【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1)財政状態及び経営成績の状況 2023年5月に変成器類に関する不適切事案(形式試験の不正な作出、不適切な原産地の表示、出荷試験成績書の不正な作出)が判明し公表を行いました。お客様・株主・関係者の皆様に多大なるご迷惑とご心配をお掛けしたことを改めて深くお詫び申し上げます。今後、前回の不適切事案(2021年8月に判明したガス絶縁開閉装置の検査に関する事案)の際に実施した総点検調査で見落としてしまった要因分析を踏まえて調査方法を再設計し、当社全製品を対象とした総点検調査を改めて行います。また、今回の事案の発生原因と長く発見・是正されてこなかった真因の究明を行い、現在進めている再発防止対策の有効性を評価し、必要な追加対策についても検討・実施してまいります。なお、当第1四半期連結累計期間における本事案に関係する影響は軽微な範囲に留まっております。
次に、当社グループを取り巻く状況ですが、最大取引先である電力業界においては、ウクライナ情勢を受けた世界的な燃料価格の高騰や小売り事業における更なる競争の激化に加え、カーボンニュートラルの実現、電力需給の安定性の確保、地域社会の防災・レジリエンス強化への要請、新しい託送料金制度であるレベニューキャップ制度など、事業環境が大きく変化するとともに一層厳しくなっており、生産性向上と徹底的なコスト削減が各社で進められております。一方、脱炭素社会の実現に向けては、日本政府が2050年カーボンニュートラル宣言をしたことにより、国内では再生可能エネルギーを含めた分散型エネルギー関連設備の更なる普及や、電気自動車向け急速充電器需要が立ち上がりつつあります。当社グループは、2021年4月に「2030VISION & 2023中期経営計画」を策定し、「コア事業の深化・変革」、「事業基盤の構造転換」、「2030将来像開拓への挑戦」の3つの基本方針のもと、2030VISION達成に向けて、既存事業の変革と新規事業の開拓を同時に行う両利きの経営をスタートさせております。この2030VISIONの目指す姿である「総合エネルギー事業プロバイダー」に向けた取り組みの一環として、本年6月29日に組織改正を行い、「人財育成センター」を設置しました。これにより、既存事業を磨きこみ・深化させる人財、新規領域で新たな付加価値を創造し稼ぐことができる人財の双方を、これまでよりも体系立て、効果・効率的、迅速に育成する観点から、人的資本を高めて有効活用し、企業価値を向上させることを目的に、「社員の成長意欲を向上させる」、「業界トップの人財を育てる」ことを推進してまいります。また、サステナビリティへの取組みとして、昨年6月に賛同を表明したTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に基づく情報開示を、当社ホームページ※にて本年6月16日に行いました。開示内容の「リスクと機会」の要旨としては、大きなリスクとして、「炭素税の導入に伴う材料単価上昇や自社製造コスト増」がありますが、設計の見直しによる素材使用量の削減や生産性向上による原価低減、再生可能エネルギーの自己託送による製造コスト減といった対応を進めてまいります。一方で「電気自動車の普及加速による急速充電器等関連事業の受注機会拡大」は、当社グループにとって非常に大きな機会であり、今後更なる製品ラインナップの拡充、設計・施工から保守メンテまで含めたワンストップサービスのご提供、製品・工事費を含めたコストダウン,IoT化などを進めることで、お客さまの様々なEV利用ニーズにお応えしていくといった対応を進めてまいります。今回の開示では、対象事業セグメントが単体における電力機器事業及びGXソリューション事業の一部ですが、今年度は対象事業セグメントの拡大に着手し、リスク及び機会の分析と対応策の検討を更に進めるとともに、継続的に情報の開示を行ってまいります。※ 当社HP「お知らせ」URL https://www.tktk.co.jp/news/assets/pdf/news_20230616.pdf
次に、今年3月末に東京証券取引所より通達発信された「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」ですが、当社の2023年3月期の状況は、ROE:5.5%・PBR:0.7倍となっており、2019年3月期のROE:2.2%・PBR:0.4倍からは、株価・ROE・PBRは改善傾向にはあるものの、同通達文書で示された水準には及ばず、まだまだ課題があることを真摯に受け止めております。今後、この通達も参考にして、現状分析(自社の資本コストや資本収益性を的確に把握し、その内容や市場評価に関して取締役会で現状を分析・評価)からスタートし、計画策定・開示に向けて取組んでまいります。その一環として、資本コストや資本収益性を意識した経営管理と業務運営に向け、ROIC指標を重視した取組みを充実すべく、各セグメント・機種単位レベルでの指標分析と課題抽出に着手しております。また、収益性(ROS)向上に向け、一層のカイゼン&DXの取組みを加速すると共に、既存コア事業の構造改革(選択と集中,サプライチェーン改革,生産拠点再編等),新規事業のテイクオフ戦略と成長投資,人的資本投資や研究開発投資による無形資産の創造を進め、これらを分かりやすい成長ストーリーとして開示し、投資家の皆さんとの対話を充実していくことにも積極的に取組んでまいります。
当第1四半期連結累計期間の売上高につきましては、一般向けのプラント物件や三次元検査装置が減少したものの、計量事業全般や海外工事物件の増加により、21,739百万円(前年同期比8.5%増)となりました。利益面では、計量事業の電力会社向け変成器・スマートメーターの増加がありましたものの、断路器を含む一般向けのプラント物件や三次元検査装置の減少をカバーするまでにはいたらず、営業利益1,133百万円(前年同期比18.4%減)、経常利益1,192百万円(前年同期比21.3%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益は699百万円(前年同期比29.8%減)といずれも減益になりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。電力機器事業は、海外工事物件や価格改定を行った配電機器が増加したことにより、セグメント全体の売上高は12,483百万円(前年同期比5.1%増)と増加しましたが、断路器を含む一般向けのプラント物件の売上減少をカバーするまでにはいたらず、セグメント利益につきましては1,096百万円(前年同期比29.8%減)と減益になりました。計量事業は、電力会社向けの変成器や価格改定を行ったスマートメーターの増加により、セグメント全体の売上高は7,131百万円(前年同期比21.2%増)と増加し、セグメント利益につきましても1,026百万円(前年同期比82.6%増)と増益となりました。GXソリューション事業は、新規事業であるデータビジネス関連の増加に加え、急速充電器の販売台数が部品調達の長納期化の影響から回復基調にあり、セグメント全体の売上高は1,096百万円(前年同期比15.2%増)と増加し、セグメント損失につきましても、234百万円(前年同期はセグメント損失263百万円)と赤字幅が縮小しました。なお、セグメントの変更により、前年同期につきましても変更後のセグメントに組み替えて比較しております。光応用検査機器事業は、半導体の需要が伸び悩んだことにより三次元検査装置の売上が減少し、セグメント全体の売上高は782百万円(前年同期比26.8%減)と減少し、セグメント利益につきましても248百万円(前年同期比40.1%減)と減益となりました。その他事業は、不動産賃貸収入の減少により、セグメント全体の売上高は244百万円(前年同期比6.4%減)と減少し、セグメント利益につきましても163百万円(前年同期比8.2%減)と減益となりました。
当第1四半期連結会計期間末の総資産は、前連結会計年度末に比べ4,133百万円減少し、102,189百万円となりました。これは主に「現金及び預金」「棚卸資産」が増加したものの、「受取手形、売掛金及び契約資産」が減少したことによるものです。負債は、前連結会計年度末に比べ4,846百万円減少し、43,015百万円となりました。これは主に「契約負債」が増加したものの、「支払手形及び買掛金」「賞与引当金」「長期借入金」が減少したことによるものです。純資産は、前連結会計年度末に比べ712百万円増加し、59,173百万円となりました。これは主に配当金の支払いによる減少があったものの、親会社株主に帰属する四半期純利益の計上による利益剰余金の増加及び非支配株主持分の増加によるものです。
(2)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題 当第1四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題に重要な変更はありません。
(3)研究開発活動当第1四半期連結累計期間の研究開発費の総額は751百万円であります。なお、当第1四半期連結累計期間において当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。