【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症拡大からの正常化が進む中、世界的な物価上昇やサプライチェーンの混乱、ウクライナ情勢の長期化、景況感の悪化等、厳しい状況が続いております。また国内経済においても急激な為替変動や原材料・エネルギーを始めとした諸物価の上昇等を背景に、個人消費や企業収益に停滞の動きがみられ、予断を許さない状況となっております。
国内の住宅関連業界は、緩やかな減少が続く持ち家住宅を中心に新設住宅着工戸数が弱含みで推移する中、住宅設備機器業界はリフォームを中心に底堅い推移となっております。
このような状況の中、当社グループは中期経営計画「New ERA 2025」における3つの戦略ストーリーである「社会課題解決への貢献」、「事業規模の拡大」、「企業体質の変革」の実現に向けた取り組みを推進しております。「ウルトラファインバブル給湯器」や「ECO ONE X5」といった生活の質向上・地球環境への貢献に寄与する商品の発売に加え、成長市場であるアメリカでの新工場稼働や家庭用給湯器における水素100%燃焼の技術開発といった事業領域の拡大を通じ、お客様との約束である「Creating a healthier way of living(健全で心地よい暮らし方を創造)」の実現と持続的で堅実な長期成長に向けた取り組みを着実に進めております。
当連結会計年度の業績は、販売面につきましては、国内では供給遅延解消にグループ総力で取り組んだ結果、給湯機器の販売が伸長し、海外ではアメリカや中国を中心に主力商品の販売が増加したことに加え、為替換算影響もあり増収となりました。損益面につきましては、原材料価格や物流費・エネルギーコストの高騰やアメリカでの新工場稼働に伴う費用の増加があったものの、販売増や高付加価値商品の伸長、原価低減の推進により当社グループの営業利益は増益となりました。
この結果、売上高は4,252億29百万円(前期比16.1%増)、営業利益は414億18百万円(前期比15.5%増)、経常利益は445億65百万円(前期比14.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は260億96百万円(前期比9.9%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
日本は、売上高1,968億38百万円(前期比14.8%増)、営業利益235億97百万円(前期比35.3%増)となりました。
アメリカは、売上高557億50百万円(前期比24.6%増)、営業利益3億13百万円(前期比85.1%減)となりました。
オーストラリアは、売上高276億55百万円(前期比7.3%増)、営業利益は11億80百万円(前期比27.2%減)となりました。
中国は、売上高661億50百万円(前期比25.3%増)、営業利益は105億69百万円(前期比56.5%増)となりました。
韓国は、売上高320億94百万円(前期比0.1%減)、営業利益は7億5百万円(前期比32.3%減)となりました。
インドネシアは、売上高162億3百万円(前期比19.3%増)、営業利益は24億円(前期比15.1%減)となりました。
(注)売上高についてはセグメント間の取引を相殺消去した数値によっております。
②キャッシュ・フローの状況
キャッシュ・フローの状況について、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べて277億59百万円減少し、1,202億13百万円(前期比18.8%減)となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
主に営業利益の確保による資金の増加、法人税等の支払による資金の減少等の結果、営業活動によって得られた資金は193億87百万円(前期比32.4%減)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
主に有形固定資産の取得による支出等により、投資活動の結果支出した資金は300億87百万円(前期比18.1%増)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
主に自己株式の取得による支出や配当金の支払い等により、財務活動の結果支出した資金は213億13百万円(前期比21.4%減)となりました。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
日本
(百万円)
232,127
119.05
アメリカ
(百万円)
12,228
202.92
オーストラリア
(百万円)
10,564
121.54
中国
(百万円)
61,875
114.94
韓国
(百万円)
30,402
102.29
インドネシア
(百万円)
15,434
118.94
報告セグメント計
(百万円)
362,633
118.42
その他
(百万円)
19,596
129.73
計
(百万円)
382,230
118.95
(注)金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
b.商品仕入実績
当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
日本
(百万円)
22,963
104.97
アメリカ
(百万円)
2,584
141.85
オーストラリア
(百万円)
9,233
128.78
中国
(百万円)
2,508
129.80
韓国
(百万円)
2,200
128.10
インドネシア
(百万円)
1,553
118.48
報告セグメント計
(百万円)
41,044
114.55
その他
(百万円)
6,128
155.45
計
(百万円)
47,173
118.61
(注)金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
c.受注実績
当社グループは受注見込による生産方式をとっておりますので、該当事項はありません。
d.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
日本
(百万円)
196,838
114.8
アメリカ
(百万円)
55,750
124.6
オーストラリア
(百万円)
27,655
107.3
中国
(百万円)
66,150
125.3
韓国
(百万円)
32,094
99.9
インドネシア
(百万円)
16,203
119.3
報告セグメント計
(百万円)
394,691
115.9
その他
(百万円)
30,537
119.1
計
(百万円)
425,229
116.1
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは2021年度から2025年度を計画年度とする中期経営計画「New ERA 2025」を推進しております。計画遂行の達成状況を判断するための客観的な指標として、中期経営計画の最終年度である2025年度における連結売上高営業利益率11.1%および連結ROIC 19.0%の達成を重要な数値目標としております。また新たに連結ROEを重要な経営指標として定め、「中長期的な利益の持続的成長」という基本方針のもと、2025年度の目標を8.0%と設定いたしました。
当連結会計年度においては、部品調達逼迫によって生じた国内外での商品供給遅延解消に向け、当社グループ総力で取り組んだことで主力商品の販売が伸長したものの、原材料・エネルギー価格の高騰を始めとした各種コスト増により収益性が鈍化した結果、連結売上高営業利益率は9.7%(前期比0.1ポイント減)、連結ROICは供給遅延対策としての棚卸資産増加や設備投資の進捗により投下資本が増加したことで13.3%(前期比0.8ポイント減)となりました。また連結ROEは販売増による増益と配当性向の段階的な引上げおよび自己株式取得により7.4%(前期比0.5ポイント増)となりました。中期経営計画に掲げた戦略の実現に向け、今後もグループ全体の連携を図り収益性と資本効率を高めてまいります。
a.財政状態
(資産合計)
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ342億46百万円増加し5,471億14百万円(前連結会計年度末は5,128億67百万円)となりました。
流動資産は、3,415億20百万円(前連結会計年度末は3,339億56百万円)となりました。これは主に、棚卸資産が282億1百万円増加したことによるものであります。
固定資産は、2,055億93百万円(前連結会計年度末は1,789億10百万円)となりました。これは主に、有形固定資産が175億68百万円増加したことによるものであります。
(負債合計)
当連結会計年度末の負債合計は、電子記録債務が増加したこと等により、前連結会計年度末に比べて59億4百万円増加し1,399億14百万円(前連結会計年度末は1,340億10百万円)となりました。
(純資産合計)
当連結会計年度末の純資産合計は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上及び為替換算調整勘定が増加した一方で、自己株式の取得をしたことなどにより、前連結会計年度末に比べて283億42百万円増加の4,071億99百万円(前連結会計年度末は3,788億56百万円)となり、自己資本比率は66.6%となりました。
b.経営成績
(売上高)
売上高は、国内では供給遅延解消にグループ総力で取り組んだ結果、給湯機器の販売が伸長し、海外ではアメリカや中国を中心に主力商品の販売が増加したことに加え、為替換算影響もあり、前連結会計年度に比べ16.1%増の4,252億29百万円となりました。
(売上原価、販売費及び一般管理費)
売上原価は、原材料価格やエネルギー費の高騰などにより、前連結会計年度に比べ14.9%増の2,868億34百万円となりました。販売費及び一般管理費は、物流費の高騰が影響したことなどによって、前連結会計年度に比べ20.2%増の969億75百万円となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
親会社株主に帰属する当期純利益は、営業利益率の増加などによって、前連結会計年度に比べ9.9%増の260億96百万円となりました。
c.セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
〈日本〉
供給遅延解消に向けた生産体制の強化を図る中、ハイブリッド式を含む給湯暖房機を中心に主力の給湯機器販売が大きく伸長しました。原材料や部品等の仕入れコスト、物流費・エネルギーコストの高騰が続く中、主力商品の販売増や円安影響、原価低減の推進により日本の売上高は1,968億38百万円(前期比14.8%増)、営業利益は235億97百万円(前期比35.3%増)となりました。
セグメント資産は、販売の増加により売上債権が増加したことなどによって、前連結会計年度末に比べ155億21百万円増加し、3,591億84百万円となりました。
〈アメリカ〉
部品調達の逼迫や国際物流の混乱により、日本からのタンクレス給湯器の供給が一時遅延する中、4月の現地新工場稼働や日本からの供給増加に伴い、現地での給湯器販売が伸長しました。下期に掛けて住宅市況の悪化により需要が鈍化するも、アメリカの売上高は557億50百万円(前期比24.6%増)となりました。しかし新工場稼働に伴う費用や物流費等のコスト増を吸収するに至らず、営業利益は3億13百万円(前期比85.1%減)となりました。
セグメント資産は、下期に掛けての需要の鈍化により棚卸資産が増加したことや為替換算の影響などによって、前連結会計年度末に比べ162億32百万円増加し、500億76百万円となりました。
〈オーストラリア〉
インフレと住宅市況弱含みの中、日本からのタンクレス給湯器や暖房機器の供給が遅延したことで主力商品の販売が減少したものの、業務用空調機やタンク式給湯器の伸長、為替換算影響によりオーストラリアの売上高は276億55百万円(前期比7.3%増)となりました。一方で販売減少や原材料価格・物流費の高騰が続き、営業利益は11億80百万円(前期比27.2%減)となりました。
セグメント資産は、有形固定資産が増加したことなどによって、前連結会計年度末に比べ26億67百万円増加し、303億22百万円となりました。
〈中国〉
デベロッパー向け政策の厳格化による住宅市場の停滞や新型コロナウイルス感染症の感染拡大による上海市ロックダウンにより一時的に生産、販売活動が制限されるも、ロックダウン解除後の生産・販売活動の巻き返しや即湯ユニット内蔵ガス給湯器等の高付加価値商品の伸長により、中国の売上高は661億50百万円(前期比25.3%増)、営業利益は105億69百万円(前期比56.5%増)となりました。
セグメント資産は、営業活動によるキャッシュ・フローの獲得により現金及び預金が増加したことなどによって、前連結会計年度末に比べ68億8百万円増加し、788億37百万円となりました。
〈韓国〉
物価や金利上昇による景況感の悪化に加え、住宅売買の減少、環境適合商品への政府補助金の減額で市場が縮小したことによる主力のボイラー販売減少を他の商品販売でカバーするに至らず、韓国の売上高は320億94百万円(前期比0.1%減)となりました。営業利益は主力商品の販売減少と業務用フライヤーの修理点検費用を計上したことで7億5百万円(前期比32.3%減)となりました。
セグメント資産は、棚卸資産が増加したことなどによって、前連結会計年度末に比べ17億61百万円増加し、220億1百万円となりました。
〈インドネシア〉
主力のテーブルコンロの販売が弱含むも、販促効果やラインアップ拡充により需要が旺盛なビルトインコンロやレンジフードの販売が好調に推移したことで、インドネシアの売上高は162億3百万円(前期比19.3%増)となりました。一方で鉄鋼を中心とした原材料価格の高騰が続き、営業利益は24億円(前期比15.1%減)となりました。
セグメント資産は、為替換算の影響などによって、前連結会計年度末に比べ3億47百万円増加し、148億66百万円となりました。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析につきましては、主に営業利益の確保により、営業活動によって193億87百万円の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)を獲得した一方で、投資活動においては、営業拠点、工場など成長分野への積極的な設備投資を推進したことなどによって300億87百万円、また、財務活動においては、継続的な増配と自己株式の取得による株主還元を実施したことなどによって213億13百万円の資金をそれぞれ支出しました。これらの結果、当連結会計年度末における資金は、前連結会計年度に比べて277億59百万円減少し、1,202億13百万円となりました。また、今後の資本政策については基本方針に基づき、生活必需品としての要素が高い当社グループ商品の安定供給を図るべく、災害時における早期復旧費用などのリスク対応資金を確保し、健全な財務基盤を構築するとともに、持続的成長に向けた研究開発や設備投資、無形資産への戦略的投資と、安定配当および配当性向の段階的な引上げによる配当の拡充と機動的な自己株式の取得を通じた総還元性向の向上による株主還元の充実に努めてまいります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、運転資金需要のうち主なものは、原材料や部品の購入費用のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は主に設備投資等によるものであります。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
短期運転資金、設備投資及び長期運転資金について、営業キャッシュ・フローを源泉とする自己資金を基本としております。
なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高は26億90百万円となっております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
連結財務諸表の作成に際し、決算日における資産・負債の数値ならびに当連結会計年度における収益・費用の数値に影響を与える見積り及び仮定の設定を行っております。実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、見積りと異なる場合があります。
当社グループの重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりでありますが、特に製品保証引当金及び繰延税金資産に関する見積り及び判断が連結財務諸表の作成に重要な影響を及ぼすと考えております。
a.製品保証引当金
当社及び一部の連結子会社は、製品の無償修理費用の支出に備えるため、製品保証引当金として製品に関する保証費発生見積額を計上しております。当該会社の保証費発生見積額は、過去の発生実績率に基づいて計算した額を計上しておりますが、実際の発生実績率又は製品保証費用が見積りと異なる場合、引当金の追加計上が必要になる可能性があります。
b.繰延税金資産の回収可能性
当社グループは、課税所得の将来の見積額や一時差異等のスケジューリングの結果に基づき繰延税金資産を計上しております。今後、経営環境の悪化等により課税所得の見積りを減額された場合等には繰延税金資産を取り崩す必要が生じ、当社グループの業績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。