【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1)経営成績に関する経営者の説明および分析
地球温暖化が引き起こす気候変動により、深刻な大災害が世界各地で頻発しています。
わが国においても2050年までに二酸化炭素など地球温暖化の主な原因となる温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」方針が示され、企業は継続的価値創造のためにデジタルを活用した企業変革を一層加速することで、マーケティング活動を含めた企業のビジネスそのものを脱炭素型・社会課題解決型へ変容させることが求められます。
デジタルビジネスが活況を迎える一方で、企業がインターネットやデジタルテクノロジーに精通したクリエイター人材を自社で採用・育成することは難しく、人材不足が企業のデジタル推進を阻む大きな壁となっています。2022年12月のIT技術者の転職求人倍率は12.09倍と、全体平均の2.54倍に対し、際立って需要が高く(パーソルキャリア 転職求人倍率レポート2023年1月19日発表)人材不足が顕著に表れています。
このような状況において、当社グループはミッション「“MEMBERSHIP”で、心豊かな社会を創る」を掲げ、デジタルビジネス運用支援を通じ、顧客企業の経営スタイルやマーケティング活動、サービスおよびプロダクトを「地球と社会を持続可能なもの」へと転換させることを目指しております。
当社グループは次の2つの社会課題「地球温暖化および気候変動による環境変化」「人口減少による年金医療制度破綻/地方衰退による自治体の消滅/財政破綻」に着目し、人々や企業が自己利益の追求のみではなく将来への希望や社会への参加意識を持ち、持続可能なより良い未来のために共に協力しあう心豊かな社会の実現に取り組んでまいります。
当社グループは、デジタル領域を中心として主に2つの事業(EMC事業・PGT事業)を展開しております。
<連結決算の概況>
当第3四半期連結累計期間の売上収益は12,610百万円(前年同四半期比19.1%増)、営業利益は607百万円(前年同四半期比38.8%減)、税引前四半期利益は558百万円(前年同四半期比43.6%減)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は379百万円(前年同四半期比44.8%減)となりました。
売上収益は前年同四半期比19.1%増と堅調に推移し、第3四半期連結累計期間として過去最高を更新しました。専門特化型カンパニーを中心に、PGT事業の売上収益は前年同四半期比35.9%増と高い成長率を維持し、Webサイト運用領域以外の売上比率も前期末比7.1ポイント上昇と拡大しました。一方で、顧客獲得が遅れ稼働率が低下するとともに、目標成長率である25%成長を目指し積極的に採用等の先行投資を拡大したことで、営業利益は前年同四半期比減益となりました。
デジタル経済の拡大とIT人材不足を背景として、当社はVISION2030において成長率目標を25%と定めています。この目標に対し、新卒社員を中心にデジタルクリエイターの数は連結で2,020名(前期末比24.5%増)と十分に確保しているものの、主力のEMC事業における既存顧客に依存した営業体制により新規顧客の開拓に遅れが生じたこと、成長領域と目したEMC事業の大口顧客における非Web運用領域は開拓途上であること、これらを要因として稼働率が低下いたしました。また、好調な新卒採用に比して中途採用数は2021年3月期以降計画を下回っており、この影響により、全社員数に対する新卒社員数の割合が大幅に高まり、稼働率ならびにサービス力が低下いたしました。これにより、売上成長率がデジタルクリエイターの増加率に追い付かず、2023年3月期の減益を見込んでおります。
今期に続いて来期においても新卒・中途採用に先行投資し中長期を見据えた人的資本を拡充することで、今期同様の稼働率・収益性の低下を見込んでおりますが、①製販分離による営業体制の強化、②非Webサイト運用領域の専門特化型カンパニーの更なる拡大、③中途採用投資の拡大による人材ポートフォリオの改善/育成の抜本的強化の3つの改善方針を展開していくことで、2024年3月期の第4四半期には目標成長率の付加価値売上高25%増と営業利益率10%ペースを実現する高成長モデル、2025年3月期には通期で付加価値売上高25%増、営業利益率10%の高成長・高収益なモデルへの転換を実現してまいります。
1.製販分離による営業体制の強化
2022年10月からグループ全体の営業・マーケティング部門を統合したセールス&マーケティング本部を新設し、全社で製販分離の体制を展開し、営業戦略を推進、強化しております。当第3四半期連結累計期間において営業投資額は前期比約2倍に拡大し、稼働するデジタルクリエイターの数や取引社数は増加基調にあります。2024年3月期第4四半期には四半期単位で稼働するデジタルクリエイターの数を前四半期比で250名増加させるべく営業体制を構築してまいります。また、取引社数のうち、3名以上のデジタルクリエイターが顧客企業専任のチームとして成果を追求し、サービスを提供する「成果型チームモデル提供社数」(旧EMCおよびPGTモデル提供社数の合計)については、当四半期末において103社(前期末比28社増)となりました。2024年3月期末に200社を目指すべく、PGT事業顧客の成果型チームモデルへの転換・単価向上および新規顧客の獲得を加速させてまいります。
2.非Webサイト運用領域の専門特化型カンパニーの更なる拡大
2030年に向けて、当社は、従来のWebサイト運用領域の売上比率を20%とし、非Webサイト運用領域の売上比率を80%まで拡大することで、より高度な専門知識を必要とする高付加価値なサービス展開を中長期的に目指しております。非Webサイト運用領域を中心とした専門特化型カンパニーの継続的な立ち上げを推進しており、これら専門特化型カンパニーの成長により、Webサイト運用領域以外の売上比率は増加基調にあります。専門特化型カンパニーの一人あたり付加価値売上高は、全社平均よりも高く、連結の一人あたり付加価値売上高の向上にも寄与しております。当期は、XR(仮想現実等)、AI(人工知能)、QA(品質保証)に特化した3社の社内カンパニーを新設し、専門領域を拡張しております。また、2024年3月期においても年間で4社以上の社内カンパニーを新設し、デジタルクリエイター数の成長率は65%以上、700名を目指してまいります。
3.中途採用投資の拡大による人材ポートフォリオの改善、育成の抜本的強化
2022年3月期まで社内カンパニー毎に行っていた中途採用活動を、2023年3月期よりグループ全体の戦略に基づき、グループ一括採用へ移行しております。積極的な採用投資により、年間200名超のペースでデジタルクリエイターを採用するなど成果が出始めております。2024年3月期にはさらに加速し、より戦略的に中途採用者数を拡大する予定です。従来の新卒採用・育成モデルに変更はないものの、2024年4月以降の新卒採用者数は、中途採用者とのバランスが取れるまで抑制し、全てのデジタルクリエイターに占める中途採用者の比率を高め、サービス力向上の土台を作る方針です。これにより中長期的な稼働率および単価の向上を図り、一人あたり付加価値売上高の向上を狙います。また、中途・新卒問わず、社員への教育投資として、引き続き付加価値売上高の2%以上の投資額を確保し、スキル育成本部の設置や専門スキル認定制度の導入、専門特化型カンパニーへの配置転換等を通じて、抜本的に若手社員の育成を早期化してまいります。
<EMC事業の概況>
EMC事業では、EMCカンパニーを中心に、大手企業向けにデジタルを活用したビジネス成果とユーザーエンゲージメントを向上し続ける専任チーム“EMC(Engagement Marketing Center)”を編成、顧客視点での課題発見・要件定義からデジタルサービスやプロダクトの開発・運用までを包括的に支援するサービスを提供しております。
2023年3月期においては、カスタマーサクセスに注力し、顧客企業のデジタル組織の内製化を支援する方針を掲げ、主に大企業のマーケティング部門のデジタルマーケティング領域において顧客専任デジタルクリエイターチームによる長期運用支援およびCSV(※1)/脱炭素事例の創出に注力しております。
当第3四半期連結累計期間においては、EMC事業の売上収益は8,046百万円(IFRS ※参考値:前年同四半期比8.3%増)、EMC事業に所属するデジタルクリエイター数は1,088名(前期末比188名増)となりました。
<PGT事業の概況>
PGT(Product Growth Team)事業では、2022年3月期より従来の「専門スキル保有クリエイター人材の提供」から「顧客のデジタルプロダクト(製品・サービス)のグロース支援」に主眼を置いたサービスへ転換しております。
主にデジタル、IT技術投資に積極的であり、成長性が高い企業において、当社のデジタルクリエイターが顧客専任のチームを編成し、顧客企業と一丸となって、デジタルプロダクト開発を推進し、デジタル化の企画や初回の構築/導入のみならず、長期的な運用が可能な組織化を支援してまいります。
当第3四半期連結累計期間においては、PGT事業の売上収益は5,000百万円(IFRS ※参考値:前年同四半期比35.9%増)、PGT事業に所属するデジタルクリエイター数は931名(前期末比208名増)となりました。
<当社グループ全体の方針および取組み>
当社は、人材開発戦略、営業戦略、サービス戦略を当社グループで統合的に実行し、グループ横断で行うことを目的として、2023年4月(予定)からEMCカンパニー、メンバーズキャリアカンパニー、メンバーズエッジカンパニーの3カンパニーの統合を決定いたしました。2023年3月期より、事業の統合等を含めた採用・営業・育成の一貫した体制の構築を進めております。今回統合の対象とならない社内カンパニーは、それぞれ専門領域に特化しているため、非Web運用領域の拡大も見据えて事業展開してまいります。今後も、専門領域特化型カンパニーは継続して複数立ち上げてまいります。企業のデジタル化を全面バックアップできるよう、様々な領域から、世界一のデジタルビジネス運用支援を確立させ、高レベルのカスタマーサクセスを実現いたします。
わが国における新型コロナウイルス感染症の影響やエネルギー、地政学上の問題による経済への影響はまだ不透明なものの、企業のデジタル投資は一段と加速するものと捉えております。そのような環境において、当社グループは積極的な人的資本への投資、とりわけ中途採用投資の拡大を通じて、顧客への価値創造の源泉であるデジタルクリエイター数の拡充を図ります。また、新規顧客の開拓に注力し、既存顧客への新規案件拡大とともに営業体制の更なる強化を図ります。併せて専門領域教育への投資を強化し、高単価専門特化型カンパニーへのクリエイターの配置転換等により、一人あたり付加価値売上高の向上に努めてまいります。
引き続き、長期ビジョンであるVISION2030(https://www.members.co.jp/ir/pdf/20200508_04.pdf)の達成に向け、重要KPIであるソーシャルクリエイター(※2)10万人、ソーシャルエンゲージメント(※3)総量100億、社員数1万人、営業利益100億円の達成を目指して取組みを推進してまいります。
(※1)CSV(Creating Shared Value=共通価値の創造):企業の競争戦略論の世界的第一人者として知られる米ハーバード大学のマイケル・ポーター教授が米ハーバード・ビジネス・レビュー誌の2011年1月・2月合併号(日本語版はダイヤモンド社「DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー」2011年6月号)に寄稿した論文で提唱した概念。CSVとは、「社会的課題の解決と企業の利益、競争力向上を同時に実現させ、社会と企業の両方に価値を生み出す取り組み」を意味する。
(※2)ソーシャルクリエイター:デザイン思考を持ち、ビジネスの推進や制度設計、アウトプットを通じて社会課題の解決を図ろうとするクリエイター(職人)志向性の高い人材のこと。
(※3)ソーシャルエンゲージメント:社会課題解決施策としてメンバーズグループが手がけたコンテンツ・プロダクト・サービスに対する接触回数のこと。
(2)財政状態の分析
資産、負債及び資本の状況
当第3四半期連結会計期間末の資産合計は10,174百万円(前連結会計年度末比230百万円の減少)となりました。これは主として、その他の金融資産が935百万円、その他の流動資産が217百万円増加したものの、現金及び現金同等物が1,343百万円減少したことによるものです。
負債合計は、4,127百万円(前連結会計年度末比381百万円の減少)となりました。これは主として、引当金が79百万円、その他の流動負債が60百万円増加したものの、未払法人所得税が366百万円、リース負債が186百万円減少したことによるものです。
資本合計は、6,046百万円(前連結会計年度末比151百万円の増加)となりました。これは主として、資本剰余金が57百万円、資本金が53百万円、利益剰余金が50百万円増加したことによるものです。
(3)キャッシュ・フローの状況
当第3四半期連結累計期間末における現金及び現金同等物(以下「資金」といいます。)は、前連結会計年度末より1,343百万円減少し、3,882百万円となりました。当第3四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当第3四半期連結累計期間において営業活動の結果獲得した資金は、350百万円(前年同四半期は581百万円の獲得)となりました。収入の主な内訳は、税引前四半期利益558百万円、減価償却費及び償却費364百万円によるものであり、支出の主な内訳は、法人所得税の支払額334百万円、その他212百万円によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当第3四半期連結累計期間において投資活動の結果使用した資金は、1,129百万円(前年同四半期は10百万円の使用)となりました。支出の主な内訳は、投資の取得による支出992百万円、有形固定資産の取得による支出137百万円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当第3四半期連結累計期間において財務活動の結果使用した資金は、563百万円(前年同四半期は411百万円の使用)となりました。収入の主な内訳は、新株予約権の行使による収入95百万円によるものであり、支出の主な内訳は、リース負債の返済による支出332百万円、配当金の支払額326百万円によるものです。
(4)事業上及び財務上の対処すべき課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが対処すべき課題について重要な変更はありません。
(5)研究開発活動
該当事項はありません。
(6)従業員数
当第3四半期連結累計期間において、当社グループの従業員数は443名増加し2,281名、臨時従業員数(平均雇用人員)は45名となりました。これは主に業務拡大に伴う採用によるものであります。
(7)主要な設備
前連結会計年度末において計画中であった主要な設備の新設、休止、大規模改修、除却、売却等について、当第3四半期連結累計期間に著しい変更があったものは、次のとおりであります。
(改修)
当第3四半期連結累計期間に完了した主要な設備の改修は次のとおりであります。
事業所名
(所在地)
セグメントの名称
設備の内容
投資額(千円)
完了年月
本社
(東京都中央区)
ネットビジネス支援事業
事務所内装設備・什器等
216,600
2022.5
ウェブガーデン仙台
(宮城県仙台市青葉区)
ネットビジネス支援事業
事務所内装設備・什器等
36,245
2022.5
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