【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績の分析
当第1四半期連結累計期間の世界経済は、一部の地域を除いて持ち直しの動きが見られたものの、インフレの高進や世界的な金融引き締めの加速により減速感が強まりました。
米国では、個人消費や雇用が底堅く、景気は緩やかに回復しているものの、インフレや金利上昇により景気減速懸念が強まりました。欧州では、インフレや利上げによる消費者心理の悪化が重石となり、景気は足踏み状態が継続しました。中国では、ゼロコロナ政策解除により消費が底堅く、サービス業を中心に持ち直しの動きが見られましたが、不動産投資の大幅な減少等を背景に、景気減速の動きが強まりました。我が国の経済は、海外景気の下振れが下押しのリスクとなっているものの、雇用・所得環境の改善やインバウンド需要の増加により、緩やかに回復しました。
当社グループの海運業を取り巻く市況は、引き続きロシア・ウクライナ情勢に起因する海上物流の変化等影響を受け、ケミカルタンカーと大型LPG船は高い水準で推移しました。その他船種は、世界経済の減速等を背景に軟調に推移しました。このような状況の下、当社グループでは、既存契約の有利更改や効率配船への取り組み等により、運航採算の向上を図りました。不動産業においては、当社所有ビルが順調な稼働を継続したことから、安定した収益を確保しました。
以上の結果、当第1四半期連結累計期間においては、売上高は327億98百万円(前年同期比2.3%減)、営業利益は37億76百万円(前年同期比10.2%減)、経常利益は50億44百万円(前年同期比0.1%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益は47億46百万円(前年同期比7.3%減)となりました。
各セグメント別の状況は次の通りです。
①外航海運業
当第1四半期連結累計期間の外航海運市況は以下の通りです。
大型原油タンカー市況は、中国経済回復の遅れ、OPECプラスの協調減産延長及び不需要期入りの影響により総じて軟化傾向となりました。
ケミカルタンカー市況は、引き続き高い水準にはあるものの、足元の世界的な景気後退懸念や、中国経済回復の遅れ等を背景に、軟化傾向で推移しました。
大型ガス船のうち、LPG船市況は、安定した荷動きに支えられ概ね堅調に推移し、特に5月以降は中東積みの船腹需給が引き締まり急上昇を見せました。LNG船市況は、欧米における十分な在庫やアジア域での需要低迷を受け低調に推移しましたが、6月には夏場のエネルギー需要期に向け若干の回復傾向が見られました。
ドライバルク船市況は、期初においては、中国における粗鋼生産量の回復や、ゼロコロナ政策の変更を背景に回復傾向にありましたが、高インフレや金融引き締めによる主要国の経済が減速したこと、また中国経済の回復が遅れたことで市況は下落に転じ、当第1四半期連結会計期間末に向けて軟調に推移しました。
なお、当第1四半期連結累計期間における当社グループの平均為替レートは¥135.81/US$(前年同期は¥126.49/US$)、平均船舶燃料油価格(適合燃料油)はUS$601/MT(前年同期はUS$840/MT)となりました。
このような事業環境の下、当社グループの外航海運業の概況は以下の通りとなりました。
大型原油タンカーにおいては、一部船腹で入渠工事を実施しましたが、支配船腹を長期契約に継続投入し、業績の下支えに貢献しました。
ケミカルタンカーにおいては、当社の基幹航路である中東域から欧州及びアジア向けをはじめとする安定的な数量輸送契約に加え、スポット貨物を積極的に取り込んだことで、当初の予想を上回る運航採算を確保しました。
大型ガス船においては、LPG・LNG船共に、既存の中長期契約を中心に安定収益を確保したことに加え、一部船舶が好市況を享受しました。
ドライバルク船においては、専用船が順調に稼働し安定収益確保に貢献しました。ポストパナマックス型及びハンディ型を中心とする不定期船隊では、一部で市況軟化の影響を受けたものの、契約貨物への投入を中心に効率的な配船と運航に努め、当初の予想を若干上回る運航採算を確保しました。
以上の結果、外航海運業の売上高は271億55百万円(前年同期比2.5%減)、営業利益は27億62百万円(前年同期比13.3%減)となりました。
②内航・近海海運業
当第1四半期連結累計期間の内航・近海海運市況は以下の通りです。
内航ガス輸送の市況は、複数プラントの定期修繕実施や、例年より早く不需要期入りしたことにより荷動きは低迷しましたが、内航海運業法等の改正に伴う船員労働時間の規制により、船腹需給は引き締められ、堅調に推移しました。
近海ガス輸送の市況は、中国経済の回復鈍化により、プロピレンや塩化ビニルモノマーの輸送需要が低迷した影響はあったものの、LPGの安定した海上輸送需要に加え、新造船の竣工が限定的であったため、当社が主力とするアジア域市況では引き続き堅調に推移しました。
このような事業環境の下、当社グループの内航・近海海運業は、既存契約を中心に効率配船に取り組み、安定収益を確保しました。
以上の結果、内航・近海海運業の売上高は24億34百万円(前年同期比6.5%減)、営業利益は61百万円(前年同期比93.1%増)となりました。
③不動産業
当第1四半期連結累計期間の不動産市況は以下の通りです。
都心のオフィスビル賃貸市況は、大企業を中心とするリモートワークの浸透によるオフィス需要減少に伴う賃料の下落が続き、空室率も依然として6%台と高い水準で推移しましたが、新築大型ビルへの拡張、集約移転を要因とする市況回復の兆しも見え始めました。
貸ホール・貸会議室においては、先行して需要の回復がみられていた文化系催事に続き、ビジネス系催事においても、需要の持ち直しの動きが顕著となりました。
不動産関連事業のスタジオ事業においては、感染症対策の緩和に伴い、企業の広告宣伝活動も活発化していることから、需要は回復傾向となりました。
英国ロンドンのオフィスビル賃貸市場においては、オフィスへの回帰を促進するため質の高いビルを中心に需要は回復傾向であるものの、需要を上回る新規供給がみられ空室率は上昇しました。
このような事業環境の下、当社グループの不動産業の概況は以下の通りとなりました。
当社所有ビルにおいては、オフィスフロアが順調な稼働を継続し、安定した収益を維持しました。
商業フロアにおいては、一部空室を残しているものの、飲食テナントを中心に売上の回復傾向が見られました。
当社グループのイイノホール&カンファレンスセンターにおいては、需要の回復に伴い稼働は改善に向かいました。
スタジオ事業を運営する㈱イイノ・メディアプロにおいては、主力のスタジオ部門に関して感染症流行以前の水準まで稼働が回復しました。
英国ロンドンのオフィスビル賃貸事業においては、オフィスフロア・商業フロア共に順調に稼働し、収益を維持しました。
以上の結果、不動産業の売上高は32億32百万円(前年同期比2.6%増)、営業利益は9億54百万円(前年同期比3.5%減)となりました。
(2)財政状態の分析
当第1四半期連結会計期間末の総資産残高は前連結会計年度末に比べ104億74百万円増加し、2,759億27百万円となりました。これは主に船舶の竣工によるものです。負債残高は前連結会計年度末に比べ68億87百万円増加し、1,617億53百万円となりました。これは主に船舶の竣工に伴う設備資金の借入によるものです。純資産残高は前連結会計年度末に比べ35億87百万円増加し、1,141億74百万円となりました。これは主に利益剰余金の増加や、繰延ヘッジ損益の増加によるものです。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第1四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
(4)当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針
当第1四半期連結累計期間において、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針に重要な変更はありません。
(5)研究開発活動
記載すべき事項はありません。