【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症に対する行動制限緩和や外国人観光客の受入れ再開等により、景気は緩やかに持直しの動きがみられる一方で、ウクライナ情勢などの地政学的リスクによる原材料及びエネルギー価格の高止まりや、各国の政策金利の引上げの影響による円安の進行等もあり、国内経済の先行きは引続き不透明な状況が続いております。
情報サービス産業におきましては、労働力人口の減少という課題に対処するため、業務プロセスの効率化や労働生産性向上を目的としたDX等への関心が高まり、社会全体としてIT活用の流れは堅調に推移しております。〔経済産業省特定サービス産業動態統計(2023年2月分確報)より〕
こうした環境下、当社グループでは中期経営計画(2023年3月期~2025年3月期)の基本方針に「ODKグループ拡大」を掲げ、「新事業ポートフォリオの推進」「グループシナジーの創出」「株式市場での認知度向上」を本年度の重点課題として様々な施策に取組んでまいりました。
当社単体としては、中期経営計画の基本方針に「データビジネスによる新たな価値の創造」を掲げ、「アライアンス・M&Aの推進」「次世代サービスの創出」「データビジネス基礎の構築」を本年度の重点課題として取組んでまいりました。
具体的には、自己の知識・経験を証明する次世代サービスの創出に向けて、NFTを活用した実証実験を開始しております。株式会社電通グループと共同研究をすすめるWeb3.0サービス『アプデミー』では近畿大学の入学式にて入学記念NFTを配布した他、兵庫県洲本市にて大学生対象のワークショップの終了証をNFTで発行する「ふるさとパスポート」の実証をすすめてまいりました。
その他、『UCARO®』をデータのプラットフォームとして各事業領域をつなぐハブに育成するとともに、外部接点強化やサービス拡張等により保有するデータ量・種類の拡大を目指しております。なお、受験ポータルサイト『UCARO®』の導入校数は100校を突破し、前年より23校増えて111校に拡大しております。今後も同システムを軸とした成長戦略により、データビジネスによる新たな価値の創造を継続してまいります。
また、政府の新たな個人投資促進施策を背景に、システム関連の需要が高まる金融業界に向けて、証券取引ソリューションを『SAKIX(サキガケ)』ブランドとして刷新した他、『UCARO®』の経済圏拡張に向けて、総合型選抜を支援するスタートアップ企業の株式会社花形と資本業務提携を行いました。
なお、2023年3月開催の取締役会において、上場市場をプライム市場からスタンダード市場へ選択申請することを決議いたしました。これは、プライム市場基準適合のための追加費用やIR水準への対応のためのコストを、将来の事業拡大に向けた成長投資に資金を振り向けることが、企業価値向上に資すると判断したためです。
業績面では、既存業務が当初想定ほど拡大しなかったことや、新サービスの立上がりが翌期以降となる影響があったものの、前期において連結子会社となった株式会社ECS(以下、「ECS」という。)や第2四半期に譲り受けた人材育成サポート事業の売上等により、売上高は5,566,335千円(前年同期比 1.2%増)となりました。また、次世代サービスの社会実装等に係る研究開発費及び人件費の増加等により、営業利益は420,593千円(同 3.7%減)、投資組合運用損の発生や前期に発生した保険解約返戻金の減少等により経常利益は449,606千円(同 11.7%減)、前期に発生した無形固定資産の減損損失の減少等により親会社株主に帰属する当期純利益は236,606千円(同 21.8%増)となりました。
なお、前連結会計年度から連結子会社となったECSの決算期を1月31日から3月31日に変更いたしました。当連結会計年度は決算期変更の経過期間となることから、2022年2月1日から2023年3月31日までの14カ月間を当連結対象期間とした変則的な決算となっておりますが、損益への影響は軽微であります。
売上高の内訳は、次のとおりであります。
なお、当社グループは、情報システムの運用、開発及び保守等、総合的な情報サービスを提供しており、当該事業以外に事業の種類がないため、セグメント毎の記載に代えてサービス別の内訳を記載しております。
内訳
当連結会計年度売上高内訳
教育業務
(千円)
前年同期比
(%)
証券・ほふり
業務(千円)
前年同期比
(%)
一般業務
(千円)
前年同期比
(%)
システム運用
3,479,012
△0.4
986,854
△4.1
626,336
9.4
システム開発及び
保守
–
–
62,472
25.4
6,653
△90.1
機械販売
–
–
–
–
80,790
△21.1
合計
3,479,012
△0.4
1,049,326
△2.8
713,781
△3.8
内訳
当連結会計年度売上高内訳
その他
(千円)
前年同期比
(%)
合計
(千円)
前年同期比
(%)
システム運用
241,277
151.7
5,333,481
2.8
システム開発及び
保守
82,937
△10.0
152,063
△27.3
機械販売
–
–
80,790
△21.1
合計
324,214
72.4
5,566,335
1.2
〔システム運用〕
前期において連結子会社となったECSや第2四半期に譲り受けた人材育成サポート事業の売上等により、5,333,481千円(前年同期比 2.8%増)となりました。
〔システム開発及び保守〕
東京証券取引所の市場再編に向けた開発等があったものの、ホームページのリニューアル開発や証券業務におけるマイナンバー関連、eラーニングシステムのスポット開発剥落等により、152,063千円(同 27.3%減)となりました。
〔機械販売〕
医療システム機器更改の販売剥落等により、80,790千円(同 21.1%減)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末と比べ285,425千円増加し2,661,258千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、539,421千円の収入(前年同期は917,192千円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益の増加等があったものの、仕入債務が減少したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、634,316千円の支出(同 533,407千円の支出)となりました。これは主に、無形固定資産の取得による支出の増加及び事業譲受による支出によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、380,320千円の収入(同 422,208千円の支出)となりました。これは主に、長期借入れによる収入によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループは、情報システムの運用、開発及び保守等、総合的な情報サービスを提供しておりますが、その特性上、サービス別に生産規模を金額あるいは数量で示すことはいたしておりません。
b.受注実績
当社グループは、情報システムの運用、開発及び保守等、総合的な情報サービスを提供しておりますが、その特性上、サービス別に受注規模を金額あるいは数量で示すことはいたしておりません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績は、下表のとおりであります。
なお、当社グループは、情報システムの運用、開発及び保守等、総合的な情報サービスを提供しており、当該事業以外に事業の種類がないため、セグメント毎の記載に代えてサービス別の内訳を記載しております。
内訳
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
システム運用(千円)
5,333,481
2.8
システム開発及び保守(千円)
152,063
△27.3
機械販売(千円)
80,790
△21.1
合計(千円)
5,566,335
1.2
(注)最近2連結会計年度の主要な販売先及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
販売先
前連結会計年度
当連結会計年度
金額(千円)
割合(%)
金額(千円)
割合(%)
㈱ファルコバイオシステムズ
551,935
10.0
197,675
3.6
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態
(資産)
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末と比べて507,797千円増の8,537,884千円となりました。これは主にソフトウエアの増加によるものであります。
(負債)
前連結会計年度末と比べて445,804千円増の2,740,649千円となりました。これは主に新規借入れによる長期借入金の増加によるものであります。
(純資産)
前連結会計年度末と比べて61,992千円増の5,797,234千円となりました。これは主に利益剰余金の増加によるものであります。
b.経営成績
(売上高)
当社グループの当連結会計年度の売上高は、既存業務が当初想定ほど拡大しなかったことや、新サービスの立上がりが翌期以降となる影響があったものの、前期において連結子会社となったECSや第2四半期に譲り受けた人材育成サポート事業の売上等により、売上高は5,566,335千円(前年同期比 1.2%増)となりました。
教育業務につきましては、新規大学からのアウトソーシング受注があったものの、入試・リメディアルソリューションサービスの新規受注剥落等により、売上高が3,479,012千円(同 0.4%減)となりましたが、データビジネスの中心となる『UCARO®』の導入校数は100校を突破し、前年より23校増えて111校となり、保有するデータ量・種類が拡大しております。
証券会社向けの証券・ほふり業務につきましては、『マイナワン』関連業務の増加があったものの、証券会社向け『WITH-X(ウィズクロス)』のシステム運用業務の一部剥落等により、売上高は1,049,326千円(同 2.8%減)となりました。
一般業務につきましては、第2四半期に譲受した人材育成サポート事業の取込みはあったものの、ホームページリニューアル開発剥落等により、売上高は713,781千円(同 3.8%減)となりました。
その他の業務につきましては、前連結会計年度から連結子会社となったECSの売上寄与等により、売上高は324,214千円(同 72.4%増)となりました。
(売上原価、販売費及び一般管理費)
売上原価につきましては、前連結会計年度に比べ3,937千円増の3,895,052千円(同 0.1%増)となりました。これは、前連結会計年度から連結子会社となったECSや第2四半期に譲受した人材育成サポート事業の人件費増加等によるものであります。
販売費及び一般管理費につきましては、人件費の増加や新規事業のための研究開発費の発生等により、前連結会計年度に比べ77,603千円増の1,250,689千円(同 6.6%増)となりました。
その結果、営業利益は前連結会計年度に比べ15,956千円減の420,593千円(同 3.7%減)となりました。
(営業外損益及び経常利益)
投資組合運用損の発生や前期に発生した保険解約返戻金の減少等により営業外損益は29,012千円となり、経常利益は前連結会計年度に比べ59,429千円減の449,606千円(同 11.7%減)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、前期に発生した無形固定資産の減損損失の減少等により、前連結会計年度に比べ42,420千円増の236,606千円(同 21.8%増)となりました。
c.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
d.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、コアコンピタンスを活用できる新たな領域への進出も視野に入れてさらなる事業拡大を目指し、収益のトップラインを高めていく時期だと認識しております。そのため営業収益及び経常利益を重要指標と位置付けております。
指標
2023年3月期(計画)
(千円)
2023年3月期(実績)
(千円)
増減(千円)
計画比(%)
営業収益
5,600,000
5,566,335
△33,664
△0.6
経常利益
360,000
449,606
89,606
24.9
(注)2023年3月期(計画)は、2023年1月31日に公表した業績予想値であります。
また新たに、2023年3月期~2025年3月期中期経営計画の業績目標を踏まえ、投下資本利益率(ROIC)7.0%以上を目標値とし、新規投資及び収益性改善をすすめてまいります。なお、中期経営計画は毎年度改定するローリング方式であることから、ROIC目標値も必要に応じて見直します。
2023年3月期のROICは、4.3%となっています。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フローの状況
「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
b.資本の財源及び資金の流動性
(資金需要)
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、システム開発・運用費用のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資、有価証券の取得等によるものであります。
(財務政策)
当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
短期運転資金は営業活動から得られるキャッシュ・フローにより賄っており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、需要が発生した時点で自己資金及び金融機関からの借入等、その時点でのコストバランスを検討し対応しております。
なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は1,255,217千円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は2,661,258千円となっております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成されております。連結財務諸表の作成にあたり、当社グループが採用している会計方針において重要と考える会計上の見積りは、ソフトウエアの評価、固定資産の減損会計であります。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響につきましては、感染症法上の位置付けが「5類感染症」となり、今後は収束に向かうものと仮定しております。影響には不確定要素が多く、仮定に状況変化が生じた場合には、会計上の見積りに影響を及ぼす可能性があるものの、重要な影響はないと判断しております。
(ソフトウエアの評価)
当社グループは、開発したソフトウエアに係る将来キャッシュ・フローに基づき、将来の収益獲得または費用削減が確実と認められる場合は無形固定資産に計上し、確実であると認められない場合または確実であるかどうか不明な場合には、費用処理しております。なお、減損の兆候がある資産グループについて、資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。回収可能価額の算定は、使用価値により測定しておりますが、将来キャッシュ・フローに基づく使用価値がマイナスとなる資産については、回収可能価額を零として評価しております。当該資産性の判断に際して、当社グループは可能な限り客観的かつ入念に回収可能性等を評価いたしますが、見積り特有の不確実性があるため、当該資産に追加的な損失が発生する可能性があります。
(固定資産の減損会計)
当社グループは複数の固定資産を保有しておりますが、事業の収益性が低下した場合等、将来キャッシュ・フローが著しく減少する要因が生じた場合には、固定資産の減損会計の適用による減損損失が発生し、重要な影響を受ける可能性があります。
その他の会計上の見積りは、以下のとおりです。
(退職給付債務)
当社の退職給付債務は退職一時金制度に係る期末自己都合要支給額を基に簡便法により計算しております。また、退職給付に係る負債は退職給付債務から確定給付企業年金資産評価額を控除して算出しております。そのため、期中に想定外の退職者があった場合や、評価時点の景況、市況によって確定給付企業年金資産評価額が変動した場合、重要な影響を受ける可能性があります。
なお、連結子会社である株式会社エフプラスは、退職給付制度を採用しておりません。
(繰延税金資産の回収可能性)
当社グループは、繰延税金資産について定期的に回収可能性を検討し、当該資産の回収が不確実と考えられる部分に対して評価性引当額を計上しております。回収可能性の判断においては、将来の課税所得見込額と実行可能なタックス・プランニングを考慮して、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲で繰延税金資産を計上しております。
将来の課税所得見込額はその時の業績等により変動するため、課税所得の見積りに影響を与える要因が発生した場合は、回収懸念額の見直しを行い繰延税金資産の修正を行うため、親会社株主に帰属する当期純損益額が変動する可能性があります。
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