【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
①経営成績の状況
当連結会計年度(2022年4月1日から2023年3月31日まで)におきましては、海外向け空調機および電子デバイスの売上が増加し、連結売上高は3,710億1千9百万円(前年度比30.6%増)となりました。
損益につきましては、素材・部品価格や海上運賃の高騰に加え、事業強化に向けた先行投資費用の増加、円安によるコスト増などの影響を大きく受けましたが、空調機における売価改善や海外向けの販売物量拡大の効果がそれらのマイナス要因を上回り、営業利益は150億9千8百万円(同78.8%増)、経常利益は174億3千2百万円(同52.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は86億9千4百万円(同133.6%増)となりました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。
<空調機部門>
空調機部門では、国内向けは上海市の都市封鎖の影響を挽回しきれず減収となったものの、海外向けは調達・生 産・出荷オペレーションの正常化が着実に進展し、高水準となっていた受注残の出荷が順調に進むとともに、円安 に伴う円換算増もあり、売上高は3,384億3千9百万円(同34.1%増)となりました。営業利益は、素材・部品価格 や海上運賃の高騰に加え、事業強化に向けた先行投資費用の増加、円安によるコスト増などの影響を大きく受けま したが、売価改善や海外向けの販売物量拡大の効果がそれらのマイナス要因を上回り、119億5千1百万円(同 131.9%増)となりました。
〔海外向け〕
売上高は、2,938億1千6百万円(同47.5%増)となりました。
米州では、北米において、高水準となっていた受注残の商品出荷を進めたことから、省エネ性能に優れたルームエアコン、VRF(ビル用マルチエアコン)ともに売上が増加しました。なお、コマーシャル市場の販売拡大に向け、暖房・省エネ性能や施工・サービス性に優れたVRFの大型機種を本年度下期に新たに投入したほか、業務用空調機器の運用管理システムの提供を開始しております。
欧州では、環境意識の高まりなどから、ルームエアコン、VRFともに売上が増加しました。さらに、環境負荷の低減を目的とした補助金政策やエネルギー価格高騰を背景にATW(ヒートポンプ式温水暖房システム)の販売も好調に推移しました。なお、昨年12月にATWの現地生産を行う合弁会社をフランスに設立したほか、ギリシャおよびノルウェーの販売代理店の子会社化など、さらなる事業拡大に向けた取り組みを進めております。
中東・アフリカでは、市況が回復しつつあることに加え、高水準となっていた受注残の商品出荷を進め、売上が増加しました。
オセアニアでは、商品供給の改善により、ルームエアコンの売上が前年度を上回るとともに、サービスメンテナンス業務も堅調に推移したことから、売上が増加しました。
アジアでは、主力市場のインドにおいて、市場全体の需要が好調に推移するなか、ルームエアコンの販売が大幅に増加するとともに、ソリューション案件も堅調に推移し、売上が増加しました。なお、昨年12月よりインドでの現地生産を開始しており、地産地消とともにコストダウン等も進めてまいります
中華圏では、中国において、上海市の都市封鎖の影響がありましたが、台湾向けの販売増により、売上が増加しました。
〔国内向け〕
売上高は、446億2千3百万円(同16.2%減)となりました。第2四半期以降は省エネ性の高い機種を中心に販売は回復しているものの、第1四半期において上海工場からの出荷が都市封鎖に伴い大幅に減少した影響が大きく、売上が減少しました。なお、中級機クラスながら、2027年を目標年度とする新省エネ基準をシリーズ全機種で達成するとともに、充実した清潔・暖房機能に加えデザインも差別化した新機種「ノクリア」Wシリーズを本年2月に発売しました。
<情報通信・電子デバイス部門>
情報通信・電子デバイス部門では、電子デバイスの販売増により、売上高は299億3千8百万円(同2.5%増)となりましたが、情報通信システムの減収影響が大きく、営業利益は18億7百万円(同16.7%減)となりました。
〔情報通信システム〕
売上高は、135億2千7百万円(同13.7%減)となりました。
公共システムにおいて、デジタル化商談の一巡に伴う防災システムの納入案件減少が続くとともに、民需システムにおいても、外食産業向け店舗システムが依然低迷していることから、売上が減少しました。なお、公共システムにおいて、商談案件数の増加が今後見込まれるなか受注も回復傾向にあるとともに、今後の受注獲得に向け、システムの性能・機能向上などの商品力強化や次期消防デジタル無線システムの開発を進めております。
〔電子デバイス〕
売上高は、164億1千1百万円(同21.3%増)となりました。
産業用ロボット向け電子部品・ユニット製造において、上半期を中心とした投資需要の増加を背景に販売が増加するとともに、車載カメラの販売増もあり、売上が増加しました。なお、昨年7月よりパワーモジュールの外販を開始しており、さらなる事業拡大を図ってまいります。
<その他部門>
売上高は26億4千万円(同7.3%増)、営業利益は13億4千万円(同19.6%増)となりました。
②財政状態の状況
Ⅰ 資産、負債および純資産の概況
当連結会計年度末の総資産につきましては、連結売上高の増加に伴い主に受取手形、売掛金及び契約資産が増加したことにより、前連結会計年度末比297億5千6百万円増加し、2,983億9千万円となりました。
負債につきましては、支払手形及び買掛金の減少などはありましたが、主に短期借入金の増加により、前連結会計年度末比216億4千万円増加し、1,588億1千9百万円となりました。
純資産につきましては、親会社株主に帰属する当期純利益の計上および為替換算調整勘定の増加などにより、前連結会計年度末比81億1千5百万円増加し、1,395億7千万円となりました。なお、昨年7月に譲渡制限付株式報酬としての新株式を発行したことにより、資本金および資本剰余金がそれぞれ47百万円増加しております。
この結果、当連結会計年度末の自己資本比率は2.3%減少し、44.7%(前連結会計年度末は47.0%)となりました。
Ⅱ キャッシュ・フローの概況
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローにつきましては、税金等調整前当期純利益の計上および減価償却費を源泉とした収入はあったものの売上債権の増加などによる運転資本の増加により、80億4千3百万円の支出(前連結会計年度は149億4千5百万円の支出)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローにつきましては、開発・生産設備、ITシステムへの投資などにより84億2千3百万円の支出(同78億7千1百万円の支出)となりました。この結果、当連結会計年度のフリー・キャッシュ・フローは164億6千6百万円の支出(同228億1千7百万円の支出)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローにつきましては、配当金の支払などがありましたが、金融機関から資金調達を行ったことにより、193億1千6百万円の収入(同9億7千1百万円の支出)となりました。
この結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物残高は、前連結会計年度末比31億8千8百万円増加し、173億9千1百万円となりました。
③生産、受注および販売の実績
Ⅰ 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
空調機(百万円)
299,057
21.2
情報通信・電子デバイス(百万円)
26,107
4.0
合計(百万円)
325,164
19.6
(注)金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
Ⅱ 受注実績
当社グループ(当社および連結子会社)の製品は、需要予測による見込生産が主体のため、受注実績を記載しておりません。
Ⅲ 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
空調機(百万円)
338,439
34.1
情報通信・電子デバイス(百万円)
29,938
2.5
報告セグメント計(百万円)
368,378
30.8
その他(百万円)
2,640
7.3
合計(百万円)
371,019
30.6
(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.総販売実績に対する割合の10%以上を占める相手先はありません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態および経営成績の状況に関する認識および分析・検討内容
当連結会計年度は、販売面では、海外向け空調機および電子デバイスの売上が増加し、為替を除く売上高は前連結会計年度比19%増となりました。損益面では、素材・部品価格や海上運賃の高騰に加え、事業強化に向けた先行投資費用の増加、円安によるコスト増などの影響を大きく受けましたが、空調機における売価改善や海外向けの販売物量拡大の効果がそれらのマイナス要因を上回り、営業利益は151億円と前連結会計年度比67億円(前連結会計年度比79%増)の増益となりました。経常利益は174億円(同53%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は87億円(同134%増)となりました。
なお、当連結会計年度の素材価格および主要通貨の為替レートは記載のとおりであります。
Ⅰ 売上高
当連結会計年度の売上高は3,710億円と前連結会計年度比869億円(同31%増)の増加となりました。
このうち空調機部門では、国内向けは上海市の都市封鎖の影響を挽回しきれず減収となったものの、海外向けは調達・生産・出荷オペレーションの正常化が着実に進展し、高水準となっていた受注残の出荷が順調に進むとともに、円安に伴う円換算増もあり、売上高は3,384億円と前連結会計年度比860億円(同34%増)の増加となりました。
情報通信・電子デバイス部門では、電子デバイスの販売増により、売上高は300億円と前連結会計年度比7億円(同3%増)の増加となりました。
その他部門の売上高は、26億円と前連結会計年度比2億円(同7%増)の増加となりました。
Ⅱ 営業利益
当連結会計年度の営業利益は151億円と前連結会計年度比67億円(同79%増)の増益となりました。
空調機部門においては120億円と前連結会計年度比68億円(同132%増)の増益となりました。変動要因は、販売物量拡大により40億円増益、売価改善効果により170億円増益、素材・部品価格の高騰により原価低減が進まず55億円減益、海上運賃の高騰等により40億円減益、対米ドルの円安による為替影響で3億円減益、事業強化に向けた先行投資費用の増加などにより44億円減益となっております。
情報通信・電子デバイス部門においては情報通信システムの減収影響が大きく、18億円と前連結会計年度比3億円(同17%減)の減益となりました。
その他部門においては13億円と前連結会計年度比2億円(同20%増)の増益となりました。
Ⅲ 経常利益
当連結会計年度の経常利益は174億円と前連結会計年度比60億円(同53%増)の増益となりました。営業外損益は純額で23億円(益)となりましたが、前連結会計年度比では7億円悪化いたしました。この主な要因は、為替差益が減少したことなどによるものであります。
Ⅳ 親会社株主に帰属する当期純利益
当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、経常利益の174億円から、特別損失として計上した減損損失、新型コロナウイルス感染症による操業停止等に伴う損失、独禁法関連引当金繰入額、ロシア関連損失に加え、税金費用および非支配株主に帰属する当期純利益を控除し、87億円と前連結会計年度比50億円(同134%増)の増益となりました。
この結果、1株当たり当期純利益は83.04円となり、前連結会計年度比47.47円増加いたしました。
Ⅴ 経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因は、「3 事業等のリスク」に記載しております。そのなかでも、為替レート、素材・部品価格の市況変動が経営成績に与える影響は直接的であり、かつ、重大なものと認識しております。
為替については、当社グループの海外売上高比率が約80%あり、かつ、主力の空調機セグメントは主に中国・タイの工場で製品を製造しているため、外部および関係会社間の外貨建取引の割合が高くなっていることから、為替レートの変動が急激な場合、当社グループの業績および財務状況に多大な影響を及ぼします。この影響を軽減させるため、グループ各社の仕入通貨と販売通貨をマッチングさせるなど、為替リスクの軽減を図っております。また、外貨建債権債務に対しては、為替予約等によりリスクヘッジを行っております。さらに、グループ各社の為替ポジションを当社財務経理部門で把握しており、為替レートの変動に対して適宜対応できる体制をとっております。
素材・部品については、戦略的提携等を通じて基幹部品の供給確保に努める一方で、調達を外部の取引先に依存しているため、コンプレッサーや電子部品などの調達部材の供給環境が著しく悪化した場合や、銅およびアルミなどの市況が急激に変動した場合には、当社グループの業績および財務状況に多大な影響を及ぼします。この影響を軽減させるため、銅については価格のヘッジ等を行うとともに、部材のマルチソース拡大、設計の標準化、内製化の拡大、調達先との関係強化等によるコスト削減と安定調達に努めております。
上記に加え当社グループは、トータルコストダウンの推進や商品構成の改善などにより、為替レート、素材・部品価格の市況変動に伴う損益影響を極力低減すべく、たゆまぬ努力を重ねてまいります。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討並びに資本の財源および資金の流動性に係る情報
当連結会計年度のキャッシュ・フローにつきましては、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態の状況 Ⅱ キャッシュ・フローの概況」に記載のとおりであります。
当社グループにおいては、事業上必要な運転資金および設備投資資金は、利益と資金効率で生み出したキャッシュで賄うことを基本方針としております。その上で、成長投資のための多額のキャッシュが必要となった場合は、銀行借入や社債等の調達手段のなかから、適宜、最適と判断する手段にて調達する方針としております。
当社グループは、CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)を資金効率の指標とし、売上債権の圧縮、棚卸資産および買掛債務の適正化を図ることで、自己資金を生み出す力の強化を図っております。
なお、当連結会計年度末における借入金残高は32,723百万円、リース債務を含む有利子負債残高は33,619百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物残高は17,391百万円となっております。
③重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、連結貸借対照表上の資産および負債の計上額、ならびに連結損益計算書上の収益および費用の計上額には、過去の情報および将来の予測等をもとに行った合理的な見積りおよびその基礎となる仮定が含まれており、実際の結果は異なる場合があります。
当社グループが連結財務諸表に適用している重要な会計方針等は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しておりますが、連結財務諸表に重要な影響を与える可能性のある見積りを含む会計方針は以下のとおりであります。
Ⅰ 貸倒引当金
売上債権、貸付金等の債権の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しております。将来、顧客の財務状況の変化などにより回収不能見込額が変動した場合には、引当金の追加計上または取崩しが必要となる可能性があります。
Ⅱ 製品保証引当金
販売した製品の無償アフターサービス費用に備えるため、経験率および個別見積りに基づき計上しております。経験率の見直しなどにより、引当金の追加計上または取崩しが必要となる可能性があります。
Ⅲ 海外事業等再編引当金
空調機事業強化に向けた各地域の販売体制強化・再構築に係る費用等を合理的に算定し計上しております。海外事業動向の変化および為替レートの変動などにより、引当金の追加計上または取崩しが必要となる可能性があります。
Ⅳ 独禁法関連引当金
独占禁止法に基づく排除措置命令及び課徴金納付命令に関連して将来発生の可能性が高い支払いに備えるため、損失見込額を合理的に算定し計上しております。本件につきましては、現在、裁判において係争中のため、今後の裁判の進展などにより、引当金の追加計上または取崩しが必要となる可能性があります。
Ⅴ 退職給付費用および債務
従業員の退職給付に備えるため、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出しております。これらの前提条件には、割引率、昇給率、年金資産の長期期待運用収益率などが含まれており、実際の給付が前提条件と異なる場合または前提条件が変更された場合、将来期間において認識される費用および債務に影響を与える可能性があります。
Ⅵ 繰延税金資産
将来の課税所得の十分性およびタックスプランニングをもとに、回収可能性があると判断した金額を計上しております。経済環境および経営状況などの変化により、回収可能性の評価時に使用した将来の利益計画およびタックスプランニングを変更する必要が生じた場合、繰延税金資産の金額が増減する可能性があります。
Ⅶ のれんの評価
各連結会計年度において、減損の兆候の有無を把握し、減損の兆候があると判断したのれんについては、経営者が承認した将来事業計画の割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回った場合に減損損失を認識しております。
減損損失の測定に使用する回収可能価額は、同様に経営者が承認した将来事業計画を基礎とした将来見積キャッシュ・フロー等に基づき算定しております。
これらに使用する事業計画等の仮定は、使用する時点において入手可能な情報に基づく最善の見積りと判断により策定しておりますが、将来の事業環境の変化等の影響により見直しが必要となった場合には、減損損失が発生し、翌連結会計年度の連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。