【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
①経営成績の状況
当連結会計年度(以下、当期)における世界経済は、部品・原材料の調達難による製品供給不足やコスト上昇、ロシア・ウクライナ問題を発端としたエネルギーや食糧等の価格高騰に伴う歴史的なインフレの継続に加え、第3四半期後半からは欧米各国での急速な利上げや中国でのゼロコロナ政策とその解除に伴う混乱等の影響により、世界経済の成長減速が徐々に顕在化するなど、厳しい状況が続きました。わが国においては、徐々に経済の持ち直しが見られる一方、インフレの拡大や為替相場の急激な変動による先行き不透明感の増大から、予断を許さない状況が続きました。一方で、世界的に環境問題やデジタル化などのテーマに対する投資は増加しており、これらの分野でのビジネスチャンスが増えているという側面もあり、当社グループでは中長期成長戦略「Mimaki V10」で定めた収益性向上に向けた基盤構築を継続しつつ、新しい技術やサービスを開発/提供することで、競争力を高め持続的な成長を果たすべく取り組んでおります。
当期の売上高は、半導体を中心とした部材不足及び輸送リードタイム長期化や、ロシア・ウクライナ問題や中国のゼロコロナ政策に伴う販売面への影響等を受けましたが、当社製品への堅調な需要が継続しました。製品市場別には、新製品が好調であったIP(インダストリアルプロダクツ)市場向けに加えて、TA(テキスタイル・アパレル)市場向けでは新興国を中心に大幅に販売が増加、SG(サイングラフィックス)市場向けも主力製品を中心に堅調に推移し、FA事業では基板検査装置がけん引し堅調な結果となりました。品目別では、本体に加えてインク・保守部品も好調に推移しました。一方で、第3四半期後半から欧米を中心に経済成長減速の影響が徐々に顕在化したことから、第4四半期の売上高予想は下方に修正しましたが、通期では堅調な需要に加え為替の円安によるプラス効果もあり、大幅な増収となりました。利益面では、販売機会損失回避を優先した部材調達によるコスト増加や、エネルギーコスト高騰等の影響を受けたものの、コスト上昇に対応するための販売価格見直しを進めたこと等により、売上原価率が若干改善しました。また、事業・営業活動が活発化する中で人件費、研究開発費、販売促進費等を中心に販管費は増加しましたが、費用の効率的な執行に努め、販管費率が改善しました。これらに加え、為替の円安によるプラス効果もあり、営業利益は大幅な増益となりました。
当期における当社グループの売上高は706億7百万円(前期比18.6%増)、営業利益は42億41百万円(同65.1%増)、経常利益は37億89百万円(同41.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は28億7百万円(同19.6%増)となりました。なお、売上高、経常利益、当期純利益はいずれも過去最高を記録しました。
また、当期においてトルコの子会社の財務諸表について、「超インフレ経済下における財務報告」(IAS第29号)に基づき会計上の調整を加え、その影響をインフレ会計調整額として営業外費用に計上しました。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)」をご参照ください。
当期における主要な為替レートは、1米ドル=135.48円(前期 112.38円)、1ユーロ=140.97円(前期 130.56円)で推移しました。
セグメントの業績は次のとおりであります。なお、セグメントの利益につきましては、セグメント間取引消去の影響により連結損益計算書の営業利益から乖離してしまうため、記載を省略しております。
(日本・アジア・オセアニア)
売上高は316億53百万円(前連結会計年度比16.1%増)となりました。日本では、IP市場向けが小型フラットベッド(以下、FB)製品を中心に好調な販売が継続して大幅に販売を増やすとともに、SG及びTA市場向けも堅調な伸びを確保しました。FA事業も堅調に推移しました。また、インク・保守部品とも堅調に推移し、全体では大幅な増収となりました。アジア・オセアニアでは、中国がゼロコロナ政策の解除により足下で販売は回復したものの、通年では販売減となりました。しかしながら豪州、タイ、インド等を筆頭に、中国以外のほぼ全ての国と地域が大幅に販売を伸ばし、特にTA市場向けが各国で大幅に伸長するとともに、SG及びIP市場向けも好調に推移し、本体のみでなくインク・保守部品も好調となり、エリア全体での大幅増収につながりました。
(北・中南米)
売上高は189億68百万円(同33.0%増)となりました。北米では、IP市場向けで小型FB製品に加えて、大型FB製品も好調で大幅な販売増となり、SG及びTA市場向けの販売も好調に推移しました。第4四半期は売上高予想下方修正前の水準までは挽回できませんでしたが、全般に為替のプラス影響もあり、通期では大幅増収となりました。中南米では、ブラジルやメキシコを中心に、SG及びTA市場向けが好調に推移する等により、エリア全体で大幅増収となりました。
(欧州・中東・アフリカ)
売上高は199億84百万円(同11.1%増)となりました。ロシア・ウクライナ問題に伴う売上のマイナス影響を受けたものの、ドイツ、イタリア、イギリス、ポルトガル、スペイン、フランス等の主要国の全てにおいて好調に推移しました。TA市場向けは販売減となったものの、SG及びIP市場向けは好調に推移し、インクの需要も好調でした。第4四半期は売上高予想下方修正値並の水準となりましたが、全般に為替のプラス影響もあり、通期では増収となりました。
[市場別売上高]
売上高(百万円)
構成比率(%)
対前年増減率(%)
S G 市 場 向 け
28,451
40.3
15.2
I P 市 場 向 け
20,132
28.5
24.0
T A 市 場 向 け
6,611
9.4
20.0
F A 事 業
4,650
6.6
4.1
そ
の
他
10,760
15.2
25.2
合
計
70,607
100.0
18.6
(SG市場向け)
売上高は284億51百万円(前期比15.2%増)となりました。本体では、主力のミドルレンジモデルやエントリーモデルのJV/UJV100、新製品CG-ARシリーズを投入したカッティングプロッタが好調に推移し、同じく新製品であるフラグシップモデルJV/CJV330も販売増に貢献しました。またインクの販売も好調に推移しました。
(IP市場向け)
売上高は201億32百万円(同24.0%増)となりました。本体では、ラインナップを更新した主力の小型FB製品の販売が大幅に伸長し、大型FB製品も好調に販売を伸ばすとともに、本体に加えインク・保守部品の販売も好調に推移し、全体で大幅な販売増となりました。
(TA市場向け)
売上高は66億11百万円(同20.0%増)となりました。本体では、エントリーモデルのTS100が中南米やアジアを中心に大幅に販売を伸ばすとともに、主力のミドルレンジモデルも好調に推移し、全体で大幅な販売増となりました。また、インクも顧客の稼働率上昇に伴い、大幅に販売が増加しました。
(FA事業)
売上高は46億50百万円(同4.1%増)となりました。基板検査装置や金属加工は伸びたものの、半導体製造装置や基板実装装置等は販売が減少しました。
②財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度における資産の残高は、697億89百万円(前連結会計年度末608億57百万円)となり89億32百万円増加いたしました。流動資産の残高は、536億92百万円(同474億95百万円)となり61億97百万円増加いたしました。これは、輸送リードタイム長期化の継続による影響や、販売の拡大に対応した在庫確保のオペレーションを進める中で、第4四半期の販売が想定ほど伸びなかったことにより、商品及び製品が増加したこと等によるものであります。また、固定資産は160億97百万円(同133億62百万円)となり27億34百万円増加いたしました。これは、主に会計方針の変更*による使用権資産の増加や、丸子工場の追加工事等に係る建設仮勘定の増加等があったことによるものです。
*詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」をご参照ください。
(負債)
当連結会計年度における負債の残高は、477億33百万円(同421億40百万円)となり55億93百万円増加いたしました。流動負債の残高は、401億44百万円(同323億29百万円)となり78億15百万円増加いたしました。これは、短期借入金の増加等があったことによるものであります。固定負債の残高は、75億89百万円(同98億10百万円)となり22億21百万円減少いたしました。これは長期借入金の減少等があったことによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度における純資産の残高は、220億56百万円(同187億16百万円)となり33億39百万円増加いたしました。これは、利益剰余金の増加等があったことによるものであります。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物残高(以下「資金」という)は、長期借入金の返済による支出や有形固定資産の取得による支出等があったものの、短期借入金の増加や税金等調整前当期純利益等により前連結会計年度末に比べ7億円増加し、当連結会計年度末には、82億2百万円となりました。なお、営業活動、投資活動、財務活動別の詳細につきましては、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は4億90百万円(前連結会計年度は51億29百万円の使用)となりました。これは、棚卸資産の増加18億97百万円等があったものの、税金等調整前当期純利益38億49百万円等があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は35億円(前連結会計年度は27億11百万円の使用)となりました。これは、有形固定資産の取得による支出22億14百万円、定期預金の預入による支出8億15百万円等があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果獲得した資金は35億19百万円(前連結会計年度は42億75百万円の獲得)となりました。これは長期借入金の返済による支出38億44百万円等があったものの、短期借入金の増加80億13百万円等があったことによるものであります。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
対前年増減率(%)
日本・アジア・オセアニア(千円)
30,639,903
13.1
欧州・中東・アフリカ(千円)
3,861,928
11.8
合 計(千円)
34,501,831
13.0
(注)金額は標準原価によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
また、当連結会計年度の生産実績を市場別に示すと、次のとおりであります。
市 場 別
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
対前年増減率(%)
S G 市 場 向 け(千円)
13,622,568
17.0
I P 市 場 向 け(千円)
7,251,136
7.6
T A 市 場 向 け(千円)
3,977,133
20.3
F A 事 業(千円)
4,214,450
2.8
そ
の
他 (千円)
5,436,543
14.6
合
計 (千円)
34,501,831
13.0
b.受注実績
当社グループ(当社及び連結子会社)は見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
対前年増減率(%)
日本・アジア・オセアニア(千円)
31,653,906
16.1
北・中南米(千円)
18,968,811
33.0
欧州・中東・アフリカ(千円)
19,984,294
11.1
合 計(千円)
70,607,012
18.6
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
また、当連結会計年度の販売実績を市場別に示すと、次のとおりであります。
市 場 別
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
対前年増減率(%)
S G 市 場 向 け(千円)
28,451,967
15.2
I P 市 場 向 け(千円)
20,132,376
24.0
T A 市 場 向 け(千円)
6,611,762
20.0
F A 事 業(千円)
4,650,614
4.1
そ
の
他 (千円)
10,760,290
25.2
合
計(千円)
70,607,012
18.6
当連結会計年度の販売実績を品目別に示すと、次のとおりであります。
品
目
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
対前年増減率(%)
製
品
本
体(千円)
29,500,461
16.2
イ
ン
ク(千円)
25,242,444
20.0
保
守
部
品(千円)
5,754,473
14.9
そ
の
他(千円)
10,109,632
25.2
合
計(千円)
70,607,012
18.6
(注)主要な販売先については、相手先別の販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
財政状態につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態の状況」に記載のとおりであります。
なお、運転資本(流動資産から流動負債を差し引いた金額)は、前連結会計年度末に対して16億17百万円増加し、135億47百万円となりました。今後も厳しい経営環境が続くものと想定されますが、当社の財政状態は健全性を保っていることに加え、資金についても十分な手当てができております。
経営成績につきましては、売上高は706億7百万円(前連結会計年度比18.6%増)、営業利益は42億41百万円(同65.1%増)となりました。詳細につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」記載のとおりであります。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
キャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、当連結会計年度のフリーキャッシュ・フローは30億9百万円のマイナスとなりました。その要因は、営業キャッシュ・フローは、棚卸資産は増加したものの、税金等調整前当期純利益が大幅に増加したことからプラスを確保した一方で、中長期成長戦略「Mimaki V10」で定めた目標達成に向け、生産能力増強を目的とした丸子工場の取得及び付帯工事に加え、新製品開発・量産に向けた金型投資や研究開発用設備投資を積極的に行ったこと等により、投資キャッシュ・フローが大幅にマイナスとなったことによるものであります。当期以降も、先ずは棚卸資産の削減に向けた諸施策を実施して営業キャッシュ・フローの最大化を図りつつ、将来成長のために必要な投資も積極的に行い、財政状態の健全性維持と持続的な成長の実現を両立させるべく、内部資金・直接金融・間接金融のバランスを図りつつ、計画的に資本の財源を確保してまいります。
③経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、中長期成長戦略「Mimaki V10」において、2025年度までに営業利益率10%達成を目標に掲げ、この実現に向けて従来のように売上高成長を追求するだけでなく、高い収益を継続的に生み出すとともに、財務基盤を強化して、持続可能な成長に向けた強靭な企業基盤の構築に取り組んでまいります。
④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
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