【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績の分析 [事業活動の取り組み状況]グローバルでのデジタルトランスフォーメーション等の加速や、ニーズの多様化・高度化に対応するため、グローバル市場でビジネス拡大を図るとともに、市場の変化に対応したデジタルオファリング、システムインテグレーション等の多様なITサービスの拡大と安定的な提供に取り組みました。具体的な取り組みは次のとおりです。
<国内初の共同利用型勘定系システム向け「統合バンキングクラウド」を検討開始>当社は、2022年11月より金融機関に求められる高い信頼性を本クラウド上で確保し、安心・安全・安価に永続的なサービス提供をめざす「統合バンキングクラウド」の提供に向けた検討を開始しました。統合バンキングクラウドは、高度な信頼性が求められるバンキングシステム専用の国産の超高SLAクラウド(注1)です。データセンタ・ハードウエア・ミドルウエアを集約し、当社がワンストップで提供することにより、効率的な運用や金融機関の管理負担の軽減へ寄与し、各金融機関は勘定系システム以外の競争領域にリソースを集中させ、デジタルトランスフォーメーション対応力を高めることが可能となります。当社は、提供する共同利用型勘定系システムを段階的に本クラウドに搭載するために、まずは2028年頃を予定している地銀共同センター(注2)の勘定系システム更改に向け、統合バンキングクラウドの適用範囲や実現内容の検討を進めます。併せて、MEJAR(注3)等他システムへの展開、他業態への適用拡大も検討していきます。当社は、推進する「OSA」(注4)のコンセプトに基づき、金融機関のビジネスパートナーとして、顧客体験価値の向上に向けたデジタルトランスフォーメーションの加速に貢献していきます。
<キャッシュレスサービスへの取り組み>当社は、キャッシュレスサービスの継続的な向上を図り、日本のキャッシュレス社会の進展に貢献するため下記の取り組みを実施していきます。・「CAFIS®(注5)」においては2023年1月より少額決済向け料金を、決済金額あたり0.3%から0.15%に引き下げ、少額決済向け料金の上限金額を1,000円以下から2,000円以下に拡大します。さらに同年12月よりCAFIS®処理料金をトランザクション単位から購買取引単位に改定します。・金融機関及び資金移動業者(以下:事業者)が、新たな決済システム「ことら(注6)」の対応アプリを開発する際に必要となる機能を一括で提供する、「ことらWebViewサービス(注7)」を2022年11月より開始しました。また、金融機関に提供する個人向けバンキングアプリサービス「My Pallete®(注8)」を「ことらWebViewサービス」に対応させ、金融機関の「ことら」対応をサポートします。
<企業のデータドリブン経営を支援するコンサルティングサービスを提供開始>当社は、プロセス指向データドリブン経営を実現・支援するコンサルティングサービスを2022年10月より提供開始しました。業務実行管理(Celonis EMS)(注9)のプラットフォームを提供するCelonis社を戦略的パートナーとして契約締結し、両社で企業の課題解決を支援します。当社は、この契約締結を中期経営計画で掲げる、事業成長に向けた戦略投資に位置付けており、新規に設立されたテクノロジーコンサルティング&ソリューション分野にて提供します。本サービスは、従来の売上や仕入といった作業結果のデータに加え、例えば購買申請、価格変更、承認などの部門や担当者を横断する一連の作業(以下:業務オペレーション)過程を記録したデータを扱います。自動的に業務フローを可視化することで、従来難しかった業務オペレーションのボトルネック把握が容易になり、当該業務の見直しや、RPAによる自動化、さらにはAI適用による意思決定・判断の高度化・迅速化などの継続的な業務改善を支援します。当社は、2025年度までにCelonis関連のスペシャリストを500名体制とし、関連ソリューションの導入も含めて500億円の売上をめざします。当社は、本サービスを通じてプロセス指向データドリブン経営実現に向けたビジネス拡大を目標としています。
<海外事業統合によるシナジー案件の創出>当社は、DXが加速していく中で求められるサービスをトータルに提供し、複雑化・多様化するニーズにグローバルレベルで対応するため2022年10月に日本電信電話㈱と共に、㈱NTT DATA, Inc.(以下:NTT DATA, Inc.)を設立し、NTT Ltd.の海外事業を統合しました。NTT DATA, Inc. は、当社グループの海外事業のつくる力とNTT Ltd.のつなぐ力を掛け合わせ、クロスセルによるビジネス拡大の案件を獲得しています。・NTT DATA Business Solutionsは、NTT Ltd.と共に大手家電メーカーのプラットフォームをSAP S/4HANA(注10)へ移行するプロジェクトを受注しました。
本プロジェクトでは、NTT DATA Business SolutionsはSAP S/4HANAへのアプリケーションの移行と、ビジネスプロセスの最適化を実施し、NTT Ltd.はSAP環境によるマイクロソフトアジュールインフラと、環境接続のためのネットワークを提供します。
本件では、これまでのSAPアプリケーション領域での実績に加えて、NTT DATA, Inc.のグローバルにおけるカバレッジ、ネットワーク・インフラ・アプリケーション等、サービスをトータルに提供できることを評価いただき受注に至りました。
今後NTT DATA, Inc.は、実案件を通して世界中のお客様とその業界に対する一元的な理解を深め、ブランドをより信頼されるものにすることで、市場競争力を強化し、企業価値の向上を実現します。
(注1)超高SLA(Service Level Agreement)クラウドSLAとは提供サービスの品質保証のレベル(定義、範囲、内容、達成目標等)を示すものです。
(注2)地銀共同センター当社が構築・運営する、地方銀行・第二地方銀行向け基幹系共同センターです。
(注3)MEJAR(Most Efficient Joint Advanced Regional banking-system)当社が構築・銀行が主体で運営する、地方銀行・第二地方銀行向け基幹系共同センターです。参加行は以下のとおりです。(利用開始及び銀行コード順)㈱横浜銀行、㈱北海道銀行、㈱北陸銀行、㈱七十七銀行、㈱東日本銀行
(注4)OSA(Open Service Architecture™)ポストコロナに求められる新しい金融ITの姿を具体化した標準アーキテクチャーです。
(注5)CAFIS®日本国内における当社の登録商標です。当社が1984年にクレジットカードの与信中継の共同利用型ネットワークとしてサービス開始した日本最大級のキャッシュレス決済総合プラットフォームです。その後も次々現れる、デビットカード、電子マネー、非接触ICカード決済、QRコード決済等多様な決済手段や、インバウンド向け海外ローカル決済等への対応を迅速に行い、38年にわたる実績と信頼性をバックグラウンドに、日本のキャッシュレス推進を支援してきました。CAFISの詳細については以下のCAFIS公式サイトをご確認ください。https://solution.cafis.jp/
(注6)ことら㈱ことらが2022年10月より提供を開始した、10万円以下の多頻度小口決済のための新たな決済システムです。㈱ことらとは㈱みずほ銀行、㈱三菱UFJ銀行、㈱三井住友銀行、㈱りそな銀行、㈱埼玉りそな銀行による多頻度小口決済のための新たな決済システムの企画、運営をおこなう合弁会社です。「ことら送金」の詳細については以下の㈱ことら公式サイトをご確認ください。https://www.cotra.ne.jp/p2pservice/
(注7)ことらWebViewサービス事業者は、この「ことら」に対応した送金サービスを提供する際、個別に送金画面や「ことら」と接続するため機能を持つアプリを開発する必要があります。本サービスは、「ことら」対応に必要なアプリ機能をあらかじめ用意することで、事業者のアプリ提供にかかる負担を大幅に削減します。
(注8)My Pallete日本国内における当社の登録商標です。本サービスは、コミュニティークラウドサービス「OpenCanvas®」に構築し、強固なセキュリティ、高い運用・保守性を実現しています。OpenCanvasの詳細については以下のOpenCanvas公式サイトをご確認ください。https://portal.opencanvas.ne.jp/
(注9)Celonis EMS(Execution Management System)プロセスマイニング技術、及び業務アプリケーションとの業務自動化機能を搭載しています。
(注10)SAP S/4HANA2015年にリリースされたSAP社のインメモリデータベース 「SAP HANA」を標準プラットフォームとする第4世代のERP製品です。
[連結業績及び各セグメントの取り組み方針・業績] 当第3四半期連結累計期間における業績につきましては、売上高は、海外事業統合に伴う連結拡大影響に加え、全セグメントにおける規模拡大及び為替影響により増収となりました。営業利益は、全社戦略投資の増加及び第2四半期に計上した不採算案件による損失等はあるものの、連結拡大影響に加え、増収等により増益となりました。
・売上高
2,406,108百万円
(前年同四半期比
30.2%増
)
・営業利益
183,467百万円
(同
9.8%増
)
・税引前四半期利益
173,082百万円
(同
2.3%増
)
・当社株主に帰属する四半期利益
105,705百万円
(同
4.1%減
)
セグメント別の取り組み方針及び業績は次のとおりです。
(公共・社会基盤)デジタル庁設置などを契機としたデジタル改革や構造改革を伴うデジタル社会実現に向けた取り組みが加速する中、当社グループは政府・インフラ企業の基幹業務への先進技術適用・付加価値提案による『顧客ビジネス深化』を実現するとともに、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」に沿った利用者目線での『社会システム創出』により事業拡大をめざします。
当第3四半期連結累計期間の業績は次のとおりです。・売上高は、テレコム・ユーティリティ及び中央府省向けサービスの規模拡大等により、423,481百万円(前年同四半期比4.2%増)となりました。・営業利益は、増収による増益はあるものの、第2四半期に計上した不採算案件の損失等により、37,921百万円(同14.1%減)となりました。
(金融)社会のデジタル化の要請を受け、金融機関と非金融事業者が業界の枠を超えて相互連携を加速し、社会課題を解決する新たな金融サービスが次々と登場しています。金融インフラの安全性が改めて注目される中、当社は持続可能な社会の実現に向けて、安心・安全で高品質な金融インフラを支え続けるとともに、公共・社会基盤、法人分野組織等と連携して、業界を超えてお客様とともに社会課題の解決を促進する新たな金融サービスの拡大をめざします。
当第3四半期連結累計期間の業績は次のとおりです。・売上高は、大手金融機関向けサービスの規模拡大等により、482,164百万円(前年同四半期比3.6%増)となりました。・営業利益は、増収等により、50,595百万円(同14.9%増)となりました。
(法人)デジタル化が加速する事業環境において、インダストリー・テクノロジーの未来予測からお客様の経営課題・戦略を提示し、先進テクノロジーやグローバルソリューションを活用した最適な価値提供により、お客様のビジネス変革、サービス創出をともに実現します。
当第3四半期連結累計期間の業績は次のとおりです。・売上高は、製造業、流通・サービス業向け案件及びペイメントサービスの規模拡大等により、379,984百万円(前年同四半期比12.1%増)となりました。・営業利益は、増収等により、41,609百万円(同14.9%増)となりました。
(海外)コンサルティング及びデジタル領域を中心としたオファリングの拡充、既存ビジネス領域での自動化促進等による収益性向上、デジタル人財の拡充及び育成等に加え、さらに複雑化・多様化するお客様のデジタルニーズに対応するため、インフラ・Connectivityの強みを掛け合わせることで、グローバルレベルでトータルにサービスを提供し、海外事業の競争力をいっそう強化していきます。
当第3四半期連結累計期間の業績は次のとおりです。・売上高は、NTT Ltd.の連結拡大影響、為替影響及び欧州での規模拡大等により、1,265,276百万円(前年同四半期比66.3%増)となりました。・営業利益は、NTT Ltd.の連結拡大影響及び増収等により、52,487百万円(同112.8%増)となりました。
(2) 財政状態の分析当第3四半期連結会計期間末の資産は、海外事業統合に伴う規模拡大により、主に有形固定資産及び無形資産が増加した結果、5,849,001百万円と前期末に比べ2,764,488百万円の増加となりました。負債も、有利子負債の増加等により、3,532,086百万円と前期末に比べ1,775,841百万円の増加となりました。
(3) キャッシュ・フローの状況の分析
営業活動によるキャッシュ・フローは、四半期利益114,533百万円、減価償却費及び償却費190,606百万円の収入等があるものの、法人税等の支出96,509百万円、契約資産の増減39,270百万円の支出等により201,546百万円の収入(対前年同四半期比33,433百万円収入減少)となりました。一方、投資活動によるキャッシュ・フローは、NTT DATA,Inc.株式の追加取得、およびそれに関連した現預金の受け入れによる影響があることに加え、有形固定資産及び無形資産の取得による支出や、定期預金解約による収入により156,987百万円の支出(同26,774百万円の支出減少)となったことから、当期のフリー・キャッシュ・フローは44,558百万円の黒字(同6,669百万円減少)となりました。また、財務活動によるキャッシュ・フローは、長期資金の調達等により32,919百万円の収入(同141,499百万円の収入増加)となりました。
(4) 重要な会計方針及び見積り当社グループにおける重要な会計方針及び見積りについては、「第4 経理の状況 1 要約四半期連結財務諸表 要約四半期連結財務諸表注記3.重要な会計方針」及び「第4 経理の状況 1 要約四半期連結財務諸表 要約四半期連結財務諸表注記4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりです。
(5) 事業上及び財務上の対処すべき課題 当第3四半期連結累計期間において、当社グループの事業上及び財務上の対処すべき課題に重要な変更及び新たに生じた課題はありません。
(6) 研究開発活動[技術開発の状況]当社グループは、グローバルでの厳しい競争に勝ち残っていくため、新しい技術トレンドを積極的にビジネスに取り入れる「最先端技術・イノベーション推進」に取り組むとともに、システム開発の高速化、高品質化やクラウド化・デジタル化を見据えたクラウド基盤の構築等、「生産技術革新」に関する研究開発に取り組んでいます。最先端技術に関する知見やノウハウをグローバルで集約・活用しイノベーションを推進していくとともに、次世代の生産技術を磨いていきます。
当第3四半期連結累計期間の研究開発費の総額は15,719百万円です。
(7) 従業員数当第3四半期連結累計期間において、当社グループは主に海外セグメントにおいてNTT株式会社(現 株式会社NTT DATA, Inc.)およびその子会社が当社の子会社となったことに伴い、41,287名増加し、当社グループ全体で193,278名となりました。なお、従業員数は、当社グループから当社グループ外への出向者を除き、当社グループ外から当社グループへの出向者を含む従業員数であります。
この四半期報告書に掲載されているサービス及び商品等は、当社あるいは、各社等の登録商標又は商標です。なお、将来に関する記述は、当社グループが当四半期連結会計期間の末日時点で把握可能な情報から判断する一定の前提に基づいており、今後様々な要因によって記載内容とは異なる可能性があることをご承知おきください。
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