【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
a.経営成績の概要
当連結会計年度におけるわが国経済は、Withコロナに向けた政策が進められ、景気は緩やかに回復に向かいました。新型コロナウイルス感染症については、一時的に感染者数が増加する時期はあったものの新たな行動制限は実施されず、政府による旅行支援策、水際対策の緩和や感染症法上の分類変更の決定等もあり、経済・社会活動の正常化に向けた動きが進んでいます。一方、ウクライナ情勢の緊迫化に伴う原材料価格の高騰、日米の金利差による円安等により、消費者物価の高騰が続きました。また、各国における金利の引き上げの継続や金融不安など、先行きは不透明な状況にあります。
当水産流通業界におきましては、新型コロナウイルス感染症の影響は薄れつつあり、外食を中心に消費は持ち直しました。円安により輸出関係は順調に推移していますが、原材料価格や物流コストの上昇もあり、食品全般の価格上昇が続いています。水産物においても輸入魚を中心に為替の変動、漁獲量の減少、海外での需要の回復により仕入価格は上昇し、引き続き魚価は高値圏となっています。また物価上昇による消費マインドの低下、コロナ禍での生活様式の変化もあり、引き続き販売環境は厳しい状況が続いております。
このような状況のもと、当社グループでは、安全・安心な水産物を安定供給するという社会的使命を果たすべく、産地出荷者とのネットワークの強化等に努めてまいりました。
当連結会計年度の経営成績は、売上高は984億58百万円(前期比10.9%増)となりました。損益面では、営業利益は4億32百万円(前期は営業損失1億90百万円)、経常利益は5億98百万円(前期は経常損失1億19百万円)、親会社株主に帰属する当期純利益は7億1百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失18百万円)となりました。
各セグメントの経営成績は次のとおりであります。
(水産物販売事業)
水産物販売事業は、夏場に新型コロナウイルス感染症の影響を一時的に受けましたが、通期ではその影響も軽減され、業績は回復基調となりました。供給面では、サンマ、サバ、イカといった大衆魚などの漁獲量は依然として低迷しており、養殖魚もブリ、マグロ、タイなど在池量の減少もあり、生鮮水産物の供給量は減少しました。輸入水産物については、サケ、カニなど一部の魚種で業界全体の在庫過多により価格が下落しましたが、水産物全般の価格は高値傾向で推移しました。販売面では、当社の販売拠点である中央卸売市場では、魚価高により取扱数量は減少したものの、外食需要の回復によりマグロ、貝類、ウニなどの高単価商材が伸び、取扱高は増加しました。また、海外販売が比較的順調に推移したこと、加えて、積極的な集荷・販売と粗利率の改善や各種経費の節減に取り組み、売上高・セグメント利益ともに前期の実績を上回りました。
その結果、売上高は982億65百万円(前期比10.9%増)となり、セグメント利益は5億66百万円(前期はセグメント損失57百万円)となりました。
(冷蔵倉庫等事業)
冷蔵倉庫等事業は、売上高が2億46百万円(前期比4.8%増)となりましたが、利益面では電気料金の高騰等から売上原価が増加したことによりセグメント利益は0百万円(前期比93.5%減)となりました。
b.財政状態の概要
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は171億15百万円となり、前連結会計年度末に比べ14億円増加しました。これは主に現金及び預金が6億23百万円、売掛金が7億53百万円増加したこと等によるものであります。固定資産は53億73百万円となり、前連結会計年度末に比べ17百万円増加しました。
この結果、総資産は224億88百万円となり、前連結会計年度末に比べ14億18百万円増加しました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は105億3百万円となり、前連結会計年度末に比べ7億56百万円増加しました。これは主に短期借入金が9億円増加した一方で、支払手形及び買掛金が2億79百万円減少したこと等によるものであります。固定負債は37億51百万円となり、前連結会計年度末に比べ17百万円減少しました。
この結果、負債合計は142億55百万円となり、前連結会計年度末に比べ7億39百万円増加しました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は82億32百万円となり、前連結会計年度末に比べ6億78百万円増加しました。これは主に親会社株主に帰属する当期純利益を7億1百万円計上したこと等によるものであります。
この結果、自己資本比率は36.6%(前連結会計年度末は35.9%)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、27億6百万円(前連結会計年度末 比6億23百万円増)となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果支出した資金は3億49百万円(前連結会計年度は20億円の支出)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益を5億88百万円計上した一方で、売上債権が6億64百万円、棚卸資産が3億4百万円増加したこと等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果得られた資金は1億23百万円(前連結会計年度は2億80百万円の収入)となりました。これは主に貸付金の回収(入出金差額)により1億78百万円獲得したこと等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は8億41百万円(前連結会計年度は4億28百万円の収入)となりました。これは主に短期借入金により9億円調達したこと等によるものであります。
また、キャッシュ・フローの指標のトレンドは以下のとおりであります。
(キャッシュ・フローの指標)
2019年3月期
2020年3月期
2021年3月期
2022年3月期
2023年3月期
自己資本比率(%)
32.1
34.2
38.1
35.9
36.6
時価ベースの自己資本比率(%)
15.0
14.4
16.3
15.4
15.2
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)
2.3
-
9.4
-
-
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)
50.3
-
14.9
-
-
(注) 自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
※各指標はいずれも連結ベースの財務数値により算出しております。
※株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
※営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
※2020年3月期、2022年3月期及び2023年3月期のキャッシュ・フロー対有利子負債比率及びインタレスト・カバレッジ・レシオについては、営業キャッシュ・フローがマイナスのため記載しておりません。
③仕入及び販売の実績
a.商品仕入実績
当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
水産物販売事業(百万円)
91,199
108.7
冷蔵倉庫等事業(百万円)
-
-
合計(百万円)
91,199
108.7
b.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
水産物販売事業(百万円)
98,265
110.9
冷蔵倉庫等事業(百万円)
246
104.8
合計(百万円)
98,511
110.9
(注)セグメント間の内部振替前の数値によっております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する記述は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。
①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(経営成績)
当連結会計年度の経営成績は、売上高については984億58百万円(前期比10.9%増)となりました。新型コロナウイルス感染症の影響が薄れつつある中、漸く経済・社会活動が正常化し、個人消費や企業収益が回復してきました。それに伴い、飲食店・ホテル・旅館等の業務筋の需要が上向き、高価格帯の生鮮水産品を中心に売上が伸びたこと、並びに漁獲量の減少や各種コストの増加により単価が上昇したことで頭書のとおり1割強の増収となりました。
利益面では営業利益4億32百万円(前年度は1億90百万円の営業損失)、経常利益5億98百万円(前年度は1億19百万円の経常損失)といずれも増益となりました。これは売上増収効果に加え、売上総利益率が改善したことが要因です。具体的には、魚価高騰が続く中、それに応じた適正価格での販売強化に取り組みました。一部の在庫商品で収益性の低下による簿価切下げを行ったものの、スリミの販売や海外販売が比較的順調に推移したことも増益の要因となりました。そのほか、各種経費節減策の実行が増益に寄与しました。また、2023年3月1日付けで当社の資本金を1億円に減資いたしました。これは、今後の当社における持続的な成長と中長期的な企業価値向上を実現するための経営戦略の一環として、資本政策の柔軟性および機動性の確保と、財務内容の健全性の向上を目的としたものです。この減資による効果や、前期に貸倒引当金を計上していた回収懸念債権を全額回収できたことも利益押し上げに繋がりました。
当社グループでは、成長性と収益性を確保するという観点から、企業収益の基本的な指標となる「売上高」及び「営業利益」「経常利益」を収益性判断の重要な指標と位置付けております。そうした中2019年度から2021年度を対象期間とする3カ年中期経営計画については新型コロナウイルス感染症拡大という想定外の事象により経営成績は大きく影響を受けました。当連結会計年度は、同感染症の収束がまだ見通せない状況下で、当社グループの営業拠点である卸売市場が、いかなる環境下でも食の安定供給を果たすべく食品流通の中核を担うという使命を全うするために、まずは単年度計画の達成をめざすこととしました。その2022年度単年度計画として掲げた、売上908億円、営業利益2億10百万円、経常利益3億30百万円につきましては、上述の通りいずれも上回ることができました。
それを踏まえ、2023年度から2025年度を対象とする新たな中期経営計画を策定いたしました(2023年5月12日付「大水グループ「中期経営計画(2023年度-2025年度)」に関するお知らせ」にて開示)。この中期経営計画を策定するにあたり、水産物卸売業を取り巻く様々な環境の変化に対応し、生産者と生活者の求めるものを最適につなぐ水産物を中心とした卸売企業として永続的な活動をすべく、まずは当社の<2030年度のあるべき姿>を描きました。それは『活き活きと水産物の価値をお客様に提供し続ける企業』であります。そして、この<2030年度のあるべき姿>に到達するために、2023年度から2025年度に実行すべきテーマを定め、2025年度の連結ベースの数値目標を「売上高1,040億円、営業利益6億90百万円、経常利益7億90百万円」といたしました。
その初年度となる2023年度は、連結ベースで「売上高1,000億円、営業利益4億70百万円、経常利益6億30百万円」の業績予想(2023年5月12日付「2023年3月期決算短信」にて開示)といたしました。今後も魚価高およびコスト高による収益確保が困難な状況は継続するものと思われます。まだ先行き不透明な状況が続きますが、人流増加により、宿泊施設・外食などの業務筋やインバウンド需要の回復が見込まれます。また、海外マーケットにおける水産物の需要は、今後更に伸びると予想しております。当社グループはこれらの需要増を的確にキャッチし売上増加に努め、数値目標達成に向け取り組んでまいります。
(財政状態)
当連結会計年度末の財政状態は、資産合計が224億88百万円(前期比14億18百万円増)、負債合計については、142億55百万円(前期比7億39百万円増)となりました。資産合計が増加した要因は「現金及び預金」が6億23百万円、「売掛金」が7億53百万円増加したことによります。これは当社の販売拠点である中央卸売市場での取扱高が増加したことや輸入品の販売の強化によるものであります。負債では有利子負債(短期、長期借入金および社債)が9億円増加しております。
(セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討の内容)
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討については、当社グループの報告セグメントにおける水産物販売事業の比率が極めて高いため、上記の事業全体に係る記載内容と概ね同一と考えられます。よって、セグメントごとの記載を省略しております。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
(キャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは3億49百万円の支出(前期は20億円の支出)となりました。これは当連結会計年度は税金等調整前当期純利益を5億88百万円計上した一方で、売上債権・棚卸資産の増加や、仕入債務の減少によるものであります。
また、財務活動によるキャッシュ・フローの収入は主に借入金等の増加によるものであり、在庫商品調達の資金の確保によるものであります。
(資本の財源及び資金の流動性)
当連結会計年度末の資金調達の総額は41億円(前期比9億円増)となりました。これらの内訳は、流動負債に短期借入金26億50百万円(前年同期比9億円増)、1年内返済予定の長期借入金2億50百万円、固定負債に長期借入金6億円、社債6億円(ともに前期末と同額)となっております。資金調達の総額に占める流動・固定の比率は資産のバランスに見合った長期資金を調達する方針としております。2024年3月期の資金支出については、重要な資本的支出は見込んでおりません。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されており、重要な会計方針につきましては、≪第5 経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項≫ に記載しているとおりであります。この連結財務諸表の作成にあたっては、会計基準の範囲内で一定の見積りがなされ、引当金の計上等の数値に反映されております。これらの見積りについては、必要に応じて見直しを行っておりますが、不確実性があるため、実際の結果が見積りと異なる場合があります。
なお、この連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、≪第5 経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項≫ に記載しているとおりであります。