【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1)経営成績の状況
当第3四半期連結累計期間(2022年4月1日~2022年12月31日)の経営成績は、売上収益が1,574億31百万円(前年同期比24.7%増)、コア営業利益が124億28百万円(同151.1%増)、営業利益が121億38百万円(同143.1%増)、税引前四半期利益が111億13百万円(同152.6%増)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は65億2百万円(同97.4%増)と増収増益でした。
売上収益では、新型コロナウイルス感染症対策の進展や行動制限の緩和に伴い、人流の戻りを受けて外出需要の回復や都市集客の復調が継続しました。7月以降の第七波、11月以降の第八波と新型コロナウイルス感染症が断続的に再拡大したものの、店舗売上は概ね一貫して前年より大きく伸長しました。また、EC販路においても、アプリの刷新と新規会員獲得キャンペーンによる客数の増加、さらには継続したアプリの機能改善、OMO(Online Merges with Offline)活動の強化などを追い風に前年を上回るペースで堅調に推移しております。
加えて、2022年2月に㈱ナルミヤ・インターナショナル(以下、「ナルミヤ」という)が連結子会社としてグループに加わった増収効果が大きくなりました。具体的には、ナルミヤの店舗数が680店舗(2022年2月末時点)加わり、当第3四半期連結会計期間末の国内小売事業の店舗数が2,304店舗で、前年同期末より約500店舗多い状況です。EC販路においても、ナルミヤのEC売上が連結されて増収幅が一段と拡大しました。
利益面においては、中国のロックダウンに伴う商品納期遅延の影響、世界的なエネルギー価格の上昇や急速に進む円安による仕入価格の高騰がありましたが、ミドルアッパー業態の国内生産回帰に代表されるサプライチェーン戦略の再構築や、価値価格バランスに応じた最適上代への見直しを行い、店舗とECの両販路でプロパーを重視した販売を行いました。これらの戦略が功を奏し、これまでより一層の売り方改善を図ることができました。結果として、売上総利益率は59.3%と前年同期比0.9ポイントの改善となりました。販売費及び一般管理費では、一時帰休に伴う雇用調整助成金収入の減少や売上増加による家賃・賃借料の増加はありましたが、これら以上に前期までに実施した構造改革に伴う経費削減の効果が大きく寄与したことから、販管費率は51.4%と前年同期比3.1ポイントの大幅改善となりました。これらの結果、全ての利益段階において前年同期より大きく増益となりました。
セグメント別の状況は次のとおりです。
① ブランド事業
ブランド事業においては、ブランドポートフォリオ戦略を機動的に修正し、ブランド事業セグメント全体最適の視点で成長性と収益性のバランスを図っています。
百貨店を中心に展開するミドルアッパーブランドは、差別化された付加価値の高い商品開発を行う一方で、生活様式の変化に伴う通勤着需要の減少などに対し、ブランドらしさを残しながらカジュアル化へ修正するなどの変化が求められています。また、今まで以上にお客様とのより強いつながりを構築するため、リモートによる受注イベントの開催といった、新たな接客機会を通じた関係構築へ積極的に取り組んでおります。このほか、最近の世界的な物価上昇や円安の為替動向に左右されないよう、国内生産への回帰も加速しております。
ショッピングセンターを中心に展開するミドルロワーブランドにおいては、近年プロパー販売月とセール月の境目がなくなりつつあるなか、春夏や秋冬といった従来の大きなシーズン括りに捉われず、仕入から販売期間が終わるまでの商品ライフサイクルを今まで以上に短く捉えてプロパー主体の販売に注力しております。そして、毎月毎月の店舗商品鮮度を高める企画の組み立てで、頻度高くご来店いただけるお客様にも常に新たな発見がある店舗を実現してまいります。
ライフスタイルブランドでは、「暮らしの今を、もっと素敵に!もっと楽しく!」をテーマに、暮らしに寄り添った衣・食・住を生活雑貨や服飾雑貨で提案し、引き続きお客様の支持拡大に努めています。また、ブランドのコンディションに応じて、店舗大型化や積極出店など成長を目指す子会社、抜本的な収益構造の改革に取り組む子会社、ローンチ後間もなく収益基盤を固める子会社など、それぞれ異なるミッションを追求しています。そして、事業規模の更なる拡充を図るべく、雑貨分野でEC売上の成長戦略を本格的に始動しております。
一方、投資グループにおいては、プラットフォームやシステムの導入によるシナジー効果の追求や収益構造の向上・確立をテーマに掲げております。開発・改革ブランドでは引き続き構造改革とそれに続く成長戦略の推進に取り組んでいます。また、M&Aブランドでは「靴」のバリューチェーンの大半を自社でカバーする神戸レザークロス㈱や、質の高い革小物で世代を跨って支持を得る㈱ヒロフを展開しています。特に、㈱ヒロフを核にしたラグジュアリー・レザーグッズグループの形成は、株式譲受等を通じて着実に進行しております。
こうしたなか、当第3四半期連結累計期間では、特にアパレルブランドにおいて、3年ぶりに館休業や行動制限のない事業機会を活かせたこと、一部ブランドによるOMO活動の成功事例の横展開なども追い風にEC販路が好調を持続したこと、そしてナルミヤの連結加入による収益押上げ効果によって、前期上半期末でのブランド終息等の減収影響を打ち返し、プロパー販売を主体にしながら大幅な増収を実現できました。
この結果、ブランド事業の経営成績は、売上収益が1,362億30百万円(前年同期比28.0%増(うち外部収益は1,337億72百万円(同28.7%増))、コア営業利益(セグメント利益)が99億59百万円(同207.8%増)と増収増益になりました。
② デジタル事業
デジタル事業においては、「B2Bソリューション」と「B2Cネオエコノミー」から成り立っており、デジタル技術を梃子にしたトランスフォーメーションの牽引役として、当社グループにおける重点投資の領域と位置付けております。
B2Bソリューションでは、ECの運営受託において、自社ブランドを中心に販売する直営ファッション通販サイト「ワールドオンラインストア(WOS)」などの運営を受託しており、ブランド事業の直営店舗とのシームレスなサービス提供に向けて総力をあげて取り組んでいます。今期からこの機能を㈱ファッション・コ・ラボへ事業移管し、他社通販サイトと併せて運営を同社へ集約しており、自社ブランドに対しても個々の特性に応じたサービスを提供すると同時に、WOSは他社ブランドの出店誘致等も通じてモールとしての魅力を高めてまいります。また、デジタルソリューションでは、自社の物流コスト抑制の取組みや基幹システムの更新に留まらず、他社から在庫コントロールシステムの導入やEC・物流業務の運用サービスを受託しております。基幹システムやBI(Business Intelligence)ソリューションの提供なども順次進める予定であり、メニューと顧客層の拡充による業容の拡大に注力しております。
B2Cネオエコノミーにおいては、「シェアリング」や「カスタマイズ」といったキーワードを中心に事業を展開しております。ラクサス・テクノロジーズ㈱ではブランドバッグに特化したサブスクリプション型レンタルサービスを営み、TVCMでの認知度拡大などを図りながらシェアリングエコノミーの浸透を図ってきました。最近では、保有資産であるバッグの稼働率に着目してローンチしたバッグ試用販売「買えちゃうラクサス」に代表されるように、成長戦略の一環で事業サービスの拡充にも本腰をいれております。一方、オンラインカスタムシャツブランド「オリジナルスティッチ」を運営する米国・Original Inc.は、キャラクターを活用したIP(知的財産)ビジネスや原料ロスゼロへ挑戦を続けています。このほか、リユースセレクトショップ「RAGTAG」を運営する㈱ティンパンアレイは店舗とECの相互活用・補完による仕入・販売両面のOMO戦略で一段の成長を追求しているほか、オフプライスストア「& Bridge」では様々な立地への出店加速を行ってまいります。
そして、当第3四半期連結累計期間において、B2Bソリューションでは、システムデリバリーの実行と案件パイプラインの拡大を背景に、デジタルソリューション外販が着実に成長を果たしました。一方で、B2Cネオエコノミーでは、将来成長に向けた投資先行の段階であるものの、一部ではこうした投資のリターンが予想以上に早く出てきました。
この結果、デジタル事業の経営成績は、売上収益は219億97百万円(前年同期比13.5%増)(うち外部収益は86億63百万円(同9.1%増))、コア営業利益(セグメント利益)が5億44百万円(前年同期はコア営業損失(セグメント損失)11億70百万円)と増収増益になりました。
③ プラットフォーム事業
プラットフォーム事業においては、ワールドグループが培ってきた様々なノウハウと仕組みを活用したプラットフォームの外部企業へのオープン化を推進し、業界の枠組みを超えた新たな事業領域の拡大に取り組んでいます。
また、2022年4月1日に設立しました㈱ワールドプラットフォームサービスは、プラットフォーム事業の収益モデル構築に不可欠な事業マネジメント機能と外部企業(クライアント)へのマーケティング・コンサルティング機能を有しています。各プラットフォームのノウハウ・仕組みを横断的且つ最適に組み合わせて提案・提供できることから、クライアントにとってワンストップでニーズが充足されるメリットを期待できます。
生産プラットフォームの㈱ワールドプロダクションパートナーズは、自ら商社機能を発揮して直接貿易に取り組み、製造子会社群の生産性改善を指導・支援するほか、他社アパレルの商品開発及び製造(OEM・ODM事業)の受託も強化しております。
販売プラットフォームの㈱ワールドストアパートナーズは、全国を網羅する支店及び営業所できめ細やかな販売支援体制を整えており、商品在庫の最終的な換金に不可欠なアウトレット「NEXT DOOR」やファミリーセール等の催事を運営するほか、最近では他業種小売業や海外ファッション企業の運営受託案件も拡大しております。
こうしたアパレル起点の生産・販売プラットフォーム以外では、空間創造や什器・備品の製造販売(建装)、家具や雑貨の卸からコントラクトに至るライフスタイル領域も手掛けています。このライフスタイルプラットフォームの中核の一社が㈱アスプルンドで、今期より㈱ワールドスペースソリューションズの建装事業も承継しました。
当第3四半期連結累計期間においては、コロナ禍を受けて断行した構造改革や将来の反転攻勢に向けた組織再編を背景に、生産及び販売のプラットフォームを中心に内販の大幅な減収を招きました。加えて、B2B外販の強化に向けた人材等のリソースシフトで経費負担が想定されていたところ、急激な円安方向での為替変動に起因して、法人顧客への卸売り事業にて原価高騰などの打撃も受けることとなりました。
これらの結果、プラットフォーム事業の経営成績は、売上収益は575億70百万円(前年同期比1.0%減)(うち外部収益は149億25百万円(同5.3%増))、コア営業損失(セグメント損失)が1億28百万円(前年同期はコア営業利益(セグメント利益)7億79百万円)と減収減益になりました。
④ 共通部門
事業セグメントに属さない共通部門においては、子会社からの配当や経営指導料等を収入として計上し、当社(ホールディングス)のコーポレートスタッフ等の費用を賄うことを基本的な収益構造としておりますが、子会社からの配当は予めセグメント利益から除いております。
共通部門は、「グループ企画本部」、「グループ支援本部」といったコーポレートスタッフに加えて、グループの商品鮮度向上とソフト開発を監修する「クリエイティブ・マネジメント・センター」、グループブランディングの構築を牽引する「IR・グループコミュニケーション室」などで成り立っています。ホールディングスは重点分野への集中投資という自らの役割を果たすため、子会社からホールディングスのスタッフ等の実費を上回る経営指導料等で回収することを原則としております。
共通部門においては、グループ各社の増収に伴い料率方式の経営指導料収入が増加しました。
この結果、共通部門の経営成績は、売上収益は56億74百万円(前年同期比13.6%増)(うち外部収益は70百万円(同47.3%減))、コア営業利益(セグメント利益)が22億96百万円(同12.0%増)と増収増益になりました。
<サステナビリティ(持続可能性)への取り組みについて>
当社グループは、『価値創造企業グループ』として長期的・持続的に価値を創造し提供し続けるためには、「持続可能な社会の実現」への貢献が不可欠であり、環境負荷及び社会活動に関する取り組みを企業経営における重要課題のひとつと位置づけております。
そこで、当社(ホールディングス)の経営がリードする形で、これまで目指してきた「ワールド・ファッション・エコシステム」の構築を一段と高次元なものに昇華させる事で、新たな成長機会の創出や社会が共感できる価値の創造を図るべく、ワールドグループならではのサスティナビリティ社会に向けた戦略指針の具体化に着手しました。
具体的には、ワールドグループのSDGs基本方針としてとりまとめ、2022年6月にTCFD提言への賛同表明とともに、脱炭素社会の実現に向けて当社グループ独自の「サスティナビリティプラン」を公表いたしました(https://corp.world.co.jp/csr/pdf/world_sustainabilityplan_2022.pdf)。また、環境省による「脱炭素化推進モデル事業」として、サプライチェーン全体の温室効果ガス排出削減計画の策定・実行にも取り組んでいます。
分散構造故に見える化が進んでいないファッション業界において、負荷の見える化を進めるとともに、ワールド・ファッション・エコシステムを通じて、ファッション産業の多様性と持続性の両立を目指し、産業全体の構造的課題の解消に積極的に取り組んでまいります。
(2)財政状態の分析
①資産、負債及び資本の状況
(資産)
資産合計は2,491億71百万円と前連結会計年度末に比べて7億16百万円増加しました。
この主な要因は、店舗の退店などに伴って有形固定資産が約12億円、使用権資産が約34億円それぞれ減少した一方で、主に当秋冬(AW)及び次の春夏(SS)シーズンの商材を中心に棚卸資産が約60億円増加したことによるものです。
(負債)
負債合計は1,622億81百万円と前連結会計年度末に比べて50億72百万円減少しました。
この主な要因は、棚卸資産の増加と両建てで仕入債務(約63億円)が増えたものの、使用権資産にかかるリース負債が約38億円、借入金の返済に伴って約61億円がそれぞれ減少したことによります。
(資本)
資本合計は868億91百万円と前連結会計年度末に比べて57億88百万円増加しました。
この主な要因は、四半期利益を約70億円計上したことで、利益剰余金及び非支配持分が増加したことによるものです。一方、㈱ワールド及びナルミヤにおいて、資本剰余金と非支配持分合わせて約15億円が配当金の支払いにより減少しました。なお、第1四半期連結会計期間において、欠損填補として約86億円を資本剰余金から利益剰余金へ振り替えました。
(D/Eレシオ)
当社グループは、資本合計に対する有利子負債※の割合であるデット・エクイティ・レシオ(D/Eレシオ)を財務体質の健全化の指標としており、中長期的にD/Eレシオ0.5倍を目指しております。
当第3四半期連結累計期間末の有利子負債は、短期借入金の返済により、773億13百万円と前連結会計年度末より約61億円減少しました。対して、資本合計については約58億円増加しました。結果として、当第3四半期連結累計期間末のD/Eレシオは0.89倍と1倍を下回り、前連結会計年度末の1.03倍から0.14ポイント改善しました。
※ 有利子負債は、要約四半期連結財政状態計算書に計上されている負債のうち利子を支払っている借入金を対象としております。
(3)キャッシュ・フローの状況
当第3四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
184億59百万円の収入(前年同期比52億36百万円 収入増)となりました。
この主な要因は、当第3四半期連結累計期間において、税引前四半期利益を111億13百万円計上したことで、約67億円収入が増加した一方、法人所得税の支払として約16億円支出が増加したことによります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
15億31百万円の支出(前年同期比8億39百万円 支出減)となりました。
この主な要因は、店舗に対する投資を効率化したことで、有形固定資産の取得による支出が約8億円減少したことによります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
191億64百万円の支出(前年同期比54億65百万円 支出増)となりました。
この主な要因は、当第3四半期連結累計期間において借入金の返済が進んだことで、短期借入金の純増減額が前第3四半期連結累計期間と比較し約51億円減少したことがキャッシュ・フローにおいて、支出の増加となったことによります。そのほか、配当金として約14億円支出が増加、一方で長期借入により約16億円資金が増加しております。
これらの結果、現金及び現金同等物の当第3四半期連結会計期間末残高は、前連結会計年度末より22億23百万円減少して、191億80百万円となりました。
(4)資本の財源及び資金の流動性に係る情報
資本の財源及び資金の流動性に係る情報について、前連結会計年度の有価証券報告書「資本の財源及び資金の流動性に係る情報」に記載した内容から重要な変更はありません。
(5)販売実績
当第3四半期連結累計期間における販売実績は次のとおりであります。
セグメント
区分
金額(百万円)
前年同期比(%)
ブランド事業
ミドルアッパー
34,645
12.0
ミドルロワー
70,573
53.6
国内アパレルブランド
105,219
36.8
国内ライフスタイルブランド
18,838
1.2
海外
985
38.2
開発・改革ブランド
4,013
6.6
M&Aブランド
4,717
17.8
投資
8,730
12.4
小計
133,772
28.7
デジタル事業
B2Bソリューション
2,969
0.5
B2Cネオエコノミー
5,694
14.2
小計
8,663
9.1
プラット
フォーム事業
生産プラットフォーム
2,225
8.5
販売プラットフォーム
4,653
1.3
シェアードサービスプラットフォーム
91
82.9
ライフスタイルプラットフォーム
7,955
6.3
小計
14,925
5.3
共通部門
70
△47.3
売上収益
157,431
24.7
(参考)
当社グループのEC化率は以下のとおりであります。
EC化率
金額(百万円)
%
前年同期差
EC取扱高
連結取扱高
33,395
157,240
21.24
+0.99
(注)EC化率とは商品の取扱高を分母にし、そのうちECの取扱高を分子にしたものであります。
(6)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
前連結会計年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。
(7)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。