【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期報告書提出日現在において当社グループ(当社及び当社の関係会社)が判断したものであります。
(1)経営成績当第3四半期連結累計期間のわが国経済は、ウィズコロナの新たな段階への移行が進められる中、景気に持ち直しの動きが見られました。一方で、世界的な金融引締めが続く中、海外景気の下振れが国内の景気を下押しするリスク要因となっており、物価上昇、供給面での制約、金融資本市場の不安定さなどの影響や、中国における感染状況に十分注意する必要があることから、不透明な状況が続きました。当業界におきましては、原材料価格の高騰やエネルギーコストの上昇、急激な円安進行の継続など事業環境が大きく変化しており、かつてない厳しい状況が続いております。このような中、当社グループは、「2030 年におけるありたい姿」として掲げたニッポンハムグループ、「Vision2030」“たんぱく質を、もっと自由に。”の実現に向けて事業展開を推進してまいりました。当第3四半期連結累計期間におきましては、継続する原材料価格の高騰やエネルギーコストの上昇及びこれらの影響で各種商品の値上げが家計を直撃したことにより、消費者の節約志向・低価格帯へのシフトが進みました。これに対して、販売価格への転嫁、商品の規格変更、節約志向に対応するための低価格商品の調達、ブランド商品の拡販、エネルギーコストの上昇を吸収するための節電対策や生産部門の効率化などに取り組みながら、引き続きお客様へ安全・安心で高品質な商品をお届けするため、生産、物流、営業体制の強化を図りました。加えて、AIを用いた豚の健康や発情状況を判定するスマート養豚システム「PIG LABO」の製品化に向けた取組み、経営基盤強化のためのDX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進、最適なポートフォリオ構築に向けた取組みを行ってまいりました。グループ横断の施策については、サステナブルなビジネスモデルへの変革及びシナジー最大化のための事業横断戦略として「物流」「営業」「自由貿易協定対策」のプロジェクトを推進しました。経営体制については、「ニッポンハムグループ・コーポレートガバナンス基本方針」に沿って、その充実に努めました。以上の結果、当第3四半期連結累計期間の売上高は、主として食肉事業及び海外事業において価格転嫁が進んだことにより、対前年同四半期比10.0%増の986,103百万円となりました。事業利益は、節約志向による需要減少、原材料やエネルギーコストなどの大幅な上昇分を全て吸収することができず、対前年同四半期比44.0%減の24,725百万円、税引前四半期利益は、事業利益の減少などの影響で対前年同四半期比48.7%減の25,174百万円、親会社の所有者に帰属する四半期利益は対前年同四半期比47.7%減の19,219百万円となりました。
(注)事業利益は、売上高から売上原価、販売費及び一般管理費を控除し、当社グループが定める為替差損益を加味するとともにIFRSへの調整及び非経常項目を除外して算出しております。
セグメントの概況は次のとおりです。
① 加工事業本部加工事業本部全体においては、新型コロナウイルス感染症による外出自粛の緩和などにより業務用商品が伸長しましたが、価格改定後の商品動向の変化からコンシューマ商品が減少し、売上げは前年を下回りました。また国際的な穀物や原油相場の上昇、円安の進行などから、想定を上回る原材料価格や燃料費の上昇に伴い、厳しい収益環境となりました。ハム・ソーセージ、デリ商品事業のハム・ソーセージ部門の売上げにおいては、業務用商品がCVSチャネル向けで前年を上回りましたが、コンシューマ商品は主力の「シャウエッセン」で若手タレントを起用したTVCMを導入したことで購買層が拡大し回復基調にあるものの、上期までの落込みをカバーできずに前年を下回りました。デリ商品部門の売上げにおいては、業務用商品が外食チャネル向けで前年を上回りましたが、コンシューマ商品は、主力の「チルドベーカリー」がスナック需要の拡大から好調に推移したものの、「中華名菜」の減少により前年を下回りました。歳暮ギフト商戦においては、「鎌倉ハム」や惣菜系ギフトが大きく伸長しましたが、主力の「美ノ国」「本格派」が減少し、前年を下回りました。エキス・一次加工事業の売上げにおいては、一次加工事業部門は、未加熱加工品の販売は中食チャネル向けが減少し前年を下回りましたが、エキス部門は、外出自粛の緩和に伴いラーメン店を中心とした外食チャネル向けスープや、CVSチャネル向け業務用ソースが好調に推移しました。乳製品事業のチーズ部門の売上げにおいては、主力の業務用商品が外出自粛の緩和に伴い外食チャネル向けが伸長し、前年を上回りました。また、ヨーグルト・乳酸菌飲料部門は、コンシューマ商品の主力「バニラヨーグルトシリーズ」でドリンクタイプを投入しましたが、既存品の価格改定後の商品動向の変化による量販店チャネル向け売上げ減少をカバーできず、前年を下回りました。加工事業本部全体の利益につきましては、売上げ減少や原材料価格、燃料費などが上昇となったことに加え、DX構築に向けた先行費用が増加したことで減益となりました。以上の結果、当第3四半期連結累計期間の加工事業本部の売上高は対前年同四半期比16.2%減の320,820百万円、事業利益は対前年同四半期比57.5%減の6,002百万円となりました。 ② 食肉事業本部国内事業においては、第2四半期連結累計期間に続き飼料価額及び燃料費・電力費高騰の影響を大きく受けました。外部ネットワークによる調達量強化や国産牛輸出増加などに努めましたが、国産豚・牛では拠点再編計画により自社処理量が減少、国産鶏では鳥インフルエンザ発生影響により出荷量が減少しました。その結果、豚肉、鶏肉の相場堅調によって売上げは前年を上回りましたが、減益となりました。輸入調達部門においては、生産国での相場上昇、為替影響により調達価格は第2四半期連結累計期間よりもさらに上昇しました。調達先との関係強化や、低価格商品の調達・販売などに努めましたが、価格上昇による国内需要の低下や、入船遅延などで供給が不安定となり販売活動に影響しました。その結果、販売単価上昇によって売上げは前年を上回りましたが、大幅な減益となりました。販売部門においては、消費者の節約志向の高まりなどで量販店の需要減少が見られましたが、国産鶏肉「桜姫」の20周年キャンペーン実施や量販店に特化した組織体制整備により販売量の維持に努めました。外食チャネルの復調に伴い、エリアごとに外食専門組織を立ち上げ提案強化をした結果、売上げ・利益ともに前年を上回りました。以上の結果、当第3四半期連結累計期間の食肉事業本部の売上高は対前年同四半期比9.1%増の570,190百万円、事業利益は対前年同四半期比25.9%減の22,566百万円となりました。
③ 海外事業本部アジア・欧州事業においては、タイ、中国での加工品販売、欧州での豚肉輸出が苦戦しましたが、トルコでの鶏肉販売が堅調に推移し、全体では売上げは前年を上回りました。利益につきましては、タイ、中国における数量減や加工品原料高、またトルコ養鶏事業における継続的な飼料原料高により、減益となりました。米州事業においては、米国やハワイにおける量販店での加工品販売、チリでの豚肉輸出が堅調に推移したことにより、売上げは前年を上回りました。利益につきましては、米国の加工品原料高が落ち着いたことから、増益となりました。豪州事業においては、オーストラリアでの牛集荷頭数に苦戦する中、特に内販において販売が順調に推移しました。一方、ウルグアイでは販売価格の低下がありましたが、全体では売上げは前年を上回りました。利益につきましては、工場稼働の効率化などにも取り組みましたが、オーストラリア及びウルグアイで牛集荷価格の高値が継続したことや、販売価格が低調であったことから、大幅な減益となりました。以上の結果、当第3四半期連結累計期間の海外事業本部の売上高は対前年同四半期比25.7%増の250,614百万円、事業損失は2,670百万円(前年同四半期は2,209百万円の事業利益)となりました。
④その他球団事業である北海道日本ハムファイターズにおいては、2022 年レギュラーシーズンをパシフィック・リーグ6位で終えました。新型コロナウイルス感染症の影響が残るシーズンではありましたが、安全・安心な観戦環境を整えた上で各種の動員施策を実施したことにより、昨シーズンを大きく上回る1,291千人の観客動員に繋がり、売上げ・利益ともに前年を上回りました。2023年1月に「北海道ボールパーク F ビレッジ」内の新球場「エスコンフィールド HOKKAIDO」に事務所を移転し、2023年3月開業に向けた新たな事業基盤の整備を順調に進めております。中央研究所で取り組んでいるヘルスサポート事業においては、新型コロナウイルス感染症による行動制限が緩和されたことから食品開発展2022に出展し、機能性食品素材、食品検査キットの紹介、セミナーを開催するなど、積極的な対面での販促活動を行い、新規顧客獲得に努めました。新規事業においては、第1四半期連結累計期間に立ち上げたDtoC(Direct to Consumer)の2事業 (エンタメ事業「Meatful」、ウェルネス事業「Table for All」)について会員数を増やしながら直接販売を行いました。今後新たにエシカル事業の立ち上げを計画しており、社会課題解決に寄り添ったサービスを展開してまいります。以上の結果、当第3四半期連結累計期間のその他の売上高は対前年同四半期比15.0%増の13,067百万円、事業利益は1,231百万円(前年同四半期は208百万円の事業損失)となりました。
(2)財政状態当第3四半期末の総資産は、前連結会計年度末に比べ現金及び現金同等物が19,999百万円、その他の金融資産が21,960百万円それぞれ減少しましたが、営業債権及びその他の債権が60,789百万円、棚卸資産が27,710百万円それぞれ増加したことなどにより、前連結会計年度末比8.2%増の984,219百万円となりました。負債については、前連結会計年度末に比べその他の流動負債が3,310百万円減少しましたが、有利子負債42,458百万円、営業債務及びその他の債務が24,613百万円それぞれ増加したことなどにより、前連結会計年度末比14.6%増の480,833百万円となりました。なお、有利子負債は253,865百万円となりました。親会社の所有者に帰属する持分は前連結会計年度末に比べ13,600百万円増加の492,669百万円となり、親会社所有者帰属持分比率は2.6ポイント減の50.1%となりました。
(3)キャッシュ・フローの状況営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前四半期利益25,174百万円、減価償却費及び償却費28,352百万円などがありましたが、営業債権及びその他の債権の増加60,835百万円、棚卸資産の増加27,464百万円、法人所得税の支払額13,324百万円などにより、29,754百万円の純キャッシュ減(前年同四半期は5,293百万円の純キャッシュ減)となりました。 投資活動によるキャッシュ・フローは、短期貸付金の減少8,694百万円などがありましたが、固定資産等の取得46,045百万円などにより、30,932百万円の純キャッシュ減(前年同四半期は30,449百万円の純キャッシュ減)となりました。 財務活動によるキャッシュ・フローは、現金配当10,448百万円、借入債務の返済71,305百万円などがありましたが、短期借入金の増加12,807百万円、借入債務による調達106,468百万円などにより、37,956百万円の純キャッシュ増(前年同四半期は11,695百万円の純キャッシュ増)となりました。これらの結果、当第3四半期連結会計期間末の現金及び現金同等物残高は、前連結会計年度末に比べ19,999百万円減少し、65,375百万円となりました。
(4)事業上及び財務上の対処すべき課題当第3四半期連結累計期間において、当社グループが対処すべき課題について重要な変更はありません。
(5)研究開発活動当第3四半期連結累計期間における当社グループ全体の研究開発費は、2,590百万円です。当社は、培養肉の細胞を培養する際に必要となる「培養液」の主成分をこれまで用いられてきた動物由来のもの(血清)から一般的に流通する食品由来のものに置き換えて、ウシやニワトリの細胞を培養することに成功しました。今回の成功により、培養液のコストで大きな割合を占める動物血清を安価かつ安定的に調達可能な食品に代替できることになり、将来的な培養肉の社会実装に向けて前進しました。この研究成果に関しては、特許出願を行うとともに、68th International Congress of Meat Science and Technology (ICoMST)にて発表を行いました。今後は食品成分由来の培養液を用いた培養肉の実現に向けて、技術を確立するとともに、培養スケールの拡大に向けて、培養肉の生産技術に関する研究開発を推進してまいります。 (6)従業員数当第3四半期連結累計期間において、連結会社又は提出会社の従業員数の著しい増減はありません。 (7)生産、受注及び販売の実績当第3四半期連結累計期間において、生産、受注及び販売実績の著しい変動はありません。 (8)主要な設備
前連結会計年度末において計画中であった主要な設備の新設等について、当第3四半期連結累計期間において著しい変動があったものは、次の通りであります。
セグメントの名称
当連結会計年度計画金額(百万円)
設備等の主な内容・目的
資金調達方法
加工事業本部
12,260
ハム・ソーセージ及び加工食品の生産設備及び営業設備などの増設及び更新
自己資金及び借入金等
食肉事業本部
19,900
食肉の生産飼育設備、加工、処理設備及び営業設備の増設・更新及び充実
同上
(注) 直近の業績の状況に基づき、設備投資計画の金額を変更しています。