【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中における将来に関する事項は、当四半期報告書提出日現在において判断したものであります。
(1)経営成績の分析
当第2四半期連結累計期間の世界経済は、一部の地域を除いて持ち直しの動きが見られたものの、金融引き締めの継続等を背景に総じて減速しました。米国では、インフレの高止まり懸念が根強いものの、個人消費や設備投資が底堅く、持ち直しの動きが見られました。欧州では、インフレが落ち着いてきているものの、製造業の回復の遅れや利上げが重石となり、足踏み状態が継続しました。中国では、堅調なサービス業や製造業に支えられ、景気減速に歯止めがかかりましたが、不動産投資や輸出入の低迷が続きました。我が国の経済は、世界経済の下振れが懸念されるものの、個人消費やインバウンド需要の増加により、緩やかに回復しました。
当社グループの海運業を取り巻く市況は、世界経済の減速等を背景に一部の船種では一時弱含む場面もありましたが、ケミカルタンカーと大型LPG船は高い水準で推移しました。このような状況の下、当社グループでは、既存契約の有利更改や効率配船への取り組み等により、運航採算の向上を図りました。不動産業においては、当社所有ビルが順調な稼働を継続したことから、安定した収益を確保しました。
以上に加え、為替が前年同期と比較し円安(対US$)で推移した結果、当第2四半期連結累計期間においては、売上高は675億73百万円(前年同期比4.1%減)、営業利益は88億20百万円(前年同期比15.3%減)、経常利益は103億57百万円(前年同期比12.0%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益は96億67百万円(前年同期比32.7%減)となりました。
各セグメント別の状況は次の通りです。
①外航海運業
当第2四半期連結累計期間の外航海運市況は以下の通りです。
大型原油タンカー市況は、OPECプラスの協調減産継続及び中国経済回復の遅れの影響により総じて軟化傾向となりました。
ケミカルタンカー市況は、引き続き高い水準にはあるものの、期初から夏場までは世界的な景気後退懸念や中国経済回復の遅れ等を背景に軟化傾向で推移しましたが、その後、アジア域での悪天候等により船腹需給が引き締まったことに加え、競合するプロダクトタンカーの市況回復により、概ね安定的に推移しました。
大型ガス船のうち、LPG船市況は安定した荷動きに支えられ概ね堅調に推移しました。特に8月後半以降は、北米から極東向けの長距離輸送が増加したことで、中東域を中心に船腹需給が引き締まり運賃が急上昇し、昨年度記録した過去最高水準を大幅に更新しました。LNG船市況は、欧州における天然ガスの十分な在庫等の影響により需要減少が見られたものの、冬場の需要期に備えた船腹調達の動きが9月中旬より活発化し、当第2四半期連結会計期間末に向け上昇しました。
ドライバルク船市況は、中国経済の回復遅れ等による荷動きの低迷で下落しましたが、夏場以降、石炭や穀物輸送の増加に加え、パナマ運河での滞船を背景に回復に転じました。
なお、当第2四半期連結累計期間における当社グループの平均為替レートは¥139.93/US$(前年同期は¥131.56/US$)、平均船舶燃料油価格(適合燃料油)はUS$597/MT(前年同期はUS$910/MT)となりました。
このような事業環境の下、当社グループの外航海運業の概況は以下の通りとなりました。
大型原油タンカーにおいては、一部船腹で入渠工事を実施しましたが、支配船腹を長期契約に継続投入し、業績の下支えに貢献しました。
ケミカルタンカーにおいては、当社の基幹航路である中東域から欧州及びアジア向けをはじめとする安定的な数量輸送契約に加え、スポット貨物を積極的に取り込んだことで、当初の予想を上回る運航採算を確保しました。
大型ガス船においては、LPG船・LNG船共に、既存の中長期契約を中心に安定収益を確保したことに加え、一部船舶が好市況を享受しました。
ドライバルク船においては、専用船が順調に稼働し安定収益確保に貢献しました。ポストパナマックス型及びハンディ型を中心とする不定期船隊では、一部で市況軟化の影響を受けたものの、契約貨物への投入を中心に効率的な配船と運航に努め、当初の予想を若干上回る運航採算を確保しました。
以上の結果、外航海運業の売上高は561億55百万円(前年同期比4.5%減)、営業利益は69億59百万円(前年同期比13.9%減)となりました。
②内航・近海海運業 当第2四半期連結累計期間の内航・近海海運市況は以下の通りです。
内航ガス輸送の市況は、複数プラントの定期修繕実施や、例年より早く不需要期入りしたこと、慢性的な内需の冷え込みにより荷動きは低迷しましたが、内航海運業法等の改正に伴う船員労働時間の規制により、船腹需給は引き締められ、堅調に推移しました。
近海ガス輸送の市況は、中国経済の回復鈍化により、プロピレンや塩化ビニルモノマーの輸送需要が低迷した影響はあったものの、LPGの安定した海上輸送需要に加え、新造船の竣工が限定的であったため、当社の主力とするアジア域市況では引き続き堅調に推移しました。
このような事業環境の下、当社グループの内航・近海海運業は、既存契約を中心に効率配船に取り組みましたが、当第2四半期連結会計期間に運航船の入渠による修繕工事が重なり、損益を圧迫しました。
以上の結果、内航・近海海運業の売上高は49億58百万円(前年同期比6.9%減)、営業損失は59百万円(前年同期は営業利益2億46百万円)となりました。
③不動産業 当第2四半期連結累計期間の不動産市況は以下の通りです。
都心のオフィスビル賃貸市況は、大企業を中心とするリモートワークの浸透によるオフィス需要減少に伴う賃料の下落が続き、空室率も依然として6%台と高い水準で推移しましたが、新築大型ビルへの拡張、集約移転を要因とする市況回復の兆しも見え始めました。
貸ホール・貸会議室においては、先行して需要の回復が見られていた文化系催事に続き、ビジネス系催事においても、需要の持ち直しの動きが顕著となりました。
不動産関連事業のスタジオ事業においては、企業の広告宣伝活動を中心に堅調に推移しました。
英国ロンドンのオフィスビル賃貸市場においては、オフィスへの回帰を促進するため質の高いビルを中心に需要は回復傾向であるものの、需要を上回る新規供給が見られ空室率は上昇しました。
このような事業環境の下、当社グループの不動産業の概況は以下の通りとなりました。
当社所有ビルにおいては、オフィスフロアが順調な稼働を継続し、安定した収益を維持しました。
商業フロアにおいては、一部空室を残しているものの、飲食テナントを中心に売上の回復傾向が見られました。
当社グループのイイノホール&カンファレンスセンターにおいては、需要の回復に伴い稼働は改善に向かいました。
スタジオ事業を運営する㈱イイノ・メディアプロにおいては、主力のスタジオ部門で稼働が堅調に推移しました。
英国ロンドンのオフィスビル賃貸事業においては、オフィスフロア・商業フロア共に順調に稼働し、収益を維持しました。
以上の結果、不動産業の売上高は65億6百万円(前年同期比1.5%増)、営業利益は19億19百万円(前年同期比7.9%減)となりました。
(2)財政状態の分析
①資産、負債及び純資産の状況
当第2四半期連結会計期間末の総資産残高は前連結会計年度末に比べ168億86百万円増加し、2,823億39百万円となりました。これは主に船舶の竣工によるものです。負債残高は前連結会計年度末に比べ45億3百万円増加し、1,593億69百万円となりました。これは主に船舶の竣工に伴う設備資金の借入によるものです。純資産残高は前連結会計年度末に比べ123億83百万円増加し、1,229億70百万円となりました。これは主に利益剰余金の増加によるものです。
②キャッシュ・フローの状況
当第2四半期連結累計期間の「営業活動によるキャッシュ・フロー」は、129億98百万円のプラス(前年同期は156億66百万円のプラス)となりました。これは主に税金等調整前四半期純利益103億95百万円を計上したことによるものです。
「投資活動によるキャッシュ・フロー」は、89億39百万円のマイナス(前年同期は32億37百万円のマイナス)となりました。これは主に船舶への設備投資を中心とした固定資産の取得による支出70億57百万円によるものです。
「財務活動によるキャッシュ・フロー」は14億99百万円のマイナス(前年同期は71億円のマイナス)となりました。これは主に配当金の支払いが長短借入金の純増額を上回ったことによるものです。
以上の結果、「現金及び現金同等物の四半期末残高」は、189億78百万円(前年同期は180億66百万円)となりました。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第2四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
(4)当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針
当第2四半期連結累計期間において、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針に重要な変更はありません。
(5)研究開発活動
記載すべき事項はありません。