【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要① 財政状態及び経営成績等の状況当期におけるわが国経済は、新型コロナウイルスの感染対策と経済活動の正常化の両立が進んだものの、国際情勢の悪化による資源価格の高騰や半導体をはじめとする各種資材の調達難、金融資本市場の変動等により、回復のペースは鈍いものとなりました。このような状況の中、当社グループでは、原材料価格やエネルギー価格等の高騰に対する販売価格の改定、高付加価値製品の販売拡大、徹底したコスト削減等に努めた他、在庫評価影響もあり、当期における当社グループの連結業績は、売上高は31,280百万円と前期に比べ1,831百万円の増収、営業利益、経常利益はそれぞれ938百万円(前期比190百万円の増益)、1,014百万円(前期比169百万円の増益)となりました。また親会社株主に帰属する当期純利益は801百万円(前期比233百万円の増益)となりました。
経営成績の推移(連結)
売上高
(百万円)
営業利益又は営業損失
(百万円)
経常利益
(百万円)
親会社株主に帰属する当期純利益(百万円)
1株当たり当期純利益(円)
2023年3月期
31,280
938
1,044
832
140.87
2022年3月期
29,448
748
875
599
101.68
2021年3月期
26,827
△166
138
208
35.25
セグメント別の経営成績は、次のとおりとなりました。
<特殊鋼線関連事業>(PC関連製品)主力分野の橋梁において、老朽化に伴う補修・補強案件が増加する一方で、PC鋼材の使用量の多い新設案件の減少、工事遅れの発生等があり、販売数量は前期に比べ減少しました。
(ばね・特殊線関連製品)主力分野の自動車需要において、半導体不足及び中国におけるロックダウンの影響等により需要の低迷が継続し、販売数量は前期に比べ減少しました。
特殊鋼線関連事業全体では、こうした販売数量の減少に対し、販売価格の改定効果等が寄与したことにより、売上高は16,324百万円と前期に比べ252百万円の増収となりました。営業利益は、販売数量の減少や製造コストの悪化等による減益を、販売価格の改定効果や在庫評価影響等でカバーし切れず、63百万円(前期比419百万円の減益)となりました。
<鋼索関連事業>足元の景気動向を反映して、国内外の需要の回復は鈍く、販売数量は前期に比べ減少しましたが、一方で、販売価格の改定効果等が寄与したことにより、売上高は12,805百万円と前期に比べ1,304百万円の増収となりました。営業利益は、販売数量の減少や製造コストの悪化等による減益を、販売価格の改定や高付加価値製品の拡販効果ならびに在庫評価影響等が上回り、741百万円(前期比663百万円の増益)となりました。
<エンジニアリング関連事業>土木・橋梁分野において、大型案件の納入により、売上高は2,089百万円と前期に比べ281百万円の増収となりましたが、研究開発費等の固定費増加により、営業利益は85百万円(前期比48百万円の減益)となりました。
<その他>不動産関連事業の売上高、営業利益はそれぞれ60百万円、47百万円と前期並みとなりました。
財政状態については、次のとおりとなりました。(資産の状況)総資産は、前連結会計年度末の41,578百万円に比べ427百万円(1.0%)増加し、42,006百万円となりました。流動資産は298百万円(1.3%)増加し、22,925百万円となりました。これは主に商品及び製品752百万円(18.0%)が増加した一方で、現金及び預金455百万円(16.0%)が減少したことによるものです。有形固定資産は254百万円(1.8%)減少し、14,014百万円となりました。無形固定資産は9百万円(6.4%)増加し、164百万円となりました。投資その他の資産は374百万円(8.3%)増加し、4,902百万円となりました。これは主に退職給付に係る資産248百万円(14.6%)の増加によるものです。
(負債の状況)負債合計は、前連結会計年度末の20,493百万円に比べ200百万円(1.0%)減少し、20,293百万円となりました。流動負債は1,085百万円(10.1%)増加し、11,837百万円となりました。これは主に1年内償還予定の社債750百万円(500.0%)が増加したことによるものです。また、固定負債は1,286百万円(13.2%)減少し、8,455百万円となりました。これは主に社債900百万円(100.0%)の減少、長期借入金476百万円(10.9%)が減少したことによるものです。これらの結果、当座比率(当座資産÷流動負債、短期的安全性指標)は96.5%(前連結会計年度末は117.1%)と十分な流動性を確保していると認識しております。
(純資産の状況)純資産合計は、前連結会計年度末の21,085百万円に比べ628百万円(3.0%)増加し、21,713百万円となりました。これらの結果、自己資本比率は前連結会計年度末の50.7%から51.7%となりました。
② キャッシュ・フローの状況当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。) の期末残高は前連結会計年度末の2,808百万円に比べ416百万円減少し、2,392百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況につきましては、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度における営業活動によって得た資金は、前連結会計年度に比べ303百万円減少の583百万円となりました。主な内訳は減価償却費987百万円、税金等調整前当期純利益1,166百万円があった一方で、棚卸資産の増加額1,670百万円があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度における投資活動によって使用した資金は、前連結会計年度に比べて384百万円減少の617百万円となりました。主な内訳は有形固定資産の取得による支出709百万円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度における財務活動によって使用した資金は、前連結会計年度に比べ168百万円増加の390百万円となりました。主な内訳は配当金の支払額324百万円であります。
財政状態の推移(連結)
総資産(百万円)
純資産(百万円)
自己資本比率(%)
営業活動によるキャッシュ・フロー(百万円)
投資活動によるキャッシュ・フロー(百万円)
財務活動によるキャッシュ・フロー(百万円)
社債及び借入金
2023年3月期
42,006
21,713
51.7
583
△617
△390
10,163
2022年3月期
41,578
21,085
50.7
887
△1,002
△221
10,224
2021年3月期
40,377
20,044
49.6
764
△968
363
10,384
(生産、受注及び販売の状況)
(1) 生産実績当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
金額(百万円)
前年同期比(%)
特殊鋼線関連事業
14,912
2.0
鋼索関連事業
14,300
18.1
エンジニアリング関連事業
2,089
15.6
合計
31,301
9.7
(注) 金額は、販売価格(セグメント間の内部振替前の数値)によっております。
(2) 受注状況当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
受注高(百万円)
前年同期比(%)
受注残高(百万円)
前年同期比(%)
特殊鋼線関連事業
16,387
1.4
1,456
4.5
鋼索関連事業
13,163
22.0
1,201
42.4
エンジニアリング関連事業
3,013
98.9
1,001
1,201.8
合計
32,564
14.4
3,659
58.1
(3) 販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
金額(百万円)
前年同期比(%)
特殊鋼線関連事業
16,324
1.6
鋼索関連事業
12,805
11.3
エンジニアリング関連事業
2,089
15.6
その他
60
△9.5
合計
31,280
6.2
(注) 1. セグメント間の取引は含まれておりません。2. 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先
前連結会計年度
当連結会計年度
金額(百万円)
割合(%)
金額(百万円)
割合(%)
神商鉄鋼販売㈱
3,572
12.1
4,992
16.0
㈱メタルワン
5,153
17.5
4,846
15.5
㈱メタルワン鉄鋼製品販売
3,475
11.8
3,849
12.3
神鋼商事㈱
3,957
13.4
3,293
10.5
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。① 重要な会計方針及び見積り当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような見積り、予測を必要としております。当社グループは、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り、予測を行っております。そのため実績の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
(繰延税金資産)当社グループは、繰延税金資産の認識にあたり、将来減算一時差異が将来課税所得を減算する可能性が高いと見込まれるものについて、繰延税金資産を計上しております。
繰延税金資産の回収可能性の評価においては、予測される将来課税所得を考慮しております。繰延税金資産に関する会計処理は、事業計画を基礎としており、当社をとりまく社会情勢の変化により、将来課税所得の予測に不確実性を伴うことから、会計上の見積りに該当すると考えております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容a. 財政状態当該事項につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績等の状況」をご参照ください。
b. 経営成績イ. 売上高当連結会計年度の売上高は31,280百万円、前年同期比で1,831百万円(6.2%)の増収となりました。主な要因として鋼索関連事業部において前年同期比で増収となったことによるものです。
ロ. 売上原価、販売費及び一般管理費売上原価は25,855百万円、前年同期比で1,511百万円(6.2%)の増加となりました。売上総利益は5,424百万円、前年同期比で320百万円(6.3%)の増益となりました。販売費及び一般管理費は4,486百万円、前年同期比で129百万円(3.0%)増加しましたが、売上高の増加により、売上高に占める販売費及び一般管理費の割合は前期の14.8%から14.3%と減少しました。これらの結果、営業利益は938百万円、前年同期比で190百万円(25.4%)の増益となりました。営業利益率は前期の2.5%から3.0%となりました。
ハ. 営業外損益、特別損益営業外損益の純額は持分法による投資利益を計上したことにより106百万円の利益となりました。この結果、経常利益は1,044百万円、前年同期比で169百万円(19.4%)の増益となり、経常利益率は前期の3.0%から3.3%となりました。これらの結果、税金等調整前当期純利益は1,166百万円、前年同期比で300百万円(34.6%)の増益となりました。
ニ. 親会社株主に帰属する当期純利益親会社株主に帰属する当期純利益は832百万円、前年同期比で233百万円(38.9%)の増益となり、売上高純利益率は2.0%から2.7%となりました。また、1株当たり当期純利益は、前期の101.68円に対して140.87円となりました。
c. 財務方針について(資本の財源及び資金の流動性についての分析)当社グループは、健全な財務体質を維持しながら、企業価値向上のために戦略的に経営資源を配分することを財務上の基本方針としております。資本の財源に関しては、主要な取引先金融機関からの継続的な調達に加え、当社及び連結子会社の資金を一元管理することにより、計画通り確保することができました。その結果、自己資本比率51.7%を維持しました。資金流動性に関しては、様々なリスクに備えた適正な現預金水準を確保した上で、資金需要に応じた適切な配分を実施いたしました。なお、主な資金需要について、営業活動に係る資金支出では、材料購入費、人件費等があり、投資活動に係る資金支出では、安全・安定生産に不可欠な設備や施設への投資、企業価値向上に資する生産設備への投資、生産性向上に関するIT投資等がありました。
d. 経営者の問題認識と今後の方針経営者の問題認識と今後の方針につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。