【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概況当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。 ① 財政状態及び経営成績の状況当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染者の重症化率の低下に伴い、以前のような経済活動へ復活の兆しが見えてきました。一方で、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー逼迫や米国や欧州の政策金利引き上げによる急速な円安進行など、国内外の不安定な状況は今後も継続する見通しです。
このような状況下、当社は「未来のがん治療にパワーを与え、その実績でがん治療の歴史に私たちの足跡を残してゆくこと」をビジョンとし、経営の効率化及び積極的な研究・開発・ライセンス活動を展開いたしました。特に、がんのウイルス療法テロメライシン(OBP-301)を中心に研究・開発・ライセンス活動を推進させています。また、核酸系逆転写酵素阻害剤OBP-601(censavudine)は、Transposon社とのライセンス契約の下、同社の全額費用負担により臨床試験が進められています。当社活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 5.研究開発活動」をご確認ください。以上の結果、当事業年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態当事業年度末の資産合計は、現金及び預金の減少1,743,434千円、売掛金の減少352,148千円、前払費用の減少73,006千円、長期前払費用の減少17,090千円等により、前事業年度末に比べ1,640,917千円減少し、2,650,959千円となりました。当事業年度末の負債合計は、短期借入金の減少11,104千円、未払金の減少45,388千円、未払法人税等の減少56,311千円、長期借入金の減少100,000千円等により、前事業年度末に比べ206,194千円減少し、491,690千円となりました。当事業年度末の純資産合計は、資本金の減少6,039,516千円、資本剰余金の減少8,477,219千円、利益剰余金の増加13,082,041千円等により、前事業年度末に比べ1,434,722千円減少し、2,159,269千円となりました。
b.経営成績当事業年度は、売上高976,182千円(前期は売上高642,494千円)、営業損失1,204,506千円(前期は営業損失1,454,554千円)を計上しました。また、営業外収益として受取利息587千円、為替差益62,639千円等を計上し、営業外費用として支払利息3,945千円、譲渡制限付株式報酬償却17,793千円等を計上し、経常損失1,163,008千円(前期は経常損失1,500,888千円)になりました。さらに、Unleash ImmunoOncolytics, Inc.(米国ミズーリ州、以下 「アンリーシュ社」)の転換社債をアンリーシュ社へ売却したことにより、21,406千円の特別利益を計上し、当社が保有するテロメスキャンに関する分析装置等及びPC機器の減損損失4,403千円を特別損失として計上した結果、当期純損失1,148,938千円(前期は当期純損失1,615,439千円)を計上しました。
② キャッシュ・フローの状況当事業年度末における現金及び現金同等物は、1,466,201千円(前期比54.3%減)となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローは次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動によるキャッシュ・フローは1,717,135千円の支出(前期は1,741,827千円の支出)と前期に比べ24,692千円(1.4%)の支出の減少となりました。これは主として、税引前当期純損失1,146,005千円の計上、契約負債の減少、前払金の増加等のキャッシュ・フローの減少要因があった一方で、売上債権の減少、株式報酬費用の計上等の増加要因があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動によるキャッシュ・フローは20,117千円の収入(前期は942千円の支出)となりました。これは、主に債権の売却による収入21,406千円、有形固定資産の取得による支出1,358千円等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動によるキャッシュ・フローは113,830千円の支出(前期は3,091,384千円の収入)となりました。これは主に長期借入金の返済による支出111,104千円、リース債務の返済による支出2,667千円等によるものです。
③ 生産、受注及び販売の実績
(1) 生産実績該当事項はありません。
(2) 受注実績該当事項はありません。
(3) 販売実績当事業年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。なお、当社は、創薬事業の単一セグメントであるため、セグメント別の販売実績の記載は省略しております。
セグメントの名称
当事業年度(自 2022年1月1日至 2022年12月31日)
前年同期比(%)
創薬事業(千円)
976,182
151.9
合計(千円)
976,182
151.9
(注) 1.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先
前事業年度(自 2021年1月1日至 2021年12月31日)
販売高(千円)
割合(%)
A社
302,707
47.1
B社
287,652
44.8
2.当社顧客との各種契約においては秘密保持条項が存在するため、社名の公表は控えさせて頂きます。
相手先
当事業年度(自 2022年1月1日至 2022年12月31日)
販売高(千円)
割合(%)
中外製薬株式会社
913,107
93.5
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日時点において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成されております。この財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、一定の会計基準の範囲内にて合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っておりますが、実際の結果は特有の不確実性があるため、見積りと異なる場合があります。当社が財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
a.偶発債務
当社は米国の委託製造開発先より、950千ドルの製造委託契約に関連し、製造過程の初期において生じた製造逸脱に関して発生した費用の一部負担に対する交渉を受けており、現在その内容について協議中であります。当社は外部の専門家に相談した結果、当該費用負担請求に応じる理由はないと判断しておりますが、今後の推移によっては当社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。なお、当事業年度末においてはその影響等は合理的に見積もることが極めて困難であることから費用計上しておりません。
なお、当社の財務諸表の作成に際して採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項(重要な会計方針)」に記載しております。
② 当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容当事業年度の経営成績等の状況については、上記「(1)経営成績等の状況の概況」をご参照ください。当社は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、創薬バイオ企業として研究開発先行型の事業を展開しており、独自性の高い遺伝子改変ウイルスによるがん治療薬、重症ウイルス感染症治療薬及びがん検査薬などの開発と事業化を推進しています。特に、ウイルスの増殖能力を利用してがん細胞を殺す「がんのウイルス療法」と、ウイルスの増殖を止めて治療を行う「重症ウイルス感染症治療薬」を事業領域とし、ウイルスを軸にした業界でも類を見ない『ウイルス創薬』を展開して参りました。また、これまでHIV感染症治療薬として開発してきたOBP-601は、そのメカニズムを基に応用を拡大して神経難病治療薬としての開発が進められています。今後も、各パイプラインの製薬企業へのライセンス活動を推進して商業化を早め、さらに新規パイプラインの創製にも取り組んでゆく方針です。
当事業年度では、テロメライシンの日本国内での承認申請を目的とした臨床試験の組入れを完了させ、商用製造の基礎となるGMP製造を推進させました。さらに、2024年テロメライシンの承認申請に向けて、日本国内での販売提携パートナーの獲得に向けたビジネス活動を進めるとともに、製造販売体制の確立に向けた活動を進めました。また、OBP-601のライセンス先であるTransposon社による神経難病患者を対象とした臨床試験が進み、一部の臨床試験では組入れを完了しました。
当社の経営に影響を与える大きな要因としては、1)研究開発の進捗度合い、2)ウイルス製剤の製造、3)ライセンスや販売提携に伴う資金獲得、4)医薬品市場動向及び5)為替動向等が挙げられます。1) 研究開発については、特に臨床試験では適格な症例を組み入れることがその試験の成功を左右させる大きな要因となります。当社の開発方針はUnmet Medical Needs(治療法が確立されていない医療領域)を対象に臨床開発を展開しており、対象症例が非常に希少であるために臨床試験の症例組み入れが予想よりも遅延する可能性があります。そのために臨床試験受託会社(CRO)を的確にオペレーションし、臨床試験担当医師との情報交換を頻度高く行うなどの努力を最大限行って臨床試験の質とスピードを向上させることを重要視しています。2) ウイルス製剤の製造においては、テロメライシンの商用製造に向けて原薬及び製剤をHenogen社(ベルギー)に委託しています。これまでに商用に向けての製造開発が実施され、スケールアップが行われてきました。今後、商用製造をGMP化して最終製造を行っていきますが、ウイルス製造は未だ確立された方法論がなく、試行錯誤の連続になります。ウイルス製造には大きな費用が掛かり、さらに品質試験や安定性試験にも時間と費用を要します。これらの遅延又は失敗により、テロメライシンの承認申請時期を大幅に遅らせる可能性があります。このような状況を防ぐために、当社ではウイルス製造時に当社製造担当者を派遣し、製造受託企業スタッフと綿密な情報交換を行い、当社神戸リサーチラボにおいても補足的検討を即時的に行い、効率的かつ高品質なウイルス製剤が製造できるよう努めています。3) ライセンス契約や販売提携契約に関しては、研究開発の大幅遅滞や失敗、医療行政の変動、競合薬の進展などのリスクに加え、契約締結先の経営戦略変更により契約が解消されるリスクなどが挙げられます。これらのリスクを回避・低減するため、契約条件をより当社に有利にできるよう、過去の契約事例を参照して不足事項を補い、コンサルタントや弁護士の助言を最大限に活用し、より良い契約が完遂できるよう努力していきます。4) 市場動向については、国内外の大手製薬会社やバイオ企業との熾烈な研究開発競争が今後も展開され、がん治療の標準的治療法が年々変更される時代となったために、マーケット調査を強化して将来を見据えた開発方針を立てる必要があります。常に競合情報やマーケット情報をキャッチアップできるよう、国内外の情報収集に努めてゆきます。5) 為替動向に関しては、当社の海外における臨床試験や製造などが主に外貨建てで行われているという理由により、経営成績が大きく影響を受けるため、為替変動リスクを最小限に抑える必要があります。今後は外貨建て収入を増加させることで、外貨建て債務に係る為替リスクの低減を図っていきます。
このような中で、当社はグローバル市場におけるリスク対応力の高い人財を育成し、「ウイルス創薬」という新しい業態において名実ともに存在感のある企業として成長していくために、収入増大による経営基盤の強化を図り、企業統治を高度化していきます。
③ 資本の財源及び資金の流動性a.資金需要当社の事業活動における運転資金需要の主なものは、医薬品及び検査薬の研究開発に伴う研究開発費、各種ライセンス契約や戦略的アライアンス契約に伴う特許関連費、各事業についての一般管理費があります。また、設備・投資資金需要としては、各種機器や戦略的投資に伴う固定資産投資等があります。
b.財務政策当社は事業活動の維持拡大に必要な資金を、ライセンス契約や販売提携による一時金やマイルストーン収入のみならず、商業化によるロイヤリティー収入や製品販売収入を軸とした事業収入によって確保することを第一に考え、内部資金を活用し、必要に応じて資本市場からの資金調達を行っています。また、運転資金及び設備・投資資金は、当社において一元管理しています。「ウイルス創薬」による医薬品や検査薬の研究開発という成果を実現させるまでには、相対的に時間を要する事業を行っているために、資本性の高い長期資金を得ることで、資金特性のバランスを考慮しています。
#C4588JP #オンコリスバイオファーマ #医薬品セクター