【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
1.経営成績等の状況の概要
(1) 業績当期におけるわが国の経済は、ウィズコロナの新たな段階への移行が進む中で、緩やかな持ち直しの動きが続きました。個人消費は、旅行や外食等のサービス消費で緩やかな持ち直しが見られました。企業の設備投資は、海外経済の緩やかな回復や国内の経済・社会活動の正常化が進み、持ち直しの動きが見られました。特にIT投資については、製造業や金融業で投資意欲が高い状態にあり、好調に推移しました。一方で、半導体不足やサプライチェーンの混乱による供給制約、ウクライナ情勢等による原材料価格の上昇、為替の変動等により、一部の企業で弱さが見られました。
このような経済環境のもと、当社グループはキヤノン製品の供給制約解消による売上拡大、企業の積極的なIT投資を背景としたSIサービスやセキュリティ関連の製品・サービスの売上拡大、国内の半導体メーカーの活発な投資を背景とした半導体製造関連装置等の売上拡大により、売上高は5,881億32百万円(前期比6.5%増)となりました。 利益については、売上増加に伴う売上総利益の増加により、営業利益は499億47百万円(前期比25.8%増)、経常利益は509億91百万円(前期比24.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は355億52百万円(前期比20.8%増)となりました。
各報告セグメントの業績は以下のとおりです。増減に関する記載は、前期との比較に基づいています。
コンスーマレンズ交換式デジタルカメラについては、2021年末に発売した「EOS R3」や6月に発売した「EOS R7」、7月に発売した「EOS R10」、12月に発売した「EOS R6 Mark II」等のEOS Rシステム搭載のミラーレスカメラ等が増加したことや、EOS Rシリーズのユーザーの増加によりRFマウントの交換レンズの販売が拡大し、売上は大幅に増加しました。
インクジェットプリンターについては、高単価製品が好調に推移したこと等により、売上は増加しました。インクカートリッジについては、カラープリントボリュームの減少等による市場の縮小に伴い、売上は減少しました。
ITプロダクトについては、PCの周辺機器等が供給不足の影響を受けましたが、ゲーミングPC等が好調に推移し、売上は微増となりました。
これらの結果、当セグメントの売上高は1,366億12百万円(前期比5.5%増)となりました。セグメント利益については、売上増加に伴う売上総利益の増加により、139億40百万円(前期比2.7%増)となりました。
エンタープライズ主要ビジネス機器については、第2四半期まで製品の供給不足の影響を大きく受けたものの、第3四半期に供給が回復したことにより、オフィスMFP、レーザープリンターの売上は大幅に増加しました。オフィスMFPの保守サービス、レーザープリンターカートリッジについては、大手企業を中心にテレワークが継続し、オフィスにおけるプリントボリュームが減少したことにより、売上は減少しました。
ITソリューションについては、製造業向けや金融業向けのSI案件の売上が増加していることに加え、セキュリティやデータセンター2号棟の売上が順調に推移したこと等により、売上は大幅に増加しました。
これらの結果、当セグメントの売上高は2,027億30百万円(前期比6.4%増)となりました。セグメント利益については、売上増加に伴う売上総利益の増加に加え、販管費の削減に努めたことにより、170億72百万円(前期比23.2%増)となりました。
エリア主要ビジネス機器については、第2四半期まで製品の供給不足の影響を大きく受けたものの、第3四半期に供給が回復したことにより、オフィスMFP、レーザープリンターの売上は増加しました。オフィスMFPの保守サービスについては、大都市圏を中心にテレワークが継続したこと等により、オフィスにおけるプリントボリュームが減少し、売上は減少しました。一方、レーザープリンターカートリッジについては、価格改定を見据えた駆け込み需要等により、売上は増加しました。
ITソリューションについては、標的型攻撃やフィッシングなど情報セキュリティに対する脅威が高まっていることを背景に、IT支援クラウドサービス「HOME」やウイルス対策ソフト「ESET」等のセキュリティの売上が増加しました。また、お客さまのIT機器等の保守サービスや運用サービスについては、獲得に引き続き注力し、受注件数を伸ばしたこと等により売上が増加し、ITソリューション全体の売上は増加しました。
これらの結果、当セグメントの売上高は2,265億60百万円(前期比2.6%増)となりました。セグメント利益については、売上増加に伴う売上総利益の増加に加え、販管費の削減に努めたことにより、155億63百万円(前期比29.2%増)となりました。
プロフェッショナル(プロダクションプリンティング)プロダクションプリンティング事業では、主に印刷業向けに、高速連帳プリンター及び高速カット紙プリンター等を提供しています。また、小売業向けにPOP制作関連のビジネスも提供しています。当期は、印刷業のお客さま向けに連帳プリンターが堅調に推移したこと等により、売上は微増となりました。
(産業機器)産業機器事業では、主に半導体メーカー向けに製造関連装置、検査計測装置等を提供しています。当期は、国内の半導体メーカーの投資が引き続き活発であることを背景に、半導体製造関連装置や保守サービスが好調に推移し、売上は大幅に増加しました。
(ヘルスケア)ヘルスケア事業では、主に病院・診療所・調剤薬局・健診施設向けに、電子カルテなど医療情報システム等を提供しています。当期は、病院向けの電子カルテ及び医療IT基盤の構築等にかかる複数の大型案件に加え、診療所や調剤薬局向けにオンライン資格確認の導入案件があったこと等により、売上は大幅に増加しました。
これらの結果、当セグメントの売上高は416億70百万円(前期比32.1%増)となりました。セグメント利益については、売上増加に伴う売上総利益の増加に加え、販管費の削減に努めたことにより、52億40百万円(前期比110.6%増)となりました。
(注)各セグメント別の売上高は、外部顧客への売上高にセグメント間の内部売上高又は振替高を加算したものであります。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(セグメント情報等)」をご参照ください。
(2) キャッシュ・フローの状況当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローの資金の増加は、377億25百万円(前連結会計年度は327億56百万円の増加)、投資活動によるキャッシュ・フローの資金の減少は、101億7百万円(前連結会計年度は158億94百万円の減少)となりました。財務活動によるキャッシュ・フローの資金の減少は、112億59百万円(前連結会計年度は91億60百万円の減少)となりました。以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ166億3百万円増加して、846億32百万円となりました。
2.生産、受注及び販売の状況当社グループの事業形態は主に国内外から仕入を行い、国内での販売を主要業務としているため、生産実績及び受注実績に代えて仕入実績を記載しております。
(1) 仕入実績当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度(自 2022年1月1日至 2022年12月31日)
前年同期比(%)
コンスーマ(百万円)
101,355
107.1
エンタープライズ(百万円)
83,369
113.6
エリア(百万円)
116,049
105.5
プロフェッショナル(百万円)
20,893
104.1
報告セグメント計(百万円)
321,668
107.9
その他(百万円)
―
―
合計(百万円)
321,668
107.9
(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2) 販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度(自 2022年1月1日至 2022年12月31日)
前年同期比(%)
コンスーマ(百万円)
136,574
105.5
エンタープライズ(百万円)
191,507
106.4
エリア(百万円)
215,019
102.8
プロフェッショナル(百万円)
40,377
134.3
報告セグメント計(百万円)
583,479
106.3
その他(百万円)
4,652
138.8
合計(百万円)
588,132
106.5
(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。2.総販売実績に対して10%以上に該当する販売先はありません。
3.経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2023年3月29日)現在において、当社グループが判断しております。
(1) 重要な会計方針及び見積り当社グループの連結財務諸表は、一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成に当たり、経営者の判断に基づく会計方針の選択と適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りが必要となりますが、その判断及び見積りに関しては連結財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき合理的に判断しております。しかしながら、実際の結果は、見積り特有の不確実性が伴うことから、これら見積りと異なる可能性があります。当社グループの連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。なお、当社グループの連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積りのうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(2) 財政状態の分析(流動資産)当社グループにおける実質的資金である現金及び預金、有価証券、短期貸付金の合計額の増加166億12百万円、商品及び製品の増加33億18百万円、受取手形、売掛金及び契約資産(前連結会計年度は受取手形及び売掛金)の増加30億64百万円等により、前連結会計年度末より236億25百万円増加し、4,197億8百万円となりました。なお、売掛債権の保有日数は、前連結会計年度末と比べて3日短くなり、68日となっております。また、在庫回転日数は、前連結会計年度末と比べて1日長くなり、24日となっております。
(固定資産)保有上場株式の時価評価等による投資有価証券の減少40億41百万円、繰延税金資産の減少20億70百万円等により、前連結会計年度末より63億4百万円減少し、1,240億32百万円となりました。なお、有形固定資産は、新規取得による増加81億63百万円、減価償却による減少78億31百万円等により、前連結会計年度末より1億22百万円増加し、852億76百万円となりました。また、無形固定資産は、新規取得による増加9億1百万円、減価償却による減少17億60百万円等により、前連結会計年度末より5億35百万円減少し、59億95百万円となりました。
(流動負債)支払手形及び買掛金の増加10億53百万円等により、前連結会計年度末より9億53百万円増加し、1,080億62百万円となりました。
(固定負債)退職給付に係る負債の減少87億71百万円等により、前連結会計年度末より93億26百万円減少し、353億5百万円となりました。
(純資産)親会社株主に帰属する当期純利益による増加355億52百万円、配当金の支払110億22百万円、退職給付に係る調整累計額の増加36億円、その他有価証券評価差額金の減少26億70百万円等により、前連結会計年度末より256億95百万円増加し、4,003億72百万円となりました。
これらの結果、総資産は前連結会計年度末より173億21百万円増加し、5,437億40百万円となりました。
(3) 経営成績の分析(売上高)売上高は、キヤノン製品の供給制約解消による売上拡大、企業の積極的なIT投資を背景としたSIサービスやセキュリティ関連の製品・サービスの売上拡大、国内の半導体メーカーの活発な投資を背景とした半導体製造関連装置等の売上拡大により、前連結会計年度と比べて6.5%増加し、5,881億32百万円となりました。詳細は「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 1.経営成績等の状況の概要」に記載のとおりです。
(売上原価)売上原価は、開発部門及びサービス部門の人件費が含まれます。前連結会計年度と比べて7.5%増加し、3,888億42百万円となりました。
(売上総利益)売上総利益は、前連結会計年度と比べて4.7%増加し、1,992億89百万円となりました。また、売上総利益率は、前連結会計年度と比べて0.6ポイント減少し、33.9%となりました。
(販売費及び一般管理費)販売費及び一般管理費は、グループとして経費削減に努めたこと等により、前連結会計年度と比べて0.8%減少し、1,493億41百万円となりました。
(営業利益)営業利益は、徹底した販管費の削減を継続して行うと共に、主にキヤノン製品の供給制約解消による売上拡大に伴う売上総利益の増加等により、前連結会計年度と比べて25.8%増加し、499億47百万円となりました。また、営業利益率は、前連結会計年度と比べて1.3ポイント上昇し、8.5%となりました。詳細は「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 1.経営成績等の状況の概要」に記載のとおりです。
(営業外損益)営業外損益は、前連結会計年度の13億96百万円の利益から、10億44百万円の利益となりました。
(経常利益)経常利益は、前連結会計年度と比べて24.1%増加し、509億91百万円となりました。
(特別損益)特別損益は、前連結会計年度の19億98百万円の利益から、5億31百万円の利益となりました。主に、投資有価証券売却益を7億29百万円、固定資産除売却損を1億24百万円計上したことによるものであります。
(税金等調整前当期純利益)税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度と比べて19.6%増加し、515億23百万円となりました。また、売上高に対する比率は、前連結会計年度と比べて1.0ポイント上昇し、8.8%となりました。
(法人税等)法人税等は、前連結会計年度の135億98百万円から、当連結会計年度は158億96百万円となりました。なお、実効税率は、30.9%でした。
(親会社株主に帰属する当期純利益)親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度と比べて20.8%増加し、355億52百万円となりました。また、1株当たり当期純利益は、前連結会計年度より47円28銭増加し、274円16銭となりました。株主資本利益率(ROE)は、前連結会計年度と比べて1.0ポイント上昇し、9.2%となりました。
なお、セグメント別業績の分析については「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 1.経営成績等の状況の概要」をご参照ください。
(4) キャッシュ・フローの分析当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ166億3百万円増加して、846億32百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローの資金の増加は377億25百万円(前連結会計年度は327億56百万円の増加)となりました。税金等調整前当期純利益515億23百万円、仕入債務の増加9億85百万円等による資金の増加と、棚卸資産の増加32億80百万円、売上債権の増加28億94百万円、法人税等の支払138億20百万円等による資金の減少によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローの資金の減少は101億7百万円(前連結会計年度は158億94百万円の減少)となりました。有形固定資産の取得による支出88億89百万円、無形固定資産の取得による支出8億94百万円等による資金の減少と、投資有価証券の売却による収入13億30百万円等によるものであります。
これらの結果、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合計した、当連結会計年度のフリー・キャッシュ・フローの資金の増加は、276億18百万円(前連結会計年度は168億62百万円の増加)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローの資金の減少は112億59百万円(前連結会計年度は91億60百万円の減少)となりました。配当金の支払110億20百万円等によるものであります。
(5) 資本の財源及び資金の流動性当社グループの資金の源泉は主として、営業活動によるキャッシュ・フローによっております。また、当社と連結子会社間におけるグループファイナンスの実施により、グループ内資金の有効活用を図っております。運転資金、設備資金等、通常の資金需要につきましては、原則として営業活動によるキャッシュ・フローによる自己資金で充当することとしております。
(6) 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況当社グループは、「中期経営計画(2022年~2025年)」を策定し、経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標として下記の項目を掲げております。
指標
2021年度(実績)
2022年度(計画)
2022年度(実績)
前年比
計画達成率
売上高
(百万円)
552,085
580,000
588,132
106.5%
101.4%
営業利益
(百万円)
39,699
40,500
49,947
125.8%
123.3%
営業利益率
(%)
7.2
7.0
8.5
―
―
親会社株主に帰属する当期純利益
(百万円)
29,420
29,500
35,552
120.8%
120.5%
自己資本利益率(ROE)
(%)
8.2
7.7
9.2
―
―
当連結会計年度の計画に対しては、キヤノン製品の供給制約解消による売上拡大や、企業の積極的な投資を背景としたSIサービス、セキュリティ関連の製品・サービス、半導体製造関連装置などの売上拡大により、売上高、営業利益、親会社株主に帰属する当期純利益において当初の目標を達成いたしました。
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