【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
<資産>
当連結会計年度末における流動資産は159,279百万円となり、前連結会計年度末に比べ7,572百万円増加いたしました。これは主に現金及び預金が3,814百万円、棚卸資産が2,871百万円増加したことによるものであります。固定資産は90,769百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,087百万円増加いたしました。これは主に有形固定資産が3,781百万円増加したことに対し、無形固定資産が1,708百万円減少したことによるものであります。
この結果、総資産は、250,049百万円となり、前連結会計年度末に比べ9,660百万円増加いたしました。
<負債>
当連結会計年度末における流動負債は59,669百万円となり、前連結会計年度末に比べ6,658百万円減少いたしました。これは主に短期借入金が7,163百万円減少したことによるものであります。固定負債は32,305百万円となり、前連結会計年度末に比べ20,978百万円増加いたしました。これは主に転換社債型新株予約権付社債が18,072百万円、長期借入金が2,048百万円増加したことによるものであります。
この結果、負債合計は、91,974百万円となり、前連結会計年度末に比べ14,320百万円増加いたしました。
<純資産>
当連結会計年度末における純資産合計は158,074百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,660百万円減少いたしました。これは主に利益剰余金が3,068百万円(親会社株主に帰属する当期純利益が10,059百万円及び剰余金の配当が6,990百万円)、自己株式が3,991百万円、為替換算調整勘定が5,608百万円増加したことに対し、資本剰余金が4,753百万円、非支配株主持分が4,640百万円減少したことによるものであります。
この結果、自己資本比率は58.1%(前連結会計年度末は60.4%)となりました。
<売上高>
当連結会計年度の売上高は242,055百万円となり、前連結会計年度と比べ12.8%増加いたしました。
<売上総利益>
経営資源の効率的な活用に一層の努力を続けるとともに、グループ一丸となって業務改革を推進し、生産効率の向上に努めました。この結果、売上総利益は56,798百万円となり、前連結会計年度と比べ5.0%増加いたしました。
<販売費及び一般管理費、営業利益>
販売費及び一般管理費は、給与及び賞与、減価償却費等の増加や、連結会社が増加したことなどにより、2,504百万円増加し、36,241百万円となりました。この結果、営業利益は20,557百万円となり、前連結会計年度と比べ1.0%増加いたしました。
<営業外収益、営業外費用、経常利益>
営業外収益は248百万円増加の2,423百万円、営業外費用は210百万円増加の892百万円となりました。この結果、経常利益は22,088百万円となり、前連結会計年度と比べ1.1%増加いたしました。
<税金等調整前当期純利益、親会社株主に帰属する当期純利益>
税金等調整前当期純利益は18,556百万円となり、前連結会計年度と比べ14.2%減少いたしました。
また、法人税、住民税及び事業税が755百万円増加の7,662百万円となったことから、親会社株主に帰属する当期純利益は10,059百万円となり、前連結会計年度と比べ23.3%減少いたしました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度に比べ、2,946百万円増加し、47,943百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるネットキャッシュ・フローは、19,852百万円の資金増加(前連結会計年度は11,685百万円の資金増加)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益が18,556百万円(同21,616百万円)、減価償却費が7,149百万円(同6,487百万円)、減損損失が3,531百万円となったこと等の増加要因があったことに対し、仕入債務の3,135百万円の減少(同7,193百万円の増加)、法人税等の支払額6,949百万円(同7,160百万円)等の減少要因があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるネットキャッシュ・フローは、9,061百万円の資金減少(同8,342百万円の資金減少)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出7,646百万円(同6,695百万円)、無形固定資産の取得による支出938百万円(同738百万円)等の減少要因があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるネットキャッシュ・フローは、9,355百万円の資金減少(同1,114百万円の資金減少)となりました。これは主に、短期借入金7,659百万円の減少(同7,536百万円の増加)、配当金の支払6,980百万円(同7,056百万円)、連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出10,138百万円(同1,099百万円)等の減少要因があったことに対し、転換社債型新株予約権付社債の発行による収入18,090百万円等の増加要因があったことによるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
(百万円)
前年同期比(%)
化成品
124,674
116.46
建装建材
70,578
114.44
合計
195,253
115.72
(注)金額は売価換算値によっており、セグメント間の内部振替後の数値によっております。
b.受注実績
当社グループは主として見込み生産を行っているため、記載すべき事項はありません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
(百万円)
前年同期比(%)
化成品
141,312
115.52
建装建材
100,743
109.28
合計
242,055
112.84
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは、化成品セグメントにおいては、人々の暮らしや社会インフラを支える建設分野向け樹脂の高付加価値化を進めつつ、自動車・日用品・電子材料など非建設分野で成長していくことを目指し、建装建材セグメントにおいては、木工家具市場ならびに、壁・床・天井・加工品への事業領域拡大で空間全体への提案力を高めつつ、ジャパンテクノロジーの海外展開を推進し、国内外で成長することを目指しております。
2017年4月には、創立90周年を迎える2026年度に目指すべき姿「アイカ10年ビジョン」を策定し、売上高3000億円、経常利益300億円、ROE10%以上、海外売上高比率45%以上といった長期目標を掲げております。2021年度からは、中期経営計画「Change & Grow 2400」を掲げ、財務と非財務を融合した計画とし、成長事業の創出・拡大、利益基盤の強化、経営基盤の強化に取り組んでまいりました。その2年目となる当連結会計年度の結果としては、海外での成長などにより売上を前倒しで達成し、経常利益も目標達成ペースで進捗することができました。一方で、資本効率性に関しては課題が残りました。具体的な目標と進捗状況は、以下の通りであります。
項目
前中期経営計画
現中期経営計画「Change & Grow 2400」
進捗度
1年目
2年目
3年目
2021年3月期
実績
2022年3月期
実績
2023年3月期
実績
2024年3月期
当初目標
ROE
8.1%
9.4%
6.9%
10.0%を目途
2年目に低下
海外+機能材料売上高※1
812億円
1,147億円
1,352億円
1,150億円
1年前倒し達成
AS商品売上高※2
155億円
169億円
193億円
210億円
計画通り進捗
経常利益
184億円
218億円
220億円
240億円
計画通り進捗
売上高
1,746億円
2,145億円
2,420億円
2,400億円
1年前倒し達成
※1 連結消去前単純合算売上高
※2 AICA Solution 商品の略。様々な社会課題を解決する商品
2024年3月期は本来、中期経営計画「Change & Grow 2400」の3年目にあたりますが、目まぐるしく変化する外部環境に迅速に対応するため、また、「Change & Grow 2400」の売上高を1年前倒しで達成したことをうけ、一年前倒しで2027年3月期を最終年度とする新中期経営計画「Value Creation 3000 & 300」を策定し、アイカ10年ビジョンの総仕上げに取り組むことといたしました。その基本方針は、「収益性の改善」、「成長事業の創出・育成」、「健全な経営基盤の構築」です。財務面においては、化成品・建装建材の両セグメントで、付加価値の向上と適正な投資配分を行い、市場特長と投下資本に応じた利益率水準を目指します。また、成長が見込めるマーケットや、当社の強みを発揮できるマーケットへ積極的に成長投資を行い、持続的成長を牽引できる新たな収益の柱を創出・育成します。さらに、財務健全性の維持、資本効率の向上、株主還元の重視、この3つのバランスを取りつつ、グループ資本配分を最適化し、企業価値の向上を目指します。資本コストを上回るROE・ROICを創出して株主価値向上のためのエクイティ・スプレッドを獲得するとともに、株主還元と投資計画を支える稼ぐ力(営業キャッシュフロー)の向上に努めます。非財務面では、特に「気候変動対応」、「人的資本投資」に注力することで、持続的な成長とより一層の企業価値向上に努めてまいります。具体的な目標と現在の状況は、以下の通りであります。
項目
新中期経営計画
「Value Creation 3000 & 300」
2023年3月期
実績
2027年3月期
目標
財務
売上高
2,420億円
3,000億円
経常利益
220億円
300億円
AS商品売上高
※1
193億円
280億円
海外売上高比率
51.2%
50%以上
ROE
6.9%
10.0%を目途
ROIC
8.1%
8.0%を目途
非財務
GHG※2排出量削減(Scopel+2)
149,918t-CO2※3
2023年3月期比14%削減
環境投資額
-
4年累計20億円
人的資本投資額
8.7億円
4年累計40億円※4
エンゲージメント
スコア
3.9Point
4.0Point
※1 AICA Solution 商品の略。様々な社会課題を解決する商品
※2 温室効果ガス(Greenhouse Gas)の略称
※3 第三者保証取得前の概算値につき、第三者保証取得時に修正される場合があります
※4 アイカ工業単体
当連結会計年度の実績は以下のとおりであります。
当連結会計年度の当社グループを取り巻く経営環境は、日本国内においては、新型コロナウイルス感染症に伴う規制が緩和され、経済活動の正常化が進み、景気停滞から持ち直しの動きが続きました。アジア・オセアニア地域の経済につきましては、中国ではゼロコロナ政策による景気の停滞は見られましたが、その他の地域では持ち直しの動きが見られました。しかしながら、ウクライナ情勢の長期化、急激な為替変動、原材料価格の高騰などにより、国内外ともに先行きは依然として不透明な状況で推移しております。
国内建設市場においては、住宅着工戸数は、貸家や分譲住宅は増加しましたが、持家が減少し、前年を下回
りました。非住宅関連においては、店舗、工場、医療福祉施設などの着工面積が増加し、前年を上回りました。
このような経営環境の下、当社グループは、中期経営計画「Change & Grow 2400」の方針に基づき、非建設分野向け事業および海外事業の強化、社会課題の解決に貢献する商品群の拡充、利益基盤および経営基盤の強化などを推進いたしました。
この結果、当連結会計年度の業績は、売上高242,055百万円(前年同期比12.8%増)、営業利益20,557百万円(同1.0%増)、経常利益22,088百万円(同1.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益につきましては建装建材セグメントに属するグループ会社の固定資産などに関連する減損損失を計上したことにより10,059百万円(同23.3%減)となりました。
また、1株当たり当期純利益は157.27円(同43.63円減)、ROEは6.9%(同2.5ポイント減)、海外売上比率は51.2%(同2.0ポイント増)となりました。
なお、財政状態につきましては「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態および経営成績の状況」に記載のとおりであります。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容については次のとおりであります。なお、セグメント間の内部売上は除いております。
(化成品セグメント)
接着剤系商品は、国内においては、施工用接着剤、木工・家具向け汎用接着剤、産業用フェノール樹脂などにおいて販売価格の改定が進み、売上が前年を上回りました。海外においては、販売価格の改定やマレーシア、インドネシア、ニュージーランドの伸長などにより、売上を伸ばすことが出来ました。
建設樹脂系商品は、外装・内装仕上塗材「ジョリパット」が好調に推移したことから、売上を伸ばすことができました。
非建設分野への取り組みとして注力している機能材料事業につきましては、国内においては、自動車用のUV樹脂などが好調で、売上を伸ばすことができました。海外においては、スポーツシューズ用のウレタン樹脂が低調でしたが、パッケージ用途のUV樹脂などが好調で、売上が前年を上回りました。
このような結果、売上高は141,312百万円(前年同期比15.5%増)、営業利益(配賦不能営業費用控除前)は7,494百万円(前年同期比1.6%増)となりました。
(建装建材セグメント)
メラミン化粧板は、国内においては、医療福祉施設などの非住宅市場での需要が回復し、売上が前年を上回りました。海外においては、中国市場で景気停滞の影響はありましたが、インドや東南アジア各国で売上が伸長し、海外全体では売上を伸ばすことができました。
ボード・フィルム類は、汎用的なポリエステル化粧合板、粘着剤付化粧フィルム「オルティノ」などが好調で、売上が前年を上回りました。
メラミン不燃化粧板「セラール」は、キッチンパネル用途が好調であったことに加え、店舗やオフィス、医療福祉施設などの非住宅需要を獲得するとともに、抗ウイルスメラミン不燃化粧板「セラールウイルテクトPlus」や高意匠メラミン不燃化粧板「セラール セレント」の採用が拡大し、売上が前年を上回りました。
不燃建材は、アクリル樹脂系塗装けい酸カルシウム板「ルナライト」が非住宅市場での需要を獲得しましたが、多機能建材「モイス」が低調に推移し、売上が前年を下回りました。
カウンター・ポストフォーム商品は、キッチン・洗面カウンター需要を獲得した高級人造石「フィオレストーン」や汎用的なポストフォームカウンターが好調で、売上を伸ばすことができました。
建具・インテリア建材は、住宅向け洗面化粧台「スマートサニタリー」や非住宅向けのトイレブースが好調で、売上が前年を上回りました。
このような結果、売上高は100,743百万円(前年同期比9.3%増)、営業利益(配賦不能営業費用控除前)は16,740百万円(前年同期比2.2%増)となりました。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度末の借入金残高は12,522百万円でありますが、営業活動によるキャッシュ・フローや現金及び現金同等物の残高を考慮すると、将来必要とされる成長資金及び有利子負債の返済に対し、当面充分な流動性を確保しております。また、2022年4月において2027年満期ユーロ円建て転換社債型新株予約権付社債を発行しております。
なお、当社グループのこれらの資金需要につきましては、主に営業活動によるキャッシュ・フローによって賄っております。また、事業活動を円滑に行うための資金調達に際しては、事前に充分な検討を加え、低コストで安定的な資金の確保を重視しており、今後において資金需要が発生する場合に備えております。
なお、キャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成にあたり用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
・のれん及び無形資産(顧客関連資産等)の減損
減損の兆候を判断するにあたっては、損益実績及び将来利益計画を用いております。
のれん及び無形資産(顧客関連資産等)を計上する法人各社については、減損の兆候を識別し、減損損失の認識の判定を行った結果、減損が必要と判断された時、または年次で実施される減損テストにおいて、回収可能価額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額が回収可能価額まで減額され、帳簿価額の減少額は減損損失として認識しております。なお、のれんの減損の認識の判定及び測定は、資産グループにのれんを加え
た、より大きな単位で行っております。
事業環境の悪化により収益性が当初の想定を下回る場合や保有資産の市場価額等が下落する場合には、回収可能価額が低下し損失が発生する可能性があります。