【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。① 財政状態及び経営成績の状況当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症による制限が段階的に緩和され、経済・社会活動の正常化が進みましたが、ロシアによるウクライナ侵攻に伴う資源価格・エネルギー価格の高騰に、急速な円安の進行による物価の上昇が重なるなど、依然として先行き不透明な状況が続きました。当油脂加工業界におきましては、新型コロナウイルス感染症の影響が継続するなか、バイオ燃料向けの需要拡大を背景とした油脂原料の需給ひっ迫や、各種原材料価格の高騰等の影響を受け、非常に厳しい経営環境で推移いたしました。このような状況のなかで当社グループは、「中期経営計画(2022~2024年)」の初年度として、食品事業は「これからの時代の『おいしさ』『健康』『食生活の変化』で持続可能な社会を実現する」を、油化事業は「これからの時代へ、ボタニカルを提唱した技術や製品を創出することで、持続可能な社会を実現する」をミッションとして、新たな時代に求められる新製品開発や既存製品の機能性向上に注力いたしました。また、当社製品の訴求力向上や新規市場開拓のためマーケティングを強化し製品の拡販を推進する一方、新規事業や製品開発に役立つ情報をインターネットを通じ発信すべく「ミヨシ未来プラットフォーム」を開設するなど、時代に即したデジタル施策の拡充にも努めました。さらに、生産ロスや環境に配慮した製品展開や、生産設備の脱炭素化を進めるなど、サステナビリティへの取り組みについて推進するとともに、油脂原料をはじめとする原材料価格の高騰に対応するため製品価格の改定を実施し、収益の確保に努めました。この結果、売上高は52,743百万円(前連結会計年度比11.1%増)となりましたが、油脂原料に加えエネルギーコスト、副原料、包装材、発送運搬費等が軒並み上昇し、利益改善に遅れが生じたことから、営業損失は1,604百万円(前連結会計年度は営業利益698百万円)、経常損失は1,333百万円(前連結会計年度は経常利益984百万円)、親会社株主に帰属する当期純損失は268百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純利益677百万円)となりました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。
≪食品事業≫食品事業につきましては、新型コロナウイルス感染症による影響から緩やかに持ち直した外食産業および土産菓子業界等は回復の兆しが見られましたが、物価上昇に伴う消費者の節約志向の高まり等により、当社主力製品であるマーガリン・ショートニングが伸長せず、苦戦を強いられました。また、油脂原料価格の高騰に急速な円安の進行が追い打ちをかけ、原材料調達コストが大幅に増加した影響を受けたため、非常に厳しい環境で推移しました。このような状況のなかで当社グループは、「これからの時代の『おいしさ』『健康』『食生活の変化』で持続可能な社会を実現する」という中期経営計画の目標に向けた新製品開発に注力する一方、プラントベース(植物由来)市場に向けた食用油脂製品ブランド「botanova」や、SDGs貢献の観点からフードロス低減に繋がる製品の新規市場への開拓の取り組みを推進し、新規市場や新規顧客の開拓に努めました。また、生産面においては、「AIB国際検査統合基準」への対応の強化や、食品安全システムに関する国際認証規格「FSSC22000」に則った食の安全・安心への対応に取り組むとともに、省エネルギー効率化システムの導入を行い、生産体制の効率化についても推進いたしました。さらに、販売面においては、WEBサイト等のデジタル施策を取り入れた販売活動を積極的に展開する一方で、油脂原料価格の高騰に伴う販売価格の改定を推し進め収益の確保に努めました。この結果、売上高は35,725百万円(前連結会計年度比12.4%増)となりましたが、利益面では、油脂原料や各種原材料価格の高騰を受け、販売価格の改定等の利益改善に向けた取り組みを推し進めたものの、営業損失は1,675百万円(前連結会計年度は営業利益153百万円)となりました。
≪油化事業≫工業用油脂製品につきましては、原料価格高騰の影響を大きく受けるなか、原料需給のひっ迫や中国経済の停滞等による需要減少の影響により、脂肪酸、グリセリンともに低調に推移しました。界面活性剤製品につきましては、香粧品分野の高機能シャンプー向け原料基剤「アンホレックス」やクレンジング製品向け原料基剤「Mファインオイル」が好調に推移したものの、紙・パルプ分野の家庭紙用薬剤は、マスク着用の常態化による需要の減少と原料価格の高騰により低迷しました。また、環境関連分野の飛灰用重金属処理剤は、事業系ごみの減少が継続したことに加え、主要原料の価格高騰と需給ひっ迫による影響を受け低調に推移しました。この結果、売上高は16,578百万円(前連結会計年度比9.2%増)となりましたが、利益面では、販売価格の是正に努めたものの、原料価格高騰の影響を受け、営業損失は11百万円(前連結会計年度は営業利益495百万円)となりました。
また、当連結会計年度における財政状態の状況は次のとおりであります。(資産)流動資産は、前連結会計年度末に比べ6,674百万円増の32,179百万円となりました。固定資産は、前連結会計年度末に比べ628百万円減の26,490百万円となりました。この結果、総資産は、前連結会計年度末に比べ6,046百万円増の58,669百万円となりました。(負債)流動負債は、前連結会計年度末に比べ5,827百万円増の24,570百万円となりました。固定負債は、前連結会計年度末に比べ947百万円増の9,535百万円となりました。この結果、負債合計は、前連結会計年度末に比べ6,775百万円増の34,106百万円となりました。(純資産)純資産は、前連結会計年度末に比べ728百万円減の24,562百万円となりました。
② キャッシュ・フローの状況当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ577百万円減少し、4,955百万円となりました。当連結会計年度における活動ごとのキャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。(営業活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度において営業活動の結果、3,560百万円の資金の減少(前連結会計年度は3,346百万円の資金の増加)となりました。これは、主に税金等調整前当期純損失392百万円、売上債権の増加3,237百万円、棚卸資産の増加3,259百万円、投資有価証券売却益1,010百万円等による資金の減少があった一方、減価償却費1,774百万円、仕入債務の増加3,387百万円等による資金の増加があったことによるものです。(投資活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度において投資活動の結果、176百万円の資金の増加(前連結会計年度は1,436百万円の資金の減少)となりました。これは、主に投資有価証券の売却による収入1,685百万円等による資金の増加があった一方、有形固定資産の取得による支出1,183百万円、長期前払費用の取得による支出449百万円等による資金の減少があったことによるものです。(財務活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度において財務活動の結果、2,806百万円の資金の増加(前連結会計年度は1,236百万円の資金の減少)となりました。これは、短期借入金の純増加額2,500百万円、長期借入れによる収入1,500百万円による資金の増加があった一方、長期借入金の返済による支出712百万円、配当金の支払412百万円等による資金の減少があったことによるものです。
③ 生産、受注及び販売の実績
1) 生産実績
(イ)生産実績当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
セグメントの名称
金額(百万円)
前年同期比(%)
食品事業
30,507
+38.2
油化事業
12,361
+40.5
合計
42,869
+38.9
(注) 1 金額は、製造原価によっております。2 上記金額には、中間製造工程の自家消費分は含まれておりません。
(ロ)仕入実績当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
セグメントの名称
金額(百万円)
前年同期比(%)
食品事業
5,446
+6.9
油化事業
6,345
+52.8
合計
11,792
+27.5
(注) 金額は、仕入価格によっております。
2) 受注状況当社グループは、原則として受注生産を行っておりません。
3) 販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
セグメントの名称
金額(百万円)
前年同期比(%)
食品事業
35,725
+12.4
油化事業
16,578
+9.2
その他
439
△16.1
合計
52,743
+11.1
(注) 1 その他は、不動産賃貸、原料油脂等であります。2 主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先
前連結会計年度
当連結会計年度
金額(百万円)
割合(%)
金額(百万円)
割合(%)
ニッシントーア・岩尾㈱
4,968
10.5
5,441
10.3
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容1)財政状態の分析(資産)当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ6,046百万円増の58,669百万円となりました。主な増加は受取手形及び売掛金2,328百万円、原材料及び貯蔵品1,760百万円、商品及び製品1,097百万円、電子記録債権909百万円、流動資産のその他772百万円であり、主な減少は現金及び預金577百万円、投資有価証券563百万円であります。(負債)負債は、前連結会計年度末に比べ6,775百万円増の34,106百万円となりました。主な増加は支払手形及び買掛金3,457百万円、借入金3,287百万円であり、主な減少は繰延税金負債189百万円であります。(純資産)純資産は、前連結会計年度末に比べ728百万円減の24,562百万円となりました。主な減少は利益剰余金685百万円であります。
当連結会計年度末の自己資本比率は、前連結会計年度末の48.0%から41.8%に減少しました。また、1株当たり純資産額は、前連結会計年度末の2,475円04銭から2,402円79銭に減少しました。
2)経営成績の分析(売上高、売上原価、販売費及び一般管理費、営業利益)売上高は、前連結会計年度比11.1%増の52,743百万円となりました。食品事業の売上高は、前連結会計年度比12.4%増の35,725百万円となりました。食品事業においては、新型コロナウイルス感染症による影響から緩やかに持ち直した外食産業および土産菓子業界等は回復の兆しが見られましたが、物価上昇に伴う消費者の節約志向の高まり等により、主力製品であるマーガリン・ショートニングが伸長せず、苦戦を強いられる一方で、油脂原料や各種原材料価格の高騰を受け、販売価格の改定等の利益改善を推し進めました。油化事業の売上高は、前連結会計年度比9.2%増の16,578百万円となりました。工業用油脂製品においては、原料価格高騰の影響を受けるなか、原料需給のひっ迫や中国経済の停滞等による需要減少の影響により、脂肪酸、グリセリンともに低調に推移しました。界面活性剤製品においては、香粧品分野の高機能シャンプー向け原料基剤やクレンジング製品向け原料基剤が好調に推移したものの、紙・パルプ分野の家庭紙用薬剤は、需要の減少により低迷しました。また、環境関連分野の飛灰用重金属処理剤は、事業系ごみの減少が継続したことに加え、主要原料の価格高騰と需給ひっ迫による影響を受け低調に推移しました。このような状況のなか、油化事業においても利益確保のため、販売価格の是正に努めました。売上原価は、前連結会計年度に比べ7,333百万円増加し、47,655百万円となり、原価率は、前連結会計年度比5.4ポイント増加し、90.4%となりました。これは主に油脂原料価格の高騰によるものです。販売費及び一般管理費は、前連結会計年度比3.7%増の6,691百万円となりました。売上原価、販売費及び一般管理費に含まれている研究開発費は、前連結会計年度比9.2%減の1,244百万円となりました。この結果、営業損失は、1,604百万円(前連結会計年度は営業利益698百万円)となりました。なお、研究開発活動の詳細については、「第2 事業の状況 5 研究開発活動」に記載しております。
(営業外損益、経常利益)営業外損益は、前連結会計年度の285百万円の収益(純額)から、270百万円の収益(純額)になりました。この結果、経常損失は、1,333百万円(前連結会計年度は経常利益984百万円)となりました。(特別損益、税金等調整前当期純利益)特別損益は、前連結会計年度の30百万円の損失(純額)から、941百万円の利益(純額)になりました。これは、前連結会計年度の投資有価証券売却益29百万円、有形固定資産除却損59百万円計上、当連結会計年度の投資有価証券売却益1,010百万円、有形固定資産除却損43百万円、投資有価証券評価損25百万円計上によるものです。この結果、税金等調整前当期純損失は、392百万円(前連結会計年度は税金等調整前当期純利益954百万円)となりました。(親会社株主に帰属する当期純利益)親会社株主に帰属する当期純損失は、268百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純利益677百万円)となりました。1株当たり当期純損失は、26円29銭(前連結会計年度は1株当たり当期純利益66円35銭)となりました。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。当社グループの運転資金需要のうち主なものは、油脂原料等の原材料購入費用のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、生産設備の更新を中心とした設備投資等によるものであります。当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、自己資金及び金融機関からの長期借入を基本としております。なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は12,472百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は4,955百万円となっております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、資産および負債または損益の状況に影響を与える会計上の見積りは、過去の実績等の連結財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。当社グループの連結財務諸表作成にあたって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。また、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
④ 経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等当社グループは、株主資本の効率的運用による投資効率の高い経営を図るため、自己資本利益率(ROE)5.0%以上を目標経営指標としております。当連結会計年度におけるROEは、前連結会計年度に比べ3.8ポイント減少し、△1.1%となりました。これは、油脂原料に加えエネルギーコスト、副原料、包装材、発送運搬費等が軒並み上昇するなか、販売価格の改定を推し進めましたが、利益改善に遅れが生じ、特別利益として投資有価証券売却益1,010百万円を計上しましたが、親会社株主に帰属する当期純損失を計上したことによるものです。