【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
経営成績等の概要
経営成績
当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が縮小する一方で、ロシアとウクライナの戦争状態の長期化に伴う原材料・エネルギー価格の高騰、米国の政策金利引き上げの影響による急激な為替変動、また、物価上昇による消費マインド冷え込みリスクの顕在化など、依然として先行き不透明感が継続いたしました。
当社を取り巻く試作・開発市場は、世界的なカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)目標達成に向けた自動車メーカー各社のEV(電気自動車)開発の本格化により、鉄と比較して軽量・高耐久なアルミニウム材、マグネシウム材による、複雑形状かつ大型サイズの試作需要が増加いたしました。またFA(ファクトリーオートメーション(注1))協働ロボット量産用鋳造部品についても、堅調な受注状況が継続いたしました。
このような環境の中、当社は、2022年4月に伊豆木産業用地(長野県飯田市)に国内最大規模の砂型鋳造による量産工場棟「第8期棟」を着工し、量産用鋳造部品、大型鋳造部品の生産準備を進めております。
3Dプリンター出力事業では、協業プロジェクト「3D innovation Hub」(注2)による実務案件での協力体制の強化に加え、コンシューマー向けの3Dプリンターをはじめとした装置販売ビジネスに着手いたしました。
CT事業では、産業用CTを用いた顧客の自社製品不具合の非破壊検査・選別ニーズを超短納期で実施するサービスを開始したほか、大型産業用CT装置を保有するメーカーとの業務提携によりスキャン対応サイズの大型化を実現するなど、サービス領域を拡大いたしました。
当事業年度は、主力の鋳造事業において自動車分野の試作・開発ニーズの獲得が進んだことに加え、FA協働ロボット量産用鋳造部品の受注増加と生産効率の向上が業績を牽引いたしました。
この結果、当事業年度の経営成績は、売上高2,955,470千円(前期比22.3%増)、営業利益351,192千円(前期比243.5%増)、経常利益381,371千円(前期比148.1%増)、当期純利益247,541千円(前期比116.8%増)となり、売上高・利益の各項目で過去最高を達成しました。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当事業年度の期首から適用しております。詳細については「第5.経理の状況 1 財務諸表等 注記事項(会計方針の変更)」をご覧ください。なお、当該会計方針の変更による影響は軽微であります。
セグメント別の経営成績は、次のとおりであります。
①3Dプリンター出力事業
3Dプリンター出力事業におきましては、試作業界の景況感が回復基調で推移し、新型コロナウイルス感染症の拡大により開催自粛を余儀なくされていた展示会・催事の再開が進んだことで、当社の強みである「短納期」・「高品質」を要求する案件を中心に、事業年度後半にかけては受注件数も回復基調となりました。
また、心臓カテーテルシミュレーター「HEARTROID(ハートロイド)」は世界各地で開催される国際会議・展示会への出席・出展やデモンストレーションの機会が増加し、循環器系内科の医師を始めとした医療関係者への認知が高まったことで、概ね期初に想定した売上高を達成いたしました。また、病院及びデバイスメーカー向けの手技配信・映像記録サービスも一定のニーズを獲得いたしました。
この結果、3Dプリンター出力事業の売上高は546,090千円(前期比6.6%増)、セグメント利益は104,135千円(前期比5.6%増)となりました。
②鋳造事業
鋳造事業におきましては、自動車分野の顧客を中心に、EV関連部品の試作・開発案件の受注が堅調に推移いたしました。また、FA協働ロボット量産用鋳造部品では、堅調な受注状況に加え、外部コンサルタントを活用した「トヨタ生産方式」による量産品製造ノウハウを習得したコンセプトセンター(長野県飯田市)と、ミーリングセンター(静岡県浜松市浜北区)の相互協力による生産活動の効率化が大幅な業績向上に寄与いたしました。
また、レストア(旧型車両等の老朽化した部品を供給する)分野では、「日産L28型エンジンシリンダーヘッド」の市販化、オートバイ用品の小売・開発を行っている株式会社ナップス(神奈川県横浜市中区)とのアライアンス契約締結のほか、レストアパーツをテーマにした、当社初の主催イベント「JMCレストアミーティング」を開催し、ブランドサイト「JMC BASE」(注3)とともにレストアブランドの周知拡大を進めました。
この結果、鋳造事業の売上高は2,043,476千円(前期比33.3%増)、セグメント利益は448,624千円(前期比120.9%増)となりました。
③CT事業
CT事業におきましては、前事業年度から続くNHK(Eテレ)放映番組「ギョギョッとサカナ★スター」へのレギュラー出演に加え、株式会社講談社(東京都文京区)発行の書籍「さかなクンのギョギョッとサカナ★スター図鑑」や、株式会社バンダイ(東京都台東区)発売のカプセルトイ(カプセル入りの小型玩具)「いきもの大図鑑」シリーズへのスキャン画像データ提供など、様々なメディア・学術研究分野への積極的な露出により、ブランドサイト「CT生物図鑑」(注4)への流入を増加させ、産業用CTの認知拡大をより一層進めました。
また、短納期が要求される非破壊検査・選別案件への集中的な対応や、バッテリー・次世代燃料電池に関するスキャン及びデータ解析対応など、高難度かつ高付加価値案件を複数受注いたしました。
この結果、CT事業の売上高は445,934千円(前期比0.7%減)、セグメント利益は268,614千円(前期比11.5%増)となりました。
なお、当事業年度では、CT装置販売はありませんでした。
(注1)ファクトリーオートメーション
工場における生産工程の自動化を図るシステムのことです。当社では需要増加が著しい協働ロボット分野で使用される筐体の金属部品に、軽量かつ高強度のマグネシウム鋳造品やアルミニウム鋳造品を提案しております。
(注2)協業プロジェクト「3D innovation Hub」
3Dプリンター出力全般の国内での啓蒙を進めるうえで課題となっている具体的なプロダクトの提案や、早期の製品化のため、当社、八十島プロシード株式会社及び原田車両設計株式会社による、新領域のビジネスに関する協業プロジェクトです。
(https://3dih.jp)
(注3)ブランドサイト「JMC BASE」
当社の高い鋳造技術や産業用CTでの検査技術を活かして、メーカーで生産終了となった商品を製造販売することで多くの方に大切な自動車や自動二輪車を長く楽しんでいただくための当社のレストア分野専用のWEBサイトです。
(https://jmcbase.com)
(注4)ブランドサイト「CT生物図鑑」
産業用CTの可能性をより多くの方に感じていただけるよう、様々な生物を産業用CTでデータ化し、WEBサイト上で360度動かすことができるほか、内部構造を捉えた断面画像等を公開している当社のオリジナルWEBサイトです。
(https://www.ctseibutsu.jp)
生産、受注及び販売の実績
(1)生産実績
当事業年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当事業年度
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
前年同期比(%)
3Dプリンター出力事業(千円)
232,435
106.3
鋳造事業(千円)
1,475,616
119.2
CT事業(千円)
41,048
72.4
合計(千円)
1,749,099
115.6
(注)1.金額は製造原価によっております。
2.セグメント間の振替高は含まれておりません。
(2)商品仕入実績
当事業年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当事業年度
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
前年同期比(%)
3Dプリンター出力事業(千円)
6,495
872.5
鋳造事業(千円)
-
-
CT事業(千円)
27,605
115.2
合計(千円)
34,100
138.0
(注)セグメント間の振替高は含まれておりません。
(3)受注実績
当社の受注実績は、販売実績とほぼ一致しておりますので、受注実績に関しては販売実績の項をご参照ください。
(4)販売実績
当事業年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当事業年度
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
前年同期比(%)
3Dプリンター出力事業(千円)
546,090
106.6
鋳造事業(千円)
1,963,444
134.9
CT事業(千円)
445,934
99.3
合計(千円)
2,955,470
122.3
(注)1.セグメント間の内部売上高又は振替高は含まれておりません。
2.主な販売先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は以下のとおりであります。
相手先
前事業年度
(自 2021年1月1日
至 2021年12月31日)
当事業年度
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
金額(千円)
割合(%)
金額(千円)
割合(%)
ファナック株式会社
394,155
16.3
1,213,978
41.1
当事業年度の販売実績を産業区分別に示すと次のとおりであります。
3Dプリンター出力事業
セグメント内産業区分
当事業年度
(自 2022年1月1日 至 2022年12月31日)
販売件数(件)
販売金額(千円)
比率(%)
卸売業
455
276,599
50.7
精密機械・医療機械器具製造業
492
71,247
13.0
電気機械器具製造業
365
53,694
9.8
輸送用機械器具製造業
68
24,402
4.5
一般機械器具製造業
147
20,828
3.8
その他の製造業
198
18,953
3.5
医療業
136
16,975
3.1
専門サービス業(他に分類されないもの)
60
14,829
2.7
化学工業
59
8,083
1.5
その他
202
40,476
7.4
合計
2,182
546,090
100.0
鋳造事業
セグメント内産業区分
当事業年度
(自 2022年1月1日 至 2022年12月31日)
販売件数(件)
販売金額(千円)
比率(%)
一般機械器具製造業
806
1,387,207
70.7
卸売業
190
167,193
8.5
輸送用機械器具製造業
100
154,795
7.9
電気機械器具製造業
137
115,945
5.9
鉄鋼業、非鉄金属製造業
43
91,527
4.7
自動車・自転車小売業
11
18,627
0.9
精密機械・医療機械器具製造業
27
10,314
0.5
その他の事業サービス業
2
5,060
0.3
娯楽業
1
4,825
0.2
その他
33
7,949
0.4
合計
1,350
1,963,444
100.0
CT事業
セグメント内産業区分
当事業年度
(自 2022年1月1日 至 2022年12月31日)
販売件数(件)
販売金額(千円)
比率(%)
輸送用機械器具製造業
179
180,880
40.6
卸売業
164
121,956
27.3
一般機械器具製造業
62
34,006
7.6
専門サービス業(他に分類されないもの)
57
27,491
6.2
電気機械器具製造業
27
24,458
5.5
化学工業
36
17,482
3.9
精密機械・医療機械器具製造業
9
14,985
3.4
その他の事業サービス業
5
4,590
1.0
ゴム製品製造業
9
4,110
0.9
その他
56
15,975
3.6
合計
604
445,934
100.0
(注)1.産業区分に関しては、株式会社帝国データバンクのTDB産業分類表の中分類に従っております。
2.販売件数、販売金額及び比率は、セグメント間の内部売上高又は振替高は含まれておりません。
経営者の視点による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
(1)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
(2)当事業年度の財政状態の分析
(資産)
当事業年度末における流動資産は1,387,728千円となり、前事業年度末に比べ107,185千円増加いたしました。これは主に電子記録債権が26,795千円、受取手形が21,725千円減少したものの、仕掛品が83,499千円、売掛金が72,898千円増加したことによるものであります。
固定資産は2,944,285千円となり、前事業年度末に比べ416,589千円増加いたしました。これは主にリース資産(有形固定資産)が77,442千円、建物が72,798千円減少したものの、建設仮勘定が578,675千円増加したことによるものであります。
この結果、総資産は4,332,013千円となり、前事業年度末に比べ523,775千円増加いたしました。
(負債)
当事業年度末における流動負債は1,039,447千円となり、前事業年度末に比べ69,779千円増加いたしました。これは主に短期借入金が200,000千円減少したものの、未払法人税等が60,763千円、賞与引当金が51,741千円、1年内返済予定の長期借入金が44,405千円、未払金が34,805千円及び役員賞与引当金が21,612千円増加したことによるものであります。
固定負債は835,245千円となり、前事業年度末に比べ196,737千円増加いたしました。これは主にリース債務が90,101千円減少したものの、長期借入金が288,655千円増加したことによるものであります。
この結果、負債合計は1,874,693千円となり、前事業年度末に比べ266,517千円増加いたしました。
(純資産)
当事業年度末における純資産合計は2,457,320千円となり、前事業年度末に比べ257,258千円増加いたしました。これは主に当期純利益を247,541千円計上したことによるものであります。
(3)当事業年度の経営成績の分析
当社は、自動車、精密機器、電気機器、航空宇宙及び医療機器等の製造業を中心にコンシューマー、教育、医療及びヘルスケア等幅広い業種の試作品から最終製品づくりをトータルサポートすることを主たる業務とし、「3Dプリンター出力事業」、「鋳造事業」及び「CT事業」の3事業で、製品の高品質はもとより、短納期において優位性を発揮しております。
当事業年度における経営成績の分析につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 経営成績等の概要 経営成績」に記載のとおりであります。
(4)経営成績に重要な影響を与える要因について
当社は、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおり、顧客の製品開発に資する試作品の作製及び少量量産品の作製を行っており、開発に関する秘匿情報の漏洩や製品の不良等のリスク要因が当社の経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。
そのため、当社は、国際的な品質規格であるISO9001やJISQ9100の取得を通じた品質検査体制の構築と審査機関による定期的な検査の実施により、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因を分散し、リスクの発生を抑え、適切に対応しております。
(5)当事業年度のキャッシュ・フローの分析
当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、有形固定資産の取得による支出等があったものの、税引前当期純利益377,801千円(前期177,894千円)の計上、減価償却費の計上等により、前事業年度末に比べ299千円増加し、当事業年度末には306,561千円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において営業活動の結果獲得した資金は600,410千円(前年同期は456,368千円の獲得)となりました。これは主に、棚卸資産の増加額100,925千円等の資金の減少があったものの、税引前当期純利益377,801千円、減価償却費269,038千円、賞与引当金の増加額51,741千円等の資金の増加があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において投資活動の結果使用した資金は629,120千円(前年同期は111,689千円の使用)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出624,201千円等の資金の減少があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において財務活動の結果獲得した資金は29,009千円(前年同期は260,489千円の使用)となりました。これは主に、短期借入金の純減額200,000千円、長期借入金の返済による支出136,940千円、リース債務の返済による支出134,598千円等の資金の減少があったものの、長期借入れによる収入470,000千円等の資金の増加があったことによるものであります。
(6)資本の財源及び資金の流動性
①キャッシュ・フロー
当事業年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(5)当事業年度のキャッシュ・フローの分析」に記載のとおりであります。
②契約債務
2022年12月31日現在の契約債務の概要は以下のとおりであります。
年度別要支払額(千円)
契約債務
合計
1年以内
1年超3年以内
3年超5年以内
5年超
短期借入金
100,000
100,000
-
-
-
長期借入金
700,317
181,345
262,016
232,016
24,940
リース債務
344,869
118,617
151,317
61,461
13,473
上記の表において、貸借対照表の流動負債に含まれている1年内返済予定の長期借入金は、長期借入金に含めております。
③財務政策
当社は、運転資金及び設備資金につきましては、内部資金又は借入により資金調達することとしております。このうち、借入による資金調達に関しましては、運転資金については短期借入金で、生産設備などの長期資金は、固定金利の長期借入金で調達しております。
2022年12月31日現在、短期借入金の残高は100,000千円、長期借入金の残高は700,317千円であります。また、当事業年度末において、複数の金融機関との間で合計1,050,000千円のコミットメントライン契約および当座貸越契約を締結しております(借入未実行残高1,050,000千円)。
④資本の財源及び資金の流動性
当社の運転資金需要のうち主なものは、販売用の産業用CTの購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資によるものであります。
当社は、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、自己資金及び金融機関からの長期借入を基本としております。
なお、当事業年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は1,147,081千円となっております。また、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は306,561千円となっております。