【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。
日本経済は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により制限されていた社会経済活動が正常化へと向かい、個人消費は緩やかに持ち直しの動きがみられたものの、原材料やエネルギー価格の高騰および急速な円安進行による物価上昇を受け、景気の先行きは不透明な状況で推移いたしました。
国内の自動車関連業界の動向といたしましては、世界的な半導体不足の影響を受け減少していた新車生産台数は回復基調へ転じましたが、ウクライナ情勢や中国政府によるゼロコロナ政策は、部品の供給不足と物流の停滞を招き、その影響は依然として長期化しております。また、中古車においても、新車減産により下取り車の流通量が減少し、中古車登録台数は前年を下回る低水準で推移いたしました。カー用品関連においては、物価上昇の影響を受けたものの、寒波や降雪により冬季用品の需要が高まりました。
このような環境下において、当社グループは、社会・クルマ・人のくらしの変化をいち早く捉えて適応することで市場競争力の向上に努めております。当社グループが向かうべき方向性を示す「5ヵ年ローリングプラン」では、より成長の可能性の高い領域への集中に加え、持続的成長に向け、ネットワークおよび事業基盤の強化と事業の推進を図っております。
① 連結損益状況
売上高、売上総利益
当社グループの当連結会計年度における売上高は、前年同期比3.3%増加の2,362億35百万円、売上総利益は前年同期比3.0%増加の794億62百万円となりました。
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(単位:百万円)
セグメントの名称
前連結会計年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
国内オートバックス事業
174,894
178,570
海外事業
10,763
13,052
ディーラー・BtoB・オンラインアライアンス事業
39,042
39,820
その他の事業
3,886
4,791
報告セグメント計
228,586
236,235
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
販売費及び一般管理費、営業利益
販売費及び一般管理費は、前年同期比3.3%増加の677億39百万円、営業利益は前年同期比1.5%増加の117億22百万円となりました。
デジタルマーケティング活動等の促進、情報基盤の強化および原油価格の高騰等による電気代の上昇により経費が増加いたしました。
セグメント別の従業員の状況
(単位:人)
セグメントの名称
2022年3月期
2023年3月期
増減
国内オートバックス事業
2,842
(706)
2,894
(757)
52
(51)
海外事業
548
(20)
571
(18)
23
(△2)
ディーラー・BtoB・オンラインアライアンス事業
670
(22)
657
(17)
△13
(△5)
その他の事業
136
(3)
163
(4)
27
(1)
全社(共通)
192
(28)
192
(26)
0
(△2)
合計
4,388
(779)
4,477
(822)
89
(43)
(注)従業員数は就業人員であり、出向者は除いております。臨時雇用者数は( )内に年間の平均人員を外数で記載しています。全社(共通)として記載されている従業員数は、管理部門に所属しているものであります。
営業外収益、営業外費用、経常利益
営業外収益は、前年同期比1.3%減少の18億54百万円となりました。営業外費用は、前年同期比8.3%減少の20億2百万円となりました。
持分法適用会社について収益性の低下が認識されたため、のれん相当額の減損損失を「持分法による投資損失」として営業外費用に計上しております。
この結果、経常利益は前年同期比2.9%増加の115億74百万円となりました。
特別利益、特別損失
特別利益は、退職給付制度終了益8億91百万円、移転補償金2億86百万円を計上いたしました。特別損失は、固定資産の減損損失8億97百万円を計上いたしました。
法人税等合計
法人税等合計は、前年同期比6億50百万円増加の46億40百万円となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、前年同期比3.3%増加の72億39百万円となりました。
② セグメントごとの経営成績
当社グループ 報告セグメントの概要
セグメントごとの売上高、利益又は損失
(単位:百万円)
報告セグメント
調整額
連結財務諸表計上額
国内オートバックス
事業
海外事業
ディーラー・BtoB・オンラインアライアンス事業
その他の
事業
合計
売上高
顧客との契約から生じる収益
176,877
12,972
39,820
4,175
233,846
-
233,846
その他の収益
1,693
79
-
615
2,388
-
2,388
外部顧客への売上高
178,570
13,052
39,820
4,791
236,235
-
236,235
対前期増減率
2.1%
21.3%
2.0%
23.3%
3.3%
-
3.3%
セグメント間の内部
売上高又は振替高
4,536
479
9,375
1,272
15,664
△ 15,664
-
計
183,107
13,531
49,196
6,063
251,899
△ 15,664
236,235
対前期増減率
2.7%
22.1%
1.4%
21.2%
3.7%
-
3.3%
セグメント利益又は
損失(△)
19,689
△ 207
281
△ 716
19,046
△ 7,324
11,722
対前期増減率
△3.2%
-
-
-
0.9%
-
1.5%
国内オートバックス事業
国内オートバックス事業は、新型コロナウイルス感染拡大や物価上昇の影響を受けましたが、個人消費に持ち直しの動きがみられたことに加え、販売促進を強化したことなどにより堅調に推移いたしました。その結果、当連結会計年度の売上高は前年同期比2.7%増加の1,831億7百万円となりました。売上総利益は、前年同期比1.4%増加の611億89百万円となりました。販売費及び一般管理費は水道光熱費の高騰により、前年同期比3.7%増加の415億円となりました。この結果、セグメント利益は前年同期比3.2%減少の196億89百万円となりました。
営業の状況といたしましては、当連結会計年度における国内のオートバックスチェン(フランチャイズ加盟法人店舗を含む)の全業態の売上高は、前年同期比で既存店が4.0%の増加、全店が4.2%の増加となりました。
国内オートバックスチェン売上高および客数(既存店前年比/月別)2022年4月~2023年3月
国内オートバックスチェンでは、新車生産台数がコロナ禍前と比較し低水準で推移したことにより車両メンテナンス需要が高まり、既存車に乗り続けるために必要なタイヤ、オイル、バッテリーなどが好調に推移いたしました。また、価格改定前の駆け込み需要や、寒波や降雪に伴う冬季用品需要の高まりを背景に、戦略的な品ぞろえや販売促進を強化したことにより、売上が堅調に推移いたしました。
タイヤについては、メーカー値上げを受け、5月と9月の二度にわたり店頭での価格改定をいたしましたが、品ぞろえの強化や戦略的な販売促進を実施したことに加え、12月の寒波や降雪の影響でスタッドレスタイヤが好調に推移し、売上が伸長いたしました。一方、カーエレクトロニクスについては、世界的な半導体不足による新車減産の影響が長期化し、売上が減少いたしました。
プライベートブランドについては、「AQ.(オートバックスクオリティ.)」を中心に展開を進めており、2022年9月に発売したAQ.のスタッドレスタイヤ「North Trek N5」の販売が好調となりました。また、心躍るガレージライフを提案するブランド「GORDON MILLER」を展開するなど、さまざまなお客様のニーズを捉えた価値ある商品の開発・販売を推進しております。
車検・整備については、より安全・安心に車を走らせたいというお客様のニーズを背景に、スキャンツールを使用して車両の状態を電子的に確認する車両診断のサービスが好調に推移いたしました。また、運転支援機能や自動運転機能が付いた先進安全自動車の整備を行う「自動車特定整備制度」への対応を進め、車検指定工場の全店が特定整備認証(電子制御装置整備)を取得しております。さらに、公式アプリの機能拡充により、簡単にピット作業予約が可能になるなど、お客様の利便性向上に向けた取り組みを推進しております。車検実施台数は、下期の車検対象車両台数の増加を背景に、前年同期比1.9%増加の約66万5千台となりました。
車買取・販売は、中古車の単価上昇や買取台数の増加を背景にオークションへの販売が好調に推移いたしました。これらにより、国内オートバックス事業における総販売台数は前年同期比17.2%増加の約3万5千台となりました。
国内における出退店は、新規出店が3店舗、退店が3店舗、業態変更が1店舗あり、2023年3月末の店舗数は588店舗となりました。
国内オートバックス事業セグメントにおける商品別売上(連結調整後)
(単位:百万円)
2022年3月期
2023年3月期
増減
タイヤ・ホイール
50,155
54,874
4,718
カーエレクトロニクス
26,671
22,899
△3,772
オイル・バッテリー
15,487
16,285
798
アクセサリー・メンテナンス用品
42,674
40,251
△2,423
車検・サービス
16,806
17,831
1,024
車販売
10,718
13,681
2,963
その他
12,380
12,747
366
合計
174,894
178,570
3,676
国内出退店実績
(単位:店)
2022年3月末
新店
退店
2023年3月末
オートバックス
494
3
△1
496
スーパーオートバックス
74
-
-
74
オートバックスセコハン市場
6
-
△2
4
オートバックスエクスプレス
11
-
-
11
オートバックスカーズ
3
1
△1
3
国内計
588
4
△4
588
※新店/退店には業態変更を含む
国内店舗数の内訳
(単位:店)
2022年3月末
2023年3月末
直営
12
11
連結対象子会社
123
124
連結対象外法人※
453
453
合計
588
588
※関連会社を含む
海外事業
海外事業における売上高は前年同期比22.1%増加の135億31百万円、セグメント損失は2億7百万円(前年同期は3億21百万円のセグメント損失)となりました。
小売・サービス事業においては、ウクライナ情勢や世界的なインフレの影響を受けたものの、売上は増加し、卸売事業においては新規取引先の開拓などにより、売上が伸長いたしました。
フランスにおいては、インフレなどの影響を受けたものの、価格適正化や営業活動の最適化などの対策を講じたことにより、売上が増加いたしました。シンガポールにおいては、車両メンテナンス需要の増加によりピットサービスが好調となり、売上が増加いたしました。マレーシアにおいては、125店舗に拡大したオーソライズドディーラーへの卸売が好調で、売上が大幅に増加いたしました。中国においては、政府によるゼロコロナ政策の影響を大きく受けたものの、12月以降の規制緩和により中国国内外への卸売が好調に推移し、売上が増加いたしました。オーストラリアにおいては、カーエレクトロニクス商品や無線機が好調で、新たな卸売先の開拓や専売品の導入などの営業活動により、売上が増加いたしました。
海外における出退店は、タイのフランチャイズ加盟法人が16店舗を出店したことなどにより、新規出店が17店舗、退店が1店舗あり、合計78店舗となりました。
主要海外子会社の損益
(単位:百万円)
2022年3月期
2023年3月期
増減
フランス
売上高
6,395
7,271
876
営業利益
△30
△123
△93
シンガポール
売上高
1,282
1,714
432
営業利益
△31
△30
0
中国
売上高
1,021
1,382
361
営業利益
△49
△143
△94
マレーシア
売上高
52
116
63
営業利益
△14
△11
3
オーストラリア
売上高
2,478
2,812
334
営業利益
130
163
33
海外出退店実績
(単位:店)
2022年3月末
新店
退店
2023年3月末
フランス
10
-
-
10
シンガポール
2
-
-
2
タイ
33
16
-
49
台湾
6
-
-
6
マレーシア
4
1
-
5
インドネシア
4
-
△1
3
フィリピン
3
-
-
3
海外計
62
17
△1
78
海外店舗の内訳
(単位:店)
2022年3月期
2023年3月期
連結対象子会社
12
12
連結対象外法人※
50
66
※関連会社を含む
ディーラー・BtoB・オンラインアライアンス事業
ディーラー・BtoB・オンラインアライアンス事業における売上高は前年同期比1.4%増加の491億96百万円、セグメント利益は2億81百万円(前年同期は3億39百万円のセグメント損失)となりました。
ディーラー事業においては、半導体不足による新車減産の影響を受けるも、効率的な運営に努め、前年同期を上回る営業利益を確保しました。2022年12月に電気自動車メーカーであるBYDの日本法人BYD Auto Japan株式会社とのディーラー契約を締結いたしました。これにより、株式会社オートバックス・ディーラーグループ・ホールディングスが運営する正規ディーラーは、BMW、MINI、AudiにBYDが加わり4ブランドとなりました。また、「BYD AUTO 宇都宮」および「BYD AUTO 練馬」出店のための開業準備室を開設し、e-SUV「BYD ATTO 3」の体験試乗・購入予約受付を開始いたしました。
ディーラーの運営会社と店舗数
(単位:店)
会社名
2022年3月末
2023年3月末
㈱アウトプラッツ
6
5
㈱モトーレン栃木
5
5
㈱バックス・アドバンス
3
3
㈱バックス・E-モビリティ
-
-
BtoB事業においては、社用車のメンテナンスやカー用品などの法人一括払いが可能となる「オートバックス法人会員制度」への加入件数が順調に増加いたしました。また、車検・整備・タイヤ販売を行う子会社やホイールの卸売を行う子会社においても、車両のメンテナンス需要と12月の寒波や降雪により、売上は堅調に推移いたしました。さらに、他業種へ卸売の拡大を図るため、卸売専用プライベートブランド商品の開発を進めております。
オンラインアライアンス事業においては、自社のEC物流センターの新設や店舗在庫の引当などを実施し、物流改革を進めております。また、2022年11月にインターネットショッピングモール内で「オートバックス楽天市場店」をオープンし販売チャネルの拡大を図るとともに、オートバックス公式通販サイト「オートバックスドットコム」のサービスを拡充し、売上が伸長いたしました。加えて、飲酒運転の根絶を目指し、ドライバーの酒気帯び状態をチェックし、その情報をクラウド上で管理する法人向けサービス「ALCクラウド」が順調に拡大しております。
その他の事業
その他の事業における売上高は前年同期比21.2%増加の60億63百万円、セグメント損失は7億16百万円(前年同期は7億95百万円のセグメント損失)となりました。
③ 財政状態に関する分析
a.連結貸借対照表の各項目の状況
流動資産
流動資産は、前連結会計年度末に比べ34億23百万円増加し、1,113億41百万円となりました。主に商品および未収入金が増加したことなどによるものです。
有形固定資産、無形固定資産
有形固定資産は、前連結会計年度末に比べ14億89百万円増加し、467億57百万円となりました。主に新規出店等に備え建設仮勘定が増加したことによるものです。
無形固定資産は、前連結会計年度末に比べ4億41百万円増加し、93億92百万円となりました。
投資その他の資産
投資その他の資産は、前連結会計年度末に比べ9億37百万円減少し、268億36百万円となりました。
流動負債
流動負債は、前連結会計年度末に比べ21億10百万円増加し、489億6百万円となりました。主に未払金および未払法人税等が増加したことなどによるものです。
固定負債
固定負債は、前連結会計年度末に比べ17億64百万円減少し、184億58百万円となりました。主に銀行からの借入により長期借入金が増加した一方、退職給付制度終了により退職給付に係る負債が減少したことなどによるものです。
純資産合計
純資産合計は、前連結会計年度末に比べ40億71百万円増加し、1,269億63百万円となりました。主に利益剰余金の配当があった一方、親会社株主に帰属する当期純利益による増加および退職給付制度終了にともなう退職給付に係る調整累計額の取崩しなどによるものです。
セグメントごとの資産
(単位:百万円)
2022年3月末
2023年3月末
増減
国内オートバックス事業
107,721
108,846
1,124
海外事業
13,395
12,256
△1,139
ディーラー・BtoB・オンラインアライアンス事業
21,924
22,572
647
その他の事業
29,289
30,497
1,207
全社(共通)
17,579
20,156
2,576
総合計
189,910
194,327
4,416
資産合計/負債純資産合計
資産合計、負債純資産合計は、前連結会計年度末に比べ44億16百万円増加し、1,943億27百万円となりました。
b.連結キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、税金等調整前当期純利益118億54百万円および長期借入れによる収入等があった一方、売上債権、棚卸資産の増加、法人税等の支払、有形及び無形固定資産の取得による支出および配当金の支払等により前連結会計年度末に比べ2億47百万円減少し、245億3百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は106億87百万円(前年同期は57億12百万円の獲得)となりました。収入の主な内訳は、税金等調整前当期純利益118億54百万円に対し、非資金損益項目等の調整を加減した営業取引による収入144億8百万円であり、支出の主な内訳は、法人税等の支払額38億56百万円等であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は76億52百万円(前年同期は77億10百万円の使用)となりました。収入の主な内訳は、差入保証金の回収による収入5億72百万円等であり、支出の主な内訳は、有形及び無形固定資産の取得による支出71億82百万円および投資有価証券の取得による支出13億3百万円等であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は34億95百万円(前年同期は123億円の使用)となりました。収入の主な内訳は、長期借入れによる収入30億円等であり、支出の主な内訳は、配当金の支払額46億74百万円および長期借入金の返済による支出10億78百万円等であります。
c.設備投資の状況
当社グループでは、新規出店や既存店舗の改装ならびに輸入車ディーラー店舗のリロケーションに係る建物および構築物の取得のほか、次期店舗情報基盤の構築などの情報システム投資その他に対し総額71億82百万円の設備投資を実施いたしました。
設備投資の主な内訳
(単位:百万円)
2022年3月期
2023年3月期
新規出店(リニューアル含む)
179
446
既存店改装・改修
470
1,989
土地
2,317
453
情報化投資
1,993
2,405
その他
1,338
1,887
合計
6,300
7,182
セグメント別設備投資額
(単位:百万円)
2022年3月期
2023年3月期
国内オートバックス事業
4,957
4,607
海外事業
218
622
ディーラー・BtoB・オンラインアライアンス事業
726
1,138
その他の事業
186
224
全社(共通)
211
589
合計
6,300
7,182
④ 資金調達の状況
当連結会計年度において、グループ全体として運転資金需要等に対する借り換え等による資金調達を行いました。なお当連結会計年度末の短期借入金および長期借入金の残高が19億6百万円増加した主な要因は、運転資金需要等に備え新規の借入を実行したことによるものです。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
日本経済は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により制限されていた社会経済活動の正常化を背景に、内需を中心として持ち直しの傾向にあり、またインバウンド需要の回復もあって全体としては緩やかな回復傾向にあります。一方で、不安定な国際情勢に起因する原材料やエネルギーコストなどの高騰、急速な円安の進行やそれに伴う物価高など、経済の先行きについては依然不透明な状況です。国内の自動車関連業界に目を向けますと、世界的な半導体不足などが徐々に解消されることで新車販売台数は回復基調にあるものの、サプライチェーンや物流の混乱など、業界としても不安定な状況がしばらく継続するものとみております。
こうした中、100年に一度の変革期を迎えている自動車産業においては、電動化や自動運転化など、技術革新が着実に進行しています。また、サステナビリティへの意識の高まりを背景に、多くの企業がカーボンニュートラル実現に向けた取り組みを進めており、世界的にEV(電気自動車)をはじめとしたZEV(ゼロエミッション車)への対応が加速しています。
当社グループが強みとする国内のカーアフター市場では、同市場のみならず、その周辺の事業領域においても、カーシェアリングや車のサブスクリプションサービスのような新たなサービスの提供も始まっています。また、お客様の購買行動の変化によってネット販売を通じた商品購入の比率がさらに高まってくるとの見立てから、業界の枠を超えた競争がいっそう激化していくことが想定されます。さらに、少子高齢化による顧客構成の変化、顧客ニーズの多様化など、当社を取り巻く環境は今後も大きく、急速に変化するものと予想されます。
当社は、このような外部環境の変化に加え、変化するお客様のニーズをとらえ、素早く対応できる体制を整えておかなければ勝ち残れないという考えから、2019年より時流に合わせて継続的に5年後の方向性および戦略の見直しを実施する「5ヵ年ローリングプラン」を策定しています。
そして、「お客様の利用シーンに合わせ、お客様の求める商品やサービスを、スピード感を持って提供する」ことを目指す姿としローリングプランを実行しています。しかし、クルマの利用シーンを支えるすべての商品やサービスを、オートバックスグループだけで提供することはできません。
そこで、それぞれの領域で強みを持つ事業者と連携することにより、ともに実現していくことを考えました。その「あらゆる事業者間の垣根を越えた連携」を「6つのネットワーク」と定義し、その確立によって連携を図るというのがローリングプランの根幹をなす考えです。当社は「目指す姿」を達成するため、「5ヵ年ローリングプラン」では、6つのネットワークの確立と連携、5つの事業基盤の整備、そして7つの事業の強化を進めています。
2023年3月期は、以下の「実行性向上とスピードアップ」「持続的成長に向けた取り組みの強化」「人づくりのための取り組みの継続」の方針を掲げ、重点的に推進してまいりました。
a.実行性向上とスピードアップ
当社グループの持続的成長の実現のためには、既存事業の効率を改善しながら継続するだけではなく、成長領域への投資と新たな事業の育成も必要です。新たな価値創造に向けた挑戦を継続していくために、ROIC(投下資本利益率)を用いた管理・見える化を進めております。2023年3月期は、事業別のROAを執行役員の業績評価の項目に設定するとともに、全社のROICの見える化を実施しました。今後は、事業統括単位でROICを見える化し、事業別ROICを事業統括の業績評価の指標にするなど、人事評価指標への組み込みや社内浸透を図ってまいります。
事業ポートフォリオの見直しと絞込みによる経営資源の最適化のための取り組みとして、2023年4月より、担当執行役員制度を廃止いたしました。より迅速で的確な意思決定を実施するとともに、収益力向上に特化した体制へのシフトを進めております。また、ライフスタイル事業の一部撤退を決定し、取締役会で赤字事業の撤退審議を継続するなど、事業ポートフォリオの見直しを行っております。さらに、成長の見込みのある分野を事業化するなどの取り組みも進めております。
戦略事業への取り組みとして、2022年12月に、BYD Auto Japan株式会社とディーラー契約を締結いたしました。ZEVの普及推進を通じ、脱炭素社会の実現に貢献するとともに、ZEVのメジャーディーラーとして、新たなマーケット領域の創造に挑戦したいと考えております。
b.持続的成長に向けた取り組みの強化
お客様の価値観や購買行動が大きく変化を遂げる中で、小売業やITなど、業界の枠を超えた競争がいっそう激化していくことが想定されます。そのような環境下で、当社は、ネットとリアルの融合による「小売業としての進化」を図っております。2023年3月期には、店舗の在庫引当により、お客様がECで購入した商品が店舗にあれば、店舗ですぐに受取が可能となる仕組みを導入いたしました。また、物流課題への対応も進めており、2023年7月には、ラストワンマイル対策として、ECで購入した商品が店舗にあれば、店舗からすぐに配送する仕組みを試験実施する予定です。
また、ユニークデータの利活用によるDX「小売業からの進化」を図っております。これは、デジタルエコシステムによる“CDE”の実現をコンセプトに、お客様とより深く、より長く、直接的につながることを目指す戦略です。本取り組みの根幹として、株式会社オートバックスデジタルイニシアチブを、株式取得によって子会社化し、IT 基盤構築に関わる領域の強化、デジタル人材の育成および全社のデジタルリテラシーの向上を進めております。
ユニークデータの利活用によるDXの一例として、2023年4月に、カーライフ総合サイト「MOBILA」をオープンいたしました。最新のカーニュース、ドライブなどクルマで出かけたくなる情報を提供するとともに、「MOBILA」をお客様とのコミュニケーションのツールとし、モビリティ情報のプラットフォーマーへと進化していきたいと考えております。
さらに、物流の効率化による値入改善に向けた取り組みを実施いたしました。仕入先へ交渉しフランチャイズ加盟法人の仕入価格を改善したことに加え、原価高騰による値上げに対しては本部が吸収することで値入維持などを着実に進めました。これは、値入改善により店舗収益が拡大し、新規出店・設備投資を行うことで売上利益がさらに拡大するといった善循環を生み出すことを目的としております。物流の効率化についても、一定の成果を得るところまで取り組みが進みました。引き続き、効率化とともに、さらなる物流改革を進めていきたいと考えております。
c.人づくりのための取り組みの継続
人づくりは企業の成長のために不可欠であると考えております。特に、整備士人材の採用・育成・定着化に関しては喫緊の課題と捉えており、子会社である株式会社チェングロウスと連携しながら、整備士学校の新卒者や、有資格者の獲得を進め、グループとして採用活動を継続・拡大しています。また、整備士資格取得に向け開設した分教場の活用や、短期講習会の開催、自動車検査員の教習試験対策に向けた研修会の開催、ハイブリッド技術研修などを実施し、整備士を育成する場の提供を積極的に進めております。さらに、カーエレクトロニクス関連商品の取り付け方などを経験のあるスタッフがオンラインで教育することで、多くのスタッフにOJT教育が実践できる取り組みも進めており、これらは高齢のスタッフでも、その貴重なノウハウの共有ができるとともに、長く働ける場の提供にもつながることから、本格的な導入を進めております。
加えて、リスキリングの推進による人材開発を進めています。具体的には、店舗で活躍するための専門知識を備えた人材や、IT・DX戦略を推進するための専門人材への取り組みを推進しており、当社が「小売業からの進化」を実現していく上で重要なスキル・人材であると考えています。今後も能力開発支援や、教育の継続に注力してまいります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの分析については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ③財政状態に関する分析 b.連結キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、カー用品を中心とした商品の購入費用およびシステム等の運営コストの支払等である一方、主にフランチャイズ加盟法人に対する卸売と個人を中心とした一般のお客様への小売を行っているため、仕入債務の支払よりも売上債権の回収が進む傾向にあります。従いまして、基本的には営業キャッシュ・フローで得られる資金に加え短期借入を、季節によって変動する運転資金需要と投資に充てております。昨今の急激な環境の変化にともない、手元流動性につきましては、成長するために必要で重要な投資は厳選し積極化する一方、それ以外の投資については抑制することで確保してまいります。
また、投資収益管理の強化により事業ポートフォリオを精査し、事業別、子会社別の投資収益状況を管理しています。積極投資を推進する一方で、投資収益の低い事業については撤退を含め検討し、資産効率向上および連結ROEの改善を目指してまいります。
株主還元に関しましては、当社は、株主の皆様に対する利益還元を経営の重要課題の一つと位置づけております。「5ヵ年ローリングプラン」の計画期間である5年間累計の総還元性向を100%として、安定的かつ機動的な株主還元を基本方針としています。自己株式の取得につきましては、キャッシュ・フローの状況等を総合的に勘案し、資本効率と株主利益の向上に向けて適切な時期に実施を検討してまいります。
なお、当連結会計年度における借入金およびリース債務を含む有利子負債の残高は、121億95百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は245億3百万円となっております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産、負債、収益および費用の計上に際し、様々な見積りおよび判断を行っておりますが、実際の結果につきましては、見積り特有の不確実性が存在するため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループが連結財務諸表で採用する重要な会計上の見積りは、「第5 経理の状況1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)および(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
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