【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中における将来に関する事項は、当四半期報告書提出日現在において判断したものであります。
(1)経営成績の分析
当第2四半期連結累計期間の世界経済は、一部地域を除き新型コロナウイルス感染症(COVID-19。以下、「感染症」という。)による行動制限が緩和されたことを背景に緩やかな回復が継続したものの、世界的なインフレの進行や金融引き締めにより景気後退のリスクが高まりました。
米国では、雇用等一部に底堅い動きがみられるものの、高インフレを背景に景気は減速しました。欧州では、当初景気は拡大基調であったものの、ロシア・ウクライナ情勢に起因するインフレの加速や金利の上昇が景気回復の下押し圧力となりました。中国では、感染症の再拡大や、猛暑による電力不足の影響から一部地域において生産活動が停滞し、経済成長は鈍化しました。
我が国の経済は、物価上昇や感染症の再拡大による下振れが懸念される中、サービス業を中心に緩やかに持ち直しました。
当社グループの海運業を取り巻く市況は、ケミカルタンカーや大型ガス船においては、ウクライナ情勢に起因する海上物流の変化等から高い水準で推移しました。一方、前期より好調であったドライバルク船市況は、依然として高水準ではあるものの、当第2四半期末にかけて軟化基調となりました。このような状況の下、当社グループでは、既存契約の有利更改や効率配船への取り組み等により、運航採算の向上を図りました。不動産業においては、当社所有ビルの商業フロアの営業等で感染症の影響を受けましたが、オフィスフロアは順調な稼働を継続したことから、全体としては安定した収益を確保しました。
以上に加え、為替が前年同期と比較し円安(対US$)で推移した結果、当第2四半期連結累計期間においては、売上高は704億74百万円(前年同期比43.9%増)、営業利益は104億82百万円(前年同期比475.6%増)、経常利益は118億35百万円(前年同期比668.3%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益は144億21百万円(前年同期比246.1%増)となりました。
各セグメント別の状況は次の通りです。
①外航海運業 当第2四半期連結累計期間の外航海運市況は以下の通りです。
大型原油タンカー市況は、当初低調に推移しておりましたが、ロシア産原油の代替として中東、米国及び西アフリカから欧州等への輸送需要が増加したことに加え、OPECプラスの協調減産縮小の影響もあり、7月以降は上昇基調となりました。
ケミカルタンカー市況は、競合するプロダクトタンカーが同市況の上昇を受けケミカルタンカー市場から退出したことに加え、ウクライナ情勢に起因するアジア、米国及び中東から欧州への旺盛な輸送需要を背景に船腹需給が引き締まり、上昇しました。
大型ガス船のうち、LPG船市況は、夏場の需要減少により一時弱含みましたが、中国PDHプラントの定期修繕完了等によるアジア向け需要の回復や、北米産LPGの輸出量の増加、パナマでの滞船による船腹需給の引き締まり等を背景に、堅調に推移しました。LNG船市況は、ウクライナ情勢により欧州へのLNG輸送需要が増加したことや、冬場の需要期に備えた船腹確保の動きが9月以降活発化したことにより、高い水準で推移しました。
ドライバルク船市況は、ウクライナ情勢による海上物流の変化を受け当初は堅調でしたが、米国をはじめとした金融政策による経済活動の減速や、ゼロコロナ政策を継続する中国発着荷動きの減少等により、依然として高い水準にはあるものの、総じて軟化傾向で推移しました。
なお、当第2四半期連結累計期間における当社グループの平均為替レートは¥131.56/US$(前年同期は¥109.90/US$)、船舶燃料油価格については適合燃料油の平均価格はUS$910/MT(前年同期はUS$514/MT)となりました。
このような事業環境の下、当社グループの外航海運業の概況は以下の通りとなりました。
大型原油タンカーにおいては、支配船腹を長期契約に継続投入し、安定収益を確保しました。また、経営資源の有効活用及び資産効率向上のため、大型原油タンカー1隻を売却しました。
ケミカルタンカーにおいては、当社の基幹航路である中東域から欧州及びアジア向けをはじめとする安定的な数量輸送契約に加え、アジア出しのスポット貨物を積極的に取り込んだことで、運航採算は大きく向上しました。
大型ガス船においては、LPG・LNG船共に、既存の中長期契約を中心に安定収益を確保したことに加え、一部船舶が好市況を享受しました。
ドライバルク船においては、専用船が順調に稼働し安定収益確保に貢献しました。ポストパナマックス型及びハンディ型を中心とする不定期船においても、契約貨物への投入を中心に効率的な配船と運航に努めた他、一部では好市況を享受したことで、運航採算は当初の予想を上回る水準で推移しました。また、当第2四半期においてスモールハンディ型1隻の新造用船を開始しました。
以上の結果、外航海運業の売上高は587億85百万円(前年同期比51.6%増)、営業利益は81億53百万円(前年同期の営業損失は2億71百万円)となりました。
②内航・近海海運業 当第2四半期連結累計期間の内航・近海海運市況は以下の通りです。
内航ガス輸送の市況は、当第2四半期において複数プラントで定期修繕が実施されたことによる石油化学ガスの一時的な出荷量減少の影響があったものの、全体としては産業用LPGの安定的なプラント間輸送需要に支えられ、概ね堅調に推移しました。一方、民生用LPGにおいては、7月以降の感染症再拡大による観光需要低下に加え、季節的要因も影響し、輸送需要は低調に推移しました。
近海ガス輸送の市況は、ゼロコロナ政策により8月以降中国への塩化ビニルモノマーの輸送需要が減少した影響があったものの、全体的には新造船の竣工が限定的であることや、安定的なLPG輸送需要等を背景に、当社が主力とするアジア域では堅調に推移しました。
このような事業環境の下、当社グループの内航・近海海運業の概況は以下の通りとなりました。
内航ガス輸送においては、民生用LPGの輸送量減少の影響を受けましたが、中長期契約に基づく安定的な収益確保と効率配船に取り組みました。
近海ガス輸送においては、中長期契約を中心に安定的な収入を確保しました。
以上の結果、内航・近海海運業の売上高は53億25百万円(前年同期比18.1%増)、営業利益は2億46百万円(前年同期比128.3%増)となりました。
③不動産業 当第2四半期連結累計期間の不動産市況は以下の通りです。
都心のオフィスビル賃貸市場においては、事務所集約移転等の新規の需要も見られるようになりましたが、大企業を中心とするリモートワークの促進によるオフィス解約の動きに伴い賃料の低迷が続き、空室率も依然として6%台と高い水準で推移しました。
貸ホール・貸会議室においては、イベント開催制限が緩和される中で、文化系催事を中心に需要の回復は見られたものの、ビジネス系催事の動きは鈍く、全体として低調に推移しました。
不動産関連事業のフォトスタジオ事業においては、感染症の影響により撮影需要は依然として低調なまま推移しました。
英国ロンドンのオフィスビル賃貸市場においては、英国政府による感染症対策のための各種規制が完全に解除されたこと等を背景に、オフィス需要は回復傾向となり、空室率の改善が見られました。
このような事業環境の下、当社グループの不動産業の概況は以下の通りとなりました。
当社所有ビルにおいては、オフィスフロアが概ね堅調な稼働を継続し、安定した収益を維持することができました。商業フロアにおいては、感染症の影響を受けたものの、一部空室を解消することができました。
当社グループのイイノホール&カンファレンスセンターにおいては、イベント開催制限が緩和されたことにより文化系催事需要が回復し、ビジネス系催事においても配信や収録を利用したイベントが増加傾向となり、稼働は改善に向かいました。
フォトスタジオ事業を運営する㈱イイノ・メディアプロにおいては、撮影需要が低調な中でも主力のスタジオ部門等で案件を獲得し、稼働は改善傾向となりました。
英国ロンドンのオフィスビル賃貸事業においては、オフィスフロア・商業フロア共に順調に稼働し、収益を維持することができました。
以上の結果、不動産業の売上高は64億8百万円(前年同期比10.0%増)、営業利益は20億84百万円(前年同期比5.0%増)となりました。
(2)財政状態の分析
①資産、負債及び純資産の状況
当第2四半期連結会計期間末の総資産残高は前連結会計年度末に比べ158億22百万円増加し、2,629億52百万円となりました。これは主に現金及び預金の増加と船舶の竣工によるものです。負債残高は前連結会計年度末に比べ11億81百万円増加し、1,569億78百万円となりました。これは主に船舶の竣工に伴う設備資金の借入によるものです。純資産残高は前連結会計年度末に比べ146億41百万円増加し、1,059億74百万円となりました。これは主に利益剰余金の増加によるものです。
②キャッシュ・フローの状況
当第2四半期連結累計期間の「営業活動によるキャッシュ・フロー」は、156億66百万円のプラス(前年同期は46億45百万円のプラス)となりました。これは主に税金等調整前四半期純利益156億2百万円を計上したことによるものです。
「投資活動によるキャッシュ・フロー」は、32億37百万円のマイナス(前年同期は8億41百万円のマイナス)となりました。これは主に船舶への設備投資を中心とした固定資産の取得による支出が、船舶や不動産を中心とした固定資産の売却による収入を上回ったことによるものです。
「財務活動によるキャッシュ・フロー」は71億円のマイナス(前年同期は51億68百万円のマイナス)となりました。これは主に配当金の支払いや、長期借入金の返済等によるものです。
以上の結果、「現金及び現金同等物の四半期末残高」は、180億66百万円(前年同期は121億11百万円)となりました。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第2四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
(4)当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針
当第2四半期連結累計期間において、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針に重要な変更はありません。
(5)研究開発活動
記載すべき事項はありません。