【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績
当連結会計年度は、前年から続く原油やその他原材料価格の上昇、サプライチェーンの混乱などがロシアのウクライナ侵攻によりさらに悪化して世界中で物価上昇を引き起こしたため、米国をはじめ各国がインフレ抑制に向けて金融引き締めのスタンスに転じました。日本は金融緩和策を継続したため、急速かつ大幅な円安が進行し、日本国内においても原材料・燃料価格が大幅に上昇しました。米国では急速な利上げにより住宅消費の落ち込みが続き、個人消費も減速が顕著になっており、景気後退が予想されています。米国の景気後退の当社売上に与える影響、および米国の利上げ停止による為替動向反転の影響が懸念されます。
このような状況下、自動車向けシート素材の売上が大きく貢献するとともに、物流の混乱や供給能力の不足の逆風もある中で航空機向け、レジャー向け、家具向けが売上を伸ばし、全ての用途向けで伸びを確保した結果、前年比で大幅な増収となりました。原材料・燃料価格の高騰や輸送コストの上昇に加えて、クレーム対応費用、株式報酬費用、人件費等の増加があったものの、想定より円安で推移したことに加え、販売価格の一部改訂、生産量増加に伴う工場稼働の改善により、利益面においても前年を大幅に上回りました。
この結果、2022年12月期の売上収益は195億95百万円(前年同期比38.6%増)、営業利益は31億97百万円(同115.9%増)、税引前当期利益は28億65百万円(同112.7%増)、当期利益は20億51百万円(同108.0%増)となりました。
用途別の売上収益の概況は、次のとおりであります。
家具用
ヘルスケア向けとコントラクト家具向けは職場環境改善の動きを背景に引き続き堅調に推移し、年後半のインフレとリセッション懸念の中でも売上増となりました。一方、住宅向けや販売店向けは配送遅延による製品不足の影響を受けたものの、家具向け全体の売上は前年を上回りました。
この結果、家具用の売上収益は53億75百万円(同32.4%増)となりました。
自動車用
自動車向けシート素材の売上は、プログラムが極めて堅調で前年比で高い伸び率を実現したことから、小型部品用の売上に減速が見られたものの、自動車向け全体の売上は前年を大きく上回りました。
この結果、自動車用の売上収益は80億78百万円(同44.5%増)となりました。
航空機用
民間航空機向けは、旅客需要は急増したものの、航空各社が内装の更新を来期に先送りしたことで減少に転じました。一方、ビジネスジェット向けは、世界的な物流網の混乱による納期遅れを懸念してメーカー各社が在庫積み増しに動き需要が急増しました。納期の遅れは第4四半期には幾分改善したものの需要は底堅かったことから、航空機向け全体の売上は前年を大きく上回りました。
この結果、航空機用の売上収益は16億19百万円(同57.2%増)となりました。
その他
その他事業分野には、RV・アパレル・船舶・トラック向けなどが含まれます。レジャー関連向けのトレンドが定着する中で前期から堅調なRV向けや船舶向けの需要が下期も継続しました。小型トラックやバス向けも市況反転を実感できるものでした。アパレル向けは底堅い需要があり伸長しました。これらの分野が牽引しその他売上全体は前年を上回りました。
この結果、その他の売上収益は45億23百万円(同31.0%増)となりました。
② 財政状態
当連結会計年度末の資産につきましては、前連結会計年度末に比べ34億79百万円増加し、348億61百万円となりました。これは主に、売上収益の増加に伴う営業債権及び棚卸資産の増加、為替相場が円安に推移した影響により外貨建ののれん及び無形資産が増加したことによるものです。
負債につきましては、前連結会計年度末に比べ23億35百万円増加し、216億38百万円となりました。これは主に、運転資金調達に伴う有利子負債及び未払法人所得税等が増加したことによるものです。
資本につきましては、前連結会計年度末に比べ11億44百万円増加し、132億24百万円となりました。これは主に自己株式取得による減少はあったものの当期利益の計上及びその他の資本の構成要素の増加があったことによるものです。
③ キャッシュ・フロー
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ5億54百万円増加し、40億74百万円(前年同期比15.7%増)となりました。これは主に、棚卸資産の増加、利息及び法人税の支払額及び自己株式の取得があったものの、税引前当期利益の計上及び減価償却費及び償却費の計上があったことによるものです。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は21億66百万円(同4.2%増)となりました。これは主に棚卸資産の増加及び利息及び法人税の支払があったものの、税引前当期利益の計上及び減価償却費及び償却費の計上があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果獲得した資金は4億25百万円(前年同期は9億57百万円の使用)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出があったものの、貸付金の回収があったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は21億12百万円(前年同期は7億54百万円の使用)となりました。これは主に配当金の支払い及び自己株式の取得によるものです。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループはポリウレタンレザーの専門メーカーであり、当該事業以外の異なる事業を営んでおりません。
当連結会計年度の生産実績は次のとおりであります。
用途別の名称
当連結会計年度
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
前年同期比(%)
ポリウレタンレザー(百万円)
10,529
116.2
(注)金額は販売価格によっております。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績は次のとおりであります。
用途別の名称
受注高
前年同期比(%)
受注残高
前年同期比(%)
ポリウレタンレザー(百万円)
21,134
130.3
5,069
143.6
(注)金額は販売価格によっております。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績は次のとおりであります。
用途別の名称
当連結会計年度
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
前年同期比(%)
ポリウレタンレザー(百万円)
19,595
138.6
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下「連結財務諸表規則」という。)第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たりまして、当社グループの経営陣は連結決算日における資産・負債の報告数値及び偶発債務の開示並びに報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積り及び仮定設定を行っております。これらの見積り及び判断・評価は、過去の実績や状況に応じ合理的であると考えられる様々な要因等に基づき行っておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるためにこれらと異なる場合があります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは単一事業のため、経営成績数値は上記「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績」に記載のとおりであります。
当連結会計年度の業績は以下の要因により実現いたしました。
売上収益
顧客からの受注増加に対応して、品質を維持しつつ生産増を可能にする体制を整備した結果、自動車向けシート素材の売上が大きく貢献するとともに、円安で推移したこともあり、全ての用途向けが前期比で大幅な増収となりました。
・医療機関や歯科医院の設備需要が引き続き強くヘルスケア向けは販売増
・職場環境改善の動きを背景にオフィス家具向けの販売が拡大
・住宅向けや販売店向けで配送遅延による製品不足の影響を受ける
・自動車向けシート素材のプログラムが好調に推移して大幅な販売増
・世界的な物流網の混乱による納期遅れを懸念してメーカー各社が在庫積み増しに動きビジネスジェット向けは急伸
・民間航空各社が内装の更新を来期に先送りしたことの影響を受ける
・レジャー関連向けのトレンドが定着する中で堅調なRV、船舶向けは販売増
・品質が高く評価されてアパレル向けは需要が底堅く伸長
営業利益及び税引前当期利益
販売も生産も大幅増となる中で、販売価格の一部を改定し、稼働率上昇による原価低減を推進できたため、原材料費・燃料費・物流費の上昇、販売費の増加や金利上昇等、複数のコストアップ要因を吸収し、円安で推移したこともあり、前期比で大幅な増益となりました。
・販売価格の一部改定およびサーチャージの実施
・生産量が増加したことにより工場稼働率が改善して製造原価が低下
・ウクライナ情勢や円安などに起因する原材料の高騰・燃料費の上昇
・サプライチェーンの混乱に起因して物流費が上昇
・販売増でクレーム対応を含めた品質改善費用や人件費等の増加
・世界的なインフレへの懸念や米国の金融引き締めによる金利上昇
・想定より円安で推移して為替差益増
当期利益
人件費関連の税額控除が適用されて法人税額が減少することは無かったものの、前期比で大幅な増益となりました。
③ 当連結会計年度の財政状態の分析
当連結会計年度末の資産につきましては、前連結会計年度末に比べ34億79百万円増加し、348億61百万円となりました。これは主に、売上収益の増加に伴う営業債権及び棚卸資産の増加、為替相場が円安に推移した影響により外貨建ののれん及び無形資産が増加したことによるものです。
負債につきましては、前連結会計年度末に比べ23億35百万円増加し、216億38百万円となりました。これは主に、運転資金調達に伴う有利子負債及び未払法人所得税等が増加したことによるものです。
資本につきましては、前連結会計年度末に比べ11億44百万円増加し、132億24百万円となりました。これは主に自己株式取得による減少はあったものの当期利益の計上及びその他の資本の構成要素の増加があったことによるものです。
④ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループは、事業活動における収益力の向上に加え、運転資金の効率化等により多様化する顧客ニーズに対応した設備投資を行うためのキャッシュ・フローの獲得を進めております。
当社グループは設備投資に必要な資金については自己資金の利用とともに、必要に応じて銀行借入金により調達しております。
資金の流動性については、金融機関との間に結んでいる当座貸越契約に加えセーフティネット保証融資や新型コロナウイルス感染症特別貸付等を活用することにより当連結会計年度に保有している40億74百万円の現金及び現金同等物を確保し、資金需要にタイムリーに対応ができる状況を維持しております。
⑤ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等についての分析
当社グループは2022年2月に公表した中期経営計画における2022年目標を売上収益161億円、営業利益20億円、当期利益11億円、EBITDA 35億円としておりました。
これに対し2022年の通期業績は売上収益195億95百万円、営業利益31億97百万円、当期利益は20億51百万円、EBITDA 49億91百万円となり、目標を上回りました。主な要因は② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容に記載のとおりです。
2022年の業績を踏まえ、2023年2月に2023年~2025年中期経営計画を公表しました。2025年の目標を売上収益291億円、営業利益49億円、当期利益は29億円、EBITDA 70億円と掲げ、目標達成に向けて①成長の複線化 ②規模拡大・収益性改善による財務企業価値の向上 ③サステナビリティの重視による非財務企業価値の向上を進めてまいります。
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