【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1)経営成績の状況
当第3四半期連結累計期間におけるわが国経済は、新型コロナウイルス対策の緩和による経済活動正常化への期待とともに、インバウンド消費の再開や全国旅行支援の効果もあり、個人消費は緩やかな持ち直しの動きを見せました。しかしながら、世界的なインフレ傾向や円安の進行等を受けた諸物価の上昇が景気に与える影響が懸念された上に、日銀の大規模金融緩和政策の修正もあって、先行きに対する不透明感が強まりました。
外食業界は、経済活動の正常化が進む中で、2021年と比較して総じて回復基調を辿りましたが、人件費、食材、水光熱費等のコストの大幅な上昇が収支を悪化させるとともに、常態化している人材不足に加えて従業員の感染者増加が営業に支障を与えるなど、引き続き厳しい状況が続きました。
このような環境下において当社グループは、「快適な食空間」「心温まる接客」そして「美味しい料理」をお客様に提供するという当社の社会的使命を果たすため、QSCの向上に最優先で取り組みました。特に、「おいしい力が、未来を変える。」との2022年の当社スローガンのもと、さらなる美味しさの追求に注力いたしました。
こうした取り組みと積極的な販売促進策の相乗効果により、原材料費や水光熱費等の高騰を受けて実施した2度の価格改定後も、これまで以上に多くのお客様にご利用いただくことができました。2022年2月から同月比過去最高売上を毎月継続しており、当第3四半期連結累計期間の売上高は営業時間の短縮等のあった前年同期は勿論、コロナ前(2020年3月期第3四半期連結累計期間)をも上回って過去最高を達成することができました。
以下、当第3四半期連結累計期間における主な取り組みと成果について、2年目を迎える中期経営計画の3つの主要戦略である「営業戦略」、「店舗開発戦略」、「FC推進戦略」、及び「サステナビリティの取り組み」の4項目に沿ってご説明をいたします。
① 営業戦略
当社のスローガンである「おいしい力が、未来を変える。」との信念のもと、料理の一層の美味しさを実現するため、主要メニューと月替わりフェア商品を中心に、レシピと調理方法の見直しを行いました。王将調理道場ではこれを各店舗に展開するため、少人数での実地調理研修と大人数でのオンライン調理研修を並行して行うとともに、研修を受講した従業員が研修で学んだことを他の調理スタッフに伝授することで、全従業員が習得できるように取り組みました。
また、『美味しさのscience』と銘打って、調理技術に関する知識を習得して応用力を養い、調理に幅を持たせるための「調理技術知識研修」を新たに開講する一方、接客スキルの向上に向けた外部講師によるオンラインでの「接客対応研修」を行うなど、新たな人材育成の取り組みにも着手いたしました。
販売促進では、6月24日より「2023年版ぎょうざ倶楽部お客様感謝キャンペーン」を開始いたしました。賞品として用意したオリジナルグッズが人気を博し、今回も多くのお客様にご参加をいただくことができました。
さらに、前期は緊急事態宣言下で実施できなかった「生ビールキャンペーン」を季節毎に行って好評をいただいたほか、「生餃子スタンプキャンペーン」を実施してご家庭で焼く熱々の餃子の美味しさの訴求を図りました。
そのほか、当社のCMソングであるケツメイシさんの楽曲「一等星☆」にちなんだ「一等星☆定食」を11月16日から12月15日の期間限定で販売し、累計で約22万食を売り上げました。
以上のように、従前からの取り組みのさらなる強化に加え、常に先を見据えて新たな取り組みを行ってきたことが、厳しい外部環境にあっても、売上、利益(営業利益)ともに継続して前年を上回るという成果に結びついたと考えております。
② 店舗開発戦略
当第3四半期連結累計期間において、直営4店舗の新規出店及びFC加盟店2店舗の直営への移行を行いました。
新規出店では、2022年4月に「コトエ流山おおたかの森店」、10月に「ジョイ・ナーホ練馬高野台店」および「イオン天王町店」、11月に「藤沢弥勒寺店」をオープンいたしました。
「コトエ流山おおたかの森店」と「イオン天王町店」は、新たに開業する複合商業施設内への出店で、ともにオープン以来、家族連れの買い物客を中心に多くのお客様にご利用いただいております。さらに、「ジョイ・ナーホ練馬高野台店」は、テイクアウト&デリバリーを主体とする「ジョイ・ナーホ」の2号店となります。コロナ禍で新しい生活様式が定着し、お持ち帰り需要が堅調に推移する一方で、店内飲食もコロナ前の水準に戻ってきたことから、22席のイートインスペースも備えました。オープン以来、テイクアウト&デリバリーの売上比率は約6割となっております。また、「藤沢弥勒寺店」は、人口増加が顕著ながら大手チェーンの飲食店がなく、地元から出店の要望があがっていたエリアへの出店です。地元飲食店等との併設店舗としたことで、好立地で、かつ広い駐車場を備えることができ、集客の相乗効果も見込まれました。各店舗とも、売上は当初計画を超えて好調な出足となっております。
FC加盟店2店舗の直営への移行に関しては、5月に大阪府枚方市の楠葉店を、6月に愛知県名古屋市の神の倉店をそれぞれ直営化いたしました。ともにFCオーナーの高齢化により事業継続が困難となったものの、長年地域に密着して営業を行ってきた人気の高い店舗であり、今後も新規顧客の獲得を十分に見込めると判断いたしました。
組織の面では、2022年7月の組織改編で「店舗開発・FC契約管理部」を新設し、FCも含めて店舗展開を効率的に推進できる体制といたしました。これにより、上記のようにFC店舗から直営店舗へのスムーズな移行が可能となりました。
③ FC推進戦略
FCオーナーとのwin-winの関係構築を目標とし、FC加盟店が「王将スタンダード」を徹底して取り入れ、定着させることで、FC加盟店のQSCの向上が着実に進むように注力してまいりました。
調理に関しては、FC加盟店が直営店と同じレシピ、食材、調理方法、さらには餃子レンジ(鉄板)に統一することで、料理の品質の安定化を図りました。特に、使用食材は、ほぼ全量を当社工場からの出荷食材に限ることとしました。衛生管理に関しては、直営店と同じ衛生管理マニュアル・清掃マニュアルを導入してクレンリネスの向上に注力することで、これまで以上に快適な食空間をご提供できるように努めました。
また、販売促進においては、全店イベント実施時にFC加盟店の店頭告知を強化するなど、直営店舗と一体となった取り組みを行いました。
その他、FC加盟店のPOSデータから販売状況を確認して必要なアドバイスを行うなど、FC加盟店に対して積極的なサポートを実施いたしております。
上記施策の遂行により、個々のFC加盟店の売上は引き続き好調を持続し、当第3四半期連結累計期間における当社工場からFC加盟店に対する出荷売上は、過去最高売上を記録いたしました。
④ サステナビリティの取り組み
当社は、2021年12月13日開催の取締役会において、「サステナビリティ基本方針」と「サステナビリティビジョン」を決議し、「サステナビリティ委員会」を設置いたしました。
「サステナビリティビジョン」では、「食に困らない豊かな社会の実現」「全てのステークホルダーとの共栄」「地球環境の保全」を掲げています。
「食に困らない豊かな社会の実現」では、2021年より継続実施している全国の子ども食堂等への「お子様弁当」の無償提供を、2022年も学校の春休み、夏休み、冬休みの期間に実施いたしました。コロナ禍の長期化や物価高による影響で、回を重ねるごとにお子様弁当を希望される施設が増加し、実施後には全国の子ども食堂や子ども達から多くの喜びの声が寄せられました。これまで5回実施してまいりましたが、お子様弁当の提供数の累計は2022年12月末現在で26万7千食に上ります。
「全てのステークホルダーとの共栄」では、当社は以前より株主還元や顧客満足度の向上等に努めるとともに、それを実現する上で起点となる従業員満足度を重視し、人的資本への投資に注力してまいりました。前述の各種研修による人材育成はその一例です。また、コロナ禍の厳しい環境が続く中で好成績を収めた全従業員に十分な還元をしたいとの考えから、2022年上期賞与では、労働組合からの要求に対して、満額回答の支給(賞与テーブル100%)に加え、「特別加算金」(賞与テーブル8.5%)を上乗せ支給、さらに2022年下期賞与では10%を「生活支援加算」として上乗せ支給いたしました。その結果、一人当たりの平均賞与支給額は2022年の上期、下期と過去最高額を更新いたしました。
「地球環境の保全」では、気候変動に係るリスク及び機会が当社の事業活動や収益等に与える影響について必要なデータの収集と分析を行うTCFD提言に沿った取り組みを行い、その成果を開示いたしました(第48期有価証券報告書(2022年6月28日提出)にて 詳細を開示:https://ir.ohsho.co.jp/ir/library/securities.html)。脱炭素社会の実現に向け、その後も継続して当社事業活動がもたらすCO₂排出量の算出や削減策等の検討を進めております。
こうした取り組みの一環として、2022年7月に三井住友信託銀行株式会社をアレンジャー兼エージェントとするシンジケートローン形式の「サステナビリティ・リンク・ローン」契約を締結し、総額100億円の資金調達を行いました。本契約の KPI (Key Performance Indicator)及び SPTs (Sustainability Performance Targets)は、当社店舗が使用する2025年度におけるプラスチック量を2021年度比で15%削減するというもので、株式会社格付投資情報センター(代表取締役社長:山﨑宏)より、その合理性についてセカンドオピニオンを取得しております。SPTs 達成によって得られる金利の優遇(引下げ)相当額については、世界各地で子どもたちの貧困問題をはじめ子どもを取り巻く課題解決のために活動を行う民間・非営利の国際組織「セーブ・ザ・チルドレン」への寄付の一部とさせていただく予定です。
今後もサステナビリティを重視した経営を遂行し、当社の経営理念「お客様から褒められる店創り」を追求することで、企業価値の向上はもとより、持続可能な社会形成の実現を目指してまいります。
以上の結果、当第3四半期連結累計期間における売上高は、2022年2月から12月まで11か月連続で同月比過去最高売上を達成し、前年同期に比べて63億円(10.0%)の増収で、過去最高となる690億58百万円となりました。
営業利益は、原材料の高騰や光熱費の単価上昇等があったものの、価格改定に伴う客単価上昇や客数増加による増収効果に加え、効率的なシフト編成による人件費コントロール等により、前年同期に比べて9億13百万円(18.2%)の増益で59億34百万円となりました。
経常利益は、営業時間短縮に伴う協力金収入が減少したこと等があり、前年同期に比べて30億2百万円(29.9%)の減益で70億34百万円となりました。
親会社株主に帰属する四半期純利益は、上記理由に加え、収用補償金の減少等により、前年同期に比べて25億6百万円(35.7%)の減益で45億7百万円となりました。
当第3四半期連結累計期間の店舗展開の状況につきましては、直営店4店、FC加盟店1店の新規出店、FC加盟店2店の直営店への移行、FC加盟店7店の閉店を行っております。これにより当第3四半期連結会計期間末店舗数は、直営店542店、FC加盟店190店となりました。
(2)財政状態の状況
(資産の部)
当第3四半期連結会計期間末における総資産の残高は、前連結会計年度末に比べ80億8百万円(9.0%)減少し、813億97百万円となりました。主な増減要因は次のとおりであります。
流動資産は、前連結会計年度末に比べ68億35百万円(16.7%)減少し、340億45百万円となりました。主な要因は現金及び預金の減少等であります。
固定資産は、前連結会計年度末に比べ11億73百万円(2.4%)減少し、473億52百万円となりました。主な要因は投資有価証券の減少等であります。
(負債の部)
当第3四半期連結会計期間末における負債の残高は、前連結会計年度末に比べ96億32百万円(31.8%)減少し、206億74百万円となりました。主な増減要因は次のとおりであります。
流動負債は、前連結会計年度末に比べ139億78百万円(54.9%)減少し、114億68百万円となりました。主な要因は1年内返済予定の長期借入金の減少等であります。
固定負債は、前連結会計年度末に比べ43億46百万円(89.4%)増加し、92億6百万円となりました。主な要因はサステナビリティ・リンク・ローン契約に伴う長期借入金の増加等であります。なお、流動負債と固定負債を合わせた借入金の残高は、前連結会計年度末に比べ65億63百万円減少し、95億円となりました。
(純資産の部)
当第3四半期連結会計期間末における純資産の残高は、前連結会計年度末に比べ16億24百万円(2.7%)増加し、607億23百万円となりました。主な要因は親会社株主に帰属する四半期純利益45億7百万円による増加に対し、配当金24億43百万円の支払いによる減少等であります。以上の結果、自己資本比率は、前連結会計年度末の66.1%から74.6%となりました。
(3)キャッシュ・フローの状況
当第3四半期連結会計期間末の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ76億82百万円減少し、297億57百万円となりました。
当第3四半期連結累計期間に係る区分ごとのキャッシュ・フローの状況は以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、前年同期に比べて58億58百万円(62.1%)減少し、35億74百万円となりました。主な要因は税金等調整前四半期純利益の減少であります。
営業活動によるキャッシュ・フローの主な内訳は、税金等調整前四半期純利益67億71百万円に減価償却費19億57百万円を加えた額から法人税等の支払額51億91百万円等を減じた額であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、前年同期に比べて2億23百万円(9.0%)減少し、22億51百万円となりました。主な要因は有形固定資産の売却による収入の増加であります。
投資活動によるキャッシュ・フローの主な内訳は、有形固定資産の取得による支出23億33百万円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、前年同期に比べて3億94百万円(4.2%)減少し、90億8百万円となりました。主な要因は長期借入れによる収入の増加であります。
財務活動によるキャッシュ・フローの主な内訳は、借入金の純減少額65億63百万円による支出及び配当金の支払額24億43百万円による支出であります。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題に重要な変更はありません。
(5)研究開発活動
該当事項はありません。
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