【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度期間(2022年1月1日から2022年12月31日まで)における当社グループを取り巻く世界経済は、新型コロナウイルス感染拡大の影響による移動制限等が多くの国で緩和され、経済活動の再開が進みました。しかしながら、ロシア・ウクライナ情勢を背景としたエネルギー価格の上昇、インフレの抑制に向けた世界的な金融引き締め、中国での新型コロナウイルス感染の再拡大による経済活動抑制の影響により、世界経済の成長率は鈍化しました。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
(ⅰ) 財政状態
イ. 資産
当連結会計年度末の資産は、前連結会計年度末比1,480億円増の28,140億円となりました。これは主に、棚卸資産が増加したことによるものであります。
ロ. 負債
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末比438億円増の12,284億円となりました。これは主に、有利子負債が増加したことによるものであります。
ハ. 資本
当連結会計年度末の資本は、前連結会計年度末比1,042億円増の15,856億円となりました。これは主に、前期末比で円安になったことにより在外営業活動体の換算差額が増加したことによるものであります。
(ⅱ) 経営成績
当社グループは、2021年2月に長期経営戦略「2030年のありたい姿」を策定しました。この戦略では、長期安定的な収益基盤となる「コア事業」と高成長分野である「戦略事業」を両輪として、最適な事業ポートフォリオへの転換を図り、継続的に経済的・社会的価値を創出することを目指します。この長期経営戦略「2030年のありたい姿」を確実に実現するため、2021年1月1日から2023年12月31日までを期間とする中期経営計画 AGC plus-2023 を策定しました。当計画においては、コア事業の深化と戦略事業の探索を実現する“両利きの経営”を更に追求するとともに、サステナビリティ経営の推進とDX(デジタルトランスフォーメーション)の加速による競争力の強化を主要な戦略として設定しました。
当連結会計年度(2022年1月1日から2022年12月31日まで)においては、戦略事業では、日本でのEUV露光用フォトマスクブランクスの生産能力増強を決定したほか、スペイン拠点での合成医薬品CDMOと米国拠点での遺伝子・細胞治療CDMOの製造能力増強を決定しました。コア事業では、東南アジアのクロールアルカリ事業基盤強化を目的としたインドシナ半島のクロールアルカリ事業3社の統合再編を進め、タイにおける生産能力増強を決定しました。一方、米国のソーダ灰製造販売会社 Solvay Soda Ash Joint VentureとSolvay Soda Ash Extension Joint Ventureの株式を譲渡し、北米建築用ガラス事業からの撤退を完了しました。また、中国の子会社である艾杰旭特種玻璃(大連)有限公司の当社持分譲渡を決定するなど、最適な事業ポートフォリオへの転換を着実に実行しています。
このような事業環境の下、当連結会計年度の業績においては、戦略事業では、ライフサイエンス製品やエレクトロニクス製品の業績が順調に拡大しました。コア事業では、クロールアルカリ・ウレタンで、苛性ソーダなどの市況が期前半に堅調に推移しました。建築用ガラスは、欧州を中心に販売価格が上昇しました。自動車用ガラスは、半導体を中心とした部品供給不足の緩和による自動車生産台数の緩やかな回復を受け、当社グループの出荷も増加し、また欧州を中心に販売価格が上昇しました。フッ素・スペシャリティは、半導体関連向けを中心にフッ素関連製品の出荷が増加しました。一方で、ディスプレイ用ガラスの出荷は減少しましたが、コア事業全体では増収となりました。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は、為替の影響もあり前連結会計年度比3,385億円(19.9%)増の20,359億円となりました。営業利益は、全ての事業において原燃材料及び電力の価格が上昇したこと、また液晶用ガラス基板において大幅な需要減少などの影響を受けたことから同222億円(10.8%)減の1,839億円となりました。税引前利益は、ディスプレイ事業、プリント基板材料事業、ロシアにおける建築用・自動車用ガラス事業、欧州自動車用ガラス事業(ロシアを除く)に係る減損損失が発生したことから同1,515億円(72.1%)減の585億円、親会社の所有者に帰属する当期純利益は、同1,270億円減の32億円の損失(前年同期は親会社の所有者に帰属する当期純利益1,238億円)となりました。
<当連結会計年度の業績>
(億円:千万単位四捨五入)
売上高
2兆359億円
(前連結会計年度比 19.9%増)
営業利益
1,839億円
(前連結会計年度比 10.8%減)
税引前利益
585億円
(前連結会計年度比 72.1%減)
親会社の所有者に帰属する当期純利益
△32億円
(-)
なお、営業利益(前連結会計年度比△222億円)の主な増減要因は以下のとおりです。
販売数量・品種構成
+105億円
販売価格
+1,875億円
原燃材料価格
△1,598億円
コストその他
△604億円
<報告セグメント別の概況>
(億円:千万単位四捨五入)
売上高
営業利益
第98期
第97期
第98期
第97期
ガラス
9,015
7,343
229
273
電子
3,072
3,050
147
368
化学品
7,952
6,308
1,429
1,388
セラミックス・その他
866
794
37
35
消去又は全社
△547
△520
△3
△2
合計
20,359
16,974
1,839
2,062
報告セグメント別の経営成績は次のとおりです。
イ. ガラス
建築用ガラスは、需要回復に伴い日本・アジアで出荷が増加したものの、景気減速の影響を受けた欧州、南米で出荷が減少しました。販売価格は原燃材料高などを背景に欧州を中心とした全ての地域で上昇しました。なお、2021年8月に北米建築用ガラス事業を譲渡しましたが、上記の増収要因に加え為替の影響もあり、前連結会計年度に比べ増収となりました。自動車用ガラスは、半導体を中心とした部品供給不足の緩和により自動車生産台数が緩やかに回復し、当社グループの出荷も増加しました。また、販売価格が欧州を中心に上昇したことや為替の影響もあり、前連結会計年度に比べ増収となりました。 以上の結果から、当連結会計年度のガラスの売上高は、前連結会計年度比1,673億円(22.8%)増の9,015億円となりました。営業利益は、欧州における天然ガス価格などの上昇の影響を受けたことから同44億円(16.2%)減の229億円となりました。
ロ. 電子
ディスプレイは、液晶用ガラス基板の需要が期後半から想定以上に減少しました。また、ディスプレイ用特殊ガラスの出荷も減少したことから、前連結会計年度に比べ大幅に減収となりました。電子部材は、オプトエレクトロニクス用部材及び半導体関連製品の出荷が堅調に推移したことに加え、為替の影響などにより、前連結会計年度に比べ増収となりました。 以上の結果から、当連結会計年度の電子の売上高は、前連結会計年度比22億円(0.7%)増の3,072億円となりました。営業利益は、前述の増収要因があったものの、液晶用ガラス基板における大幅な需要減少、新規設備立ち上げ等に伴う減価償却費増加、原燃材料高などの影響により、同221億円(60.1%)減の147億円となりました。
ハ. 化学品
クロールアルカリ・ウレタンは、苛性ソーダ等の市況が堅調に推移したことに加え、為替の影響もあり、前連結会計年度に比べ増収となりました。フッ素・スペシャリティは、半導体関連向けを中心にフッ素関連製品の出荷が大きく増加したことから、前連結会計年度に比べ増収となりました。ライフサイエンスは、合成医農薬及びバイオ医薬品の受託が増加したことから、前連結会計年度に比べ増収となりました。 以上の結果から、当連結会計年度の化学品の売上高は、前連結会計年度比1,644億円(26.1%)増の7,952億円となりました。営業利益は、同42億円(3.0%)増の1,429億円となりました。
各報告セグメントに属する主要な製品の種類は以下のとおりです。
報告セグメント
主要製品
ガラス
フロート板ガラス、型板ガラス、網入り磨板ガラス、Low-E(低放射)ガラス、装飾ガラス、建築用加工ガラス(断熱・遮熱複層ガラス、防災・防犯ガラス、防・耐火ガラス等)、自動車用ガラス、車載ディスプレイ用カバーガラス等
電子
液晶用ガラス基板、有機EL用ガラス基板、ディスプレイ用特殊ガラス、
ディスプレイ用周辺部材、ソーラー用ガラス、産業用加工ガラス、半導体プロセス用部材、オプトエレクトロニクス用部材、プリント基板材料、照明用製品、理化学用製品等
化学品
塩化ビニル、塩化ビニル原料、苛性ソーダ、ウレタン原料、フッ素樹脂、撥水撥油剤、
ガス、溶剤、医農薬中間体・原体、バイオテクノロジー関連製品、ヨウ素製品等
上記製品の他、当社グループは、セラミックス製品、物流・金融サービス等も扱っています。
従来「ガラス」及び「電子」に含めていた車載ディスプレイ用カバーガラスについて、会社組織の変更に伴い、当連結会計年度より報告セグメントを「ガラス」に統合しております。前連結会計年度のセグメント情報は、当連結会計年度の報告セグメントの区分に基づき作成したものを開示しております。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度におけるフリー・キャッシュ・フロー(営業活動及び投資活動によるキャッシュ・フローの合計)は、税引前利益やその他の金融資産の売却等により、718億円の収入(前連結会計年度は2,029億円の収入)となりました。一方で、財務活動によるキャッシュ・フローにおいて、有利子負債の返済による支出、配当金の支払等があり、当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末より139億円(7.1%)増加し、2,097億円となりました。
(ⅰ) 営業活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における営業活動により得られた資金は、前連結会計年度比1,096億円(33.5%)減の2,171億円となりました。
(ⅱ) 投資活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における投資活動により使用された資金は、前連結会計年度比215億円(17.4%)増の1,453億円となりました。当該支出は、有形固定資産の取得による支出等があったことによるものであります。
(ⅲ) 財務活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における財務活動により使用された資金は、前連結会計年度比1,741億円(69.0%)減の782億円となりました。当該支出は、有利子負債の返済による支出、配当金の支払等があったことによるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種製品であっても、その形態、単位等は必ずしも一様ではなく、また製品のグループ内使用(製品を他のセグメントの設備に使用)や、受注生産形態をとる製品が少ないため、セグメントごとの生産規模や受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。
販売の実績については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況 (ⅱ) 経営成績」における各セグメント業績に関連付けして示しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの重要な会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 2 作成の基礎 及び 3 重要な会計方針」に記載しております。
また、ガラスセグメントに属する欧州自動車用ガラス事業(西中欧)及びロシアにおける建築用・自動車用ガラス事業、電子セグメントに属するディスプレイ事業、スーパーハイエンドCCL事業及び産業フィルム事業(プリント基板材料事業等)の非金融資産の減損テストに関しては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 11 非金融資産の減損」に記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「(1) 経営成績等の状況の概要」に含めて記載しております。
③ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは、中期経営計画に則り、持続的な業績成長のための成長基盤の構築や事業体質・競争力の強化に取り組み、資産効率を高めながら株主価値の継続的な向上に努めております。また、今後の成長のために必要な設備及び研究開発活動に投資するために、適切な資金確保を行い、最適な流動性を保持し、健全なバランスシートを維持することを財務方針としており、D/Eについては0.5以下を目標値として定めております。 資金調達活動については、当社グループを取り巻く金融情勢に機動的に対応し、金融機関借入、社債発行、コマーシャル・ペーパー発行等、多様な手段により、より安定的で低コストの資金調達を目指しております。また、長期資金の年度別償還額の集中を避けることで、借り換えリスクの低減を図っております。 資金の流動性については、現金及び現金同等物に加え、主要金融機関とコミットメントライン契約を締結しており、現在必要とされる資金水準を充分満たす流動性を保持していると考えております。
④ 経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループの経営財務目標については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
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