【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期報告書提出日現在において当社グループ(当社及び当社の関係会社)が判断したものであります。
(1)経営成績当第2四半期連結累計期間のわが国経済は、ウィズコロナの新たな段階への移行が進められる中、景気に持ち直しの動きが見られました。一方で、世界的な金融引締めが続く中、海外景気の下振れが国内の景気を下押しするリスクとなっており、物価上昇、供給面での制約、金融資本市場の変動などの影響に十分注意する必要があることから、引き続き不透明な状況となりました。当業界におきましては、原材料価格やエネルギーコストの上昇、急激な円安進行の継続など事業環境が大きく変化しており、かつてない厳しい状況が続いております。このような中、当社グループは、「2030年におけるありたい姿」として掲げたニッポンハムグループ、「Vision2030」“たんぱく質を、もっと自由に。”の実現に向けたマイルストーンとして2021年4月からスタートした「中期経営計画2023」において、4つの経営方針「収益性を伴ったサステナブルな事業モデルへのシフト」「海外事業における成長モデルの構築」「新たな商品・サービスによる、新しい価値の提供」「ビジョン実現に向けたコーポレート機能の強化」に基づく事業展開を推進してまいりました。当第2四半期連結累計期間におきましては、継続する原材料価格の高騰やエネルギーコストの上昇に対し、引き続きお客様へ高品質で安全・安心な商品をお届けするため、生産、物流、営業体制の強化を図りました。加えて、サステナビリティに関する取組みとして化石燃料由来のCO2排出量削減・水使用量削減について海外における目標を設定、2023年の新球場開業を見据えた北海道プロジェクトにおいては、北海道内で最大級のスポーツの祭典である北海道マラソンへの協賛、食の祭典であるさっぽろオータムフェストへ初出店するなど関係強化を図りました。更にはAIを用いた豚の健康や発情状況を判定するスマート養豚システム「PIG LABO」の製品化に向けた取組み、経営基盤強化のためのDX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進、ROICの向上に向けた最適な事業ポートフォリオの検討に取り組みました。グループ横断の施策については、サステナブルなビジネスモデルの変革及びシナジー最大化のための事業横断戦略として「物流」「営業」「自由貿易協定対策」のプロジェクトを推進しました。経営体制については、「ニッポンハムグループ・コーポレートガバナンス基本方針」に沿って、その充実に努めました。以上の結果、当第2四半期連結累計期間の売上高は、対前年同四半期比11.4%増の634,024百万円となりました。事業利益は対前年同四半期比37.3%減の15,204百万円、税引前四半期利益は対前年同四半期比20.6%減の22,291百万円、親会社の所有者に帰属する四半期利益は対前年同四半期比21.0%減の15,480百万円となりました。
(注)事業利益は、売上高から売上原価、販売費及び一般管理費を控除し、当社グループが定める為替差損益を加味するとともにIFRSへの調整及び非経常項目を除外して算出しております。
セグメントの概況は次のとおりです。
① 加工事業本部加工事業本部全体においては、新型コロナウイルス感染症による外出自粛の緩和などにより、業務用商品が伸長しましたが、価格改定後の商品動向の変化からコンシューマ商品が減少し、売上げは前年を下回りました。また国際的な穀物や原油相場の上昇、円安の進行などから、想定を上回る原材料価格や燃料費の上昇に伴い、厳しい収益環境となりました。ハム・ソーセージ、デリ商品事業のハム・ソーセージ部門の売上げにおいては、業務用商品がCVSチャネル向けで前年を上回りましたが、コンシューマ商品は主力の「シャウエッセン」で他社とのコラボ販促を実施したものの、価格改定直後の販売数量の減少により前年を下回りました。デリ商品部門の売上げにおいては、コンシューマ商品は、主力の「チルドベーカリー」がスナック需要の拡大から好調に推移したものの、「中華名菜」の減少により前年を下回りました。業務用商品もCVSチャネル向けが減少し、前年を下回りました。中元ギフト商戦においては、「鎌倉ハム」が大きく伸長したことで市場の伸び率を上回りましたが、主力の「美ノ国」「本格派」が減少し、売上げは前年を下回りました。エキス・一次加工事業の売上げにおいては、エキス部門は、外出自粛の緩和に伴いラーメン店を中心とした外食チャネル向けスープや、CVSチャネル向け業務用ソースが好調に推移しました。また、一次加工事業部門は、CVSチャネル向けが減少したものの、未加熱加工品の販売が回復し、前年を上回りました。乳製品事業のヨーグルト・乳酸菌飲料部門の売上げにおいては、コンシューマ商品の主力の「バニラヨーグルト」でドリンクタイプを投入しましたが、価格改定後の販売数量の減少からスーパーチャネル向け既存品売上げが減少し、前年を下回りました。またチーズ部門においては、主力の業務用商品が外出自粛の緩和に伴い外食チャネル向け売上げが伸長し、前年を上回りました。加工事業本部全体の利益につきましては、売上げ減少や原材料価格、燃料費などが急激な上昇となったことに加え、DX構築に向けた先行費用が増加したことで減益となりました。以上の結果、当第2四半期連結累計期間の加工事業本部の売上高は対前年同四半期比16.0%減の204,019百万円、事業利益は対前年同四半期比80.9%減の1,334百万円となりました。
② 食肉事業本部国内事業においては、急激な外部環境の変化に対応するため生産・荷受部門の組織改編を行い生産性の向上、コスト軽減に努めました。国内牛・豚事業では、荷受部門は、消費者の節約志向が継続していることから、和牛の高価格帯部位の需要は低迷しましたが、「黒樺牛」、「麦小町」をはじめとしたブランド食肉の拡販、アジア向けの輸出拡大などで利益確保に努めました。生産部門は、拠点再編に起因する生産調整による出荷数量の落ち込みや飼料や燃料費、電力費の高騰が大きく影響し、苦戦を強いられた結果、事業全体で減益となりました。国内鶏事業では、荷受部門は、量販店中心に販売も好調が継続し、相場も高値で堅調に推移しました。国産鶏肉「桜姫」の20周年キャンペーンの実施及び外部調達の強化により、取扱量と利益ともに拡大しました。しかしながら、生産部門は、生産性の改善に努めたものの飼料及び燃料費・電力費高騰の影響は依然大きく、事業全体で減益となりました。輸入調達部門においては、冷凍豚肉・鶏肉については、外食チャネルを中心に得意先ニーズに合った提案を継続し、安定した調達により利益確保に努めました。牛肉・内臓、冷蔵豚肉などは、現地相場高や円安の影響もあり価格的な魅力が低下したことで量販店、外食などで需要が減り、事業全体で減益となりました。販売部門においては、量販店での需要が落ち着きを見せる中、外食チャネルが復調となりました。当期よりエリアごとにチャネルに対応した専門部門を組成し、販売に注力したことに加え、国内・輸入の荷受部門と連携を強化したことにより販売量が伸長した結果、増益となりました。以上の結果、当第2四半期連結累計期間の食肉事業本部の売上高は対前年同四半期比9.6%増の361,652百万円、事業利益は対前年同四半期比20.2%減の14,220百万円となりました。
③ 海外事業本部アジア・欧州事業においては、加工品販売がタイ、ベトナム、中華圏などで順調に回復したことに加え、トルコでの鶏肉販売も堅調に推移したことにより、売上げは前年を上回りました。利益につきましては、タイ、ベトナムで数量増により回復しましたが、中国では加工品の原料高により苦戦、またトルコ養鶏事業においても飼料や原料高により、全体では減益となりました。米州事業においては、米国での豚肉輸出や量販店での加工食品の販売、チリでの豚肉輸出が堅調に推移したことにより、売上げは前年を上回りました。利益につきましては、米国の加工品の原料高、チリにおける豚肉調達価格の高騰により、減益となりました。豪州事業においては、オーストラリアでの牛集荷頭数に苦戦する中、輸出及び内販ともに販売が順調に推移、一方ウルグアイでは販売価格の低下による苦戦もありましたが、売上げは前年を上回りました。利益につきましては、オーストラリア及びウルグアイで牛集荷価格の高値が継続、工場稼働の効率化などにも取り組みましたが、減益となりました。以上の結果、当第2四半期連結累計期間の海外事業本部の売上高は対前年同四半期比32.5%増の169,348百万円、事業損失は936百万円(前年同四半期は628百万円の事業利益)となりました。
④ その他球団事業である北海道日本ハムファイターズにおいては、2022年レギュラーシーズンをパシフィックリーグ6位で終えました。新型コロナウイルス感染症の影響が残るシーズンではありましたが、安全・安心な観戦環境を整えることで全主催試合の開催達成と昨シーズンを上回る観客動員に努めたことで増収増益となりました。今後は2023年3月に迎える「北海道ボールパークFビレッジ」開業に向けて事業運営体制の整備を万全に行い、ニッポンハムグループのすべてのステークホルダーの皆様に新たな球団事業の価値をご提供できるよう努めてまいります。中央研究所で取り組んでいるヘルスサポート事業においては、新型コロナウイルス感染症の影響で機能性食品素材の対面による商談は制限されましたが、WEB上でのセミナー動画公開など、積極的な販促活動を行い、新規顧客獲得に努めました。また、食品検査キットに関しましては、食物アレルゲン簡易迅速検査キット「FASTKITスリム甲殻類」を上市し、売上げ拡大に努めました。新規事業においては、第1四半期連結累計期間に立ち上げたD2C(Direct to Consumer)の2事業(エンタメ事業「Meatful」、ウェルネス事業「Table for All」)のサービス認知拡大と新規顧客の獲得に努めました。以上の結果、当第2四半期連結累計期間のその他の売上高は対前年同四半期比28.0%増の10,538百万円、事業利益は対前年同四半期比347.3%増の1,928百万円となりました。
(2)財政状態当第2四半期連結会計期間末の総資産は、前連結会計年度末に比べ現金及び現金同等物が22,760百万円、その他の金融資産が11,290百万円それぞれ減少しましたが、営業債権及びその他の債権が12,051百万円、棚卸資産が39,491百万円それぞれ増加したことなどにより、前連結会計年度末比4.2%増の946,987百万円となりました。負債については、前連結会計年度末に比べその他の金融負債が10,571百万円減少しましたが、有利子負債25,539百万円、営業債務及びその他の債務が13,119百万円それぞれ増加したことなどにより、前連結会計年度末比5.1%増の440,968百万円となりました。なお、有利子負債は236,946百万円となりました。親会社の所有者に帰属する持分は前連結会計年度末に比べ15,717百万円増加の494,786百万円となり、親会社所有者帰属持分比率は0.5ポイント減の52.2%となりました。
(3)キャッシュ・フローの状況営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前四半期利益22,291百万円、減価償却費及び償却費18,846百万円などがありましたが、営業債権及びその他の債権の増加11,153百万円、棚卸資産の増加37,644百万円、法人所得税の支払額7,108百万円などにより、13,354百万円の純キャッシュ減(前年同四半期は9,317百万円の純キャッシュ増)となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、短期貸付金の減少8,650百万円などがありましたが、固定資産等の取得36,408百万円などにより、26,545百万円の純キャッシュ減(前年同四半期は26,754百万円の純キャッシュ減)となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、現金配当10,448百万円、借入債務の返済41,623百万円などがありましたが、短期借入金の増加17,618百万円、借入債務による調達46,047百万円などにより、11,938百万円の純キャッシュ増(前年同四半期は1,819百万円の純キャッシュ増)となりました。これらの結果、当第2四半期連結会計期間末の現金及び現金同等物残高は、前連結会計年度末に比べ22,760百万円減少し、62,614百万円となりました。
(4)事業上及び財務上の対処すべき課題当第2四半期連結累計期間において、当社グループが対処すべき課題について重要な変更はありません。
(5)研究開発活動当第2四半期連結累計期間における当社グループ全体の研究開発費は、1,660百万円です。当社は、培養肉の細胞を培養する際に必要となる「培養液」の主成分をこれまで用いられてきた動物由来のもの(血清)から一般的に流通する食品由来のものに置き換えて、ウシやニワトリの細胞を培養することに成功しました。今回の成功により、培養液のコストで大きな割合を占める動物血清を安価かつ安定的に調達可能な食品に代替できることになり、将来的な培養肉の社会実装に向けて前進しました。この研究成果に関しては、特許出願を行うとともに、68th International Congress of Meat Science and Technology (ICoMST)にて発表を行いました。今後は食品成分由来の培養液を用いた培養肉の実現に向けて、技術を確立するとともに、培養スケールの拡大に向けて、培養肉の生産技術に関する研究開発を推進してまいります。
(6)従業員数当第2四半期連結累計期間において、連結会社又は提出会社の従業員数の著しい増減はありません。 (7)生産、受注及び販売の実績当第2四半期連結累計期間において、生産、受注及び販売実績の著しい変動はありません。
(8)主要な設備当第2四半期連結累計期間において、主要な設備の著しい変動及び主要な設備の前連結会計年度末における計画の著しい変更はありません。