【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1)
財政状態及び経営成績の状況
①経営成績の分析 当第3四半期連結累計期間における日本経済は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止と経済活動の両立により緩やかな持ち直しの動きがみられました。一方で、新規感染者が増加する局面も見られるなど、外食産業、観光業等を中心に依然として回復ペースが鈍い状況が続いております。さらに、原油をはじめとした国際商品市況の高騰等により物価が上昇していることで、企業収益の悪化や消費者マインドの低迷が懸念されています。 世界経済については、新型コロナウイルス感染症が経済に与える影響は限定的となりましたが、ロシアのウクライナ侵攻を背景としたサプライチェーン(供給網)の混乱やエネルギー価格、原材料価格の上昇などを背景としたインフレ抑制のための大幅な金融引き締めによる景気後退リスクが懸念されています。 このような環境下、当社グループは「もっとお客さまの近くで、多様な価値を創造し続ける企業グループに変革する」という基本方針のもと、中期経営計画「Value Up+」(2021年度-2024年度)に取り組んでいます。6つの重点領域で設定したCSV目標を成長ドライバーとして成長路線を加速させるとともに、“植物のチカラ®”を価値創造の原点に、社会との多様な共有価値の創造を通じた持続的な成長を目指しております。 当第3四半期連結累計期間の業績については、以下のとおりとなりました。
(単位:百万円)
前第3四半期連結累計期間
当第3四半期連結累計期間
増減額
前年同期比
売上高
313,634
425,092
+111,458
135.5%
営業利益
9,254
14,701
+5,446
158.8%
経常利益
10,266
14,755
+4,488
143.7%
親会社株主に帰属する四半期純利益
7,331
10,972
+3,641
149.7%
セグメント別の概況
≪油脂事業≫
油脂事業セグメントでは、コロナ禍からの世界経済の回復に伴う油脂需要の増加に加え、ロシアのウクライナ侵攻による原材料の供給懸念、日米の金融政策の乖離等を背景とした円安ドル高の進行等により原材料価格が一段と高騰するなか、生産性向上とコスト削減に最大限努めるとともに、適正な販売価格の形成に取り組みました。また、付加価値品の拡販に加え、新たな市場創造やソリューション提案の強化に注力したことで、増収増益となりました。
◆油脂・油糧 (単位:百万円)
前第3四半期連結累計期間
当第3四半期連結累計期間
増減額
前年同期比
売上高
197,076
266,390
+69,314
135.2%
営業利益
3,616
7,969
+4,353
220.4%
[原料の調達環境] 原料の調達面では、主要原料相場が前年同期に対して上昇し、またドル円相場も前年同期に対して円安ドル高で推移したことから、大豆価格、菜種価格ともに前年同期を大きく上回りました。
<主要原料相場> 大豆相場は、ロシアのウクライナ侵攻による穀物・油脂の供給不安や、乾燥による南米産大豆減産などにより、6月には1ブッシェルあたり16~17米ドル台の歴史的な高値圏まで上昇しました。その後も、高温乾燥を背景とした米国産大豆の減産懸念などにより、前年同期比で大幅な高値推移となりました。 菜種相場は、世界的な需給逼迫による歴史的な高値圏での推移が続くなかで、ロシアのウクライナ侵攻による穀物・油脂の供給不安や、天候不順によるカナダ産新穀の作付遅れ等から上昇し、4月には1トンあたり1,200カナダドルと史上最高値を更新する等、高値圏で推移しました。7月以降は、カナダ産や豪州産の豊作期待により800カナダドル台まで値を下げましたが、前年同期比で大幅な高値推移となりました。<為替相場> ドル円相場は、3月以降、日米の金融政策の乖離等により、急激に円安ドル高が進行しました。その後も米国の金融引き締めが継続したことや、資源価格高騰を背景とした日本の貿易赤字拡大等により、10月には150円台まで円安ドル高が進行しました。11月以降は米国の金融政策転換への期待や日銀の金融政策修正等から円高ドル安となりましたが、前年同期に対して大幅な円安ドル高推移となりました。
[油脂の販売] 業務用については、原材料価格が一段と高騰するなかで販売価格の改定に取り組みました。また、生活者の行動変容、人手不足やコスト上昇など「変化への対応」と「ニーズ協働発掘型営業」によるソリューション提案の質の向上に継続的に取り組みました。商品面では長持ち機能等を付加した「機能フライ油」や「日清炊飯油」等の機能性油脂を含む「付加価値型商品群」を重点カテゴリーとし、積極的な提案による拡販に努めました。新型コロナウイルス感染症の影響により外食需要や観光需要の本格的な回復には至らず、販売数量は減少しましたが、販売単価が上昇したことで売上高は増収となりました。 加工用についても、原材料価格が一段と高騰するなか、コストに見合った適正価格での販売に取り組んだことにより、売上高は増収となりました。 ホームユースについても、販売価格改定に取り組むとともに、「かけるオイルの定着」や「味つけオイルの市場創造」など付加価値品の継続的な拡販を進めました。販売価格改定に伴い販促機会が減少するなか、サプリ的オイルの販売数量は前年同期を上回り、ごま油、オリーブオイルは市場全体の需要が減少するなか、前年同期並みを確保しました。また、揚げ物の吸油を抑えた「日清ヘルシーオフ」などの戦略商品の拡販に努めました。これらの結果、主要カテゴリーの販売数量増と販売単価上昇により売上高は増収となりました。以上の結果、油脂全体の売上高は増収、営業利益は増益となりました。
[ミールの販売] 大豆ミールについては、大豆・菜種の採算格差を背景とした大豆搾油の増加に合わせ、大豆ミールの拡販に努めたことで販売数量は大幅に増加しました。また、主要原料相場が上昇したことやドル円相場が円安ドル高で推移したことにより販売単価が上昇し、売上高は増収となりました。 菜種ミールについては、大豆搾油優位の環境下、前年同期に対して搾油量を減少させたことで、販売数量は減少したものの、大豆ミール価格上昇の影響等から販売価格が上昇し、売上高は増収となりました。
◆加工油脂 (単位:百万円)
前第3四半期連結累計期間
当第3四半期連結累計期間
増減額
前年同期比
売上高
59,794
92,884
+33,090
155.3%
営業利益
3,264
5,380
+2,116
164.8%
海外加工油脂については、マレーシアのIntercontinental Specialty Fats Sdn. Bhd.において、欧州を中心に新型コロナウイルス感染症の影響からの回復が見られるなか、高付加価値であるチョコレート用油脂の販売にシフトしたものの、汎用品の販売数量が減少したことにより、全体として販売数量は減少しました。しかし、パーム油相場の高騰に伴う販売価格の上昇や円安リンギット高による為替換算の影響等により、売上高は増収となりました。また、高付加価値品の販売数量が増加したことや販売価格の上昇に加え、為替換算の影響等により、営業利益は増益となりました。 また、イタリアのIntercontinental Specialty Fats(Italy)S.r.l.においては、新たな生産設備の本格稼働を背景に販売数量が増加したこと等により、増収増益となりました。 国内加工油脂については、需要が低迷する厳しい状況のなか、新規ユーザーの獲得および既存顧客での新規商品採用により販売数量は前年同期を上回り、販売価格についても段階的な価格改定を実現したことで、売上高は増収となりました。営業利益は、原材料価格の更なる上昇に加え、ユーティリティや包装資材のコスト上昇の影響が大きく、減益となりました。
≪加工食品・素材事業≫
(単位:百万円)
前第3四半期連結累計期間
当第3四半期連結累計期間
増減額
前年同期比
売上高
42,226
48,107
+5,880
113.9%
営業利益
1,529
460
△1,068
30.1%
加工食品・素材事業セグメントでは、販売価格の改定と海外子会社の為替換算の影響等はあるものの、原価率上昇等の影響が大きく、増収減益となりました。
チョコレートについては、大東カカオ㈱において、菓子需要の回復が遅れるなか、新規顧客開拓等に努めたことで販売数量は前年同期並みとなりました。シンガポールのT.&C. Manufacturing Co., Pte.Ltd.においては、日本国内における調製品の需要減により、販売数量は前年同期を下回りました。インドネシアのPT Indoagri Daitocacaoにおいては、新型コロナウイルス感染症の影響により遅れていた新規顧客との取引が進展したことにより、販売数量が増加しました。一方で、原価率上昇の影響が大きく、チョコレート全体で増収減益となりました。 調味料は、価格改定に伴い需要が減少するなかで、販売価格は上昇したものの、原価率上昇や販管費増加の影響が大きく増収減益となりました。
機能素材・食品は、加工食品メーカーとのMCT(中鎖脂肪酸)のコラボレーション商品の上市を進め、市場規模拡大に努めました。また、原材料価格の上昇に対する適正価格での販売に努めたものの、原価上昇の影響と販管費の増加により、増収減益となりました。 大豆素材・食品は、原材料価格の上昇に対する適正価格での販売に努めたものの、原材料価格の上昇や前期の連結子会社売却の影響により、増収減益となりました。
≪ファインケミカル事業≫
(単位:百万円)
前第3四半期連結累計期間
当第3四半期連結累計期間
増減額
前年同期比
売上高
12,620
15,743
+3,123
124.7%
営業利益
1,165
1,252
+86
107.4%
ファインケミカル事業セグメントでは、国内外の需要回復の遅れに伴い汎用品を中心に販売数量は減少しましたが、欧州子会社の好調な販売および原材料価格の上昇に対する適正価格での販売に努めた結果、増収増益となりました。
ファインケミカル製品については、国内および中国向け輸出需要が新型コロナウイルス感染症の影響により本格回復に至らず、販売数量は前年同期を下回りました。一方、スペインのIndustrial Quimica Lasem, S.A.U.では、欧州域内での好調な販売、特に化粧品油剤の販売が大きく増加したことにより、セグメント全体として増収増益となりました。環境・衛生については、堅調なアルコール製剤の需要により販売数量が増加したことで売上高は増収となりましたが、原材料およびエネルギーコスト高騰の影響が大きく、営業利益は減益となりました。
≪その他≫
(単位:百万円)
前第3四半期連結累計期間
当第3四半期連結累計期間
増減額
前年同期比
売上高
1,916
1,965
+49
102.6%
営業利益
217
328
+111
151.1%
情報システムをはじめその他の事業セグメントは、増収増益となりました。
地域別売上高
(単位:百万円)
前第3四半期連結累計期間
当第3四半期連結累計期間
増減額
前年同期比
日本
249,213
325,201
+75,988
130.5%
アジア
36,178
50,833
+14,654
140.5%
その他
28,242
49,057
+20,815
173.7%
海外売上高比率
20.5%
23.5%
-
+3.0%
原材料価格の高騰を背景とした販売価格の上昇や為替換算の影響等から、マレーシア、中国等のアジア向けおよび欧州、米国等のその他地域への売上高は増収となりました。
【参考】
売上高(単体) (単位:百万円)
前第3四半期累計期間
当第3四半期累計期間
増減額
前年同期比
油脂事業
油脂・油糧
173,643
240,804
+67,160
138.7%
業務用・加工用
70,129
99,681
+29,552
142.1%
ホームユース
44,913
58,001
+13,088
129.1%
油糧
58,600
83,120
+24,519
141.8%
加工油脂
7,381
10,028
+2,647
135.9%
小計
181,024
250,832
+69,808
138.6%
加工食品・素材事業
13,232
14,526
+1,293
109.8%
ファインケミカル事業
4,151
4,383
+232
105.6%
その他
253
256
+2
100.8%
合計
198,662
269,998
+71,336
135.9%
②財政状態の分析 当第3四半期連結会計期間末の総資産は、前連結会計年度末に比べ508億41百万円増加し、3,953億48百万円となりました。主な要因は、現金及び預金が43億54百万円、売上債権が323億20百万円、棚卸資産が200億84百万円、有形固定資産が12億25百万円増加した一方で、投資有価証券が26億50百万円減少したことであります。負債は、前連結会計年度末に比べ471億32百万円増加し、2,273億25百万円となりました。主な要因は、仕入債務が76億70百万円、短期借入金が201億16百万円、長期借入金が145億60百万円増加したことであります。純資産は、前連結会計年度末に比べ37億9百万円増加し、1,680億23百万円となりました。主な要因は、利益剰余金が73億35百万円増加した一方で、その他の包括利益累計額が42億2百万円減少したことであります。
(2)
キャッシュ・フローの状況の分析当第3四半期連結累計期間末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ21億73百万円増加に加え、連結子会社の決算期変更に伴い21億87百万円増加したため、122億36百万円となりました。
≪営業活動によるキャッシュ・フロー≫営業活動によるキャッシュ・フローは、223億48百万円の支出(前年同期は344億6百万円の支出)となりました。主な内訳は、税金等調整前四半期純利益154億16百万円、減価償却費70億72百万円、仕入債務の増加58億20百万円によるキャッシュの増加および売上債権の増加305億74百万円、棚卸資産の増加187億99百万円、法人税等の支払17億49百万円によるキャッシュの減少であります。
≪投資活動によるキャッシュ・フロー≫投資活動によるキャッシュ・フローは、45億86百万円の支出(前年同期は74億83百万円の支出)となりました。主な内訳は、有形固定資産の取得による支出58億97百万円によるキャッシュの減少であります。
≪財務活動によるキャッシュ・フロー≫財務活動によるキャッシュ・フローは、290億53百万円の収入(前年同期は428億85百万円の収入)となりました。主な内訳は、短期借入金の純増182億31百万円と長期借入による収入150億17百万円によるキャッシュの増加および長期借入金の返済による支出13億76百万円、配当金の支払29億19百万円によるキャッシュの減少であります。
(3)
優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題当第3四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題に重要な変更及び新たに生じた課題はありません。
(4)
研究開発活動当第3四半期連結累計期間の研究開発費の総額は23億1百万円であります。なお、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
(5) 連結業績予想などの将来予測情報に関する説明
連結業績につきましては、2022年5月11日に公表した2023年3月期の業績予想の数値を修正しております。 詳細につきましては、2023年2月9日に公表いたしました「業績予想の修正に関するお知らせ」をご覧ください。
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