【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 財政状態及び経営成績の状況
当第2四半期連結累計期間の世界経済は、概ね緩やかな景気持ち直しの動きが続きましたが、中国では新型コロナウイルス感染症の拡大で都市封鎖を行ったことにより景気に減速感が見られたほか、世界的な物価上昇や資源・部品の供給不足、ウクライナ情勢の長期化などにより、先行きの不透明感が高まりました。
当社グループを取り巻く事業環境につきましては、中国での都市封鎖や半導体等の部品供給不足などによる自動車生産の減産のほか、資材価格・物流費・エネルギー価格の高騰もあり、厳しいものとなりました。このような環境のもと、当第2四半期連結累計期間の連結決算は、売上高は、ワイヤーハーネス、電力ケーブル、超硬工具などの拡販に加え、銅価格上昇や円安もあり、1,891,076百万円(前年同四半期連結累計期間1,570,413百万円、20.4%増)と前年同四半期連結累計期間に比べ増収となりました。利益面では、徹底したコスト低減と売値改善に努めたほか、円安の効果もあり、営業利益は49,739百万円(前年同四半期連結累計期間46,125百万円、7.8%増)、経常利益は60,874百万円(前年同四半期連結累計期間60,283百万円、1.0%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益は35,068百万円(前年同四半期連結累計期間32,390百万円、8.3%増)と、それぞれ前年同四半期連結累計期間を上回る結果となりました。
セグメントの経営成績は、前年同四半期連結累計期間対比で次のとおりであります。
自動車関連事業
ワイヤーハーネスや自動車電装部品、防振ゴムで拡販を進めたほか、銅価格上昇や円安の影響もあり、売上高は1,016,718百万円と200,333百万円(前年同四半期連結累計期間対比24.5%)の増収となりました。営業利益は、資材価格や物流費の高騰に加え、自動車生産の急な減産が相次いだことによる生産性低下もあり、7,991百万円の損失と、前年同四半期連結累計期間対比では7,025百万円の悪化となりました。
情報通信関連事業
光配線機器や光デバイスなどのデータセンター関連製品の需要が増加し、売上高は121,289百万円と6,502百万円(5.7%)の増収となり、営業利益は12,850百万円と2,596百万円の増益となりました。
エレクトロニクス関連事業
FPC(フレキシブルプリント回路)や電子ワイヤー製品、㈱テクノアソシエなどで需要の捕捉を進めたことに加え、円安の影響もあり、売上高は178,173百万円と37,774百万円(26.9%)の増収となり、営業利益は17,684百万円と9,691百万円の増益となりました。
環境エネルギー関連事業
電力ケーブルや電動車用の平角巻線などの拡販や、住友電設㈱における電気工事の増加、日新電機㈱における受変電設備等の需要増加に加え、銅価格上昇の影響もあり、売上高は434,973百万円と57,542百万円(15.2%)の増収となりました。営業利益は12,602百万円と、銅価格上昇に伴う増益の影響が大きかった前年同四半期連結累計期間から5,980百万円の減益となりました。
産業素材関連事業他
超硬工具やダイヤ・CBN工具の拡販や、海外でのPC鋼材の需要増加に加え、円安の影響もあり、売上高は185,150百万円と25,412百万円(15.9%)の増収となり、営業利益は15,015百万円と4,466百万円の増益となりました。
なお、各セグメントの営業利益又は営業損失は、四半期連結損益計算書の営業利益又は営業損失に対応しております。
当第2四半期連結会計期間末における財政状態は、次のとおりであります。
総資産は4,014,427百万円と、前連結会計年度末対比207,037百万円増加しました。
資産の部では、円安の影響などにより棚卸資産や有形固定資産、投資有価証券が増加し、前連結会計年度末対比207,037百万円増加しました。
負債の部では、支払手形及び買掛金や借入金の増加により、前連結会計年度末対比101,882百万円増加しました。
また、純資産は2,158,093百万円と、配当支払の一方で、親会社株主に帰属する四半期純利益の計上や為替換算調整勘定の増加により、前連結会計年度末対比105,155百万円増加しました。自己資本比率は前連結会計年度末と同じく46.5%となりました。
(2) キャッシュ・フローの状況
当第2四半期連結会計期間末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末より20,930百万円(8.2%)増加し、276,470百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当第2四半期連結累計期間の営業活動の結果得られた資金は、124,489百万円(前年同四半期連結累計期間対比76,979百万円の収入増加)となりました。これは、税金等調整前四半期純利益66,310百万円や減価償却費97,594百万円から運転資本の増減などを加減したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当第2四半期連結累計期間の投資活動の結果使用した資金は、92,750百万円(前年同四半期連結累計期間対比3,956百万円の支出増加)となりました。これは、設備投資に伴う有形固定資産の取得による支出94,578百万円などがあったことによるものであります。
なお、営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを差し引いたフリー・キャッシュ・フローについては31,739百万円のプラス(前年同四半期連結累計期間は41,284百万円のマイナス)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当第2四半期連結累計期間の財務活動の結果、資金は19,917百万円減少(前年同四半期連結累計期間は8,897百万円の増加)しました。これは、長期借入れによる収入37,509百万円などがあった一方で、長期借入金の返済による支出37,905百万円、配当金の支払19,502百万円などがあったことによるものであります。
(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
今後の経済情勢は、新型コロナウイルスの感染拡大リスクが残るほか、米中対立やウクライナ情勢など政治的・地政学的リスクの更なる高まりや、世界的な物価上昇、各国での金融引締めによる景気の下振れリスクが懸念され、当社を取り巻く事業環境は予断を許さない状況が続くものと予想されます。
このような情勢のもと、当社グループは、「グロリアス エクセレント カンパニー」を目指して、社員の健康と安全、サプライチェーンの維持確保を引き続き最優先としつつ、製造業の基本であるS(安全)、E(環境)、Q(品質)、C(コスト)、D(物流・納期)、D(研究開発)のレベルアップに努めてまいります。資本効率向上の取り組みにおいては、重要指標としているROIC*の改善に向けて、棚卸資産残高や営業債権・債務残高の適正化、設備投資案件の厳選実施に努めるとともに、高採算品へのシフトや資材価格・物流費の売値への反映などの取り組みを一層強化してまいります。これらにより、中期経営計画「22VISION」の最終年度である2022年度を中期目標の仕上げの年として、各事業において次の施策を進めてまいります。
* ROIC:Return on Invested Capital(投下資産営業利益率)の略。
自動車関連事業では、世界的な半導体等の部品供給不足などの影響で自動車生産動向が不透明な状況下、一層のコスト低減と生産の効率化に取り組み、需要変動に耐えうる筋肉質な事業体質の構築をさらに進めてまいります。併せて、客先への提案型マーケティングの強化により、電動車向けの高電圧ハーネス、高速通信用のコネクタといったいわゆるCASE*関連の新製品創出・拡販、軽量化のニーズに対応したハーネスのアルミ化の加速、海外系顧客の一層のシェア拡大に取り組むとともに、サプライチェーンを強化するため、主要品種を複数拠点で生産できる体制の整備にも取り組んでまいります。住友理工㈱では、自動車用防振ゴム・ホースなどにおいて、グローバル対応の深化や国内外事業拠点の統合・集約、コスト削減によって収益力の回復を図ることに加え、次世代自動車に向けた新製品開発にも注力してまいります。
* CASE:自動車業界のトレンドを表す言葉で、Connected(つながる)、Autonomous(自動運転)、Shared
(シェアリング)、Electric(電動化)の頭文字をとったもの。
情報通信関連事業では、クラウドサービス*市場の拡大や第5世代移動通信システム(5G)の普及などによる通信データ量の増大と、それに伴う消費電力の増大が進む中、光ケーブルや光配線機器、光デバイス等のデータセンター関連製品、海底ケーブル用の極低損失・大容量光ファイバ、5G基地局用の高効率な電子デバイス、高速大容量通信を可能とするアクセス系ネットワーク機器など、高速大容量・低消費電力等の市場ニーズを満たす高機能製品の開発・拡販を加速してまいります。また、徹底したコスト削減にも取り組み、収益性の改善に努めてまいります。
* クラウドサービス:従来は利用者が手元のコンピュータで利用していたデータやソフトウェアを、ネット
ワーク経由で、サービスとして利用者に提供するもの。
エレクトロニクス関連事業では、FPCにおいては、微細回路形成技術を活かした高機能品の拡販や徹底したコスト低減に引き続き取り組むとともに、車載用途への拡販、高周波化に対応した新製品の開発を加速してまいります。照射架橋技術を活かした電動車の電池端子用リード線(タブリード)、電動パーキングブレーキ用電線、熱収縮チューブ、さらにはフッ素樹脂加工技術を活かした水処理製品についても、多様な客先ニーズを捕捉して事業の拡大を図ってまいります。また、㈱テクノアソシエとの事業シナジーの拡大にも引き続き取り組んでまいります。
環境エネルギー関連事業では、電力ケーブルについて、国内の設備更新需要の捕捉に引き続き取り組むほか、脱炭素社会に向けて世界的に市場が拡大している国家・地域間連系線や風力発電など再生可能エネルギー関連の受注拡大に努めるとともに、コスト低減、品質向上、新製品開発、プロジェクトマネジメント強化に注力してまいります。また、電動車向けのモーター用平角巻線については、増加する需要を着実に取り込むためのグローバルな生産能力増強とコスト低減による収益力の向上を進めてまいります。さらに日新電機㈱や住友電設㈱を含めたグループ総合力を活かして、一層の受注拡大に努めてまいります。
産業素材関連事業では、超硬工具においては、グローバルな営業力強化により、主力の自動車分野に加えて、建設機械、農業機械、エレクトロニクス分野等での堅調な需要を確実に捕捉するとともに、電動車部品や航空機部品用工具の新規開拓も進め、市場シェアの拡大に努めてまいります。焼結部品は、今後の事業発展に向けて、電動車向けの新製品開発・拡販と、グローバルに展開する各製造拠点のコスト競争力の一段の強化に取り組んでまいります。PC鋼材やばね用鋼線については、グローバルな製造販売体制の強化と新製品の開発により収益力の向上を図ってまいります。
研究開発では、オリジナリティがありかつ収益力に優れた新事業・新製品の創出に努めてまいります。具体的には、超電導製品、SiC(シリコンカーバイド)パワー半導体デバイス、レドックスフロー電池などの新事業に注力するほか、5つの現事業セグメントを支える次世代の製品として、ポスト5G及び次世代移動通信システム、データセンター、光海底通信用途などの伝送機器、デバイス、光ファイバやエレクトロニクス製品、また環境負荷低減に寄与する電力ケーブル材料や車載・産業用の材料など、社会ニーズを踏まえた新製品の開発にも産官学の連携による社外の知見も積極的に活用して注力してまいります。また、製造現場でのAIやIoT活用による生産革新にも取り組むとともに、事業部門や営業部門との連携を一層強化し、研究開発活動のさらなる活性化とスピードアップを進めます。
また、法令遵守や企業倫理の維持は、当社経営の根幹をなすものであり、企業として存続・発展するための絶対的な基盤と考えております。今後とも、住友事業精神の「萬事入精」「信用確実」「不趨浮利」*という理念のもと、社会から信頼される公正な企業活動の実践に真摯に取り組んでまいります。なお、住友事業精神と住友電工グループ経営理念の基本的な価値軸はSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)にも相通ずるものであると考えており、特に環境への取り組みにおいては、2030年までにパリ協定要求レベルの温室効果ガス排出量削減を目指し、2050年カーボンニュートラルの達成に向けた対応を強化してまいります。
* 萬事入精:まず一人の人間として、何事にも誠心誠意を尽くすべきとの考え。
信用確実:何よりも信用を重んじること。
不趨浮利:常に公共の利益との一致を求め、一時的な目先の利益、不当な利益の追求を厳に戒めること。
最後に、様々な社会変革が起こりつつある中で当社グループの目指す姿を示すため、2030年を節目とする長期ビジョン「住友電工グループ2030ビジョン」を策定し、2022年5月に公表いたしました。この長期ビジョンでは、「グリーンな地球と安心・快適な暮らしの実現」に向け、当社グループが総力を結集し、さまざまな価値を提供していくための方向性について説明しております。また、この長期ビジョンのもとでの具体的な事業計画として、2023年度より3カ年を区切りとする中期計画を策定し、刻一刻と変化する事業環境に的確に対応して中長期的な企業価値向上を果たすべく経営の舵を取ってまいります。
(4) 研究開発活動
当第2四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発活動の金額は、63,257百万円であります。なお、当第2四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
(5) 経営成績に重要な影響を与える要因
当第2四半期連結累計期間において、各セグメントの売上高・営業利益又は営業損失に重要な影響を与えている主な要因は次のとおりであります。
自動車関連事業については、ワイヤーハーネスや自動車電装部品、防振ゴムで拡販を進めたほか、銅価格上昇や円安の影響もあったことが増収の要因となりましたが、資材価格や物流費の高騰に加え、自動車生産の急な減産が相次いだことによる生産性低下が営業損益悪化の要因となりました。情報通信関連事業については、光配線機器や光デバイスなどのデータセンター関連製品の需要が増加したことが増収増益の要因となりました。エレクトロニクス関連事業については、FPCや電子ワイヤー製品、㈱テクノアソシエなどで需要の捕捉を進めたことに加え、円安の影響もあったことが増収増益の要因となりました。環境エネルギー関連事業については、電力ケーブルや電動車用の平角巻線などの拡販や、住友電設㈱における電気工事の増加、日新電機㈱における受変電設備等の需要増加に加え、銅価格上昇の影響もあったことが増収の要因となりましたが、前年同四半期連結累計期間に銅価格上昇に伴う増益影響が大きく発生したことなどが減益の要因となりました。産業素材関連事業他については、超硬工具やダイヤ・CBN工具の拡販や、海外でのPC鋼材の需要増加に加え、円安の影響もあったことが増収増益の要因となりました。
(6) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループの当第2四半期連結累計期間における資金の状況は下記のとおりであります。
まず、営業活動によるキャッシュ・フローで124,489百万円の資金を獲得しました。これは、税金等調整前四半期純利益66,310百万円と減価償却費97,594百万円の合計、即ち事業の生み出したキャッシュ・フローが163,904百万円あり、これに運転資本の増減などを加減した結果であります。
投資活動によるキャッシュ・フローでは、92,750百万円の資金を使用しております。これは、設備投資に伴う有形固定資産の取得による支出94,578百万円などがあったことによるものであります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、19,917百万円の資金の減少となりました。これは、長期借入れによる収入37,509百万円などがあった一方で、長期借入金の返済による支出37,905百万円、配当金の支払19,502百万円などがあったことによるものであります。
以上により、当第2四半期連結会計期間末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末対比20,930百万円(8.2%)増加し、276,470百万円となりました。また、当第2四半期連結会計期間末における有利子負債は926,255百万円と前連結会計年度末対比66,461百万円増加し、有利子負債から現金及び現金同等物を差し引いたネット有利子負債は、前連結会計年度末対比45,531百万円増加し649,785百万円となりました。