【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(経営成績等の状況の概要)
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
(1) 経営成績の状況当連結会計年度における日本経済は、物価上昇や為替変動による先行き不透明感は依然として残るものの、コロナ禍からの社会経済活動の正常化に伴う個人消費の持ち直しに加え、設備投資が堅調に推移したことで、緩やかに回復しました。このような状況のもと、当社グループは中期経営計画「PLAN23」の基本方針である「脱炭素社会に向けた戦略投資の強化」と「デジタル化の推進」に取り組みました。
脱炭素社会の実現に向けては、当社が参画する「液化水素サプライチェーンの商用化実証」において、海外の出荷地と国内の受け入れ地が決定するなど、CO2フリー水素サプライチェーン構築に向けた取り組みを着実に推進しました。また、FC商用車向け水素ステーションの建設に向けて、コスモ石油マーケティング株式会社と合同会社を設立しました。総合エネルギー事業では、カーボンオフセットLPガスなど顧客の脱炭素化を支援する商材の拡販に加え、「イワタニカセットガス」の原材料調達から廃棄までを含めたサプライチェーン全体のCO2排出量を算定・公表するなど、LPガスの脱炭素化に向けた取り組みを進めました。産業ガス・機械事業では、再生医療分野において、中央研究所で細胞の製造や輸送、凍結保管に関する研究を進めるとともに、新規顧客の獲得に注力しました。陸上養殖分野においては、同研究所に水産養殖の研究設備を導入し、商品提案力の強化を図りました。マテリアル事業では、金属加工事業の拡大に向けて、タイの拠点を拡張し、製造設備の増強や太陽光パネルの設置を行うことで、生産能力の拡大とCO2削減に取り組みました。
当連結会計年度の業績は、売上高9,062億61百万円(前年度比2,158億68百万円の増収)、営業利益400億35百万円(同41百万円の減益)、経常利益470億11百万円(同5億98百万円の増益)、親会社株主に帰属する当期純利益320億22百万円(同20億57百万円の増益)となりました。
セグメント別の経営成績は次のとおりです。
①総合エネルギー事業総合エネルギー事業は、LPガス輸入価格が高値で推移したことや、新規連結の影響もあり、LPガスの販売が増加しました。また、カセットガスの販売も堅調に推移しました。一方、LPガスの収益性は改善したものの、市況要因が前年度比で111億8百万円の減益と大幅なマイナスになりました。この結果、当事業分野の売上高は3,937億20百万円(前年度比665億45百万円の増収)、営業利益は144億34百万円(同82億21百万円の減益)となりました。
②産業ガス・機械事業産業ガス・機械事業は、エアセパレートガスについては、電子部品業界向けを中心に販売数量が減少したことに加え、電力料金の上昇により製造コストが増加しました。水素事業は、水素ステーションの運営費用が増加する中、液化水素や関連設備の販売が伸長しました。特殊ガスについては、半導体ガス等が堅調だったことに加え、ヘリウムは世界的な需給ひっ迫により市況が上昇する中、安定供給に努めました。また、機械設備は、ガス供給設備や半導体関連機器の売上が伸長しました。この結果、当事業分野の売上高は2,404億3百万円(前年度比560億70百万円の増収)、営業利益は165億61百万円(同40億93百万円の増益)となりました。
③マテリアル事業マテリアル事業は、ミネラルサンドについてはサプライチェーンの混乱により市況が高止まりする中、引き続き安定供給に努めたことで増収となりました。ステンレスは新規顧客向けに販売が増加し、金属加工品もエアコン向けを中心に堅調に推移しました。また、次世代自動車向け二次電池材料は市況上昇の影響や新規顧客向けの販売により売上が増加し、低環境負荷PET樹脂やバイオマス燃料等の環境商品も伸長しました。この結果、当事業分野の売上高は2,384億53百万円(前年度比874億78百万円の増収)、営業利益は125億36百万円(同52億81百万円の増益)となりました。
④自然産業事業自然産業事業は、業務用や一般消費者向け冷凍食品の需要が回復する中、仕入コストおよび物流費上昇への対応を進めました。一方で、畜産の飼料価格高騰に加え、種豚の出荷頭数が減少しました。この結果、当事業分野の売上高は289億86百万円(前年度比56億9百万円の増収)、営業利益は5億67百万円(同1億8百万円の減益)となりました。
⑤その他売上高は46億97百万円(前年度比1億63百万円の増収)、営業利益は13億64百万円(同1億5百万円の減益)となりました。
(2) 財政状態の状況
①総資産 当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末と比べ975億23百万円増加の6,560億3百万円となりました。これは、有形固定資産が216億95百万円、受取手形、売掛金及び契約資産が192億95百万円、新規連結の影響によりのれん等の無形固定資産が206億89百万円、商品及び製品が100億17百万円、投資有価証券が58億98百万円それぞれ増加したこと等によるものです。
②負債当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末と比べ656億1百万円増加の3,437億73百万円となりました。これは、社債が200億円、長期借入金が133億64百万円、電子記録債務が100億24百万円、支払手形及び買掛金が65億91百万円、契約負債が62億13百万円それぞれ増加したこと等によるものです。なお、当連結会計年度末のリース債務等を含めた有利子負債額は、前連結会計年度末と比べ282億94百万円増加の1,394億54百万円となりました。
③純資産当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末と比べ319億22百万円増加の3,122億30百万円となりました。これは、利益剰余金が271億28百万円、為替換算調整勘定が32億85百万円それぞれ増加したこと等によるものです。
(3) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末と比べ36億82百万円増加の332億56百万円となりました。
①営業活動によるキャッシュ・フロー当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比べ収入が383億96百万円増加したことにより514億71百万円の収入となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益473億22百万円、減価償却費242億15百万円、仕入債務の増加額71億98百万円等による資金の増加と、法人税等の支払額155億86百万円、売上債権及び契約資産の増加額98億43百万円、棚卸資産の増加額97億94百万円等による資金の減少によるものです。
②投資活動によるキャッシュ・フロー当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比べ支出が283億46百万円増加したことにより602億86百万円の支出となりました。これは主に、有形固定資産の取得285億11百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得243億67百万円、投資有価証券の取得56億70百万円等による資金の減少によるものです。
③財務活動によるキャッシュ・フロー当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比べ収入が29億94百万円増加したことにより110億32百万円の収入となりました。これは主に、社債の発行による収入200億円による資金の増加と、配当金の支払額48億84百万円、借入金の純減少額19億89百万円等による資金の減少によるものです。
(4) 生産、受注及び販売の実績当社グループの事業形態は主に商品の仕入による販売を主要業務としているため、生産実績及び受注状況に代えて仕入実績を記載しております。
①仕入実績当連結会計年度における外部からのセグメントごとの仕入実績(役務原価等を含む)は次のとおりであります。
セグメントの名称
金額(百万円)
前年度比(%)
総合エネルギー事業
280,874
28.9
産業ガス・機械事業
173,075
40.2
マテリアル事業
214,447
54.8
自然産業事業
23,160
26.7
その他
15,248
△15.2
合計
706,807
36.9
②販売実績当連結会計年度における外部顧客へのセグメントごとの販売実績(役務収益等を含む)は次のとおりであります。
セグメントの名称
金額(百万円)
前年度比(%)
総合エネルギー事業
393,720
20.3
産業ガス・機械事業
240,403
30.4
マテリアル事業
238,453
57.9
自然産業事業
28,986
24.0
その他
4,697
3.6
合計
906,261
31.3
(注)
販売実績が総販売実績の100分の10以上を占める相手先はありません。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いております。なお、見積り及び判断・評価については、過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる要因等に基づいて行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合があります。連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(2) 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
①経営成績の分析(a) 売上高及び売上総利益売上高は、前連結会計年度に比べ31.3%増収の9,062億61百万円となりました。これは主に、LPガス輸入価格が高値で推移したことや各種市況上昇への対応を着実に進めたことに加え、新規連結の影響によるもので、詳細は「(経営成績等の状況の概要) (1)経営成績の状況」のセグメント別の経営成績をご参照ください。売上総利益は、LPガス市況要因による大幅なマイナス影響を受けたものの、売上高が増収となったことから、前連結会計年度に比べ11.0%増益の2,129億25百万円となりました。
(b) 営業利益販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ14.0%増加の1,728億90百万円となりました。これは主に、運搬費や新規連結の影響等により人件費が増加したことによるものです。この結果、営業利益は、前連結会計年度に比べ0.1%減益の400億35百万円となりました。
(c) 経常利益営業外損益は、69億76百万円の収益(純額)となり、前連結会計年度の63億36百万円の収益(純額)に比べ6億39百万円増加しました。これは主に、補助金収入及び持分法による投資利益等が増加したことによるものです。この結果、経常利益は、前連結会計年度に比べ1.3%増益の470億11百万円となりました。
(d) 親会社株主に帰属する当期純利益特別損益は、3億10百万円の収益(純額)となり、前連結会計年度の4億69百万円の損失(純額)に比べ7億80百万円の増益要因となりました。これは主に、負ののれん発生益を計上したことによるものです。
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ6.9%増益の320億22百万円となり、1株当たりの当期純利益は、前連結会計年度の520.98円に対し556.69円となりました。
当社は、中期経営計画「PLAN23」において、最終年度の2024年3月期に、経常利益400億円、ROE9%以上を目標としております。前連結会計年度及び当連結会計年度、PLAN23最終年度目標の経常利益、ROEは次のとおりであります。
(PLAN23との比較)
項目
第79期実績
第80期実績
PLAN23最終年度目標
経常利益(億円)
464
470
400
ROE
11.7%
11.2%
9%以上
(第80期業績予想との比較)
項目
第79期実績
第80期実績
第80期業績予想(注)
売上高(億円)
6,903
9,062
8,400
営業利益(億円)
400
400
400
経常利益(億円)
464
470
465
親会社株主に帰属する当期純利益(億円)
299
320
300
(LPガス輸入価格変動要因(市況要因)を除いた経常利益)
項目
第79期実績
第80期実績
第80期業績予想(注)
経常利益(億円)
464
470
465
市況要因(億円)
79
△31
5
市況要因を除く経常利益(億円)
384
501
459
(注)第80期業績予想は、2022年11月9日に公表した数値を表示しております。
第80期(2023年3月期)実績は、コロナ禍からの社会経済活動の正常化に伴う主力商品の販売増加や、各種市況上昇への対応等により、経常利益は470億円、ROEは11.2%となり、PLAN23の最終年度目標を達成しました。また、主要な事業の成長を測る「重要事業指標」のうち、「LPガス直売顧客数」については、PLAN23の目標を1年前倒しで達成しました。「国内外カセットこんろ・ボンベ販売数量」、「エアセパレートガス販売数量」、「液化水素販売数量」についても、概ね順調に推移しております。
項目
第79期実績
第80期実績
PLAN23最終年度目標
LPガス直売顧客数
103万戸
110万戸
110万戸
カセットこんろ販売数量
4,585千台
4,291千台
6,500千台
カセットボンベ販売数量
154百万本
157百万本
180百万本
エアセパレートガス販売数量
16.7億㎥
16.0億㎥
17.0億㎥
液化水素販売数量
71百万㎥
77百万㎥
90百万㎥
以上の状況を踏まえ、2024年3月期を初年度とする新中期経営計画の策定を進めております。
②資本の財源及び資金の流動性についての分析キャッシュ・フローの状況については、「(経営成績等の状況の概要) (3) キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
(a) 資金需要当社グループの事業活動における運転資金の主なものは、商品の仕入、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資、M&Aによる株式取得のためのものであります。当社グループにおいては、安心・安全を支えるインフラ整備については事業全体の収益を考慮して、将来の成長投資については資本コスト等を考慮して多角的かつ慎重に投資判断を行う方針であります。
(b) 財務政策当社グループは、財務の健全性を保ちつつ、安定的に営業活動によるキャッシュ・フローを生み出すことで、事業運営上必要な資本の財源及び資金の流動性を確保することを基本方針としております。短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入、コマーシャル・ペーパー(CP)により調達を行っております。設備投資や長期運転資金の調達につきましては、自己資金並びに金融機関からの長期借入、社債の発行等により行っております。また、グループ内資金の効率化を目的として、グループ会社間で貸付等を行っております。
社債については、2021年12月のグリーンボンドに引き続き、2022年9月に普通社債(期間7年・10年、各100億円)を発行いたしました。これらは、株式会社日本格付研究所(JCR)より、債券格付「A」を取得しております。また、CP発行に必要な国内CP格付についても、長期発行体格付「A」に対応する「J-1」を取得いたしました。なお、当連結会計年度末のリース債務等を含めた有利子負債額は、前連結会計年度末と比べ282億94百万円増加の1,394億54百万円となりました。