【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
経営者の視点による当社グループの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりであります。
a.財政状態
当社グループは、適切なる流動性の維持、事業活動のための資金確保および健全なバランスシートの維持を財務方針としております。
(資産)
当連結会計年度末の資産合計は11,315百万円(前連結会計年度末比910百万円の増加)となりました。これは主として、現金及び現金同等物が746百万円減少したものの、その他の金融資産が966百万円、営業債権及びその他の債権が311百万円、使用権資産が204百万円増加したことによるものです。
(負債)
負債合計は、4,939百万円(前連結会計年度末比430百万円の増加)となりました。これは主として未払法人所得税が165百万円減少したものの、その他の流動負債が224百万円、引当金が137百万円、営業債務及びその他の債務が133百万円増加したことによるものです。
(資本)
資本合計は、6,375百万円(前連結会計年度末比480百万円の増加)となりました。これは主として、自己株式の取得により292百万円減少したものの、利益剰余金が678百万円増加したことによるものです。
b.経営成績
<連結決算の概況>
当連結会計年度の売上収益は17,662百万円(前期比18.2%増)、営業利益は1,441百万円(前期比23.2%減)、税引前利益は1,399百万円(前期比26.2%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,010百万円(前期比28.0%減)となりました。売上収益は前期比18.2%増、重要指標としている付加価値売上高(売上収益から外注・仕入を差し引いた社内リソースによる売上高)も前期比20.9%増と堅調に推移し、過去最高を更新しました。一方で目標成長率である付加価値売上高25%成長を目指し、積極的に採用等の先行投資を拡大したことで、デジタルクリエイター数は前期末比24%増の2,012名となり、稼働率が低下しました。これにより、営業利益は前期比減益となりましたが、営業利益率は8%超を保持しております。また、2023年3月期第3四半期に掲げた改善方針は着実に進捗しております。製販分離の営業体制を強化したことで、成果型チームモデル提供社数(※1)は、前期末より41社増加しました。また、専門特化型カンパニーを中心に、PGT事業の売上収益が前期比33.7%増と高い成長率を維持し、Webサイト運用領域以外の売上比率も前期末より7.2ポイント上昇と拡大しました。
当社グループは、当連結会計年度までは、デジタル領域を中心として主に2つの事業(EMC事業・PGT事業)に分けて展開しておりました。
<EMC事業の概況>
EMC事業では、大手企業向けにデジタルを活用したビジネス成果とユーザーエンゲージメントを向上し続ける専任チーム“EMC(Engagement Marketing Center)”を編成、顧客視点での課題発見・要件定義からデジタルサービスやプロダクトの開発・運用までを包括的に支援するサービスを提供しておりました。
当連結会計年度においては、EMC事業の売上収益は11,212百万円(IFRS ※参考値:前期比6.6%増)、EMC事業に所属するデジタルクリエイター数は1,079名(前期末より179名増)となりました。
<PGT事業の概況>
PGT(Product Growth Team)事業では、主にデジタル・IT技術投資に積極的であり、成長性が高い企業を対象として、当社のデジタルクリエイターが顧客専任のチームを編成、顧客企業と一丸となりデジタルプロダクト開発を推進することで、デジタル化の企画や初回の構築/導入のみならず、長期的な運用が可能な組織化を支援しておりました。
当連結会計年度においては、PGT事業の売上収益は6,894百万円(IFRS ※参考値:前期比33.7%増)、PGT事業に所属するデジタルクリエイター数は932名(前期末より209名増加)となりました。
<当社グループ全体の方針および取り組み>
当社は、人材開発戦略、営業戦略、サービス戦略を当社グループで統合的に実行し、グループ横断で行うことを目的として、2023年4月からEMCカンパニー、メンバーズキャリアカンパニー、メンバーズエッジカンパニー、ビジネスプラットフォームカンパニーの4カンパニーを統合し、本部制を導入いたしました。本統合により、旧EMC事業の顧客へは非Web運用領域サービスの展開を、旧PGT事業の顧客へは成果型チームモデルの提供を加速し、グループ一体で様々なデジタル専門スキルを持ったデジタルクリエイター専任チームによるハンズオンの継続的実行・グロース支援サービスであるデジタルグロースチーム(DGT)サービスを確立いたします。合わせて、スキル育成専門本部の設置等による当社グループ全社員への専門スキル育成の抜本的な強化や、全社における製販分離の体制の確立により、稼働率および単価の向上を図ります。今回の統合の対象とならない専門特化型の社内カンパニーの売上収益は63.2%増と非常に高成長で、非Web運用領域の拡大を牽引しております。引き続き高単価の専門特化型カンパニーの積極的な立上げや配置転換等により、非Web運用領域での成長の加速と、収益力の向上を図ります。
わが国における新型コロナウイルス感染症の影響やエネルギー、地政学上の問題による経済への影響は不透明なものの、デジタルテクノロジーの更なる進化や世界の脱炭素への取組み、および日本の人口減少の影響等を受け、企業のデジタル投資は一段と加速すると同時にIT/デジタル人材の不足は更に拡大するものと捉えております。そのような環境において、当社グループは引き続き積極的な新卒・中途採用、並びに専門スキル育成等への人材投資を通じて、顧客への価値創造の源泉であるデジタルクリエイター数の拡充、スキルの向上ならびに社員エンゲージメントの向上等、人的資本の拡充に取り組んでまいります。
そして引き続き、長期ビジョンであるVISION2030(https://www.members.co.jp/ir/pdf/20200508_04.pdf)の達成に向け、重要KPIであるソーシャルクリエイター(※2)10万人、ソーシャルエンゲージメント(※3)総量100億、社員数1万人、営業利益100億円の達成を目指して取り組みを推進してまいります。
(※1)成果型チームモデル提供社数:取引先企業のうち、3名以上のデジタルクリエイターが顧客企業専任のチームとして顧客の成果向上を追求し、サービスを提供する顧客の数のこと。
(※2)ソーシャルクリエイター:デザイン思考を持ち、ビジネスの推進や制度設計、アウトプットを通じて社会課題の解決を図ろうとするクリエイター(職人)志向性の高い人材のこと。
(※3)ソーシャルエンゲージメント:社会課題解決施策としてメンバーズグループが手がけたコンテンツ・プロダクト・サービスに対する接触回数のこと。
②キャッシュ・フローの状況
a.キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」といいます。)は、前連結会計年度末に比べ746百万円減少し、4,479百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動の結果獲得した資金は、1,398百万円(前年同期は1,653百万円の獲得)となりました。収入の主な内訳は、税引前利益1,399百万円、減価償却費及び償却費493百万円によるものであり、支出の主な内訳は、法人所得税の支払額581百万円、営業債権及びその他の債権の増加額275百万円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動の結果使用した資金は、1,165百万円(前年同期は98百万円の使用)となりました。支出の主な内訳は、投資の取得による支出1,007百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動の結果使用した資金は、980百万円(前年同期は468百万円の使用)となりました。支出の主な内訳は、リース負債の返済による支出456百万円、配当金の支払額326百万円、自己株式の取得による支出293百万円によるものであります。
b.資金調達の方法及び状況並びに資金の主要な使途を含む資金需要の動向
(ア)持続的な成長のための財務戦略
当社グループは持続的な成長を実現するため、財務の安全性と収益性、およびステークホルダーへの収益還元の優先順位づけとバランスに留意した財務戦略を立案し、実施しております。
ⅰ.健全な挑戦のためのリスクに見合った適正現預金の確保
当社グループではクリエイター人材の旺盛な需要を見込み、積極的に体制増強を進めております。しかしながら、固定化した人件費はリスクを伴います。体制増強の推進を担保するためのリスクヘッジ策として、想定する危機を回避できるだけの現預金を常に保持することとし、指標化により管理しております。
具体的にはリーマンショックと同等の経済混乱ならびに、大口顧客との取引中止および信用不和による新規取引ゼロの事態が発生し、いずれもその状態の解消に1.5年から2年かかると想定した場合、最大の赤字幅は月間平均社内総経費の2.8~3.3ヶ月分と試算しております。
したがって、最適現預金を月間社内総経費予算の3ヶ月分と定めております。当連結会計年度(第28期)の最適現預金額は4,047百万円を確保し、第29期の適正現預金額は4,835百万円としております。
ⅱ.資本コストを上回る高収益性の確保
資本コストを上回る高い収益性を確保するため、連結ROE指標と事業ROE指標を設定しております。
・連結ROE指標は、事業ROE指標をもとに運営される事業から生み出される利益に加え、適正現預金指標によって保持される現預金を加味した値とし、25%を目標としております。
・事業ROE指標は、メンバーズグループが行う事業が生み出す利益水準を示し、35%を目標としております。事業運営やM&A等、すべての事業における収益面で本指標をクリアすることを前提として行っております。
ⅲ.株主還元・配当方針
当社は、株主への利益還元の充実とさらなる企業価値の向上を図る観点から、ミッション実現に向けた新たな事業への投資及び業容の拡大に備えるための内部留保を行うとともに、経営成績の伸長に見合った成果の配分や配当金額の継続的な増額を実施してまいります。この方針に基づき、目標とする配当の指標を中長期的な目標連結親会社所有者帰属持分配当率5%としております。
(イ)持続的な成長のための事業投資
サービス産業である当社グループにとって、研究開発とは事業投資やサービス開発投資であり、高収益・高成長を持続的に維持するためには当該領域への投資が不可欠であると認識しております。当社グループでは持続的な成長に向けて、サービスの向上・開発に向けた継続的なサービス開発投資、新規事業開発を進めるための投資枠、経費枠の指標を次のとおり設けております。
項 目
内 訳
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
指 標
付加価値売上高に
占める割合
事業開発
投資
サービス開発投資
新規事業開発投資
生産性向上投資
EMC推進
236百万円
事業開発投資+人材育成投資
毎期、連結付加価値売上高の3.5%~5%
3.6%
人材育成
投資
教育研修費
教育研修部門
総経費
366百万円
③生産、受注及び販売の実績
a.制作実績
区分
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
ネットビジネス支援事業(千円)
12,481,097
122.37
合計(千円)
12,481,097
122.37
(注)上記金額は、製造原価によっております。
b.受注実績
区分
受注高(千円)
前年同期比(%)
受注残高(千円)
前年同期比(%)
ネットビジネス支援事業
18,353,799
123.35
1,384,487
199.79
合計
18,353,799
123.35
1,384,487
199.79
(注)上記金額は、販売価格によっております。
c.販売実績
区分
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
ネットビジネス支援事業(千円)
17,662,288
118.23
合計(千円)
17,662,288
118.23
(注)外部顧客への販売実績において、連結損益計算書の売上収益の10%以上を占める相手先がないため、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の重要指標・KPIに対する経営成績は次のとおりであります。
重要な指標
前連結会計年度
当連結会計年度
増減
デジタルクリエイター数(連結)
1,623名
2,012名
+24.0%
デジタルクリエイター数(EMC事業)
900名
1,079名
+19.9%
デジタルクリエイター数(PGT事業)
723名
932名
+28.9%
付加価値売上高(連結)
13,961百万円
16,886百万円
+20.9%
成果型チームモデル提供社数(注)
75社
116社
+41社
連結親会社所有者帰属持分配当率(DOE)
6.2%
6.4%
+0.2%
(注)3名以上のデジタルクリエイターが顧客専任チームとして成果を追求しサービスを提供する顧客の数。旧EMCおよびPGTモデル提供社数の合計値。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
資金需要及び資金調達
当社グループは、事業の競争力を維持・強化することによる持続的な成長を実現するために、事業投資やサービス開発投資や人材育成投資に取り組んでいく考えであります。これらの資金需要は手元資金で賄うことを基本とし、必要に応じて資金調達を実施いたします。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下「連結財務諸表規則」という。)第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しております。
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