【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 財政状態及び経営成績の状況
当第2四半期連結累計期間の世界経済は、米国は個人消費が底堅く推移して景気回復が続きましたが、欧州は物価上昇率の高止まりと金融引締めの継続により景気は足踏み状態となり、中国はゼロコロナ政策解除後の景気回復の勢いが鈍化するなど、減速感が次第に強まりました。日本経済は、経済活動の正常化が一段と進み、世界的な物価上昇の影響は受けつつも、景気は緩やかに回復しました。
当社グループを取り巻く事業環境につきましては、情報通信分野では顧客の投資抑制や在庫調整がありましたが、自動車分野では半導体等の部品供給不足の緩和に伴い自動車生産の回復が進みました。このような環境のもと、当第2四半期連結累計期間の連結決算は、売上高は、ワイヤーハーネス、防振ゴム、電力ケーブルなどの拡販に努め、また円安の影響もあり、2,072,103百万円(前年同四半期連結累計期間1,891,076百万円、9.6%増)と前年同四半期連結累計期間に比べ増収となりました。利益面では、売上増加に加えて、徹底したコスト低減と売値改善に努め、営業利益は67,329百万円(前年同四半期連結累計期間49,739百万円、35.4%増)と前年同四半期連結累計期間に比べ増益となりました。経常利益は60,759百万円(前年同四半期連結累計期間60,874百万円、0.2%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益は26,696百万円(前年同四半期連結累計期間35,068百万円、23.9%減)と、世界的な金利上昇に伴う支払利息の増加や特別利益の減少により、それぞれ前年同四半期連結累計期間を下回る結果となりました。
セグメントの経営成績は、前年同四半期連結累計期間対比で次のとおりであります。
環境エネルギー関連事業
電力ケーブルや電動車向けのモーター用平角巻線の拡販により、売上高は448,739百万円と13,766百万円(前年同四半期連結累計期間対比3.2%)の増収となりました。営業利益は12,200百万円と、住友電設㈱における電気工事の進捗遅れや、銅価格変動の影響により、402百万円の減益となりました。
情報通信関連事業
光デバイスや光ファイバ・ケーブルの需要が、データセンター事業者や通信事業者の投資抑制と在庫調整の影響により減少し、売上高は102,378百万円と18,911百万円(15.6%)の減収となり、営業損失は810百万円と13,660百万円の悪化となりました。
自動車関連事業
半導体等の部品供給不足の緩和に伴う自動車生産の回復により、ワイヤーハーネスや自動車電装部品、防振ゴムの需要が増加し、売上高は1,214,623百万円と197,905百万円(19.5%)の増収となりました。営業利益は、売上増加に加えて、生産性の改善もあり、32,297百万円と40,288百万円の改善となりました。
エレクトロニクス関連事業
電子ワイヤー、熱収縮チューブの民生用途の需要が減少したことに加え、FPC(フレキシブルプリント回路)の主要顧客向けの需要減少もあり、売上高は175,537百万円と2,636百万円(1.5%)の減収となりました。営業利益は、売上減少に加えて、資材価格や人件費の上昇もあり、14,455百万円と3,229百万円の減益となりました。
産業素材関連事業他
超硬工具の需要が中国や日本国内で減少したほか、PC鋼材も米国の需要が減少し、売上高は179,909百万円と5,241百万円(2.8%)の減収となりました。営業利益は8,955百万円と、売上減少に加えて、エネルギーコストや人件費の上昇もあり、6,060百万円の減益となりました。
なお、各セグメントの営業利益又は営業損失は、四半期連結損益計算書の営業利益又は営業損失に対応しております。
当第2四半期連結会計期間末における財政状態は、次のとおりであります。
総資産は4,158,283百万円と、前連結会計年度末対比145,275百万円増加しました。
資産の部では、前期末出荷案件に係る債権の回収が進んだ一方、円安の影響などにより棚卸資産や有形固定資産が増加したことに加え、保有株式の時価上昇に伴い投資有価証券が増加し、前連結会計年度末対比145,275百万円増加しました。
負債の部では、借入金が減少した一方、社債や支払手形及び買掛金の増加などにより、前連結会計年度末対比27,622百万円増加しました。
また、純資産は2,228,472百万円と、配当支払の一方で、為替換算調整勘定やその他有価証券評価差額金の増加などにより、前連結会計年度末対比117,653百万円増加しました。自己資本比率は48.5%と、前連結会計年度末対比1.2ポイント上昇しております。
(2) キャッシュ・フローの状況
当第2四半期連結会計期間末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末より33,236百万円(11.9%)減少し、246,196百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当第2四半期連結累計期間の営業活動の結果得られた資金は、222,972百万円(前年同四半期連結累計期間対比98,483百万円の収入増加)となりました。これは、税金等調整前四半期純利益56,524百万円や減価償却費101,885百万円から運転資本の増減などを加減したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当第2四半期連結累計期間の投資活動の結果使用した資金は、96,137百万円(前年同四半期連結累計期間対比3,387百万円の支出増加)となりました。これは、設備投資に伴う有形固定資産の取得による支出92,482百万円などがあったことによるものであります。
なお、営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを差し引いたフリー・キャッシュ・フローについては126,835百万円のプラス(前年同四半期連結累計期間は31,739百万円のプラス)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当第2四半期連結累計期間の財務活動の結果、資金は169,200百万円減少(前年同四半期連結累計期間は19,917百万円の減少)しました。これは、社債の発行による収入90,000百万円などがあった一方で、短期借入金の純減少167,810百万円、長期借入金の返済による支出39,767百万円及び配当金の支払19,502百万円などがあったことによるものであります。
(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
今後の経済情勢は、世界的な物価上昇と金融引締めの長期化や、中国経済の減速、政治的・地政学的リスクの一層の高まりにより、世界経済の減速感がさらに強まることが懸念され、当社を取り巻く事業環境は予断を許さない状況が続くものと予想されます。
このような情勢のもと、当社グループは、ありたい将来像「グロリアス エクセレント カンパニー」の実現を目指して、長期ビジョン「住友電工グループ2030ビジョン」で掲げた「グリーンな地球と安心・快適な暮らし」の実現に向けて、ステークホルダーの皆様との共栄を図りながら、グループが一体となり企業価値向上に取り組んでまいります。具体的には、製造業の基本であるS(安全)、E(環境)、Q(品質)、C(コスト)、D(物流・納期)、D(研究開発)の更なるレベルアップに取り組むとともに、資本効率向上については、重要指標としているROIC*の改善に向けて、棚卸資産残高や営業債権・債務残高の適正化、設備投資案件の厳選実施、高採算品へのシフトや資材価格上昇の売値への反映などの取り組みを一層強化してまいります。長期ビジョンの実現に向けたマイルストーンとして2023年度からスタートした「中期経営計画2025」の達成に向け、グループの総合力で成長戦略を推進するとともに経営基盤の強化に取り組み、その成長の成果を適切にマルチステークホルダーの皆様へ分配していくことを基本方針として、各事業においては次の施策を進めてまいります。
* ROIC:Return on Invested Capital(投下資産利益率)の略。
環境エネルギー関連事業では、電力ケーブルにおいては、国内の設備更新需要の捕捉に加え、脱炭素化に貢献する国家・地域間連系線や再生可能エネルギー関連の受注に努めるとともに、生産能力増強、コスト低減、品質向上、新製品開発、プロジェクトマネジメント強化にも注力してまいります。電動車向けのモーター用平角巻線においては、コスト低減による収益力の向上と、電動車の高電圧化に対応する次世代品の開発、グローバルな供給体制の構築を進めてまいります。さらに、2023年5月に完全子会社化した日新電機㈱とのさらなるシナジー創出に取り組むとともに、住友電設㈱も含めたグループ総合力を活かして、一層の受注拡大に努めてまいります。
情報通信関連事業では、顧客の投資抑制や在庫調整による一時的な需要停滞が一部継続するものの、クラウドサービス*市場の拡大や第5世代移動通信システム(5G)の普及などによる通信データ量の増加に加え、生成AI*の普及によりデータセンター関連市場に新たな需要創出の兆しが見えるなど、当社の技術力をより発揮できる市場環境への変化が見えつつあります。これらの需要を確実に捕捉すべく、光ケーブルや光配線機器、光デバイスの新製品、海底ケーブル用の極低損失・大容量光ファイバ、世界で初めて量産を開始したマルチコアファイバ、5G基地局用の高効率な電子デバイス、新方式採用が進むアクセス系ネットワーク機器など、低消費電力等耐環境性能を含めた高機能製品の開発・拡販を継続・加速するとともに、徹底したコスト削減による収益性の改善に努めてまいります。
* クラウドサービス:従来は利用者が手元のコンピュータで利用していたデータやソフトウェアを、ネットワー
ク経由で、サービスとして利用者に提供するもの。
* 生成AI :質問や作業指示等に応え、画像や文章、音楽、映像、プログラム等の多様なコンテンツを
生成するAI(人工知能:Artificial Intelligence)。
自動車関連事業では、半導体等の部品供給不足の緩和による需要回復を確実に捕捉するとともに、一層のコスト低減と資産効率化の徹底に取り組み、事業体質の強化を進めてまいります。併せて、軽量化ニーズに対応したアルミハーネスのさらなる拡販、生産自動化やコスト低減に繋がる新設計・新工法の拡充など従来ハーネスの進化に加え、グループ内連携や顧客とのパートナー関係の強化・協業により、電動車向けの高電圧ハーネス、高速通信用のコネクタなど急速に拡大するCASE*市場をとらえた新製品創出・拡販に取り組んでまいります。住友理工㈱では、自動車用防振ゴムおよびホースなどの分野において、既存事業の効率化を図りつつ、次世代モビリティ向けの新製品開発に重点を置き、事業の成長と収益力の向上に一層取り組んでまいります。
* CASE:自動車業界のトレンドを表す言葉で、Connected(つながる)、Autonomous(自動運転)、Shared
(シェアリング)、Electric(電動化)の頭文字をとったもの。
エレクトロニクス関連事業では、FPCにおいては、微細回路形成技術を活かした高機能品の拡販や、徹底したコスト低減、さらなる高機能化に取り組むとともに、CASE対応製品や医療用製品の拡販、高周波化に対応した新製品の開発を加速してまいります。照射架橋技術を活かした電動車の電池端子用リード線(タブリード)、電動パーキングブレーキ用電線、熱収縮チューブ、さらにはフッ素樹脂加工技術を活かした多孔質水処理膜製品においても、多様な客先ニーズを捕捉して事業の拡大を図ってまいります。また、2023年5月に完全子会社化した㈱テクノアソシエとのさらなるシナジー創出にも取り組んでまいります。
産業素材関連事業では、超硬工具においては、グローバルな営業力の強化により、主力の自動車分野に加えて、建設機械、農業機械、エレクトロニクス分野等での需要を確実に捕捉するとともに、電動車、航空機、半導体、再生可能エネルギー関連などの新規開拓も進め、市場シェアの拡大に努めてまいります。焼結部品は、電動車向けの新製品開発・拡販とコスト競争力の一段の強化を図ってまいります。PC鋼材やばね用鋼線は、グローバルな製造販売体制の強化と新製品開発による収益力の向上に取り組んでまいります。
研究開発では、オリジナリティがありかつ収益力に優れた新事業・新製品の創出に努めてまいります。具体的には、レドックスフロー電池、高温超電導製品、SiC(シリコンカーバイド)パワー半導体デバイスなどの新事業に注力するほか、5つの現事業セグメントを支える次世代の製品として、ポスト5G及び次世代移動通信システム、データセンター、光海底通信などに用いる伝送機器、デバイス、光ファイバやエレクトロニクス製品、また環境負荷低減に寄与する電力ケーブル材料や車載・産業用の材料など、社会ニーズを踏まえた新製品の開発にも産官学の連携による社外の知見も積極的に活用して注力してまいります。また、AIやIoT活用による生産革新にも取り組むとともに、事業部門や営業部門との連携を一層強化し、研究開発活動のさらなる活性化とスピードアップを進めます。
最後に、法令遵守や企業倫理の維持は、当社経営の根幹をなすものであり、企業として存続・発展するための絶対的な基盤と考えております。今後とも、住友事業精神の「萬事入精(ばんじにっせい)」「信用確実」「不趨浮利(ふすうふり)」*という理念のもと、社会から信頼される公正な企業活動の実践に真摯に取り組んでまいります。また、住友事業精神と住友電工グループ経営理念の基本的な価値軸はSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)にも相通ずるものであると考えており、サステナブルな社会の実現に向けて取り組んでまいります。
* 萬事入精:まず一人の人間として、何事にも誠心誠意を尽くすべきとの考え。
信用確実:何よりも信用を重んじること。
不趨浮利:常に公共の利益との一致を求め、一時的な目先の利益、不当な利益の追求を厳に戒めること。
(4) 研究開発活動
当第2四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発活動の金額は、67,706百万円であります。なお、当第2四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
(5) 経営成績に重要な影響を与える要因
当第2四半期連結累計期間において、各セグメントの売上高・営業利益又は営業損失に重要な影響を与えている主な要因は次のとおりであります。
環境エネルギー関連事業については、電力ケーブルや電動車向けのモーター用平角巻線の拡販が増収の要因となりましたが、住友電設㈱における電気工事の進捗遅れや銅価格変動の影響があったことが減益の要因となりました。情報通信関連事業については、光デバイスや光ファイバ・ケーブルの需要が、データセンター事業者や通信事業者の投資抑制と在庫調整の影響により減少したことが減収並びに営業損益悪化の要因となりました。自動車関連事業については、半導体等の部品供給不足の緩和に伴う自動車生産の回復により、ワイヤーハーネスや自動車電装部品、防振ゴムの需要が増加したことが増収の要因となり、売上増加に加えて、生産性の改善もあったことが営業損益改善の要因となりました。エレクトロニクス関連事業については、電子ワイヤー、熱収縮チューブの民生用途の需要が減少したことに加え、FPCの主要顧客向けの需要減少もあったことが減収の要因となり、売上減少に加えて、資材価格や人件費の上昇もあったことが減益の要因となりました。産業素材関連事業他については、超硬工具の需要が中国や日本国内で減少したほか、PC鋼材も米国の需要が減少したことが減収の要因となり、売上減少に加えて、エネルギーコストや人件費の上昇もあったことが減益の要因となりました。
(6) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループの当第2四半期連結累計期間における資金の状況は下記のとおりであります。
まず、営業活動によるキャッシュ・フローで222,972百万円の資金を獲得しました。これは、税金等調整前四半期純利益56,524百万円と減価償却費101,885百万円の合計、即ち事業の生み出したキャッシュ・フローが158,409百万円あり、これに運転資本の増減などを加減した結果であります。
投資活動によるキャッシュ・フローでは、96,137百万円の資金を使用しております。これは、設備投資に伴う有形固定資産の取得による支出92,482百万円などがあったことによるものであります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、169,200百万円の資金の減少となりました。これは、社債の発行による収入90,000百万円などがあった一方で、短期借入金の純減少167,810百万円、長期借入金の返済による支出39,767百万円及び配当金の支払19,502百万円などがあったことによるものであります。
以上により、当第2四半期連結会計期間末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末対比33,236百万円(11.9%)減少し、246,196百万円となりました。また、当第2四半期連結会計期間末における有利子負債は884,754百万円と前連結会計年度末対比75,614百万円減少し、有利子負債から現金及び現金同等物を差し引いたネット有利子負債は、前連結会計年度末対比42,378百万円減少し638,558百万円となりました。