【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中における将来に関する事項は、当四半期報告書提出日現在において判断したものであります。
(1)経営成績の分析
当第3四半期連結累計期間の世界経済は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19。以下、「感染症」という。)の影響から回復傾向を辿ってきた一方で、ロシア・ウクライナ情勢に起因する高インフレや金融引き締めを背景に、景気回復のペースは鈍化しました。
米国では、個人消費や雇用等一部では底堅い動きがみられたものの、高インフレや急激な利上げにより、景気は減速しました。欧州では、景気を支えてきたサービス消費の回復が一巡したほか、高インフレの長期化や利上げ等が景気の下押し圧力となりました。中国では、上海等での6月のロックダウン解除後に持ち直しの動きはみられたものの、感染症の再拡大や固定資産投資の低迷等により、依然として厳しい状況が続きました。
我が国の経済は、個人消費の回復や設備投資の増加を背景に、緩やかに持ち直しの動きがみられました。
当社グループの海運業を取り巻く市況は、前期より好調であったドライバルク船においては当第3四半期末にかけて軟化しましたが、当社が主力とするケミカルタンカーや、大型ガス船においては、ウクライナ情勢に起因する海上物流の変化等から高い水準で推移しました。このような状況の下、当社グループでは、既存契約の有利更改や効率配船への取り組み等により、運航採算の向上を図りました。不動産業においては、当社所有ビルの商業フロアの営業等で感染症の影響を受けましたが、オフィスフロアは順調な稼働を継続したことから、全体としては安定した収益を確保しました。
以上に加え、為替が前年同期と比較し円安(対US$)で推移した結果、当第3四半期連結累計期間においては、売上高は1,083億47百万円(前年同期比42.5%増)、営業利益は167億22百万円(前年同期比262.2%増)、経常利益は168億30百万円(前年同期比222.2%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益は192億64百万円(前年同期比131.6%増)となりました。
各セグメント別の状況は次の通りです。
①外航海運業 当第3四半期連結累計期間の外航海運市況は以下の通りです。
大型原油タンカー市況は、ロシア産原油の代替として中東、米国及び西アフリカから欧州等への輸送需要が増加したことに加え、冬季需要も重なり上昇しましたが、中国経済の回復の遅れや、EUによるロシア産原油の禁輸措置発動等から、当第3四半期末にかけて再び軟化傾向となりました。
ケミカルタンカー市況は、競合するプロダクトタンカーが同市況の上昇を受けケミカルタンカー市場から退出したことに加え、ウクライナ情勢に起因するアジア、米国及び中東から欧州への旺盛な輸送需要を背景に船腹需給が引き締まり、高い水準で推移しました。
大型ガス船のうち、LPG船市況は、夏場の不需要期に一時弱含みましたが、その後は北米及び中東からの堅調な輸出や、アジア向け需要の回復、パナマ運河での滞船増加による船腹需給の引き締まり等を背景に好調に推移し、特に10月以降は歴史的な高水準となりました。LNG船市況は、ウクライナ情勢により欧州へのLNG輸送需要が増加したことや、冬場の需要期に備えた船腹確保の動きが9月以降活発化したことにより、秋口には高騰し、当第3四半期末にかけても高い水準で推移しました。
ドライバルク船市況は、ウクライナ情勢による海上物流の変化を受け当初は堅調に推移しましたが、夏場以降は高インフレや利上げ等による世界的な経済活動の減速や、ゼロコロナ政策を継続した中国経済の回復の遅れを背景に荷動きが大きく減少し、当期初と比べ大幅に軟化しました。
なお、当第3四半期連結累計期間における当社グループの平均為替レートは¥135.70/US$(前年同期は¥110.97/US$)、船舶燃料油価格については適合燃料油の平均価格はUS$854/MT(前年同期はUS$531/MT)となりました。
このような事業環境の下、当社グループの外航海運業の概況は以下の通りとなりました。
大型原油タンカーにおいては、支配船腹を長期契約に継続投入し、安定収益を確保しました。
ケミカルタンカーにおいては、当社の基幹航路である中東域から欧州及びアジア向けをはじめとする安定的な数量輸送契約に加え、アジア出しのスポット貨物を積極的に取り込んだことで、運航採算は大きく向上しました。
大型ガス船においては、LPG・LNG船共に、既存の中長期契約を中心に安定収益を確保したことに加え、一部船舶が好市況を享受しました。
ドライバルク船においては、専用船が順調に稼働し安定収益確保に貢献しました。ポストパナマックス型及びハンディ型を中心とする不定期船においても、契約貨物への投入を中心に効率的な配船と運航に努め、夏場以降の市況下落の影響を受けながらも、運航採算は当初の予想を上回る水準で推移しました。
以上の結果、外航海運業の売上高は907億13百万円(前年同期比50.7%増)、営業利益は130億65百万円(前年同期比1,171.3%増)となりました。
②内航・近海海運業
当第3四半期連結累計期間の内航・近海海運市況は以下の通りです。
内航ガス輸送の市況は、プラントの定期修繕等による石油化学ガスの出荷量減少の影響を受けましたが、産業用LPGのプラント間の転送需要は堅調であり、民生用LPGにおいても、経済活動の回復により外食及び観光産業需要が増加したことや、冬場のエネルギー需要期に入ったこともあり、全体としては概ね堅調に推移しました。
近海ガス輸送の市況は、中国経済の鈍化を受け、夏場以降プロピレンや塩化ビニルモノマーの輸送需要が減少した影響はあったものの、全体的には新造船の竣工が限定的であることや、安定的なLPG輸送需要等を背景に、当社が主力とするアジア域では堅調に推移しました。
このような事業環境の下、当社グループの内航・近海海運業の概況は以下の通りとなりました。
内航ガス輸送においては、プラントの定期修繕等による石油化学ガスの出荷量減少の影響を受けましたが、安定的な売上確保と効率配船に取り組みました。
近海ガス輸送においては、既存契約を中心に安定的な収入を確保しました。
以上の結果、内航・近海海運業の売上高は80億36百万円(前年同期比16.1%増)、営業利益は5億59百万円(前年同期比45.4%増)となりました。
③不動産業 当第3四半期連結累計期間の不動産市況は以下の通りです。
都心のオフィスビル賃貸市場においては、事務所集約移転等の新規の需要もみられるようになりましたが、大企業を中心とするリモートワークの促進によるオフィス解約の動きに伴い賃料の低迷が続き、空室率も依然として6%台と高い水準で推移しました。
貸ホール・貸会議室においては、先行して需要の回復がみられていた文化系催事に続き、ビジネス系催事においても、依然として感染症への警戒は根強いものの、需要の持ち直しの動きが顕著となりました。
不動産関連事業のフォトスタジオ事業においては、感染症の影響は継続したものの、撮影需要には改善がみられるようになりました。
英国ロンドンのオフィスビル賃貸市場においては、感染症対策のための各種規制が解除されたこと等を背景にオフィス需要は回復傾向にありますが、需要を上回る新規供給がみられ空室率は上昇しました。
このような事業環境の下、当社グループの不動産業の概況は以下の通りとなりました。
当社所有ビルにおいては、オフィスフロアが堅調な稼働を継続し、安定した収益を維持しました。商業フロアにおいては、感染症の影響を受けたものの、一部空室を解消することができました。
当社グループのイイノホール&カンファレンスセンターにおいては、文化系催事の需要が回復し、ビジネス系催事においても、配信や収録を利用したイベントに加え、対面式イベント需要の回復もみられ、稼働は改善に向かいました。
フォトスタジオ事業を運営する㈱イイノ・メディアプロにおいては、主力のスタジオ部門等で案件を獲得し、稼働は改善傾向となりました。
英国ロンドンのオフィスビル賃貸事業においては、オフィスフロア・商業フロア共に順調に稼働し、収益を維持しました。
以上の結果、不動産業の売上高は96億63百万円(前年同期比6.5%増)、営業利益は30億98百万円(前年同期比3.3%減)となりました。
(2)財政状態の分析
当第3四半期連結会計期間末の総資産残高は前連結会計年度末に比べ160億57百万円増加し、2,631億87百万円となりました。これは主に現金及び預金の増加と船舶の竣工によるものです。負債残高は前連結会計年度末に比べ4億54百万円減少し、1,553億43百万円となりました。これは主に短期借入金の返済によるものです。純資産残高は前連結会計年度末に比べ165億11百万円増加し、1,078億44百万円となりました。これは主に利益剰余金の増加によるものです。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
(4)当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針
当第3四半期連結累計期間において、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針に重要な変更はありません。
(5)研究開発活動
記載すべき事項はありません。