【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1) 財政状態及び経営成績の状況当第3四半期連結累計期間(以下、当四半期累計期間)における世界経済は、新型コロナウイルス感染症の影響から持ち直しの動きが続く一方、地政学リスクの高まり等による先行きの不透明感が継続し、物価上昇やそれに伴う金融引締めの影響により景気の下押しが懸念されるなかで推移しました。米国においては急速な利上げで住宅投資が落ち込んでいるものの、個人消費は持ち直しの動きがみられました。欧州においてはウクライナ情勢が長期化するなかで、資源価格の高止まりや高インフレが継続することで個人消費が低迷しております。中国においては感染再拡大により個人消費が下押しされ、また米欧経済の減速、活動制限による工場稼働率の低下を受け、輸出の伸びは低下しております。アジア新興国においては、経済活動の正常化により景気は持ち直しの動きが続きました。日本経済は、日米の金融政策の違いや貿易収支の赤字拡大等により円安が継続し、また物価も上昇したものの、個人消費や設備投資の持ち直しの動きが続くなど、企業収益は総じて改善の動きがみられました。化学工業界におきましては、持ち直しの動きが続くものの、海外景気の下振れ等の影響により生産活動の持ち直しの動きに足踏みがみられます。このような状況のもと、当社グループの当四半期累計期間の売上収益は、販売数量は減少したものの、原料価格の上昇や円安の進行等により販売価格が上昇したことにより、前年同四半期連結累計期間(以下、前年同期)に比べて557億2千4百万円増収(20.7%)の3,255億3千7百万円となりました。利益面につきましては、販売数量が減少したことや、海上輸送費の高騰などにより販売費及び一般管理費が増加したことによる減益要因があったものの、原料価格よりも販売価格の上がり幅が大きくスプレッドが拡大したこと、円安の進行等による交易条件の改善、原料価格上昇による在庫評価差額の影響などが増益要因となり、営業利益は、前年同期に比べて17億4千6百万円増益(7.3%)の256億3千5百万円となりました。税引前四半期利益は、持分法による投資利益は減少したものの、営業利益の増加により、前年同期に比べて7億6千3百万円増益(2.8%)の282億7千7百万円となりました。その結果、親会社の所有者に帰属する四半期利益は、前年同期に比べて11億2百万円増益(5.7%)の204億3千9百万円となりました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。 なお、第1四半期連結会計期間より、事業セグメント及び報告セグメントを変更しており、当第3四半期連結累計期間の比較・分析は、変更後の区分に基づいております。 ①マテリアルズ事業アクリル酸及びアクリル酸エステルは、販売数量は減少したものの、原料価格の上昇などにより販売価格が上昇したことで、増収となりました。高吸水性樹脂は、販売数量は減少したものの、原料価格や製品海外市況の上昇などにより販売価格が上昇したことで、増収となりました。酸化エチレンは、原料価格の上昇に伴う販売価格の上昇や、販売数量が増加したことにより、増収となりました。エチレングリコールは、原料価格の上昇に伴い販売価格は上昇したものの、販売数量の減少などにより、減収となりました。特殊エステルは、原料価格や製品海外市況の上昇などにより販売価格は上昇したものの、販売数量が減少したことにより、減収となりました。
無水マレイン酸は、原料価格の上昇に伴う販売価格の上昇や販売数量が増加したことにより、増収となりました。樹脂改質剤は、販売数量が減少したことにより、減収となりました。プロセス触媒は、販売数量が増加したことにより、増収となりました。以上の結果、マテリアルズ事業の売上収益は、前年同期に比べて24.6%増加の2,373億3千8百万円となりました。営業利益は、海上輸送費の高騰などにより販売費及び一般管理費が増加したこと、販売数量が減少したことによる減益要因があるものの、原料価格よりも販売価格の上がり幅が大きくスプレッドが拡大したことや、原料価格上昇による在庫評価差額の影響などが増益要因となり、前年同期に比べて37.2%増加の207億9千3百万円となりました。
②ソリューションズ事業コンクリート混和剤用ポリマー及び塗料用樹脂は、販売価格が上昇したことや販売数量が増加したことにより、増収となりました。セカンダリーアルコールエトキシレート、洗剤原料などの水溶性ポリマー及びエチレンイミン誘導品は、販売数量が減少したものの、販売価格が上昇したことにより、増収となりました。ヨウ素化合物は、販売価格が上昇したことにより、増収となりました。粘着加工品は、販売数量は減少したものの、販売価格が上昇したことにより、増収となりました。リチウム電池材料及び脱硝触媒は、販売数量が増加したことにより、増収となりました。電子情報材料は、販売数量が減少したことや販売価格が下落したことにより、減収となりました。燃料電池材料は、販売価格は上昇したものの、販売数量が減少したことにより、減収となりました。以上の結果、ソリューションズ事業の売上収益は、前年同期に比べて11.2%増加の881億9千9百万円となりました。営業利益は、原料価格上昇による在庫評価差額の影響があったものの、生産・販売数量の減少、販売費及び一般管理費の増加などが減益要因となり、前年同期に比べて50.8%減少の40億2千4百万円となりました。 当第3四半期連結会計期間末における当社グループの財政状態は、次のとおりとなりました。
当第3四半期連結会計期間末における資産合計は、前連結会計年度末(以下、前年度末)に比べて245億3千3百万円増加の5,426億8千4百万円となりました。流動資産は、前年度末に比べて271億4千5百万円増加しました。現金及び現金同等物が増加したこと、原料価格の上昇などにより棚卸資産が増加したことなどによるものです。非流動資産は、前年度末に比べて26億1千2百万円減少しました。保有株式の公正価値の変動によりその他の金融資産が減少したことなどによるものです。 負債合計は、前年度末に比べて78億6千6百万円増加の1,748億9千4百万円となりました。原料価格の上昇や、当四半期連結会計期間の期末日が金融機関の休日であったことなどにより営業債務が増加したこと、借入金が増加したことなどによるものです。 資本合計は、前年度末に比べて166億6千7百万円増加の3,677億9千万円となりました。利益剰余金が増加したことなどによるものです。 親会社所有者帰属持分比率は、前年度末の66.4%から66.3%へと0.1ポイント減少しました。なお、1株当たり親会社所有者帰属持分は、前年度末に比べて488.89円増加の9,112.91円となりました。
(2) キャッシュ・フローの状況 当第3四半期連結累計期間(以下、当四半期累計期間)末における現金及び現金同等物は、営業活動によるキャッシュ・フローの収入が、設備投資等の投資活動によるキャッシュ・フローの支出及び財務活動によるキャッシュ・フローの支出を上回ったため、前連結会計年度末に比べて100億5千2百万円増加の494億1千5百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー) 営業活動によるキャッシュ・フローは、前第3四半期連結累計期間(以下、前年同期)の284億1百万円の収入に対し、当四半期累計期間は330億8千1百万円の収入となりました。原料価格上昇による影響が縮小したことにより営業債務の増加額が前年同期を下回ったものの、販売数量の減少により営業債権の増加額が前年同期を下回ったことなどにより、前年同期に比べて46億8千1百万円の収入の増加となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー) 投資活動によるキャッシュ・フローは、前年同期の172億5千3百万円の支出に対し、当四半期累計期間は169億9千6百万円の支出となりました。有形固定資産の取得による支出の増加や、投資の売却及び償還による収入の減少などがあったものの、定期預金の払戻による収入の増加などにより、前年同期に比べて2億5千7百万円の支出の減少となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー) 財務活動によるキャッシュ・フローは、前年同期の43億9千万円の支出に対し、当四半期累計期間は72億6千1百万円の支出となりました。社債の償還による支出がなくなったものの、長期借入金による調達の減少や返済の増加、配当金の支払額の増加などにより、前年同期に比べて28億7千1百万円の支出の増加となりました。
(資本の財源及び資金の流動性) 当社グループの所要資金は、主に運転資金、設備投資、戦略投資及び研究開発投資に対応するものであり、これらを自己資金、金融機関からの短期・長期借入金により賄っております。
(3) 会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当第3四半期連結累計期間において、当社グループの会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載については、「第4 経理の状況 1 要約四半期連結財務諸表 要約四半期連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載のとおりです。
(4) 研究開発活動当第3四半期連結累計期間の研究開発費の総額は114億8千6百万円であります。
当第3四半期連結累計期間における当社グループの研究開発活動の状況の重要な変更は、次の通りであります。当社は、ソリューションズ事業拡大やカーボンニュートラル実現に向けた研究開発機能の強化のため、2022年4月1日付で研究組織の変更を行いました。具体的には、事業創出本部を改編、新たにコーポレート研究本部を設置し、事業創出本部とコーポレート研究本部の2本部体制といたしました。これにより、それぞれの役割を明確にするとともに関連部門との連携により新規事業やコア技術創出に注力いたします。なお、この変更による各セグメントの研究開発費への影響は軽微であります。
(5) 生産、受注及び販売の実績
①生産実績当第3四半期連結累計期間における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
金額(百万円)
前年同期比(%)
マテリアルズ事業
232,581
21.2
ソリューションズ事業
84,482
15.3
合計
317,063
19.5
(注) 1.金額は、販売価格によっております。
2.生産実績が増加した主な要因は、国産ナフサ価格や原料価格の上昇及び為替の円安影響による販売価格の上昇があったためであります。
②受注状況当社グループは、主として見込生産を行っているため、受注実績は記載しておりません。
③販売実績当第3四半期連結累計期間における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
金額(百万円)
前年同期比(%)
マテリアルズ事業
237,338
24.6
ソリューションズ事業
88,199
11.2
合計
325,537
20.7
なお、当社グループは、第1四半期連結会計期間よりセグメント区分を変更しており、生産実績と販売実績の前年同期比については、変更後の区分に基づき作成したものを記載しております。セグメント区分の変更については、「5.セグメント情報 (1) 報告セグメントの概要」に記載しております。