【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づき作成されている。経営者の視点による当連結会計年度の経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に関する分析等は次のとおりである。
本項に記載した将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。
1.経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症抑制と経済活動の両立に向けた政府の各種政策などにより、企業収益の改善や個人消費に持ち直しの動きがみられるなど、景気は緩やかな回復基調にあった。一方で、足元では、世界的な金融引締めに伴う影響や、物価上昇などによる海外景気の下振れリスクが懸念されるなど、先行きは依然として不透明な状況のなかで推移した。
このような状況において、当社グループは、2022年4月よりスタートした新たな中期経営計画「Next2024」のもと、エネルギーとくらしの総合サービス企業グループとして、中核であるガスエネルギー事業の競争力強化を図るとともに、電力・その他エネルギー事業や不動産事業等、引き続き事業構造の変革に取り組んでいる。
特に西部ガスグループの中核をなす都市ガス、LPG、LNGのガスエネルギー事業においては、地域に根差した事業体制のもと、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、カーボンニュートラル都市ガスの供給開始や、各自治体と脱炭素に関わる連携協定を締結する等の活動を行った。
第2の収益の柱と位置付ける不動産事業においては、まちづくり・再開発・建物建築などの計画段階から、ディベロッパーさま・ハウスメーカーさまなどに西部ガスグループのソリューション力を活かした提案を行い、西部ガスグループを真のパートナーとして選んでいただき、ガスエネルギー事業とのシナジー効果を生み出せるように取り組んだ。また、海外においては戸建分譲等を引き続き展開した。
国際エネルギー事業においては、ひびきLNG基地の立地条件の優位性や拡張性を活かし、LNG船による再出荷やLNG船のガスアップ/クールダウンなど、従来の枠に捉われない新たな事業を引き続き展開した。
その他の分野では、ベンチャー企業をはじめとする成長企業への出資等を行うファンドを運営するなど、当社グループの強みと経営資源を最大限活用しながら、ガスエネルギー以外の事業拡大による事業構造の多様化・強靭化に向けたグループ変革を推進した。
このような事業活動の結果、当連結会計年度の経営成績は、売上高266,319百万円(前期比51,046百万円 23.7%増)、営業利益は前期に比べ10,360百万円増の10,811百万円、経常利益は前期に比べ11,188百万円増の11,759百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期に比べ12,720百万円増の13,215百万円となった。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響については、主に業務用分野において新型コロナウイルス感染症の影響からの回復によりガス事業の販売量が増加した。一方、巣ごもり需要の縮小や物価高騰による節約意識の高まりによって家庭用の販売量は減少した。
その他の事業においても、食関連事業において新型コロナウイルス感染症の影響からの一部回復により売上高が増加した。
セグメント別の状況は次のとおりである。
(1) ガス
当連結会計年度末の都市ガス事業におけるお客さま戸数は113万3千戸であり、都市ガス販売量は前期に比べ1.3%減の892,252千㎥となった。このうち業務用ガス販売量については、主に商業用や工業用分野において新型コロナウイルス感染症の影響からの回復により2.1%増の564,678千㎥となった。一方、家庭用ガス販売量は、巣ごもり需要の縮小や節約意識の高まり等により使用量が減少したことから7.7%減の213,421千㎥となった。また、他の事業者への卸供給ガス販売量については、卸供給先の需要減等により4.8%減の114,153千㎥となった。
以上のような都市ガス販売量の結果と、原料費調整によるガス料金単価の上方調整の影響等により、売上高は前期に比べ37.8%増の165,975百万円となり、セグメント損益は売上高の増加に加え、前期に原料LNGをスポット市場から調達した影響による費用の増加がなくなったこと等により、6,165百万円の利益(前期セグメント損失5,331百万円)となった。
(2) LPG
LPG販売単価が上昇したこと等により、売上高は前期に比べ10.4%増の26,718百万円となったものの、LPG仕入価格の上昇に伴う売上原価の増加に加え、新規物件獲得の販売促進費が増加したこと等により、セグメント利益は前期に比べ66.9%減の268百万円となった。
(3) 電力・その他エネルギー
電力小売事業において販売単価の上昇及び販売量の増加等により、売上高は前期に比べ1.5%増の21,334百万円となったものの、電力仕入価格の上昇の影響等により、セグメント利益は前期に比べ58.0%減の539百万円となった。
(4) 不動産
分譲マンションの販売戸数が減少した一方、宅地販売や海外での戸建て販売が増加したこと等により、売上高は前期に比べ7.6%増の41,777百万円となったものの、前期は海外大型物件があったこと等により、セグメント利益は前期に比べ10.2%減の4,086百万円となった。
(5) その他
その他の事業には、食関連事業(食品販売事業、飲食店事業)、情報処理事業等が含まれているが、食関連事業において新型コロナウイルス感染症の影響からの一部回復等により、売上高は前期に比べ3.1%増の27,748百万円となり、セグメント損益は177百万円の利益(前期セグメント損失110百万円)となった。
(注)1.セグメント別売上高及びセグメント利益には、セグメント間の内部取引に係る金額を含んでいる。
2.本報告書では、ガス販売量は、毎月の検針による使用量の計量に基づいたものを45MJ(メガジュール)/㎥で表記している。
3.お客さま戸数は、年度末の都市ガスメーター取付個数である。
セグメント別の売上高及びその構成比は次のとおりである。
区分
前連結会計年度
当連結会計年度
金額(百万円)
構成比(%)
金額(百万円)
構成比(%)
ガス
120,449
52.0
165,975
58.6
LPG
24,204
10.5
26,718
9.4
電力・その他エネルギー
21,009
9.1
21,334
7.5
不動産
38,814
16.8
41,777
14.7
その他
26,913
11.6
27,748
9.8
計
231,391
100.0
283,554
100.0
2.財政状態の状況
(1) 資産
当連結会計年度末における資産の残高は414,268百万円となり、前連結会計年度末に比べ18,604百万円増加した。
固定資産の残高は291,907百万円であり、前連結会計年度末に比べ492百万円増加した。これは、賃貸用不動産の取得に伴いその他の設備が増加したことによるものである。
流動資産の残高は122,360百万円であり、前連結会計年度末に比べ18,112百万円増加した。これは、2022年12月にトランジションボンドを発行したことに伴い現金及び預金が増加したこと等によるものである。
セグメント別の状況は次のとおりである。
①
ガス
固定資産の減価償却が進んだこと等により、資産合計は144,026百万円(前期比267百万円 0.2%減)となった。
②
LPG
固定資産の減価償却が進んだこと等により、資産合計は20,339百万円(前期比69百万円 0.3%減)となった。
③
電力・その他エネルギー
ひびき発電合同会社への出資等により、資産合計は24,774百万円(前期比4,334百万円 21.2%増)となった。
④
不動産
販売用不動産の建設工事が進捗したことに伴い仕掛品等の棚卸不動産が増加したことから、資産合計は122,309百万円(前期比13,204百万円 12.1%増)となった。
⑤
その他
固定資産の減価償却が進んだこと等により、資産合計は29,668百万円(前期比565百万円 1.9%減)となった。
(注)セグメント別資産には、セグメント間の内部取引に係る金額を含んでいる。
(2) 負債
当連結会計年度末における負債の残高は320,644百万円となり、前連結会計年度末に比べ5,620百万円増加した。
固定負債の残高は213,439百万円であり、前連結会計年度末に比べ1,762百万円増加した。これは、社債が増加したこと等によるものである。
流動負債の残高は107,205百万円であり、前連結会計年度末に比べ3,858百万円増加した。これは、1年以内に期限到来の固定負債が増加したこと等によるものである。
なお、当連結会計年度末における有利子負債残高は281,902百万円となり、前連結会計年度末に比べ6,778百万円増加した。
(3) 純資産
当連結会計年度末における純資産の残高は93,624百万円であり、前連結会計年度末に比べ12,984百万円増加した。これは主に親会社株主に帰属する当期純利益の増加に伴い利益剰余金が増加したこと等によるものである。なお、当連結会計年度末における自己資本比率は、20.9%(前連結会計年度末は18.8%)となった。
3.キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ11,309百万円増の35,720百万円となった。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりである。
(1) 営業活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度に営業活動により増加した資金は、21,749百万円となり、前連結会計年度に比べ11,207百万円の収入の増加となった。これは、都市ガス事業においてガス料金単価の上方調整によりガス売上収入が増加したこと等によるものである。
(2) 投資活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度に投資活動により減少した資金は、15,969百万円となり、前連結会計年度に比べ1,844百万円の支出の増加となった。これは、有形固定資産の取得による支出が増加したこと等によるものである。
(3) 財務活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度に財務活動により増加した資金は、2,959百万円となり、前連結会計年度に比べ4,675百万円の収入の減少となった。これは、短期借入金による返済が増加したこと等によるものである。
4.生産、受注及び販売の実績
当社グループにおいては、ガスセグメントが生産及び販売活動の中心となっており、外部顧客に対する売上高及び営業費用の大半を占めている。また、当該セグメント以外のセグメントが生産及び販売する製品・サービスは広範囲かつ多種多様であり、受注形態をとらないものも多い。
このため、以下は、ガスセグメントにおける生産、受注及び販売の実績について記載している。
(1) 生産実績
当連結会計年度における生産実績は次のとおりである。
品名
数量(千m3)
前期比(%)
ガス
904,218
△1.3
(2) 受注実績
ガスについては、その性質上受注生産は行っていない。
(3) 販売実績
当連結会計年度におけるガスの販売実績は次のとおりである。
項目
数量(千m3)
金額(百万円)
前期比(%)
前期比(%)
家庭用
213,421
△7.7
55,626
12.9
業務用
564,678
2.1
65,550
63.4
卸供給
114,153
△4.8
12,236
69.0
計
892,252
△1.3
133,414
38.1
期末ガスお客さま戸数(千戸)
1,133.7
0.1
(注)「期末ガスお客さま戸数」は、年度末の都市ガスメーター取付個数である。
5.経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの主要な原材料であるLNGは、海外から輸入しているため為替や原油価格の変動により大きな影響を受ける。そのリスクをヘッジする手段として為替予約や原料価格に関するスワップ等を検討している。また、都市ガス事業においては、原料価格の変動は原料費調整により、タイムラグは生じるもののガス販売価格に反映して対応することが可能である。
また、当社グループの売上高の大半を占めているガスによる売上高は、気温・水温等の変動により、大きな影響を受ける。このため、当社グループは、金融機関等との天候デリバティブ契約の締結等、そのリスクの軽減を検討している。
さらに、都市ガス事業は、需要拡大や安定供給のためにガス導管の敷設等の多大な設備投資が必要であるため、社債や借入金等の残高が多く、金利変動の影響が大きい。このため、金利の固定化及び金利スワップ等の活用により、そのリスクをヘッジしている。
6.資本の財源及び資金の流動性
(1) 資金需要
当社グループの運転資金需要の主なものは、ガス事業における原料LNG購入費用のほか、製造費、供給販売費及び一般管理費等の営業費用である。また、投資を目的とした資金需要は、ガス事業における供給設備(導管等)投資及び電力・その他エネルギー事業や不動産事業など成長を見込める分野への投資等によるものである。
なお、新型コロナウイルス感染症の予防対策等の影響により、当社グループ内で運転資金が不足する子会社については、融資等による支援を行っている。
(2) 財務政策
当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資及びグループ事業拡大に向けた投資資金については、金融機関からの長期借入と社債の発行による調達を基本としている。
また、当社は、当社グループ内でキャッシュ・マネジメント・サービスを実施しており、資金調達の一元化、余剰資金の活用等により、当社グループ全体の有利子負債の削減に努めている。
なお、金融機関には十分な借入枠を有しているため、当社グループの事業の維持拡大、運営に必要な運転資金、設備投資資金の調達は、今後も可能であると考えている。
7.重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されている。当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 4.会計方針に関する事項」に記載している。この連結財務諸表の作成にあたって、過去の実績や状況に応じ合理的と考えられる要因等に基づき見積り及び判断を行っているが、見積り特有の不確実性があるために実際の結果は異なる場合がある。
また、当社グループにおける重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載している。
8.目標とする経営指標の実績
当社グループは、2025年3月期を最終年度とするグループ中期経営計画「Next2024」において、「売上高」、「経常利益」、「ROA」、「ROE」、「自己資本比率」を、目標とする経営指標と定めた。
当連結会計年度における当該指標は次のとおりである。
「売上高」は266,319百万円(前期215,273百万円)となった。
「経常利益」は11,759百万円(前期571百万円)となった。
「ROA」は3.3%(前期0.1%)となった。
「ROE」は16.4%(前期0.6%)となった。
「自己資本比率」は20.9%(前期18.8%)となった。
なお、グループ中期経営計画「Next2024」の目標とする経営指標は次のとおりである。
項 目
経営指標(2024年度)
売上高
2,300億円
経常利益(3年合計)
250億円(※)
ROA
1.5%
ROE
7.5%
自己資本比率
21.5%
(※)2022年度~2024年度 計画合計
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