【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において判断したものであります。
(1)経営成績
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な感染拡大が経済活動に与える影響は甚大であり、かつ長期化していることから依然として先行き不透明な状況が続いております。
このような状況のなか当社グループは、「食を通じて人とつながり、笑顔ある暮らしを共につくるグッドパートナーをめざします。」というグループ理念の実現に向けて、企業市民として果たすべき「3つの責任」(お客様に対して、社員とその家族に対して、社会に対して)の全てにおいて取組を進めながら、ライフラインを支える「食」の一翼を担う企業グループとして、製品・サービスの安定的な提供に努めてまいりました。
当連結会計年度の経営成績は、コロナ禍における消費行動の変化が各事業に大きな影響を及ぼし、明暗が分かれる状況となりました。外出自粛の影響等により健康食品事業や外食事業は低迷いたしましたが、内食需要の増加により国内外で家庭用製品の販売が伸長したことで、香辛・調味加工食品事業や海外食品事業は好調に推移いたしました。
なお当社グループでは、コロナ禍による事業環境の変化を踏まえ、第2四半期連結会計期間において営業外費用として持分法による投資損失を、特別損失として減損損失を計上しております。また、第4四半期連結会計期間において保有する投資有価証券の一部を売却し、特別利益として投資有価証券売却益を計上しております。
これらの結果、当社グループの経営成績は以下のとおりとなりました。
2021年3月期
金額(百万円)
前期比(%)
売上高
283,754
96.6
営業利益
19,397
102.1
経常利益
19,820
95.3
親会社株主に帰属する当期純利益
8,733
76.2
当社が重視する経営指標は次のとおりとなりました。
2020年3月期
2021年3月期
ATO(総資産回転率)
0.80回
0.77回
ROS(売上高営業利益率)
6.5%
6.8%
ROA(総資産営業利益率)
5.1%
5.3%
ROE(自己資本当期純利益率)
4.6%
3.4%
セグメント別の経営成績の概況(セグメント間取引消去前)は、次のとおりであります。
事業の種類別
セグメント
売上高
営業利益
(セグメント利益又は損失(△))
金額
(百万円)
前期比
(%)
金額
(百万円)
前期比
(%)
香辛・調味加工食品事業
146,340
100.9
15,614
110.7
健康食品事業
20,105
72.1
△413
-
海外食品事業
35,472
119.3
4,584
111.9
外食事業
44,567
84.9
△660
-
その他食品関連事業
45,542
98.4
1,770
98.8
小計
292,025
96.9
20,895
100.8
調整(消去)
△8,271
-
△1,498
-
合計
283,754
96.6
19,397
102.1
(注)1.調整(消去)の内容は、セグメントに配分していない損益およびセグメント間取引に係る相殺消去であります。
<香辛・調味加工食品事業>
当事業セグメントは、内食需要の増加からスパイスをはじめとする家庭用製品が伸長したことに加え、事業活動の制約により間接固定費が全体的に抑制されたこともあり増収増益となりました。
ハウス食品㈱は、簡便化やメニューバラエティの強化など、お客様ニーズの変化にきめ細やかに対応したほか、レトルト製品のレンジパウチ化を推進し、利便性と環境負荷低減の両面から提供価値の向上に努めました。一方、ハウス食品㈱や㈱ギャバンが手掛ける業務用製品事業は、徐々に回復傾向にあるものの、外食市場低迷の影響から減収となりました。
以上の結果、香辛・調味加工食品事業の売上高は1,463億40百万円、前期比0.9%の増収、営業利益は156億14百万円、前期比10.7%の増益となりました。結果、売上高営業利益率は10.7%となり、前期より0.9pt向上いたしました。
<健康食品事業>
当事業セグメントにとって当期は、大変厳しい業績となりました。外飲み需要の減少から収益の柱である「ウコンの力」が大幅減収となったほか、CVSを中心に販売を行う「C1000」も都市部を中心に販売機会が減少いたしました。
以上の結果、健康食品事業の売上高は201億5百万円、前期比27.9%の減収となりました。営業利益は、徹底したコスト削減に努めるも大幅減収の影響を吸収するに至らず、4億13百万円の損失となり、前期からは9億34百万円の減益となりました。結果、売上高営業利益率は△2.1%となり、前期より3.9pt減少いたしました。
<海外食品事業> 連結対象期間:主として2020年1月~12月
米国豆腐事業は、健康志向や環境意識を背景とする植物性タンパク市場の拡大を背景に、コロナ禍のなかでも販売を伸ばしました。しかし、2020年1月稼働のロサンゼルス工場新ラインに係る減価償却に加え、当該新ラインの立ち上げに課題を抱え、安定稼働に通年を要したことでコストが嵩んだこともあり、増収減益となりました。
中国カレー事業は、コロナ禍において内食需要が底上げされるなか、内陸部においても家庭用製品の間口が拡大し増収となりました。利益面では、増収効果に加え、上期において事業活動の制限からコスト投下量が縮小したこともあり増益となりました。なお、業務用製品に関しても経済活動再開後は回復基調にあります。
タイ機能性飲料事業は、物品税導入によりコストが増加したものの、生産供給量の大幅な増強により需給ギャップが解消されたことで市場拡大が進み、増収増益となりました。しかし、期末にかけて流通在庫の滞留が生じ、第4四半期連結会計期間の業績は前年を下回りました。
以上の結果、海外食品事業の売上高は354億72百万円、前期比19.3%の増収、営業利益は45億84百万円、前期比11.9%の増益となりました。結果、売上高営業利益率は12.9%となり、前期より0.9pt減少いたしました。
<外食事業> 連結対象期間:㈱壱番屋は2020年3月~2021年2月、海外子会社は2020年1月~12月
当事業セグメントは、自治体からの営業自粛要請やインバウンド需要の消失等、新型コロナウイルス感染症の拡大を背景に非常に厳しい事業環境となりました。㈱壱番屋は、感染防止対策に積極的に取り組み、安心してご来店いただける店舗運営に努めると共に、宅配やテイクアウトの拡大に努めましたが、店舗売上高が前年水準を大きく下回ったことが影響し、減収減益となりました。このような環境のなか同社では、2020年8月にインド1号店を出店したほか、同12月には北海道でジンギスカン店を展開する㈲大黒商事(現㈱大黒商事)を連結子会社化するなど、成長に向けた取組を推進しております。また、フランチャイズ加盟店に対しては、加盟保証金制度を廃止し全額返還する等の資金繰り支援策を実施しております。
以上の結果、㈱壱番屋とその他外食子会社を含む外食事業の売上高は445億67百万円、前期比15.1%の減収、営業利益は6億60百万円の損失、前期からは8億62百万円の減益となりました。結果、売上高営業利益率は△1.5%となり、前期より1.9pt減少いたしました。
なお、コロナ禍による事業環境の悪化をふまえ、第2四半期連結会計期間において、同社を連結子会社とした際に発生したのれんおよびその他の無形固定資産の減損処理を行い、特別損失を計上しております。これによりのれんについては当期でその償却を完了しております。
<その他食品関連事業>
㈱デリカシェフは、焼成パン類の不振から販売が減少したほか、総菜類の生産品目減少の影響もあり減収減益となりました。
㈱ヴォークス・トレーディングは、業務用製品の荷動きが鈍化したものの、旅費交通費等の固定費が抑制されたことから減収増益となりました。
以上の結果、その他食品関連事業の売上高は455億42百万円、前期比1.6%の減収、営業利益は17億70百万円、前期比1.2%の減益となりました。結果、売上高営業利益率は3.9%となり、前期並みの水準を確保しております。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
生産高(百万円)
前期比(%)
香辛・調味加工食品事業
131,919
+3.8
健康食品事業
18,254
△29.6
海外食品事業
17,862
+14.0
外食事業
12,151
△12.0
その他食品関連事業
20,010
△3.9
合計
200,195
△1.6
(注)1.金額は販売価格により算出しております。
2.上記の金額には消費税等は含まれておりません。
② 受注状況
主要製品の受注生産は行っておりません。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
販売高(百万円)
前期比(%)
香辛・調味加工食品事業
146,340
+0.9
健康食品事業
20,105
△27.9
海外食品事業
35,472
+19.3
外食事業
44,567
△15.1
その他食品関連事業
45,542
△1.6
小計
292,025
△3.1
調整(消去)
△8,271
-
合計
283,754
△3.4
(注)1.調整(消去)の内容は、セグメントに配分していない損益およびセグメント間取引に係る相殺消去であります。
2.当連結会計年度における主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先
前連結会計年度
当連結会計年度
金額(百万円)
割合(%)
金額(百万円)
割合(%)
加藤産業㈱
37,390
12.7
39,165
13.8
三菱食品㈱
20,958
7.1
21,100
7.4
3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)財政状態
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べて19億56百万円増加し3,691億50百万円となりました。
流動資産は、前連結会計年度末に比べて72億56百万円増加し1,569億9百万円、固定資産は、前連結会計年度末に比べて53億円減少し2,122億41百万円となりました。
流動資産の増加の主な要因は、受取手形及び売掛金が46億70百万円、有価証券が13億78百万円減少した一方で、現金及び預金が124億81百万円、商品及び製品が12億14百万円増加したことなどによるものです。
固定資産の減少の主な要因は、退職給付に係る資産が67億85百万円増加した一方で、契約関連無形固定資産が50億85百万円、商標権が46億54百万円、のれんが22億50百万円減少したことなどによるものです。
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べて44億5百万円減少し818億59百万円となりました。
流動負債は、前連結会計年度末に比べて18億10百万円減少し513億27百万円、固定負債は、前連結会計年度末に比べて25億94百万円減少し305億32百万円となりました。
流動負債の減少の主な要因は、未払金が8億71百万円増加した一方で、支払手形及び買掛金が29億25百万円減少したことなどによるものです。
固定負債の減少の主な要因は、長期預り保証金が17億14百万円減少したことなどによるものです。
当連結会計年度末の純資産は、非支配株主持分が減少した一方で、退職給付に係る調整累計額が増加したことや、親会社株主に帰属する当期純利益により利益剰余金が増加したことなどから、前連結会計年度末と比べて63億61百万円増加の2,872億91百万円となりました。
この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の67.7%から69.9%となり、1株当たり純資産が2,469円20銭から2,562円29銭となりました。
(3)キャッシュ・フロー
当連結会計年度のキャッシュ・フローにつきましては、営業活動によるキャッシュ・フロー231億81百万円に対し、「有形固定資産の取得」「有価証券の取得」などの投資活動によるキャッシュ・フロー△85億58百万円、「短期借入れ」「短期借入金の返済」「配当金の支払」などの財務活動によるキャッシュ・フロー△61億72百万円を減じました結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は783億43百万円となり、期首残高より84億73百万円増加いたしました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動による資金の増加は231億81百万円(前期比△10億37百万円)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益120億49百万円、減損損失100億75百万円、減価償却費100億35百万円、法人税等の支払額75億48百万円によるものであります。
また、前連結会計年度に比べての減少は、税金等調整前当期純利益の減少(前期比△86億33百万円)、たな卸資産の増減額の増加(前期比△33億33百万円)、減損損失の増加(前期比+96億88百万円)などが要因であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金の減少は85億58百万円(前期比△22億2百万円)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出88億19百万円、有価証券の取得による支出45億8百万円、投資有価証券の取得による支出44億59百万円、有価証券の売却による収入69億2百万円、投資有価証券の売却による収入45億34百万円などによるものであります。
また、前連結会計年度に比べての減少は、有価証券の取得による支出の増加(前期比△25億8百万円)、有価証券の売却による収入の減少(前期比△16億47百万円)、投資有価証券の売却による収入の減少(前期比△14億57百万円)、投資有価証券の取得による支出の増加(前期比△12億97百万円)、無形固定資産の取得による支出の増加(前期比△11億92百万円)、有形固定資産の取得による支出の減少(前期比+60億97百万円)などが要因であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動による資金の減少は61億72百万円(前期比+13億94百万円)となりました。これは主に短期借入金の返済による支出476億63百万円、配当金の支払額46億34百万円、短期借入れによる収入479億65百万円などによるものであります。
また、前連結会計年度に比べての増加は、短期借入れによる収入の増加(前期比+131億19百万円)、短期借入金の返済による支出の増加(前期比△122億81百万円)などが要因であります。
(4)資本の財源及び資金の流動性について
(財務戦略の基本的な考え方)
当社グループは、財務体質の健全性の維持と資金効率の向上を両立しつつ、企業価値向上のために資金を適切に配分することを財務戦略の基本方針としております。
財務体質の健全性の維持に関しては、「シングルA(安定的)」以上の信用格付の取得・維持を目指し、信用力および透明性の向上を図ります。
資金効率の向上に関しては、当社および国内子会社においてCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入することにより、国内子会社における余剰資金を当社へ集中し、一元管理を行うことで資金効率の向上を図っております。
企業価値向上に関しては、第七次中期計画の期間中に、4系列バリューチェーンの成長領域へ400億円、既存領域へ200億円、デジタル変革・環境領域へ100億円の、計700億円の事業投資を計画しております。また、当社グループが保有するいわゆる政策保有株式の一部売却を原資とした、120億円の自己株式取得を計画しております。
なお、新型コロナウイルス感染症の拡大は、社会・経済・生活様式に大きな影響を与えることとなり、外食需要の減少から一部事業では厳しい状況が続く一方、内食需要の増加から家庭用製品が伸長し、当社グループは財務体質の健全性を維持しております。
食品企業の使命として人命の安全を確保しながらも製品供給を果たすため、今後も財務体質の健全性の維持および向上に努めてまいります。
(経営資源の配分に関する考え方)
当社グループは、適正な手元資金の水準について、事業上の資金を回収するまでの運転資金調達期間(売上高の約1.8か月分)の観点と不測の事態に対応できる安全資産の額の観点から検証し、適正な水準を設定しております。適正な水準を超える分については、追加的に配分可能な経営資源と認識し、企業価値向上のために既存領域での生産性向上による収益力強化と国内外の成長事業領域への経営資源の重点配分に取り組んでまいります。
(資金需要の主な内容)
当社グループの資金需要は、営業活動に係る資金支出では、製品製造のための材料費、労務費、経費、販売費及び一般管理費等の営業費用などがあります。投資活動に係る資金支出は、香辛・調味加工食品事業における「食の外部化」への対応強化に向けた大容量レトルトライン生産設備への投資、将来の需要変化への対応を図る需給・生産管理一貫システムへの投資、海外食品事業(米国豆腐事業)における健康志向や環境意識の高まりを背景に強い需要の続く豆腐製品製造設備への投資、外食事業における店舗への投資などがあります。また、持続的な成長の実現のため、既存領域だけでなく、4系列バリューチェーンによる成長実現を目指し、成長事業領域や新規領域についても、投資を行ってまいります。
(資金調達)
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、営業活動によるキャッシュ・フローを内部的な資金の源泉と考えており、設備投資のための資金については、主として内部資金により充当することとしており、必要に応じて金融機関からの借入金や社債の発行等により充当することとしております。
(5)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
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