【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
当連結会計年度における当社及び連結子会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社及び連結子会社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 令和2年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、当該会計基準等を遡って適用した後の数値で前連結会計年度との比較・分析を行っています。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものです。
(1) 経営成績の状況
①事業全体の状況当連結会計年度(令和4年1月1日~令和4年12月31日)における日本経済は、非製造業の景況感は改善したものの、製造業の景況感は、半導体市場の縮小に加え、資源価格の上昇や円安の進行によるコスト高により利益が圧迫され、素材業種を中心に悪化しました。先行きについても、海外経済の減速のリスクやコスト高の影響により、引き続き慎重とならざるを得ない状況といえます。このような環境下で当社及び連結子会社は、いつの時代もお客様や社会から必要とされる企業を目指し、「業界『最速』『最短』『最良』の納品を実現できる会社になりたい。」等、11項目の「ありたい姿」(能力目標)実現のための取組みを継続しました。当社は「がんばれ!!日本のモノづくり」を企業メッセージに掲げ、プロツールの供給を通じて、お客様にとって最高の利便性を提供することが、結果として社会貢献につながると考えています。また環境活動や社会活動・ガバナンスも含めた未来への取組みとして「やさしさ、未来へ」基本方針の下、トラスコの事業活動が社会価値と企業価値の両方を生み出すものとする「TSV活動(TRUSCO Shared Value)」に取り組んでいます。取扱アイテムの拡大とともに、在庫アイテム数を約56万アイテムまで拡充し、戦略的に即納体制を強化したことにより、資源価格の上昇や商品の欠品が増加する中でも機会損失を最小限にとどめました。また、置き薬ならぬ置き工具「MROストッカー」の設置や「荷合わせ・ユーザー様直送サービス」の利用促進をはじめ、サプライチェーン全体の業務効率化を図り、温室効果ガス排出量の抑制、エネルギーや梱包資材などの資源消費の削減に努めました。さらに、当社の競争力の源泉は「独創力」にあると考え、令和4年1月付けで人事部を新設し、キャリアプランに合わせた新たなコースを設けるなど、独創的な人材を生み出すための人事制度改革を実施することで、各施策を効果的に実行できる組織づくりに取り組みました。それらの取組みが評価され、令和5年1月に厚生労働省が主催する「グッドキャリア企業アワード2022」において、大賞を受賞しました。また、令和4年6月には経済産業省と東京証券取引所が共同で選定する「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)」において、「DX銘柄2022」に選定されました。当社は令和2年に「DXグランプリ2020」を受賞し、3年連続で「DX銘柄」に選定されています。 令和4年9月には得意先様向けに「トラスコ オレンジブック.Com」にて「仕入先在庫連携サービス」を開始し、DX化を推進することで利便性を向上しました。その結果、当連結会計年度における売上高は2,464億53百万円(前年同期比8.6%増)となりました。また、売上総利益率は21.2%(前年同期比0.2ポイント増)となり、売上総利益は521億60百万円(前年同期比9.4%増)となりました。販売費及び一般管理費は、売上の拡大に伴う出荷量増による運賃及び荷造費の増加、物価高騰が続く中で従業員の生活支援を目的とした臨時賞与を支給したことなどにより、その合計額は374億93百万円(前年同期比8.1%増)となりました。以上の結果により、営業利益は146億67百万円(前年同期比12.8%増)、経常利益は150億65百万円(前年同期比11.1%増)、株式の売却による特別利益が1億94百万円計上されましたが、前連結会計年度に土地の売却による特別利益を34億66百万円計上しているため、親会社株主に帰属する当期純利益は106億26百万円(前年同期比8.4%減)となりました。
②セグメントごとの経営成績1)ファクトリールート(製造業、建設関連業等向け卸売)ファクトリールートにおいては、全国に28か所ある物流センター及び全国に29か所ある在庫保有支店による欠品対策などの在庫施策を実施し、得意先様の利便性向上に努めました。また、ユーザー様の工場に、置き薬ならぬ置き工具「MROストッカー」を設置することで、工場内でいつでも商品の調達が可能となるサービスの拡大や、サプライチェーン全体の物流コストや手間を大幅に削減できる「荷合わせ・ユーザー様直送サービス」、リユースの促進につながる修理サービスの修理工房「直治郎」のPRを強化するなど、環境負荷の軽減にもつながる営業活動を行いました。これらの活動により、設備投資に係る物流保管用品、生産工場の稼働に係るハンドツールや環境安全用品の売上高が増加しました。その結果、売上高は1,706億6百万円(前年同期比5.1%増)、経常利益は108億46百万円(前年同期比17.1%増)となりました。
2)eビジネスルート(ネット通販企業等向け販売)
eビジネスルートにおいては、3,272社の仕入先様との協業を基軸に、約316万アイテムに及ぶ商品データベースと得意先様のシステムとの連携を強化し、得意先様毎のご要望に合わせた物流加工を行いました。また、4か所の物流センターに6ライン導入しているI-Pack®(アイパック)[高速自動梱包出荷ライン]を活用したユーザー様への直送のニーズにお応えしました。これらの活動により、生産工場の稼働に係る環境安全用品や作業用品、設備投資に係る工事用品などの売上高が増加しました。その結果、売上高は515億76百万円(前年同期比16.2%増)、経常利益は34億77百万円(前年同期比3.5%増)となりました。
3)ホームセンタールート(ホームセンター、プロショップ等向け販売)
ホームセンタールートにおいては、建築現場などで働くユーザー様をターゲットとしたプロショップなど、各得意先様に対し売場の改善提案や商品納入権の獲得に向けた営業活動を強化しました。また、ホームセンター各社がEC事業を強化していることから、当社の約56万アイテムに及ぶ在庫と物流設備を活用したサービスを積極的に提案しました。これらの活動により、作業用品や環境安全用品などの受注が増え、売上高増加に寄与しました。その結果、売上高は221億62百万円(前年同期比20.7%増)、経常利益は3億93百万円(前年同期比13.6%減)となりました。
4)海外ルート(連結子会社業績、諸外国向け販売)
海外ルートにおいては、連結子会社であるTRUSCO NAKAYAMA CORPORATION(THAILAND)LIMITED 及びPT.TRUSCO NAKAYAMA INDONESIAの業績と海外部の諸外国向け販売を含めています。連結子会社では、在庫アイテムの見直しによりリードタイムを短縮し、また現地得意先様及び仕入先様の開拓を進めることで販売活動を強化しました。さらに、海外部の諸外国向け販売では、アジア太平洋地域を中心にEC企業との口座を開設するなど、取引を拡大しました。その結果、売上高は21億8百万円(前年同期比24.4%増)、経常利益は97百万円(前年同期は32百万円の経常損失)となりました。
③仕入及び販売の実績
a.仕入実績当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称
仕入高(百万円)
前期比(%)
ファクトリールート
136,453
3.7
eビジネスルート
40,220
17.7
ホームセンタールート
19,067
25.6
海外ルート
1,552
29.3
合計
197,293
8.3
(注) 金額は仕入価格によっています。
b.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称
販売高(百万円)
前期比(%)
ファクトリールート
170,606
5.1
eビジネスルート
51,576
16.2
ホームセンタールート
22,162
20.7
海外ルート
2,108
24.4
合計
246,453
8.6
④目標とする経営指標の達成状況目標とする経営指標及び当連結会計年度の実績、翌連結会計年度以降の目標数値については「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の「(2)目標とする経営指標」に記載のとおりです。
(2) 財政状態の状況(資産)当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べ25億50百万円増加の2,252億7百万円(前連結会計年度末比1.1%増)となりました。その主な要因は、売掛金が27億82百万円増加、商品が30億円増加、プラネット新潟の建設用地の取得などにより土地が6億51百万円増加し、短期借入金の一部返済により現金及び預金が20億68百万円減少、機械装置及び運搬具が9億80百万円減少、ソフトウエアが12億71百万円減少したことによるものです。(負債)当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べ60億24百万円減少の742億5百万円(前連結会計年度末比7.5%減)となりました。その主な要因は、買掛金が25億11百万円増加、短期借入金が70億円減少、未払法人税等が3億82百万円減少したことによるものです。(純資産)純資産合計は、前連結会計年度末に比べ85億75百万円増加の1,510億2百万円(前連結会計年度末比6.0%増)となりました。その主な要因は、利益剰余金が親会社株主に帰属する当期純利益106億26百万円の計上により増加し、配当金21億10百万円の支払などにより減少したことによるものです。自己資本比率は前連結会計年度末の64.0%から67.1%となりました。
(3) キャッシュ・フローの状況①当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況(営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動によるキャッシュ・フローは、121億78百万円の収入超過(前連結会計年度は159億26百万円の収入超過)となりました。その主な要因は、税金等調整前当期純利益152億59百万円、減価償却費66億90百万円、仕入債務の増加25億5百万円の収入に対し、売上債権の増加33億98百万円、法人税等の支払額49億5百万円、棚卸資産の増加29億6百万円の支出によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、51億65百万円の支出超過(前連結会計年度は45億96百万円の支出超過)となりました。その主な要因は、プラネット東関東自動倉庫及び堺ストックセンター新築にかかる工事費の支払など、有形固定資産の取得による支出38億18百万円、ソフトウエア構築費の支払など、無形固定資産の取得による支出11億14百万円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、91億10百万円の支出超過(前連結会計年度は22億43百万円の支出超過)となりました。その主な要因は、短期借入金の一部返済70億円、配当金の支払21億9百万円によるものです。以上の結果、当連結会計年度における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ20億49百万円減少し、394億円(前連結会計年度末は414億49百万円)となりました。②当社及び連結子会社の資本の財源及び資金の流動性について当社及び連結子会社は、事業活動のための適切な流動性の確保と健全な財政状態の維持のため、営業キャッシュフローの創出に努めています。当社及び連結子会社の主な資金需要は、商品の仕入れ、販売費及び一般管理費等の営業費用等の運転資金、並びに物流設備や情報システム等への設備投資資金です。これらの資金需要につきましては、基本的に営業キャッシュフロー及び自己資金を主な源泉と考えています。ただし、当社及び連結子会社の成長スピードを加速させるための設備投資を中心とした戦略的な資金につきましては、必要に応じて金融機関からの借入などにより調達することとしています。なお、安定的かつ効率的な資金調達に備えるため、複数の取引金融機関と当座貸越契約を締結しています(極度総額500億円、当連結会計年度利用残高100億円)。この方針に従い、当連結会計年度における運転資金、設備投資資金につきましては、自己資金並びに金融機関からの借入金を充当しています。今後も資本と負債のバランスに配慮しながら、必要な資金を調達してまいります。現預金につきましては、流動性確保のため、月商の1か月分を目安に保有する方針としていますが、前々連結会計年度(第58期)において、新型コロナウイルス流行による経済危機発生の可能性を踏まえ、金融機関から総額100億円を長期借入により調達してプールしており、引き続き不測の事態に備えて、資金の流動性を高めています。また、財務の健全性等について、客観的な視点で認識することを主たる目的に、毎期、格付投資情報センター(R&I)から発行体格付を取得しており、本報告書提出時点においては「A」(シングルA)となっています。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社及び連結子会社の連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち特に重要なものは以下の通りです。なお、新型コロナウイルス感染症拡大により、以下の見積りに重要な影響を与える事象は発生しておりません。しかしながら、今後の事業に与える影響につきましては、継続的に注視していく必要があるものと考えています。①固定資産の減損損失当社及び連結子会社は、「2 事業等のリスク」に記載のとおり、令和4年12月期連結貸借対照表において、有形固定資産を中心として、固定資産の総額は1,055億40百万円を計上しており、総資産に対する比率は46.9%となります。事業用資産は、管理会計上の事業所ごと、賃貸用資産及び遊休資産は物件ごとにグルーピングしています。経営環境の悪化や時価の著しい下落等が生じ、回収可能価額が帳簿価額を下回る状況となった場合には、減損損失が発生し、当社及び連結子会社の業績に重要な影響を与える可能性があります。②棚卸資産の評価当社及び連結子会社は、「2 事業等のリスク」に記載のとおり、令和4年12月期連結貸借対照表において、棚卸資産452億92百万円を計上しており、総資産に対する比率は20.1%となります。一定の保有期間が経過した滞留在庫について、商品の性質に応じた評価減率を設定し、評価を行っています。滞留在庫の定義や評価減割合が年度末時点の棚卸資産の収益性を適切に反映しているか否かに関して、商品等の過去の販売実績が将来の期間においても継続すると仮定して商品等の将来の販売可能性を見積もっています。将来における景気等の市場経済を取り巻くさまざまな外部要因や著しい技術改革等によって、商品等の販売実績が当初の想定を大きく下回った場合には、棚卸資産の評価額が変動し、当社及び連結子会社の業績に重要な影響を与える可能性があります。③繰延税金資産の評価将来の課税所得を見積り、回収可能性がある将来減算一時差異についてのみ、繰延税金資産として資産計上を行い、回収不能なものについては評価性引当額を計上しています。経営環境等の変化により、課税所得の見積りの変更が必要となった場合には、繰延税金資産の計上額が変動し、当社及び連結子会社の業績に重要な影響を与える可能性があります。