【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績」)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末日現在において判断したものであります。
(1) 重要な会計方針および見積り当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第93条の規定により、IFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針および、将来に関する仮定および報告期間末における見積りの不確実性の要因となる事項は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表注記 3.重要な会計方針 4.重要な会計上の見積りおよび判断」に記載しております。
(2) 財政状態の状況
(単位:億円)
前連結会計年度末(2019年12月31日)
当連結会計年度末(2020年12月31日)
前連結会計年度末比増(減)
資
産
合
計
16,681
16,090
△591
資
本
合
計
6,244
6,197
△47
親会社の所有者に帰属する持分
6,215
6,167
△47
親会社所有者帰属持分比率(%)
37.3
38.3
1.0
有 利 子 負 債
7,859
6,937
△922
D/Eレシオ(倍)
1.26
1.12
△0.14
当連結会計年度末の資産合計は16,090億円で、前連結会計年度末と比べ591億円の減少となりました。これは、 主に減価償却などにより有形固定資産および無形資産が減少したことや為替相場の変動によりのれんが減少したことなどによるものであります。資本合計は 6,197億円で、前連結会計年度末と比べ47億円の減少となりました。これは、利益剰余金が増加したものの、為替相場の変動により在外営業活動体の換算差額が減少したことにより、その他の資本の構成要素が減少したことなどによるものであります。
親会社の所有者に帰属する持分は、前連結会計年度末と比べ47億円減少し、親会社所有者帰属持分比率は38.3%となりました。有利子負債は、借入金の返済による減少などにより、前連結会計年度末と比べ922億円の減少となりました。これらの結果、D/Eレシオは1.12倍となりました。
(3) 経営成績の状況当社グループは、経営者が意思決定する際に使用する社内指標(以下「Non-GAAP指標」)およびIFRSに基づく指標の双方によって、連結経営成績を開示しております。 Non-GAAP営業利益は、IFRSに基づく営業利益(以下「IFRS営業利益」)から、非経常項目やその他特定の調整項目を一定のルールに基づいて控除もしくは調整したものであります。当社グループの恒常的な経営成績を理解するために有用な情報と判断しており、当社グループはNon-GAAPベースで予想値を開示しております。具体的には、企業買収に伴い、認識した無形資産の償却額およびその他のPPA(取得原価の配分)影響額、企業買収関連費用、株式報酬費用や当社グループが控除すべきと判断する一過性の利益や損失などを控除または調整しております。 また、2019年3月にIDT社を買収完了した後、2事業本部体制に再編したことに伴い、当社グループは、2019年12月期第3四半期から開示情報について、当社グループの主要な事業内容である「自動車向け事業」、「産業・インフラ・IoT向け事業」に変更しました。なお、上記変更に伴い、当社グループがこれまで開示していた「半導体売上収益」については、開示区分を廃止しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表注記 6.事業セグメント」をご参照ください。なお、当社は、IDT社の買収およびその後のIDT社によるルネサス エレクトロニクス・アメリカ社の吸収合併を経て「One Renesas」に向け2020年1月1日以降、事業プロセスやITシステムなどの統合に着手したことを契機とし、当社グループの財政状態や経営成績をより適切に表示するために、費用計上区分の見直しを実施しました。当該会計方針の変更は遡及適用され、前連結会計年度については、遡及適用後の連結財務諸表となっております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表注記 2.作成の基礎 (4) 会計方針の変更(費用計上区分の変更)」をご参照ください。(注) Non-GAAP指標の開示に際しては、米国証券取引委員会(U.S. Securities and Exchange Commission)が定める基準を参照しておりますが、同基準に完全に準拠しているものではありません。
① 当連結会計年度(2020年1月1日~2020年12月31日)の業績(Non-GAAPベース)(単位:億円)
前連結会計年度(2019年1月1日~2019年12月31日)
当連結会計年度(2020年1月1日~2020年12月31日)
前期比増(減)
Non-GAAP売上収益
7,182
7,157
△26
△0.4%
自動車
3,711
3,410
△301
△8.1%
産業・インフラ・IoT
3,297
3,636
339
10.3%
Non-GAAP営業利益(率)
925(12.9%)
1,375(19.2%)
451(6.3pts)
48.7%―
自動車
310(8.3%)
484(14.2%)
174(5.8pts)
56.1%―
産業・インフラ・IoT
591(17.9%)
897(24.7%)
306(6.8pts)
51.9%―
米ドル為替レート(円)
109
107
―
―
ユーロ為替レート(円)
123
121
―
―
(注)
1 上記表の詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表注記 6.事業セグメ
ント」をご参照ください。
2 為替レートは、収益・費用の換算に用いた各月のレートを平均したものであります。
当連結会計年度における業績は、以下のとおりであります。
(Non-GAAP売上収益)当連結会計年度のNon-GAAP売上収益は、前連結会計年度と比べ0.4%減少し、7,157億円となりました。これは、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により自動車生産が減少し、それに伴い当社の自動車向け事業の売上収益が減少した一方で、産業・インフラ・IoT向け事業の売上収益が増加したことによるものであります。売上収益の増加は、2019年12月期にはIDT社の買収後9ヶ月分の売上収益が計上されているのに対し、2020年12月期には12ヶ月の売上収益が計上されていることに加え、インフラストラクチャー、IoT向けの売上収益が堅調に推移したことなどによるものであります。
(Non-GAAP売上総利益 (率))当連結会計年度のNon-GAAP売上総利益は3,387億円となり、前連結会計年度と比べ306億円の増加となりました。これは主に、利益率の高い産業・インフラ・IoT向け事業の増収効果や、固定費の削減効果などによるものであります。その結果、当連結会計年度のNon-GAAP売上総利益率は、47.3%となり、前連結会計年度と比べ4.4ポイントの増加となりました。
(Non-GAAP営業利益 (率))当連結会計年度のNon-GAAP営業利益は1,375億円となり、前連結会計年度と比べ451億円の増加となりました。これは、上述の理由による売上総利益の増加のほか、販売費及び一般管理費を中心とした費用効率化によるものであります。その結果、当連結会計年度のNon-GAAP営業利益率は、19.2%となり、前連結会計年度と比べ6.3ポイントの増加となりました。
当連結会計年度における各セグメントの業績は、以下のとおりであります。
<自動車向け事業>
自動車向け事業には、自動車のエンジンや車体などを制御する半導体を提供する「車載制御」と、車内外の環境を検知するセンサリングシステムや様々な情報を運転者などに伝えるIVI(in-vehicle infotainment)・インストルメントパネル等の車載情報機器に半導体を提供する「車載情報」が含まれております。当事業において、当社グループはそれぞれマイクロコントローラ、SoC(system-on-a-chip)、アナログ半導体およびパワー半導体を中心に提供しております。 当連結会計年度における自動車向け事業のNon-GAAP売上収益は、前連結会計年度と比べ8.1%減少し、3,410億円となりました。これは主に、自動車生産減少の影響を受け、「車載制御」の売上収益が減少したことによるものであります。当連結会計年度における自動車向け事業のNon-GAAP営業利益は、前連結会計年度と比べ174億円増加し484億円となりました。これは、売上収益が減少したものの、製品ミックスの改善による売上総利益率が上昇したことや販売費及び一般管理費が減少したことなどによるものであります。
<産業・インフラ・IoT向け事業>産業・インフラ・IoT向け事業には、スマート社会を支える「産業」、「インフラストラクチャー」および「IoT」が含まれております。当事業において、当社グループはそれぞれマイクロコントローラ、SoCおよびアナログ半導体を中心に提供しております。 当連結会計年度における産業・インフラ・IoT向け事業のNon-GAAP売上収益は、前連結会計年度と比べ10.3%増加し、3,636億円となりました。これは主に、2019年3月のIDT社買収に伴う増収効果に加え、データセンター向けを中心とした「インフラストラクチャー」およびリモート勤務・学習により需要の増加しているPC等OA機器向け「IoT」の増収によるものであります。当連結会計年度における産業・インフラ・IoT向け事業のNon-GAAP営業利益は、増収効果および売上総利益率改善に伴う利益増により、前連結会計年度と比べ306億円増加し、897億円となりました。
当社グループは2020年2月17日に中期の戦略および財務モデルを公表しております。当社グループでは、注力市場に経営資源を集中投下することで、Long-term targetとして市場を上回る売上成長率を実現し、生産効率の最適化、製品ミックスの改善およびIDT社の統合シナジーの発現などにより、Non-GAAPベースで売上総利益率50%、売上営業利益率20%以上とすることを目標に掲げております。なお、中期の戦略および財務モデルで各目標は、提出日現在における当社グループの長期的な経営目標であり、その達成を保証するものではなく、「2 事業等のリスク」に記載された事項を含む多くのリスク要因その他外部環境等の変化により、その結果が左右される可能性があります。
② Non-GAAP営業利益からIFRS営業利益への調整
(単位:億円)
前連結会計年度(2019年1月1日~
2019年12月31日)
当連結会計年度(2020年1月1日~
2020年12月31日)
Non-GAAP売上総利益(率)
3,081(42.9%)
3,387(47.3%)
無形資産および固定資産償却費
△17
△15
株式報酬費用
△9
△12
棚卸資産の時価評価額
△113
―
その他非経常的な項目および調整項目
6
△3
IFRS売上総利益(率)
2,948(41.0%)
3,357(46.9%)
Non-GAAP営業利益(率)
925(12.9%)
1,375(19.2%)
無形資産および固定資産償却費
△476
△555
株式報酬費用
△120
△146
棚卸資産の時価評価額
△113
―
その他非経常的な項目および調整項目
△152
△24
IFRS営業利益(率)
63(0.9%)
651(9.1%)
(注)その他非経常的な項目および調整項目には企業買収関連費用や当社グループが控除すべきと判断する一過性の利益や損失などが含まれています。
③ 当連結会計年度(2020年1月1日~2020年12月31日)の業績(IFRS基準)
(単位:億円)
前連結会計年度(2019年1月1日~
2019年12月31日)
当連結会計年度(2020年1月1日~
2020年12月31日)
前期比増(減)
売上収益
7,182
7,157
△26
△0.4%
売上総利益(率)
2,948(41.0%)
3,357(46.9%)
409(5.9pts)
13.9%―
営業利益(率)
63(0.9%)
651(9.1%)
589(8.2pts)
940.1%―
④ 生産、受注及び販売の状況当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品群であっても、その性能、構造、形式などは必ずしも一様ではないこと、受注生産形態をとらない製品も多いことなどから、品目ごとに生産規模、受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。このため、生産、受注および販売の状況については「第2
事業の状況 3
経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」におけるNon-GAAP売上収益のセグメントに関連付けて示しております。なお、主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
関連する報告セグメント名
前連結会計年度
当連結会計年度
金額(百万円)
比率(%)
金額(百万円)
比率(%)
㈱リョーサン
自動車および産業・インフラ・IoT
75,146
10.5
73,599
10.3
(注) 上表金額には消費税等を含んでおりません。
(4) キャッシュ・フローの状況
(単位:億円)
前連結会計年度(2019年1月1日~2019年12月31日)
当連結会計年度(2020年1月1日~2020年12月31日)
営業活動によるキャッシュ・フロー
2,020
2,239
投資活動によるキャッシュ・フロー
△7,422
△402
フリー・キャッシュ・フロー
△5,402
1,837
財務活動によるキャッシュ・フロー
5,005
△1,045
現金及び現金同等物の期首残高
1,888
1,465
現金及び現金同等物の期末残高
1,465
2,198
(営業活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは2,239億円の収入となりました。これは主として、税引前利益を652億円計上したことおよび減価償却費などの非資金損益項目を調整したことなどによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは402億円の支出となりました。これは主として、有形固定資産や無形資産の取得による支出などによるものであります。
この結果、当連結会計年度におけるフリー・キャッシュ・フローは1,837億円の収入となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、1,045億円の支出となりました。これは主として、主要取引銀行などへの借入金の返済を行ったことなどによるものであります。
(5) 流動性および資金の源泉当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保すること、および健全なバランスシートを維持することを基本方針としております。当社は、IDT社の買収に必要な資金の調達、および長期的な運転資金の確保を目的とした既存借入金の借り換えのため、2019年1月15日付で主要取引銀行である㈱三菱UFJ銀行、㈱みずほ銀行および三井住友信託銀行㈱等との間で、総額8,970億円のシンジケートローン契約を締結しました。このうち、2019年3月に6,980億円の実行可能期間付タームローンの借入を実行しました。また、2019年6月に既存のタームローンの借入を返済するとともに、1,490億円のタームローンの借入を実行しました。今後の事業展開における資金需要への対応と運転資金の確保および財務基盤の安定性向上のために、機動的な資金調達手段を確保することを目的に、2020年7月13日付で主要取引銀行との間で750億円のコミットメントラインの設定に係る契約を締結しました。なお、本契約は2021年3月2日に終了しております。 当連結会計年度末における借入金の残高は6,797億円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は2,198億円となっております。
(6) オフバランス取引当社グループは、資産効率を高めるために、特定の売上債権等の流動化を適宜行っております。当連結会計年度末における流動化残高は138億円であります。
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