【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1)経営成績の分析
当第3四半期連結累計期間におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う活動制限が緩和されるなか、新規感染者数の急増や変異株の感染拡大、物価上昇による下振れが懸念されながらも緩やかな持ち直しの動きが見られました。
しかしながら、自動車や産業機械など関連業界においては、半導体などの部品不足が続くなか、ウクライナ情勢の長期化や為替変動などによる原材料・エネルギー価格の高騰・高止まりや物流網の混乱が生じております。これに加え、ゼロコロナ政策緩和に伴い中国で同感染症が急拡大するなど、依然として先行き不透明な状況が続いております。
このような経営環境のもと当社グループにおきましては、「つながる&見える化で、新たなモビリティ ファクトリー インフラを攻略する」を基本方針に掲げ、工具事業を核とした成長戦略を展開し、収益・利益の拡大に努めてまいりました。とくに、収益性の改善に向け製品仕様の見直しや加工工法の変更など、全社一丸となってコストダウンに取り組んでまいりました。
これらの結果、当第3四半期連結累計期間の売上高は59億18百万円(前年同期比7.7%増)、営業利益は5億87百万円(前年同期比19.5%増)、経常利益は6億20百万円(前年同期比19.7%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益につきましては4億41百万円(前年同期比23.5%増)となりました。
事業セグメントごとの経営成績の概要につきましては、以下のとおりであります。
[工具事業]
主力の当事業部門では、「安全、快適、能率・効率、環境」をキーワードに、既存顧客の深耕、新規顧客の開拓並びにブランド価値向上などの事業戦略を展開しております。
開発面では、「安全、快適、能率・効率、環境」を追求するR&Dコンセプト「新・工具大進化」の具現化に向けた製品・サービスを市場投入しております。その一翼を担うTRASAS(トレサス:TRAceable Sensing and Analysis System)シリーズは、IoT技術を搭載した工具や測定具、作業支援デバイス、これらのシステムソフトウェアで構成されております。作業データを無線でデバイスへ転送することで作業履歴の自動的な記録・管理・分析を可能にいたしました。引き続きTRASASシリーズのラインナップ拡充に努めるとともに、関連工具との組み合わせ技術で生まれる新たな価値を追求し市場投入してまいります。
また、メカニックの高齢化やタイヤの大型化が進むなか、タイヤ昇降作業の電動化で作業者の負担を軽減させるタイヤリフターを2022年11月より発売するなど新たな製品領域と専用工具の拡充にも取り組み、お客様のトータルサポートの実現に注力しております。
さらに、研究分野として、材料や構造・機構に関する新たな開発にも積極的に取り組み、「安全で、使う人や環境にやさしいツール」の製品化を通じ、多様性を認め合う持続可能な社会の実現を目指しております。
販売面では、工具メーカーとしてのノウハウと先進のテクノロジーを融合し、作業者の経験や勘に頼っていた作業の標準化と効率化を提案しております。具体的には、作業現場で確認できた課題やその対策案について、最適な作業工具や作業手順の改善ポイント、作業トレーサビリティの運用方針などを検討後、導入計画を策定し提案しております。活動制限の緩和に伴い様々な展示会へ出展し、現場にも積極的に出向き課題解決策を提案するなどとくにTRASASシリーズの販売促進に取り組んでおります。
また、昨今、大型車や建設機械などのメンテナンス業界において人材不足が深刻化するなか、より高出力で軽量な電動化工具のラインナップを拡充させるなど、現場作業の省力化や省人化の提案を強化しております。
さらに、KTCものづくり技術館に開設したkDNA Studio(きずなスタジオ)やピットガレージにて収録した課題解決や新製品情報に関するウェビナーコンテンツをウェブメディア「KTC times」で配信しお客様との対話を図るなど、当社グループ特有のDXを推進し、よりスマートにより多くのお客様へソリューションを提供しております。
生産面では、「新・工具大進化」を支えるためのものづくり革新を進めており、人とロボットそれぞれの長所を活かした協働環境の運用を目指しております。具体的には、脱着作業などの単純な繰り返し作業は複数の加工設備に共用で使用可能な協働型ロボットが行い、人はより付加価値の高い作業へシフトすることが可能になりました。さらに、協働型自走式ロボットを活用し、人と協働できる独自の少人化ラインの展開を目指すなど、「ものづくりの最適化」を図り生産性の向上を推進してまいります。
これらの取り組みに加え、エネルギー価格の高騰による電気料金の上昇などに対応するため、設備監視システムの運用による省エネに取り組んでおります。例えば、熱処理により工具に必要な強さを与える設備「連続炉」にセンサーや通信技術を搭載し、使用電力や稼働状況を見える化することで使用エネルギーの最適化を図るなどコストダウンに取り組んでおります。
また、当社グループは、安全・安心な社会実現に向けた持続可能な取り組みとして、未来の技術者を育成する「技育(技術の教育)」を展開し、志を同じくする企業との協業や産学連携を通じた「技育」分野でのオープンイノベーションの取り組みを推進しております。2021年に包括的連携・協力に関する協定を締結した国立大学法人奈良女子大学の工学部にて、「0から1(新たな価値)」を生む実習に当社グループの従業員が講師として参加するなど、社会問題解決に向けた取り組みや技術進歩に伴う多様な変革のなか、活躍できる技術者の育成に積極的に取り組んでおります。
これらの結果、市販部門における一般産業市場向けの販売が堅調に推移した一方、調達コストの増加やエネルギー価格の高騰による影響があったものの全社挙げての経費削減活動の効果もあり、当第3四半期連結累計期間の売上高は57億38百万円(前年同期比7.9%増)、セグメント利益は4億58百万円(前年同期比26.3%増)となりました。
[ファシリティマネジメント事業]
当事業部門では、従前より所有不動産の有効活用を目指し、物件の整備、運営管理を推進しております。2022年3月に一部を賃貸物件として運営開始した広島営業所の建物含め、全ての物件で高い入居率を確保しております。引き続き入居者満足度の向上を図り、収益の安定化に取り組んでまいります。
当第3四半期連結累計期間におきましては、所有不動産や石川県羽咋市の太陽光発電所の安定稼働により、売上高は1億80百万円(前年同期比1.6%増)、セグメント利益は1億29百万円(前年同期比0.3%増)となりました。
(2)財政状態の分析
当第3四半期連結会計期間末の総資産は、141億3百万円となり、前連結会計年度末に対し2億11百万円減少となりました。その主な内容は、商品及び製品が6億19百万円増加した一方、現金及び預金が4億7百万円、受取手形及び売掛金が3億18百万円、電子記録債権が61百万円、投資有価証券が48百万円減少したことなどによるものであります。
負債合計は、31億50百万円となり、前連結会計年度末に対し4億58百万円減少となりました。その主な内容は、未払法人税等が1億98百万円、未払金及び未払費用が1億58百万円、賞与引当金が90百万円減少したことなどによるものであります。
純資産合計は、109億53百万円となり、前連結会計年度末に対し2億47百万円増加となりました。その主な内容は、利益剰余金が2億70百万円増加した一方、その他有価証券評価差額金が33百万円減少したことなどによるものであります。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
(4)経営方針・経営戦略等
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(5)研究開発活動
当第3四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発活動の金額は、1億76百万円であります。なお、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
(6)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。