【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要当連結会計年度における当社グループ(当社および連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況(経営成績)当連結会計年度における事業環境は、新型コロナウイルス感染症対策が進み欧米諸国での規制緩和による経済活動の回復が見られた一方で、中国での都市封鎖、ウクライナ情勢の長期化に伴う供給制約や原材料価格の高騰を背景としたインフレ、急激な為替変動など、予断を許さない状況が続きました。当社グループに関連深い電子機器業界では、半導体関連製品の需要が用途別に変調する中、需要動向にきめ細かく対応し業績の向上に努めました。主要取引通貨の円安の影響もあり、前連結会計年度から増収増益となりました。なお、一部の投資有価証券を売却したことから投資有価証券売却益が特別利益に計上され、親会社株主に帰属する当期純利益が大きく増加しております。この結果、当連結会計年度の売上高は29,091百万円(前年同期比3.3%増)となり、営業利益は6,190百万円(同14.0%増)、経常利益は6,737百万円(同24.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は4,996百万円(同31.4%増)となっております。次にセグメント別の状況ですが、「日本」では、変調する半導体関連製品の需要に対応する中でも高付加価値製品の需要が拡大したことにより、高い利益率を確保することができました。この地区での売上高(セグメント間取引消去を含む。以下同じ。)は21,554百万円(前年同期比8.7%増)となり、セグメント利益(営業利益)は5,294百万円(前年同期比35.6%増)となっております。日本を除く「アジア」では、中国でのゼロコロナ政策強化と緩和による感染者の拡大、景気減速の影響により経済活動が大きく制限されました。この地区での売上高は13,512百万円(同3.8%減)となり、セグメント利益は1,059百万円(同27.1%減)となっております。その他、北米地区での売上高は1,662百万円(同25.5%増)、セグメント利益は106百万円(同78.0%増)、欧州地区の売上高は2,382百万円(同23.1%増)、セグメント利益は190百万円(同4.6%増)となっております。なお、当連結会計年度の期首から、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しております。このため前期比は基準の異なる算定方法に基づいた数値を用いております。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」をご参照ください。
(財政状態)
a. 資産の部当連結会計年度末の資産合計は、69,135百万円(前連結会計年度末比4,605百万円増)となりました。流動資産合計は40,715百万円(同4,221百万円増)となりました。主な変動要因は、現金及び預金(同3,680百万円増)、受取手形及び売掛金(856百万円減)であります。固定資産合計は28,420百万円(同383百万円増)となっております。このうち、有形固定資産合計は22,482百万円(同309百万円増)となり、投資有価証券(同86百万円増)を含む投資その他の資産合計は5,877百万円(同82百万円増)となっております。
b. 負債の部当連結会計年度末の負債合計は5,509百万円(前連結会計年度末比39百万円増)となりました。 流動負債合計は4,923百万円(同359百万円増)となり、固定負債合計は586百万円(同319百万円減)となっております。
c. 純資産の部当連結会計年度末の純資産合計は63,625百万円(前連結会計年度末比4,565百万円増)となりました。株主資本合計が59,429百万円(同3,532百万円増)、その他の包括利益累計額合計が4,196百万円(同1,032百万円増)となっております。主な変動項目は利益剰余金(同3,533百万円増)と為替換算調整勘定(1,208百万円増)であります。
② キャッシュ・フローの状況当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ3,687百万円増加し、当連結会計年度末現在20,928百万円となっております。(営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動によるキャッシュ・フローは、事業活動の安定と利益向上を主因として、6,707百万円の収入(前年同期比882百万円の収入の増加)となっております。主なキャッシュ・イン項目は、税金等調整前当期純利益7,354百万円および減価償却費2,647百万円であり、主なキャッシュ・アウト項目は、棚卸資産の増加額1,157百万円および法人税等の支払額1,968百万円であります。(投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動によるキャッシュ・フローは、1,962百万円の支出(同1,200百万円の支出の減少)となりました。有形固定資産の取得による支出2,522百万円および投資有価証券の売却及び償還による収入1,270百万円が主な変動要因となっております。(財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動によるキャッシュ・フローは、1,550百万円の支出(同110百万円の支出の増加)となりました。配当金の支払額1,416百万円が主な変動要因となっております。
③ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
セグメントの名称
生産高(百万円)
前期比(%)
日本
20,733
+9.1
アジア
7,887
△14.6
北米
-
-
欧州
-
-
合計
28,621
+1.3
b. 受注実績当社グループは一部の受注に見込み分を上乗せした見込み生産が主体であります。従いまして、当該事項の記載は省略しております。
c. 販売実績
セグメントの名称
販売高(百万円)
前期比(%)
日本
12,267
+7.0
アジア
12,780
△5.0
北米
1,663
+25.7
欧州
2,380
+23.1
合計
29,091
+3.3
(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容当連結会計年度は、売上高が前期比3.3%増となる29,091百万円となり、営業利益が前期比14.0%増の6,190百万円という実績になっております。各国で新型コロナウイルス感染症対策が進められ、経済活動の正常化が図られたことにより徐々に景気回復へと向かいました。その一方でゼロコロナ政策を続ける中国での景気低迷、ウクライナ情勢の長期化による原材料・エネルギー価格の高騰や、急激な為替変動など先行き不透明感が続きました。当社グループをとりまく事業環境は不安定な状況にあり、生産活動に波がありました。デジタルモバイル機器需要の一巡が見られたことや、高速通信インフラの投資も依然底堅いものでした。半導体関連は年度前半の好調から後半は需要減の影響を受けて厳しい状況となりましたが、当社グループの主力となる高付加価値ドリルは先端半導体分野で好調に推移し、収益面で大きく貢献しました。また主要取引通貨の円安の影響もあり、前連結会計年度から増収増益となりました。その他、当社グループは経営管理項目として売上高営業利益率をあげており、当連結会計年度においては前年実績19.3%、目標値20.0%に対し実績21.3%を計上することができております。ほとんどが高付加価値ドリル需要で構成されている日本市場での品質優位性獲得と、グループ主要拠点の連携により需要対応できたことから、利益率の向上を果たすことができました。半導体パッケージなどの高度な電子部品向けの高付加価値ドリル需要の高まりに備え、引続き当社グループの得意とする品質・技術での差別化戦略を推進するとともに、生産効率の改善と産出量の拡大を図ってまいりたいと思っております。② 資本の財源及び資金の流動性当社グループの運転資金需要の主なものは超硬合金などの原材料の購入費用であり、その他は製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資のための資金需要の多くは、内製している生産設備向けとなっております。当社グループは、非常に激しい需要変動にさらされており、資金に対しては十分な流動性と自由で迅速な意思決定を可能にする柔軟性の確保を重視しており、主に自己資金による財源確保を進めております。また経費節減やスリム化の努力も重ね、当連結会計年度末現在の現金及び現金同等物の残高は前期末比3,687百万円増となる20,928百万円となっております。
③ 重要な会計方針及び見積り当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成にあたっては、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積が行われている部分があり、資産・負債や収益・費用に数値は反映されております。これらの見積もりについては、継続的に評価し、必要に応じて見直しを行っていますが、見積もりには不確実性が伴うため、実際の結果はこれらと異なることがあります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。イ 固定資産の減損固定資産の減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュフローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。過年度の損益実績や事業計画に基づき検討しておりますが、市場環境の変化等により、事業計画の前提条件に変更が生じた場合には、減損損失の計上が必要となる可能性があります。ロ 繰延税金資産の回収可能性今年度の課税所得の実績や事業計画に基づく課税所得の見積りに基づき、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提条件に変更が生じた場合には、繰延税金資産を取り崩し税金費用の計上が必要となる可能性があります。なお、新型コロナウイルス感染症に関する会計上の見積りに係る仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載しております。
ハ 棚卸資産の評価棚卸資産は、取得原価をもって貸借対照表価額とし、期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額としております。また、一定期間を超えて保有する棚卸資産については、収益性の低下の事実を反映するために、過去の販売・使用実績及び製品群ごとのライフサイクル等に基づき決定した方針により規則的に帳簿価額を切り下げております。しかし、当初想定できなかった生産需要や経済情勢等により、前提となるライフサイクルに変更が生じる場合、更なる帳簿価額の切り下げが必要となる可能性があります。 ニ 賞与引当金当社の賞与引当金は翌期上期賞与に対する引当金でありますが、当社の営業利益見込み(業績予想)を用いて算定しております。業績予想については経営者の最善の見積もりと判断により行われますが、将来の不確実な経済情勢の変動の結果によって影響を受ける可能性があり、見直しが必要となる可能性があります。