【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要
当社の経営成績、財政状態、キャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)及び研究開発活動の概要は、次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものです。
① 経営成績の概要当社は、医療現場の課題を解決するために、多様なモダリティ(医薬品、医療機器、AIを活用したプログラム医療機器)を医師/研究者とともに医療現場で研究開発しています。医薬品事業は、研究開発費や研究開発期間が比較的大きく事業リスクが高い分野ですが、上市後には極めて高い収益が期待できる事業です。一方、医療機器やプログラム医療機器パイプラインの事業収益は医薬品と比べると小さいですが、研究開発費や研究開発期間のリスクは小さく、早期に当社収益につながります。当社は、これら2つの事業ポートフォリオを、同時に複数のパイプラインを進めることにより、リスクを分散しながら早期の黒字化と将来の収益の拡大を目指します。これまでの製薬企業や創薬ベンチャーの多くはパイプラインのバリューチェーン(開発の全ての工程の積み上げ)を自社で全て構築し、事業価値を高めることに注力してきました。大手製薬企業は潤沢な資金を背景に、多くのパイプラインのバリューチェーンを自社独自で形成するという既存の枠組みでの開発ができますが、ベンチャーのように資金が潤沢でない場合は、なかなか難しいのが現状です。当社は、公的資金や外部機関(研究機関、医療機関)のリソースを活用してコストを抑えるなど、効率の高い開発を実践してきました。外部機関とのアライアンスをもとに多くのバリューチェーン構築を考えており、既存ベンチャーとは戦略、研究開発、人的資源管理などが異なります。少ない人的リソースや経費で多くのパイプラインを広げ、モダリティを展開し、成果も出つつあります。自己資源や社内環境のみにこだわるのではなく、むしろ外部リソースや外部環境の積極的活用に注力し、効率的にイノベーションを創出する枠組みを構築していきたいと考えています。当社は、大学や様々な異業種企業との連携や協業を基にオープンイノベーションを推進し、効率的な開発を実施しています。当社は、COVID-19が蔓延し世界的にも大きな医学及び社会の課題として認識されていた2021年9月24日に東京証券取引所マザーズ市場に上場いたしました。上場後約1年半経過しましたが、皆様のご支援のおかげと、またCOVID-19も落ち着き一部制限はあるものの生活も平常に戻りつつあるので、研究開発も予定どおり順調に進展しています。当該事業年度においても、東北大学メディシナルハブに設置したオープンイノベーション拠点(Tohoku University x Renascience Open innovation Labo:TREx)を活用することにより、これら多様なモダリティの効率的な研究開発を実施し、また新たな研究開発パイプラインも拡大しています。当事業年度の医薬品、医療機器及びAIを活用したプログラム医療機器の進捗並びに特に注力しているパイプラインを下記に記載します。
(研究開発活動の実績)a. 医薬品特に、PAI-1阻害薬RS5614のがん領域及び呼吸器疾患領域での臨床開発に注力しています。(がん) - 慢性骨髄性白血病(CML、第Ⅲ相):2022年3月にAMED「革新的がん医療実用化研究事業(代表機関:東北大学、当社は分担機関)」の支援を受けて第Ⅲ相試験(医師主導治験)を開始しました。2023年3月末時点で目標の約半数の症例登録を達成し、症例数の組み入れは計画どおりに進捗しています。
- 悪性黒色腫(第Ⅱ相):2021年6月にAMED「橋渡し研究プログラムシーズC(代表機関:東北大学、当社は分担機関)」の支援を受けて第Ⅱ相試験(医師主導治験)を開始しました。当事業年度は、2022年6月に目標の半数の登録を達成し中間解析を実施し、2023年3月末時点で目標症例数40例全例の患者登録が完了しました。
- その他:上記2つの疾患での治験が順調に進んでいることから、当事業年度より上記以外の新たながん領域の適応症で臨床開発を展開することを決定しました。具体的には、非小細胞肺がんの臨床開発(医師主導治験)のため、2022年10月に広島大学と共同研究契約を締結しました。また、皮膚血管肉腫の臨床開発(医師主導治験)にも着手しました。(呼吸器)
- COVID-19に伴う肺傷害(後期第Ⅱ相):2021年6月からAMED「新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業(代表機関:東北大学、当社は分担機関)」の支援を受けて後期第Ⅱ相試験(医師主導治験)を開始しました。2022年10月に患者登録を完了し、治験総括報告書を纏めました。また、2022年11月に第一三共株式会社と、抗がん剤治療等から生じる間質性肺炎に対するRS5614の有効性を確認する臨床試験も視野に入れ、オプション契約の期間を延長し契約一時金を受領しました。
- 全身性強皮症に伴う間質性肺疾患:2023年3月にAMED「難治性疾患実用化研究事業(代表機関:東北大学、当社は分担機関)」の支援を受けて第Ⅱ相試験(医師主導治験)を実施予定です。
- その他:特発性間質性肺炎:RS5614が間質性肺疾患(間質性肺炎・肺線維症)を改善することを示唆する非臨床試験の成績に基づき、当事業年度は、特発性間質性肺炎の急性憎悪を対象とした臨床開発を視野に入れ、2022年12月に京都大学と共同研究契約を締結しました。
b. 医療機器
- ディスポーザブル極細内視鏡(薬事承認済):2020年5月にバクスター社とライセンス契約を締結しました。当事業年度は、2022年12月に厚生労働省からファイバースコープ(内視鏡本体)の薬事承認を取得し、バクスター社が販売予定です。また、ガイドカテーテル(付属品)の開発などを目的として、2022年9月に株式会社ハイレックスコーポレーション及びその子会社である株式会社ハイレックスメディカルと共同研究契約を締結しました。
c. AIを活用したプログラム医療機器特に、呼吸機能検査診断、維持血液透析医療支援、糖尿病治療支援、嚥下機能低下診断の領域におけるプログラム医療機器開発に注力しています。
- 呼吸機能検査診断(開発研究終了):京都大学、チェスト株式会社、NESと共同開発を実施しており、2023年3月に開発段階の研究を完了しました。
- 維持血液透析医療支援(開発研究):聖路加国際大学、東北大学、ニプロ株式会社、NEC、NESと共同開発を実施しており、当事業年度は、2022年5月に共同開発の契約期間延長に伴い一時金を受領しました。また、2022年12月にはPMDAとの事前面談を完了し、2022年10月に特許を出願し、更に、2023年2月にはAMED「医療機器開発推進研究事業(代表機関:東北大学、当社は協力機関)」に採択されました。今後はAMEDからの支援を受けて承認申請のための臨床性能試験(検証試験)を実施する予定です。
- 糖尿病治療支援(開発研究):東北大学、NEC、NESと共同開発を実施しており、当事業年度は、2022年5月に特許を出願し、2022年4月にAMED「医工連携イノベーション推進事業(開発・事業化事業)(当社が代表機関)」の支援を受けて開発を推進しています。2022年10月にはPMDAとの開発前面談を完了し、今後は承認申請のための臨床性能試験(検証試験)を実施する予定です。
- 嚥下機能低下診断(開発研究):東北大学、NECと共同開発を実施しており、音声から嚥下機能の低下を診断するプログラム医療機器を開発しています。2023年3月に特許を出願しました。
- その他:当事業年度は、乳がん病理診断、心臓植込み型電気デバイス患者における不整脈・心不全発症予測、人工心臓患者における血栓発生予測などの新たなAIを活用したプログラム医療機器研究の開始に着手しました。人工心臓患者における血栓発生予測では株式会社ハイレックスメディカルと共同研究を実施しており、2023年3月に一時金を受領しました。
(事業収益に関する実績)維持血液透析医療支援プログラム医療機器の開発について、ニプロ株式会社と共同で研究開発を実施しています。当事業年度は、2022年5月に共同研究契約の期間を延長し、これに伴う契約一時金を受領しました。COVID-19に伴う肺傷害治療薬の開発について、第一三共株式会社と優先交渉権付与に関するオプション契約を締結しています。当事業年度は、2022年11月に当該契約の期間を延長し、これに伴うオプション料を受領しました。人工心臓患者における血栓発生予測プログラム医療機器の開発について、株式会社ハイレックスメディカルと共同で研究開発を実施しており、2023年3月に契約一時金を受領しました。当社では、CML、悪性黒色腫、糖尿病治療支援プログラム医療機器に関するAMED採択プロジェクトにつき、研究開発主体として研究業務を受託しています。当事業年度は、当該受託研究業務が全て計画どおりに完了したことから、受託業務の対価を受託研究収入として計上しています。特に糖尿病治療支援プログラム医療機器ではAMEDから研究開発加速化のための追加の資金を受領しています。
以上の結果、当事業年度における事業収益は、COVID-19に伴う肺傷害治療薬に係るオプション料の受領やAIプログラム医療機器開発に係る契約一時金の受領、AMED採択プロジェクトに係る受託研究収入の受領などにより100,545千円(前事業年度139,333千円)となりました。また、営業損失は、月経前症候群及び月経前不快気分障害(PMS/PMDD)治療薬やCML治療薬、AMED採択プロジェクトである糖尿病治療支援プログラム医療機器開発などに係る研究開発費235,244千円を含む事業費用434,166千円を計上したことにより333,870千円(前事業年度営業損失210,839千円)、経常損失は受取利息26千円などを計上したことにより333,839千円(前事業年度経常損失241,769千円)、当期純損失は、法人税、住民税及び事業税1,958千円を計上したことにより335,797千円(前事業年度当期純損失254,292千円)となりました。なお、当社の事業は単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
② 財政状態の概況(資産)当事業年度末の流動資産は、前事業年度末の2,428,148千円と比べて160,785千円減少し、2,267,362千円となりました。これは主として研究開発費や人件費などの支払いにより、現金及び預金が174,036千円減少したことなどによるものです。また、当事業年度末の固定資産は、前事業年度末の9,880千円と比べて2,424千円減少し、7,456千円となりました。これは主として業務用備品の購入などにより有形固定資産が670千円増加した一方で、オフィス賃貸に係る差入保証金の返還により投資その他の資産のその他において2,669千円減少したことなどによるものです。この結果、資産合計は、前事業年度末の2,438,028千円と比べて163,210千円減少し、2,274,818千円となりました。
(負債) 当事業年度末の流動負債は、前事業年度末の37,942千円と比べて62,215千円増加し、100,158千円となりました。これは主として、研究開発費などに係る未払金が68,352千円増加したことなどによるものです。また、当事業年度末の固定負債は、前事業年度末の199,228千円と比べて110,371千円増加し、309,600千円となりました。これは、AMED採択プロジェクトであるPMS/PMDD治療薬の開発に関し、研究開発費を長期借入金としてAMEDから借入れたことによるものです。この結果、負債合計は、前事業年度末の237,171千円と比べて172,587千円増加し、409,758千円となりました。
(純資産) 当事業年度末の純資産は、前事業年度末の2,200,857千円と比べて335,797千円減少し、1,865,059千円となりました。これは当期純損失335,797千円を計上したことによるものです。
③ キャッシュ・フローの概況当事業年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前事業年度末の2,005,816千円に比べ174,036千円減少し、1,831,780千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況と主な変動要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)当事業年度の営業活動資金の支出額は284,641千円(前事業年度は230,492千円の支出)となりました。これは主として、税引前当期純損失333,839千円の計上及び未払金の増減額68,352千円の計上などによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)当事業年度の投資活動資金の収入額は232千円(前事業年度は296千円の支出)となりました。これは、有形固定資産の取得による支出2,225千円を計上した一方、差入保証金の返還による収入2,669千円を計上したことなどによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)当事業年度の財務活動資金の収入額は110,371千円(前事業年度は1,591,662千円の収入)となりました。これは、長期借入れによる収入110,371千円を計上したことによるものです。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績当社は研究開発を主体としており生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。
b.受注実績当社は研究開発を主体としており受注生産を行っておりませんので、該当事項はありません。
c.販売実績当社の事業セグメントは医薬品等の開発・販売等事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の販売実績の記載はしておりません。前事業年度及び当事業年度における販売実績は、次のとおりであります。
金額(千円)
前年同期比(%)
事業収益
※1
100,545
72.2
(注)1.最近2事業年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
相手先
前事業年度(自 2021年4月1日 至 2022年3月31日)
当事業年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)
事業収益(千円)
割合(%)
事業収益(千円)
割合(%)
国立大学法人東北大学
73,272
52.5
―
―
ニプロ株式会社
30,000
21.5
20,000
19.9
チェスト株式会社
25,000
17.9
―
―
国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)
―
―
64,999
64.6
2.売上高割合が10%未満の相手先については、記載を省略しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものです。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。財務諸表の作成にあたっては、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、これらについては、過去の実績や現在の状況等を勘案し、合理的と考えられる見積り及び判断を行っております。ただし、これらには見積り特有の不確実性が伴うため、実際の結果と異なる場合があります。なお、当社が財務諸表を作成するに当たり採用した重要な会計上の見積りは、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状況
財政状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② 財政状態の概況」に記載のとおりです。
b.経営成績(事業収益)当事業年度の事業収益は、100,545千円(前事業年度139,333千円)となりました。前事業年度は、維持血液透析医療支援プログラム医療機器及び糖尿病治療支援プログラム医療機器における契約一時金、ディスポーザブル極細内視鏡及び呼吸機能検査診断プログラム医療機器に係るマイルストーン収入、COVID-19に伴う肺傷害治療薬及び悪性黒色腫に係る受託研究収入などを計上した一方、当事業年度は、COVID-19に伴う肺傷害治療薬に係るオプション料の受領やAIプログラム医療機器開発に係る契約一時金の受領、AMED採択プロジェクトに係る受託研究収入などを計上したことによるものです。(事業原価、売上総利益)当事業年度の事業原価は、250千円(前事業年度58,363千円)となりました。前事業年度は、COVID-19に伴う肺傷害治療薬及び悪性黒色腫の受託研究に係る外注費を計上した一方、当事業年度は、COVID-19に伴う肺傷害治療薬に係るオプション料に係るレベニューシェア支払額を計上したことによるものです。この結果、当事業年度の売上総利益は、100,295千円(前事業年度80,970千円)となりました。(事業費用、営業損失)当事業年度の事業費用は、434,166千円(前事業年度291,810千円)となりました。主な要因は、月経前症候群及び月経前不快気分障害(PMS/PMDD)治療薬やCML治療薬、AMED採択プロジェクトである糖尿病治療支援プログラム医療機器開発などに係る研究開発費が前事業年度に比べて152,531千円増加したことなどによるものです。この結果、当事業年度の営業損失は333,870千円(前事業年度210,839千円)となりました。(営業外収益、営業外費用、経常損失)当事業年度の営業外収益は、31千円(前事業年度63千円)となりました。主な要因は、受取利息26千円及び雑収入5千円を計上したことによるものです。当事業年度の営業外費用は、未発生(前事業年度30,993千円)となりました。この結果、当事業年度の経常損失は333,839千円(前事業年度241,769千円)となりました。(特別利益、特別損失、当期純損失)当事業年度の特別利益及び特別損失はありません。これらの結果を受け、当事業年度の当期純損失は、335,797千円(前事業年度254,292千円)となりました。
c.キャッシュ・フローの状況の分析キャッシュ・フローの状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの概況」に記載のとおりです。
d.資本の財源及び資金の流動性についての分析当社は、創薬等のコンセプトやシーズの研究費及びパイプラインの製品化に向けた開発費並びに係る販売費及び一般管理費等の事業用費用について資金需要を有しております。当社は、主に公的機関の研究開発助成金や第三者割当増資により調達を行った手許資金により事業用費用に充当して参りましたが、現下では、金融機関の当座貸越枠を確保するなどしており流動性に支障はないものと考えております。中長期眼では、次世代の医療ソリューション開発を掲げ一層の事業拡大や係る投資を想定しており、第三者割当増資などによる財務基盤の増強が必要であると認識しております。なお、現状の現金水準については、2021年9月の株式上場による資金調達や上記当座貸越枠も確保していることから、当面の事業には問題のない水準です。
e.経営成績等の状況に関する認識経営成績に重要な影響を及ぼす要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりです。
