【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1)経営成績の状況
当第1四半期連結累計期間(2023年4月1日~2023年6月30日)の経営成績は、売上収益が534億17百万円(前年同期比5.7%増)、コア営業利益が55億57百万円(同15.8%増)、営業利益が57億16百万円(同14.5%増)、税引前四半期利益が55億7百万円(同18.3%増)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は33億56百万円(同18.8%増)と増収増益でした。
当期は、2023年5月8日に公表した中期経営計画「PLAN-W」の初年度にあたり、構造改革効果の一巡や従業員報酬の拡充等も踏まえて「上期勝負」を掲げ臨みましたが、当初の目論見通りの経営成績を収められており、「PLAN-W」に対して順調な滑り出しと評価しております。
売上収益では、新型コロナウイルス感染症の5類移行による経済・社会活動の正常化が進み、外出需要や都市集客の回復が継続したことなどから、店舗売上はアパレルが牽引する格好で一貫して前年同期間より伸長しました。
利益面においては、店舗とECの両販路で引き続きプロパーを重視した売り方に努めた結果、売上総利益率は62.6%と前年同期差0.9ポイント改善しました。販売費及び一般管理費では、従業員処遇の改善に伴う人件費の増加や店舗売上の増加による家賃・賃借料の増加はありましたが、経費コントロールの徹底で販管費率を52.2%と前年同期並みの水準に留めました。本業の稼ぐ力であるコア営業利益が原動力となる形で、全ての利益段階において前年同期より増益となりました。
セグメント別の状況は次のとおりです。
① ブランド事業
ブランド事業においては、ブランドポートフォリオ戦略を機動的に修正し、ブランド事業セグメント全体最適の視点で成長性と収益性のバランスを図っています。
百貨店を中心に展開するミドルアッパーブランドは、ブランドらしさを残しながら差別化された付加価値の高い商品開発を行う一方で、生活様式の変化へ柔軟に対応することが求められています。また、今まで以上にお客様とのより強いつながりを構築するため、マルチチャネル化やOMO(Online Merges with Offline)戦略を推進することで、新たな機会を通じた関係構築へ積極的に取り組んでおります。このほか、最近の世界的な物価上昇や円安の為替動向に左右されないよう、自社工場体制を活かした国内生産への回帰も着々と進めております。
ショッピングセンターを中心に展開するミドルロワーブランドにおいては、近年プロパー販売月とセール月の境目がなくなりつつあるなか、春夏や秋冬といった従来の大きなシーズン括りに捉われず、仕入から販売期間が終わるまでの商品ライフサイクルを今まで以上に短く捉えてプロパー主体の販売に注力しております。また、チャネルレスの進行などを背景として、当第1四半期連結累計期間より、SC主体のミドルロワー事業を一社に集約してスケールメリットも追求しております。
ライフスタイルブランドでは、「暮らしの今を、もっと素敵に!もっと楽しく!」をテーマに、暮らしに寄り添った衣・食・住を生活雑貨や服飾雑貨で提案し、引き続きお客様の支持拡大に努めています。また、ブランドのコンディションに応じて、積極出店など成長を目指す子会社、抜本的な収益構造の改革に取り組む子会社、収益基盤を固める子会社など、それぞれ異なるミッションを追求しています。もともとNB(ナショナルブランド)が強い領域ですが、事業規模の拡大を背景に、自主企画のオリジナル商品の開発にも挑戦してまいります。
一方、投資グループにおいては、プラットフォームやシステムの導入によるシナジー効果の追求や収益構造の向上・確立をテーマに掲げております。開発・改革ブランドでは引き続き構造改革とそれに続く成長戦略の推進に取り組んでいます。また、M&Aブランドでは「靴」のバリューチェーンの大半を自社でカバーする神戸レザークロス㈱や、質の高い革小物で世代を跨って支持を得る㈱ヒロフを展開しており、前連結会計年度末にはラグジュアリーセレクトブランドを運営する㈱ストラスブルゴの完全子会社化により、高価格帯セグメントのポートフォリオを拡張しました。
こうしたなか、当第1四半期連結累計期間では、人流の店頭回帰で店舗販路の回復・成長が鮮明となり、とりわけ百貨店ブランドが2桁成長と大きく増収となりました。また、先述の㈱ストラスブルゴの加入もブランド事業セグメントの増収に寄与しました。
この結果、ブランド事業の経営成績は、売上収益が463億89百万円(前年同期比5.6%増(うち外部収益は456億81百万円(同5.8%増))、コア営業利益(セグメント利益)が44億48百万円(同2.5%増)と増収増益になりました。
② デジタル事業
デジタル事業においては、「B2Bソリューション」と「B2Cネオエコノミー」から成り立っており、B2Bはこれまでの積極投資の回収を、B2Cは「選択と集中」による成長加速を目指しております。
B2Bソリューションでは、ECの運営受託サービスにおいて、自社ブランドを中心に販売する直営ファッション通販サイト「ワールドオンラインストア(WOS)」をはじめ、他社ECの運営を受託しております。自社サイト運営においては、アプリの機能改善やOMO活動の強化を背景に、直営店舗とのシームレスなサービス改善をブランド事業と一体で推進しております。また、ソリューションサービスでは、物流業界の2024年問題に対する自社グループの物流コスト抑制の取組みや基幹システムの更新に留まらず、他社への在庫コントロールシステムの導入・運用サービスを提供しており、売上拡大に向けた営業活動を強化しております。
B2Cネオエコノミーにおいては、「サーキュラー」というキーワードへ焦点を当てる形で、これまで様々なテーマで実験してきた事業の「選択と集中」による成長戦略を追求しております。ラクサス・テクノロジーズ㈱ではブランドバッグに特化したサブスクリプション型レンタルサービスを営んでいるほか、保有資産であるバッグの稼働率に着目したバッグ試用販売等で事業サービスを拡充しております。また、ユーズドセレクトショップ「RAGTAG」を運営する㈱ティンパンアレイは店舗とECの相互活用・補完による仕入・販売両面のOMO戦略で一段の成長を追求しているほか、新たなカジュアル業態として「usebowl」の実験を開始しました。また、オフプライスストア「& Bridge」との事業連携にも取り組んでおります。
そして、当第1四半期連結累計期間においては、B2Cネオエコノミーでサーキュラー事業への特化が早くも奏功してきており、「RAGTAG」では海外からの入国制限の緩和によるインバウンド需要の追い風も受けました。
この結果、デジタル事業の経営成績は、売上収益は76億35百万円(前年同期比10.2%増)(うち外部収益は30億73百万円(同13.6%増))、コア営業利益(セグメント利益)が3億68百万円(同19.4%増)と増収増益になりました。
③ プラットフォーム事業
プラットフォーム事業においては、ワールドグループが培ってきた様々なノウハウと仕組みを活用したプラットフォームの外部企業へのオープン化を推進し、業界の枠組みを超えた新たな事業領域の拡大に取り組んでいます。
中間持株会社の㈱ワールドプラットフォームサービスは、プラットフォーム事業の収益モデルを整える事業マネジメント機能と外部企業(クライアント)へのマーケティング機能を有します。各プラットフォームのノウハウ・仕組みを横断的に組み合わせ、クライアントのニーズに最適なサービスをワンストップで提案・提供します。
生産プラットフォームの㈱ワールドプロダクションパートナーズは、自ら商社機能を発揮して、ブランド事業に向けた直接貿易に取り組み、製造子会社群の生産性改善を指導・支援するほか、外販主体の専門商社である㈱イディオムや㈱ラ・モード等の工場では、他社アパレルの商品開発及び製造(OEM・ODM事業)の受託も強化しております。
販売プラットフォームの㈱ワールドストアパートナーズでは、商品在庫の最終的な換金に不可欠なアウトレット「NEXT DOOR」やファミリーセール等の催事を運営するほか、販売代行業務などの外販サービスも着実に拡充してきております。
こうしたアパレル起点の生産・販売プラットフォーム以外では、㈱アスプルンドに代表される子会社群が、空間創造や什器・備品の製造販売(建装)、家具や雑貨の卸からコントラクトに至るライフスタイル領域も手掛けております。プラットフォーム事業のサービスラインやクライアント層の幅を拡張することに寄与しています。
当第1四半期連結累計期間においては、前連結会計年度より引き続く急激な円安方向での為替変動に起因した原価高騰などの影響は継続するものの、各社が売価変更等の粗利確保と営業活動以外の経費節減に努めました。生産プラットフォームと販売プラットフォームを中心に外販が堅実に成長したこともあり、セグメント利益は前年同期の赤字から黒字転換いたしました。
これらの結果、プラットフォーム事業の経営成績は、売上収益は164億51百万円(前年同期比3.5%増)(うち外部収益は46億28百万円(同0.8%増))、コア営業利益(セグメント利益)が1億66百万円(前年同期はコア営業損失(セグメント損失)2億82百万円)と増収増益になりました。
④ 共通部門
事業セグメントに属さない共通部門においては、子会社からの配当や経営指導料等を収入として計上し、当社(ホールディングス)のコーポレートスタッフ等の費用を賄うことを基本的な収益構造としておりますが、子会社からの配当は予めセグメント利益から除いております。
共通部門は、「グループ経営本部」、「グループ人事統括室」といったコーポレートスタッフに加えて、グループの商品鮮度向上とソフト開発を監修する「クリエイティブ・マネジメント・センター」、グループブランディングの構築を牽引する「IR・グループコミュニケーション室」などで成り立っています。
ホールディングスは重点分野への集中投資という自らの役割を果たすため、子会社からホールディングスのスタッフ等の実費を上回る経営指導料等で回収することを原則としております。
共通部門においては、グループ各社の収益拡大に伴って料率方式の経営指導料収入が増加した反面、従業員処遇の改善に伴うコスト増の影響を受けましたが、引き続き機能の集約化等による生産性改善を進めております。
この結果、共通部門の経営成績は、売上収益は18億75百万円(前年同期比1.6%増)(うち外部収益は35百万円(同31.9%減))、コア営業利益(セグメント利益)が6億15百万円(同14.2%減)と増収減益になりました。
<サステナビリティ(持続可能性)への取り組みについて>
当社グループは、『価値創造企業グループ』として長期的・持続的に価値を創造し提供し続けるためには、「持続可能な社会の実現」への貢献が不可欠であり、環境負荷及び社会活動に関する取り組みを企業経営における重要課題のひとつと位置づけております。
これまで目指してきた「ワールド・ファッション・エコシステム」の構築を一段と高次元なものに昇華させる事で、新たな成長機会の創出や社会が共感できる価値の創造を図るべく、ワールドグループならではのサスティナビリティ社会に向けた戦略指針の具体化に着手し、2022年6月にTCFD提言への賛同表明とともに、脱炭素社会の実現に向けて当社グループ独自の「ワールド・サスティナビリティ・プラン※」を公表し、目標達成に向けた各施策を推進しております。このサスティナビリティプランの実現に向けた推進と並行して、環境省による「脱炭素化推進モデル事業」として、サプライチェーン全体の温室効果ガス排出削減計画の策定・実行に取り組みました。
分散構造故に見える化が進んでいないファッション業界において、負荷の見える化を進めるとともに、ワールド・ファッション・エコシステムを通じて、ファッション産業の多様性と持続性の両立を目指し、産業全体の構造的課題の解消に積極的に取り組んでおります。
※ ワールド・サスティナビリティ・プラン:https://corp.world.co.jp/csr/pdf/world_sustainabilityplan_2022.pdf
(2)財政状態の分析
①資産、負債及び資本の状況
(資産)
資産合計は2,427億29百万円と前連結会計年度末に比べて86億93百万円減少しました。
この主な要因は、売上債権及びその他の債権(流動)が約46億円、店舗不動産の契約期間の経過に伴う償却によって使用権資産が約25億円、当社の共同支配企業であるW&Dインベストメントデザイン投資事業有限責任組合による分配金の拠出を受けて持分法で会計処理されている投資が約17億円それぞれ減少したことによるものです。
(負債)
負債合計は1,522億78百万円と前連結会計年度末に比べて99億14百万円減少しました。
この主な要因は、仕入債務及びその他の債務が約42億円、店舗不動産のリース料の支払いが進んだことでリース負債が約26億円、返済に伴って借入金が約17億円それぞれ減少したことによるものです。
(資本)
資本合計は904億51百万円と前連結会計年度末に比べて12億21百万円増加しました。
この主な要因は、四半期利益を約34億円計上したことで、利益剰余金が増加した一方、㈱ワールド及び㈱ナルミヤ・インターナショナルにおいて、利益剰余金と非支配持分合わせて約13億円が配当金の支払いにより減少したほか、当社グループが㈱ナルミヤ・インターナショナルの株式を追加取得したことで、非支配持分が約8億円減少したことによるものです。
(D/Eレシオ)
当社グループは、資本合計に対する有利子負債※の割合であるデット・エクイティ・レシオ(D/Eレシオ)を財務体質の健全化の指標としており、中長期的にD/Eレシオ0.5倍を目指しております。
当第1四半期連結累計期間末の有利子負債は、短期借入金の返済により、768億14百万円と前連結会計年度末より約17億円減少しました。一方で、資本合計については約12億円増加しました。その結果、当第1四半期連結累計期間末のD/Eレシオは前連結会計年度末の0.88倍から0.85倍と0.03ポイント改善しました。
当社グループでは、この財務健全性について、中長期的な目標値に未だ達していないと認識していますが、早期に収益力の回復を図ることで、目標値に向けて着実に改善できるよう努めてまいります。
※ 有利子負債は、要約四半期連結財政状態計算書に計上されている負債のうち利子を支払っている借入金を対象としております。
(3)キャッシュ・フローの状況
当第1四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
64億57百万円の収入(前年同期比78百万円 収入減)となりました。
この主な要因は、キャッシュ・フロー上のプラス要因として税引前四半期利益の増加が約9億円、消費税の確定納付額減少に伴う支出の減少が約18億円あった一方で、収益回復に伴う法人所得税の支出が約17億円、前期のような中国ロックダウンに伴う納期遅延の影響がないことや前倒し仕入により仕入債務及びその他の債務の増減約16億円がキャッシュ・フロー上のマイナス要因となったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
9億17百万円の収入(前年同期比14億31百万円 収入増)となりました。
この主な要因は、W&Dインベストメントデザイン投資事業有限責任組合から分配金約16億円を受け取った一方で、店舗およびシステムへの投資により有形固定資産の取得による支出が約3億円、無形資産の取得による支出が約1億円、それぞれ増加したことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
75億48百万円の支出(前年同期比1億44百万円 支出増)となりました。
この主な要因は、キャッシュ・フロー上のプラス要因として長期借入金の返済額が約13億円、リース負債の支払額が約3億円、それぞれ支出が抑制された一方で、㈱ナルミヤ・インターナショナルにおける自己株式の取得により約3億円、配当金の支払いにより約3億円、㈱ナルミヤ・インターナショナルの非支配持分からの子会社持分取得による支出が約6億円、それぞれ支出が増加したほか、前第1四半期連結累計期間において計上した非支配持分からの払込による収入約5億円がキャッシュ・フロー上のマイナス要因となったことによるものです。
これらの結果、現金及び現金同等物の当第1四半期連結会計期間末残高は、前連結会計年度末より83百万円減少して、206億1百万円となりました。
(4)資本の財源及び資金の流動性に係る情報
資本の財源及び資金の流動性に係る情報について、前連結会計年度の有価証券報告書「資本の財源及び資金の流動性に係る情報」に記載した内容から重要な変更はありません。
(5)販売実績
当第1四半期連結累計期間における販売実績は次のとおりであります。
なお、2023年4月1日付の組織再編により、ネオエコノミーユニット(㈱ワールドに帰属)がデジタル事業から共通部門に移動したため、前第1四半期連結累計期間のセグメント情報は、当該組織再編後の報告セグメントの区分に基づき作成したものを開示しております。
セグメント
区分
金額(百万円)
前年同期比(%)
ブランド事業
ミドルアッパー
12,010
10.8
ミドルロワー
23,069
0.7
国内アパレルブランド
35,079
3.9
国内ライフスタイルブランド
6,312
△1.2
海外
356
42.2
開発・改革ブランド
1,349
2.7
M&Aブランド
2,585
74.7
投資
3,934
40.8
小計
45,681
5.8
デジタル事業
B2Bソリューション
960
△1.4
B2Cネオエコノミー
2,113
22.1
小計
3,073
13.6
プラット
フォーム事業
生産プラットフォーム
792
47.7
販売プラットフォーム
1,518
1.2
シェアードサービスプラットフォーム
22
△53.8
ライフスタイルプラットフォーム
2,296
△8.5
小計
4,628
0.8
共通部門
35
△31.9
売上収益
53,417
5.7
(参考)
当社グループのEC化率は以下のとおりであります。
EC化率
金額(百万円)
%
前年同期差
EC取扱高
連結取扱高
10,689
53,047
20.15
△0.46
(注)EC化率とは商品の取扱高を分母にし、そのうちECの取扱高を分子にしたものであります。
(6)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
前連結会計年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。
(7)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第1四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。