【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症、ロシアによるウクライナ侵攻などの影響による部材需給逼迫などに加え、部材・エネルギー価格高騰が継続するなか、当連結会計年度前半は先進国を中心に回復基調で推移しましたが、後半にかけ米国をはじめ世界各国におけるインフレや金融引き締めなどの影響により景気の減速感が強まりました。わが国経済はサプライチェーンの混乱、部材・エネルギー価格高騰や急激な為替変動などの影響を受けたなかで、輸出、生産、設備投資の回復の動きに足踏みが見られました。当社グループを取り巻く経済環境は、前連結会計年度より引き続き設備投資需要が回復基調で推移し、インド市場の堅調さは継続したものの、中国におけるロックダウンやゼロコロナ政策解除後の感染拡大および渡航制限、中国、米国などの景気減速の影響を受けました。一方、世界的に脱炭素化などの社会課題解決に向けた動きが加速していることを背景として、EV、再生可能エネルギー、労働生産性向上などに関連した需要の拡大が継続しました。このような経済環境のもとで、当社グループは中期経営計画である「経営改革プラン」に基づき、高収益企業への変革に向けて、組織再編を中核とした経営改革、成長分野に対応した投資の推進、資本効率(ROE)の向上を目指した財務戦略の実行に取り組むとともに、社会課題を解決する高付加価値商品の創出と高効率な生産の実現に向けたDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しています。成長分野に対応した投資においては、市場規模が拡大している超精密加工機、脱炭素化を背景としたEV需要の高まりにより受注が急拡大しているリチウムイオン電池向けセパレータフィルム製造装置の増産体制構築を進めました。また、成長市場であるインドにおいて当社インド工場の射出成形機生産能力増強のため新工場増設を進めています。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態当連結会計年度末の資産は、前連結会計年度末に比べ381億1千万円増加し、2,051億円となりました。負債は、前連結会計年度末に比べ325億8百万円増加し、1,159億8千2百万円となりました。純資産は、前連結会計年度末に比べ56億2百万円増加し、891億1千8百万円となりました。
b.経営成績当連結会計年度の受注高は中国におけるリチウムイオン電池向けセパレータフィルム製造装置の大幅な増加により、1,916億5千3百万円(前連結会計年度比16.7%増)、売上高は中国におけるリチウムイオン電池向けセパレータフィルム製造装置、国内における産業機械向けおよび北米におけるエネルギー関連向け工作機械の増加により、1,231億9千7百万円(前連結会計年度比14.3%増)となりました。損益については、部材価格高騰等のコスト上昇影響を受けたものの、規模増加および円安による増益効果により、営業利益は57億6千5百万円(前連結会計年度比36.1%増)、経常利益は52億7千9百万円(前連結会計年度比16.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は固定資産売却益などの計上により64億4千1百万円(前連結会計年度比72.9%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
(成形機事業)射出成形機においては、販売は中国でロックダウン、経済活動停滞の影響により減少したものの、北米で脱炭素化の動きを背景に中大型電動機が増加しました。また、経済活動が活発化しているインドで油圧機が増加しました。受注はインドで油圧機が増加したものの、北米、中国において景気減速による市況悪化の影響により減少しました。ダイカストマシンにおいては、販売は微減、受注は東南アジア、北米、韓国で自動車向けが増加しました。押出成形機においては、販売と受注はEV関連の設備投資需要の拡大に伴い、中国におけるリチウムイオン電池向けセパレータフィルム製造装置が大幅に増加しました。この結果、成形機事業全体の受注高は1,549億7千9百万円(前連結会計年度比25.2%増)、売上高は859億5千7百万円(前連結会計年度比13.8%増)、営業利益は46億1千2百万円(前連結会計年度比25.2%増)となりました。
(工作機械事業)工作機械においては、販売は国内における産業機械向けおよび北米におけるエネルギー関連向けが増加しました。受注は中国における風力発電向けおよび北米におけるエネルギー関連向けが増加しました。超精密加工機においては、販売は微減、受注は光学系金型向けが中国で減少しました。この結果、工作機械事業全体の受注高は261億9千6百万円(前連結会計年度比8.7%減)、売上高は273億2千4百万円(前連結会計年度比15.9%増)、営業利益は5億3千5百万円(前連結会計年度比69.0倍)となりました。
(制御機械事業)制御機械においては、販売は国内における電子制御装置およびシステムエンジニアリングが増加しました。受注は国内における電子制御装置、中国における産業用ロボットが減少しました。この結果、制御機械事業全体の受注高は91億8千万円(前連結会計年度比14.1%減)、売上高は86億6千5百万円(前連結会計年度比13.0%増)、営業利益は4億8千6百万円(前連結会計年度比14.1%増)となりました。
(その他の事業)その他の事業全体の受注高は12億9千5百万円(前連結会計年度比21.5%増)、売上高は12億5千万円(前連結会計年度比27.4%増)、営業利益は1億4千1百万円(前連結会計年度比79.2%増)となりました。
②キャッシュ・フローの状況当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)の残高は、前連結会計年度末に比べ8億5千5百万円減少し、508億5千5百万円となりました。なお、当連結会計年度における各活動によるキャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動による資金は、9億3千4百万円の増加になりました。これは主として、棚卸資産の増加による支出286億6千7百万円があったものの、仕入債務の増加額129億4千1百万円、契約負債の増加による収入198億1千3百万円等があったことによります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動による資金は、5億6千3百万円の減少になりました。これは主として、有形固定資産の売却による収入19億4千4百万円があったものの、有形固定資産の取得による支出22億8千3百万円等があったことによります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動による資金は、22億7千7百万円の減少になりました。これは主として、長期借入金の返済による支出5億円、配当金の支払額18億1千1百万円等があったことによります。
なお、当社グループのキャッシュ・フロー関連指標のトレンドは下記のとおりであります。
2021年3月期
2022年3月期
2023年3月期
自己資本比率(%)
61.2
50.0
43.5
時価ベースの自己資本比率(%)
50.3
49.5
37.1
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)
74.7
1.3
15.0
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)
2.2
128.3
5.5
(注) 1.自己資本比率:自己資本/総資産2.時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産3.キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業活動キャッシュ・フロー4.インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業活動キャッシュ・フロー/利払い
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度(自 2022年4月1日至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
成形機(百万円)
99,138
14.6
工作機械(百万円)
24,875
△5.8
制御機械(百万円)
18,680
15.5
報告セグメント計(百万円)
142,694
10.6
その他(百万円)
1,003
139.9
合計(百万円)
143,698
11.0
(注) 1.金額は、販売価格によっております。2.生産高の実績については、製品の製造を行っている当社、㈱不二精機製造所、東栄電機㈱、SHIBAURA MACHINE (SHANGHAI) CO.,LTD.、SHIBAURA MACHINE MANUFACTURING (THAILAND) CO.,LTD.、SHIBAURA MACHINE INDIA PRIVATE LIMITEDの連結生産高の実績となっております。なお、2022年10月1日付で、㈱不二精機製造所は当社を存続会社とする吸収合併により消滅しました。
b.受注実績当連結会計年度における受注実績及び連結会計年度末受注残高をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
受注高(百万円)
受注残高(百万円)
当連結会計年度(自 2022年4月1日至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
当連結会計年度(2023年3月31日現在)
前年同期比(%)
成形機
154,979
25.2
180,046
62.2
工作機械
26,196
△8.7
22,183
△4.8
制御機械
9,180
△14.1
6,581
8.5
報告セグメント計
190,357
16.6
208,811
48.7
その他
1,295
21.5
434
11.8
合計
191,653
16.7
209,246
48.6
(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。
c.販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度(自 2022年4月1日至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
成形機(百万円)
85,957
13.8
工作機械(百万円)
27,324
15.9
制御機械(百万円)
8,665
13.0
報告セグメント計(百万円)
121,947
14.2
その他(百万円)
1,250
27.4
合計(百万円)
123,197
14.3
(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容当連結会計年度は「経営改革プラン」の4年目にあたり、高収益企業への変革に向けて、組織再編を中核とした経営改革、成長分野に対応した投資の推進、資本効率(ROE)の向上を目指した財務戦略の実行に取り組んでまいりました。「経営改革プラン」の詳細については「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中長期的な会社の経営戦略、目標とする経営指標及び対処すべき課題」を参照ください。高収益企業への変革に向けた組織再編につきましては、これまで以上に全体最適を進めるため「事業部制」を廃止し、「カンパニー制」を採用いたしました。全社における研究開発の推進と調達を含めた生産活動の円滑化のため、「R&Dセンター」および「生産センター」を創設いたしました。併せて、最適資源配分と固定費削減に向けた希望退職と配置転換を実施いたしました。また、多様な人材の処遇、キャリア形成、専門的人材の活躍が可能な新人事制度を導入いたしました。生産性改善に向けて、国内外生産拠点の役割を見直し、現在再編を進めております。世界的なEV化の流れを背景にEVの動力源となるリチウムイオン電池の需要が急激に高まっており、その部材であるセパレータフィルムの製造装置の増産体制を構築しました。足元の旺盛な需要に応えるために、更なる生産能力の拡大を検討しております。今後持続的な経済成長が期待できるインドにおきましては、射出成形機の生産能力増強のため、2024年3月期後半の稼働に向けてインド新工場増設を進めています。新工場では油圧式中大型機の増産および電動式機種の生産の検討を予定しています。また、国内外の生産拠点再編に伴い、相模工場一部敷地の有効活用のため、物流施設の事業化を推進しております。
b.経営成績等1)財政状態(資産)当連結会計年度末の資産は、前連結会計年度末に比べ381億1千万円増加し、2,051億円となりました。増加の主な内訳は、受取手形、売掛金及び契約資産が25億8千8百万円、商品及び製品が160億8千6百万円、仕掛品が126億円増加したこと等によります。(負債)負債は、前連結会計年度末に比べ325億8百万円増加し、1,159億8千2百万円となりました。増加の主な内訳は、支払手形及び買掛金が128億1千5百万円、契約負債が198億6千7百万円増加したこと等によります。(純資産)純資産は、前連結会計年度末に比べ56億2百万円増加し、891億1千8百万円となりました。増加の主な内訳は、親会社株主に帰属する当期純利益64億4千1百万円の計上があったこと等によります。この結果、D/Eレシオ15.7%(前連結会計年度末は17.0%)、自己資本比率は43.5%(前連結会計年度末は50.0%)となりました。
2)経営成績(売上高)中国、北米、インドなど海外を中心に増加し、1,231億9千7百万円(前連結会計年度比14.3%増)となりました。(営業利益)営業利益は、売上規模の増加や操業の改善等により、57億6千5百万円(前連結会計年度比36.1%増)となりました。(経常利益)営業外損益は、為替差損益の減少等により、前連結会計年度に比べ7億9千4百万円の利益(純額)が減少し、4億8千6百万円の損失(純額)となりました。この結果、経常利益は52億7千9百万円(前連結会計年度比16.2%増)となりました。(親会社株主に帰属する当期純利益)特別損益は、固定資産売却益の増加等により、前連結会計年度に比べ16億6千5百万円の利益(純額)が増加し、12億1百万円の利益(純額)となりました。この結果、税金等調整前当期純利益は64億8千万円(前連結会計年度比58.9%増)となりました。税金費用は法人税等合計3千9百万円を計上し、親会社株主に帰属する当期純利益は64億4千1百万円(前連結会計年度比72.9%増)となりました。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
資金需要当社グループの事業活動における資金需要の主なものは運転資金需要、設備投資及びM&Aを含む投資資金需要であります。運転資金需要については、生産活動に必要な材料費・人件費及び経費等、受注獲得に向けた引合費用等の販売費、商品力強化及び新商品の開発に資する研究開発費が主な内容であります。投資資金需要については、事業規模拡大及び生産性向上を目的とした有形・無形固定資産投資、既存設備の維持、改修に係る修繕費、適切なM&A・アライアンスの実行に要する資金などが主な内容であります。
財務政策当社グループは、運転資金投入、投資資金投入ともに営業キャッシュ・フローを源泉としつつ、事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保する施策として、有利子負債による資金調達を実施しております。当連結会計年度末における当社グループの有利子負債残高は140億1千1百万円となりました。金融機関には十分な借入枠を有しており、当社グループの事業規模の維持拡大に向けた運転資金及び投資資金の調達は今後も可能であると考えております。また、国内金融機関において100億円のコミットメントラインを設定しており、手元流動性の補完にも機動的に対応が可能となっております。今後も売上債権、棚卸資産の回転期間短縮や固定資産の稼働率向上を通じて資産効率の改善を図るとともに、大規模な設備投資、M&Aなどに向けた長期資金の調達については、中期経営計画に基づく資金需要、金利動向等の調達環境、既存借入金の償還時期等を考慮の上、調達規模、調達手段を適宜判断していくこととしております。
③重要な会計方針及び見積り当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
④セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。当社グループは、事業活動によって経常的に創出される付加価値の最大化及び株主資本の有効活用がすべてのステークホルダーの利益に合致するものと考え、「売上高」、「売上高営業利益率(ROS)」、「自己資本利益率(ROE)」及び「配当性向」を重点指標として位置付けております。当連結会計年度における「売上高」は1,231億9千7百万円(前連結会計年度比14.3%増)、「売上高営業利益率(ROS)」は4.7%(前連結会計年度比0.8ポイント好転)、「自己資本利益率(ROE)」は7.5%(前連結会計年度比2.9ポイント好転)、「配当性向」は40.3%(前連結会計年度比8.3ポイント悪化)となりました。引き続きこれらの指標の継続的な改善に向け、取り組んでまいります。