積りのうち重要なものについては、「第5経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末と比べ9,055百万円増加し104,943百万円となりました。流動資産は、棚卸資産などの増加により、前連結会計年度末と比べ3,485百万円増加し56,940百万円、固定資産は機械装置及び運搬具などの増加により、前連結会計年度末と比べ5,569百万円増加し48,003百万円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は、短期借入金、支払手形及び買掛金などの増加により、前連結会計年度末と比べ4,155百万円増加し35,718百万円となりました。なお、有利子負債(短期借入金、一年内返済予定の長期借入金、リース債務(流動負債)、長期借入金、リース債務(固定負債))は3,292百万円増加し21,052百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ4,899百万円増加し69,225百万円となりました。これは主に、利益剰余金の増加によるものです。
b.経営成績
当社グループの当連結会計年度の経営成績につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載しております。
③経営成績に重要な影響を与える要因
「2事業等のリスク」に記載しております。
④資本の財源及び資金の流動性
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料及び貯蔵品の仕入や製造費、販売費及び一般管理費の営業費用であります。
投資を目的とした資金需要は、設備投資等によるものであります。
短期運転資金は、自己資金、売掛債権のファクタリング及び金融機関からの短期借入などによる調達を基本としております。
設備投資につきましては、自己資金及び金融機関からの長期借入などによる調達を基本としております。