【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。なお、本文中の記載金額は、億円単位の表示は億円未満四捨五入とし、百万円単位の表示は百万円未満切捨てとしております。
(1) 経営成績当連結会計年度におけるわが国経済は、ウィズコロナの下で、個人消費をはじめ緩やかに持ち直しております。当社グループを取り巻く環境としては、宇宙事業の分野では船舶・航空機向けの移動体衛星通信や多岐にわたる分野での衛星データ利活用の需要が拡大しております。また、世界レベルで新たな事業者が宇宙ビジネスに参入し、大規模な低軌道衛星通信システムプロジェクトを推進するなど、ビジネスの環境が大きく変化しております。メディア事業の分野では、動画配信サービス市場が拡大する一方で、有料放送市場でのマイナス成長や動画配信サービス市場での事業者の合従連衡の動きもみられる等、激しく市場環境が変化しております。
このような経済状況の下、当連結会計年度の当社グループの連結経営成績は次のとおりとなりました。
区分
前期(百万円)
当期(百万円)
前期比(百万円)
増減率(%)
営業収益
119,632
121,139
1,506
1.3
%
営業利益
18,862
22,324
3,461
18.3
%
経常利益
20,307
23,194
2,887
14.2
%
税金等調整前当期純利益
20,276
23,122
2,845
14.0
%
親会社株主に帰属する当期純利益
14,579
15,810
1,230
8.4
%
なお、EBITDAは前期比14億円増加し、456億円となっております。
当社グループのセグメント区分は次のとおりであります。なお、当連結会計年度よりセグメントの記載順序を変更しております。
区分
主要な事業内容
宇宙事業
衛星通信事業、放送事業者向け衛星回線提供及び宇宙関連事業
メディア事業
メディア事業及びFTTH事業
当社グループのセグメント別の概況は次のとおりであります。(経営成績については、セグメント間の内部営業収益等を含めて記載しております。)
<宇宙事業>・既存事業の強化国内衛星ビジネスにおいては、総務省が運用するC帯静止衛星監視設備の整備事業を2022年6月に受注いたしました。茨城ネットワーク管制センター内にC帯静止衛星監視設備を設置し、2024年4月より運用を開始いたします。また、2023年3月には、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構の近地球追跡ネットワークの民間事業化に伴う業務を受託いたしました。通信衛星及び回線の運用を通じて得たノウハウ、並びに衛星機器や当社グループの地上局設備を活かし、新たなサービスを展開し、宇宙利用の拡大や宇宙産業の発展に貢献してまいります。グローバル・モバイルビジネスにおいては、ハイスループット衛星JCSAT-1Cを利用し、インドネシアのデジタルデバイド地域における高速通信サービスの提供を、PT. INDO PRATAMA TELEGLOBALとのパートナーシップにより2022年4月から開始いたしました。超高速海洋ブロードバンドサービス「JSATMarine」においてもJCSAT-1Cの利用を開始しており、同じくハイスループット衛星であるHorizons 3eとともに、今後の収益拡大を見込んでおります。また、2022年7月には、フルデジタル衛星Superbird-9の打ち上げサービス調達契約をSpace Exploration Technologies Corporation(SpaceX)との間で締結いたしました。本衛星を投入することにより、市場や顧客の多様なニーズへの対応を通して、日本をはじめとする東アジア地域における一層の事業拡大と競争力強化に努めてまいります。
・新たな技術の活用や事業領域拡大への取り組み日本電信電話㈱とのビジネス協業については、「宇宙統合コンピューティング・ネットワーク」構想の実現に向け、2022年7月に合弁会社㈱Space Compassを設立いたしました。2023年1月には、地球観測市場に向けた光データリレーサービスの提供を目指し、㈱Space CompassとSkyloom Global Corporationとの間で共同事業契約を締結いたしました。新たな宇宙インフラの構築に挑戦し、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。また、2022年11月には、㈱ゼンリン、日本工営㈱と共同で、衛星データを用いて斜面やインフラの変動リスクをモニタリングするサービス「LIANA」の提供を開始いたしました。災害に対する不安の低減、安全な街づくりに貢献するとともに、ビジネスインテリジェンス分野におけるサービスの開発や販売活動を一層強化してまいります。
以上の結果、当連結会計年度の宇宙事業の経営成績は次のとおりとなりました。
前期(百万円)
当期(百万円)
前期比(百万円)
増減率(%)
営業収益
外部顧客への営業収益
52,319
55,419
3,100
5.9
%
セグメント間の内部営業収益等
7,180
6,734
△446
△6.2
%
計
59,500
62,154
2,653
4.5
%
営業利益
15,867
19,151
3,283
20.7
%
セグメント利益(親会社株主に帰属する当期純利益)
12,298
13,515
1,216
9.9
%
放送トラポン収入が減少した一方で、グローバル・モバイル分野におけるHorizons 3e等の利用拡大や円安による影響等により、営業収益は増加いたしました。これに加え、減価償却費の減少6億円及びのれん償却額の減少8億円等により、営業利益は前期比33億円増加いたしましたが、前期における連結子会社の清算に伴う税金費用の減少9億円等の影響があったため、セグメント利益は前期比12億円の増加となりました。
<メディア事業>・放送事業・配信事業2022年シーズンプロ野球では、「プロ野球セット」でセ・パ12球団の公式戦全試合を生放送・配信し、海外サッカー「ドイツ ブンデスリーガ」では、全試合を放送・配信しております。また、「スカパー!番組配信 おいでよ!スカパー!視聴料1,000円割引キャンペーン」、「スカパー!基本プラン視聴料加入翌月390円キャンペーン」及び有料配信「SPOOXバリュープラン割」等のキャンペーンを通じて加入基盤の拡大及び維持を図っております。また、放送・配信にとどまらずリアルサービスとしては、長谷部誠選手所属のアイントラハト・フランクフルトとJリーグの浦和レッズ、ガンバ大阪が対戦する「ブンデスリーガジャパンツアー2022 powered by スカパーJSAT」を2022年11月に開催し、オリジナルグッズの販売や当日の試合会場内外でのアクティベーション等、スポーツライブイベントの醍醐味をファンの皆様にお届けいたしました。なお、一部クラブのオフィシャルグッズを日本において販売しております。
・FTTH事業光ファイバーによる地上デジタル・BSデジタル等の再送信サービスでは着実に提供エリア拡大を進めており、2023年2月の福井県に続き3月には沖縄県にも提供を開始しました。この結果、2023年3月末時点における提供エリアは37都道府県にわたり、提供可能世帯数は約4,280万世帯(注)、契約世帯数は264万世帯に達しております。また、ケーブルテレビ業界の課題解決に向けた新たな方式での多チャンネルサービスとして、業界初の取り組みとなるBS/CS放送のパススルー伝送及び視聴制御を組み合わせたサービスを2022年11月から開始しており、2023年3月時点で5局での導入が決定しております。(注)世帯数算出方法のデータを固定電話加入契約者数から昨今の市場環境変化を鑑み、国勢調査世帯数に変更いたしました。(従来基準提供可能世帯数:約3,420万世帯)
・新規事業ブロックチェーン関連技術を活用したメディア・エンターテイメント業界でのweb3関連事業創出のため、2022年7月にFrame00㈱へ資本参加するとともに業務提携に関する契約を締結し、協業を開始いたしました。また当社グループが取次代理店として媒介する「スカパー!でんき」をリニューアルし、2022年8月からは太陽光発電を活用した脱炭素社会の実現に貢献する新プラン「スマ電CO2ゼロ with スカパー!」、10月からは電気代を低価格でご提供する「TERASELでんき with スカパー!」の販売を開始いたしました。
当連結会計年度における加入件数は次のとおりとなりました。
新規
解約
純増減
累計
当期
570千件
703千件
△133千件
2,875千件
前期比
△9千件
30千件
△39千件
△133千件
以上の結果、当連結会計年度のメディア事業の経営成績は次のとおりとなりました。
前期(百万円)
当期(百万円)
前期比(百万円)
増減率(%)
営業収益
外部顧客への営業収益
67,313
65,720
△1,593
△2.4
%
セグメント間の内部営業収益等
3,133
3,012
△120
△3.9
%
計
70,447
68,733
△1,714
△2.4
%
営業利益
3,740
3,863
122
3.3
%
セグメント利益(親会社株主に帰属する当期純利益)
2,749
2,779
30
1.1
%
契約世帯数の増加等によりFTTH事業収入が2億円増加した一方で、累計加入件数減少等の影響で視聴料・業務手数料・基本料収入が27億円減少したことにより、営業収益は減少いたしましたが、広告宣伝・販促費の減少9億円、コンテンツ費の減少5億円、減価償却費の減少4億円等により、営業利益及びセグメント利益は増加いたしました。
生産、受注及び販売の実績は次のとおりであります。
a. 生産実績当社及び連結子会社は、サービスの提供にあたり、製品の生産を行っていないため、生産実績について記載すべき事項はありません。
b. 受注実績当社及び連結子会社は、受注生産を行っておりませんので記載すべき事項はありません。
c. 販売実績当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度(自 2022年4月1日至 2023年3月31日)
前期比(%)
宇宙事業(百万円)
55,419
5.9
メディア事業(百万円)
65,720
△2.4
合計(百万円)
121,139
1.3
(注1) セグメント間取引については相殺消去しております。(注2) 主な相手先別の販売実績については、当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため記載を省略しております。
(2) 財政状態当連結会計年度末における資産合計は3,991億円となり、前連結会計年度末比(以下「前期比」)209億円増加いたしました。流動資産は、Xバンド事業に関する債権回収等により売掛金が24億円減少いたしましたが、現金及び現金同等物の増加220億円等により前期比225億円増加いたしました。有形固定資産及び無形固定資産は、設備投資により168億円増加いたしましたが、減価償却費212億円等により前期比46億円減少いたしました。投資その他の資産は、前期比29億円増加いたしました。主な要因は、新たに設立した持分法適用関連会社㈱Space Compassへの出資等による投資有価証券の増加37億円であります。
当連結会計年度末における負債合計は1,422億円となり、前期比72億円増加いたしました。 主な増加は前受収益83億円、未払法人税等46億円であり、主な減少は社債の償還、Xバンド事業及びHorizons 3e事業に関する借入金の返済等による有利子負債の減少118億円であります
当連結会計年度末における非支配株主持分を含めた純資産は2,568億円となり、前期比137億円増加いたしました。主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等による利益剰余金の増加106億円及び為替換算調整勘定の増加27億円であります。また、自己資本比率は前連結会計年度末と同率の64.0%となりました。
(3) キャッシュ・フロー当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益、減価償却費、のれん償却額の合計444億円に加え、売上債権の減少26億円及び前受収益の増加83億円により、576億円の収入(前期は365億円の収入)となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産及び無形固定資産の取得による支出174億円、Horizons 3e事業に関する貸付金の回収による収入32億円、関係会社株式の取得による支出30億円等により、169億円の支出(前期は77億円の支出)となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済による支出91億円、社債の償還による支出50億円、配当金支払による支出52億円等により、194億円の支出(前期は164億円の支出)となりました。以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前期比220億円増加し、1,079億円となりました。
(4) 資本の財源及び資金の流動性についての分析(財務戦略の基本的な考え方)当社グループは、グループミッション「Space for your Smile」を、持続可能な社会に向けた活動を進めるための「サステナビリティ方針」としても掲げ、社会的課題を解決すると共に、企業価値を向上させることを目指しております。このミッションの実現のため、健全な財務体質と資本効率の向上を両立させながら、基礎収益力の向上に向けた成長分野への投資を推進することを財務戦略の基本方針としています。
(資金需要の主な内容及び資金調達)
当社グループにおける主な資金需要は、事業活動上の必要な運転資金、宇宙事業における通信衛星設備等の調達やメディア事業における放送・配信設備の拡充等における設備投資資金、戦略的なM&A資金等です。これらの資金需要は、主に営業キャッシュ・フローにより賄っておりますが、必要に応じて社債発行や借入による資金調達を行っております。また、機動的な資金調達を可能とすべく400億円の社債発行登録枠を確保しております。
なお当社グループでは、一定の手元流動性を維持する資金計画を作成・実行するとともに、取引金融機関とコミットメントライン契約及び当座貸越契約(合計132億円)を締結して資金の流動性リスクに備えております。また、キャッシュ・マネジメント・システムによるグループ内資金の活用により、資金効率の向上に努めております。
(借入金の状況と返済方針)
当連結会計年度末における借入金残高は635億円となっておりますが、このうちXバンド事業に関する金融機関からの借入金421億円については当該事業に係る防衛省に対する債権の回収により、Horizons 3e事業に関する金融機関からの借入金200億円については当該事業に係る営業キャッシュ・フローにより返済する予定としております。
(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。連結財務諸表の作成に当たって当社グループが用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
① 貸倒引当金売上債権や貸付金等の貸倒損失に備えるため、過去の債権回収実績や債務者の財政状態より算出した回収不能見込額を貸倒引当金として計上しております。このため、将来債務者の財政状態悪化により支払能力が低下した場合、引当金の追加計上または貸倒損失が発生する可能性があります。
② 固定資産の減損管理会計上の区分に基づいた各事業用資産グループの営業活動から生じる損益が継続してマイナス又はマイナスの見込みの場合、当該資産グループの回収可能価額を見積り、回収可能価額が帳簿価額を下回った場合、その差額を減損損失として計上しております。このため、将来事業用資産グループの収益性の低下等により投資額の回収が見込めなくなる場合、減損損失の計上が必要となる可能性があります。
③ 投資の減損所有する有価証券、投資有価証券及び出資金の投資価値が著しく下落した場合、回復する見込があると認められる場合を除き、減損処理を行っております。このため、将来の市況悪化や投資先の業績悪化により、現在の投資簿価に反映されていない損失が発生した場合や投資簿価の回収が困難となった場合、評価損の計上が必要となる可能性があります。
④ 繰延税金資産の回収可能性繰延税金資産は、将来回収が見込まれる一時差異等に係る税金の額を計上しておりますが、その回収可能性は将来の合理的な課税所得の見積りにより判断しております。このため、業績悪化による課税所得の見積りの変更等により回収可能性の見直しが必要となる場合、繰延税金資産及び法人税等調整額の金額に重要な影響を与える可能性があります。
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