【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 財政状態及び経営成績の状況企業環境当第3四半期累計の世界経済は、約40年ぶりとなる物価の著しい高騰に直面しており、減速感を強めています。新型コロナウイルス感染拡大のための抑制策が緩和された後、経済活動再開による需要の急増に対し、生産能力不足や供給網の目詰まりから需給全般がひっ迫し、ロシア・ウクライナ情勢も相まってエネルギー・食料品を中心に幅広い品目において物価は急上昇しました。さらに、労働市場におけるサービス業を中心とした労働需給の引き締まりは、賃金上昇圧力の高まりを通じて、物価上昇の基調を一段と強めています。こうした状況を踏まえ、多くの国・地域では金融政策は緩和から引き締めへと転じたことで、実質経済成長率は急速に低下しています。先進国経済のうち、米国経済は広範な物価高の影響と金融引締め政策により鈍化しています。ユーロ圏経済は、主に燃料価格上昇の影響を受けて減速しつつあります。日本経済は、内需を中心に持ち直しの動きが続いています。中国経済は、ゼロコロナ政策は12月に緩和しましたが、同政策により経済活動の制限及び不動産セクターの低迷により回復の動きが鈍化しています。その他多くの新興国経済は回復の動きは続いていますが、中国及び先進国経済の成長鈍化の影響を受けています。国際商品市況は、化石燃料を中心に多くの商品価格が高騰し、依然として高止まりしています。
業績当第3四半期累計の収益は、5兆701億円となり、前年同期の3兆9,451億円に比べ、1兆1,249億円の増益となりました。売上総利益は、9,288億円となり、前年同期の7,429億円に比べ、1,859億円の増益となりました。これは北米鋼管事業や資源・エネルギートレードが好調に推移したことにより増益となったことなどによるものです。販売費及び一般管理費は、5,861億円となり、前年同期の5,143億円に比べ、718億円の増加となりました。固定資産損益は、240億円の利益となり、前年同期の27億円の利益に比べ、213億円の増益となりました。これは不動産事業で大口案件の引渡しがあったことにより増益となったことなどによるものです。持分法による投資損益は、2,026億円の利益となり、前年同期の1,722億円の利益に比べ、304億円の増益となりました。これは資源価格の上昇により増益となったことなどによるものです。これらの結果、親会社の所有者に帰属する四半期利益は、4,643億円となり、前年同期の3,351億円に比べ、1,291億円の増益となりました。
なお、親会社の所有者に帰属する四半期利益のセグメント別の状況は次のとおりです。
・金属事業部門では、807億円となり、前年同期の415億円に比べ、392億円の増益となりました。これは北米鋼管事業において、市況が好調に推移したことや、海外スチールサービスセンター事業が堅調に推移したことにより増益となったことなどによるものです。・輸送機・建機事業部門では、765億円となり、前年同期の518億円に比べ、247億円の増益となりました。これはモビリティ事業において、製造事業は厳しい環境が継続も、全体としては堅調に推移したことに加え、北米を中心とした建機関連事業や、リース事業が堅調に推移したことにより増益となったことなどによるものです。・インフラ事業部門では、163億円となり、前年同期の223億円に比べ、60億円の減益となりました。これは海外発電事業が堅調に推移したことに加え、電力分野において当期に一過性利益を計上した一方、国内電力小売事業で電力調達価格高騰の影響があったことなどによるものです。・メディア・デジタル事業部門では、204億円となり、前年同期の310億円に比べ、106億円の減益となりました。これは国内主要事業会社が堅調に推移した一方、エチオピア通信事業で当期立ち上げコストがあったことに加え、ミャンマー通信事業で現地通貨安や光熱費等の増加の影響があったことなどによるものです。
・生活・不動産事業部門では、466億円となり、前年同期の344億円に比べ、121億円の増益となりました。これは欧米州青果事業で資材費等のコスト増の影響があった一方、不動産事業で大口案件の引渡しがあったことにより増益となったことなどによるものです。・資源・化学品事業部門では、2,189億円となり、前年同期の1,446億円に比べ、743億円の増益となりました。これは資源・エネルギー価格が上昇したことに加え、資源・エネルギートレードが好調に推移したことや、化学品・エレクトロニクスビジネスが堅調に推移したことにより増益となったことなどによるものです。
当第3四半期末の資産合計は、10兆1,933億円となり、前期末の9兆5,822億円に比べ、6,111億円の増加となりました。これは円安の影響による増加に加え、営業資産や持分法投資が増加したことなどによるものです。資本のうち親会社の所有者に帰属する持分合計は、3兆6,683億円となり、前期末の3兆1,978億円に比べ、4,704億円の増加となりました。これは配当金の支払いがあった一方、円安の影響による増加に加え、親会社の所有者に帰属する四半期利益を認識したことなどによるものです。現預金ネット後の有利子負債(注1)は、2兆4,822億円となり、前期末の2兆2,737億円に比べ、2,085億円の増加となりました。これらの結果、ネットのデット・エクイティ・レシオ(有利子負債(ネット)/親会社の所有者に帰属する持分合計)は、0.7倍となりました。
(注)1 有利子負債=社債及び借入金(流動・非流動)の合計 (リース負債は含まれておりません)
(2) キャッシュ・フローの状況営業活動によるキャッシュ・フローは、運転資金が増加した一方で、コアビジネスが着実に資金を創出し、基礎収益キャッシュ・フロー(注2)が4,229億円のキャッシュ・インとなったことなどから、合計で1,182億円のキャッシュ・インとなりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、国内不動産案件の売却や北海油田英領事業の売却、及び政策保有株式の売却などの資産入替による回収があった一方で、国内外不動産案件の取得や住友精密工業に対する公開買付けの実施などの投融資を行ったことなどから、882億円のキャッシュ・アウトとなりました。これらの結果、営業活動によるキャッシュ・フローに投資活動によるキャッシュ・フローを加えたフリーキャッシュ・フローは、300億円のキャッシュ・インとなりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入を実施した一方、配当金の支払やリース負債の支出などにより、1,072億円のキャッシュ・アウトとなりました。以上に加え、為替変動による影響などを加味した結果、現金及び現金同等物の当第3四半期末残高は、6,933億円となり、前期末の7,338億円に比べ、406億円の減少となりました。
(注)2 基礎収益キャッシュ・フロー=(売上総利益+販売費及び一般管理費(除く貸倒引当金繰入額)+利息収支+受取配当金)×(1-税率)+持分法投資先からの配当
(3) 会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定に関しては、「第4 経理の状況 要約四半期連結財務諸表注記 4 見積り及び判断の利用」を参照願います。
(4) 事業上及び財務上の対処すべき課題当第3四半期累計における事業上及び財務上の対処すべき課題について、前期の有価証券報告書に記載した内容から重要な変更は以下のとおりです。なお、文中における将来に関する情報は、別段の記載がない限り、当四半期報告書提出日現在における当社の判断、目標、一定の前提または仮定に基づく予想等であり、将来そのとおりに実現する保証はありません。
定量計画当第2四半期決算発表時(2022年11月4日)に、親会社の所有者に帰属する当期利益の通期見通しを3,700億円から1,800億円増益の5,500億円に修正しました。当第3四半期決算において、当第3四半期累計実績が、通期見通し5,500億円に対して、全体として概ね想定通りの進捗となっていることから、修正しておりません。
株主還元方針当社は、株主の皆様に対して長期にわたり安定した配当を行うことを基本方針としつつ、中長期的な利益成長による配当額の増加を目指して取り組んでおります。2022年度以降の株主還元方針については、DOE(株主資本配当率)3.5%~4.5%の範囲内で、連結配当性向30%を目安に、基礎的な収益力やキャッシュ・フローの状況等を勘案の上、年間の配当額を決定することとしています。その上で、当期利益実績の30%に相当する部分が上記範囲を超過した場合には、当該超過部分に対する配当あるいは自己株式の取得を柔軟かつ機動的に実施することとしています。当期の予想年間配当金は、当第2四半期決算発表時に公表したDOEレンジ上限(4.5%)の1株当たり115円から変更ありません。このうち、中間配当金57.5円を実施済みであり、期末配当金は57.5円となる予定です。また、当期の株主還元に関し、当第2四半期決算発表時に、DOEレンジ上限を超過する当期利益に対して更なる株主還元の方法・金額等を検討の上、実施する旨を公表しておりました。今般、当該超過部分に対する還元として、2023年2月7日~4月28日までの期間において、500億円又は3,300万株を上限として、市場買付の方法により、自己株式を取得することを決定しました。これにより取得する全株式を、2023年6月2日に消却する予定です。詳細については、「第4 経理の状況 要約四半期連結財務諸表注記 14 後発事象」を参照願います。
(5) 研究開発活動特記事項はありません。
(6) 資本の財源及び資金の流動性についての分析当社は、一般的に、営業活動によるキャッシュ・フローや、銀行借入、資本市場における社債発行、及びコマーシャルペーパーの発行等により、資金調達を行っております。当社の財務運営の方針・目的は、中長期にわたり、安定的かつ低利な資金調達を行うこと、及び十分な流動性を保持することです。当社は当第3四半期末において総額3兆1,878億円の有利子負債を有しております。このうち流動負債に区分される社債及び借入金は、前期末比2,379億円増加の8,459億円となっており、主な内訳は短期借入金(主として銀行借入金)3,659億円、1年以内に返済予定の長期借入金2,556億円、コマーシャルペーパー1,845億円、1年以内に期限の到来する社債400億円となっております。また、流動性については、従来、金融市場の混乱等、いくつかの有事シナリオを想定の上、必要な流動性額の保持につとめており、当第3四半期末時点においても十分な流動性を保持しております。当社は、当第3四半期末時点で、総額1,210百万米ドル及び2,850億円を上限とする即時に借入可能な複数のコミットメントラインを締結しておりますが、当第3四半期末時点で、これらのコミットメントラインに基づく借入はありません。また、これらのコミットメントラインには、借入の実行を制限する重大なコベナンツ、格付トリガー条項などは付されておりません。なお、これらのコミットメントラインのほかに、当社は、コミットメントベースでない借入枠を有しております。当社は、資本市場での直接調達を目的として、国内外で複数の資金調達プログラムを設定しております。当第3四半期末時点での当社の長期及び短期の信用格付は、ムーディーズでBaa1/P-2(見通し安定的)、スタンダード&プアーズでBBB+/A-2(見通しポジティブ)、格付投資情報センターでA+/a-1(見通しポジティブ)となっております。
(7) 仕入、成約及び販売の状況当第3四半期累計において、北米鋼管事業における販売価格及び数量の増加並びに資源価格の上昇等により、前年同期と比較して収益が大幅に増加しております。
(8) 主要な設備の状況当第3四半期累計において、国内のオフィスビルを取得しております。また、国内のオフィスビルの一部を売却しております。